
JR東海ではこれまで、旧来の211系・213系・311系について、315系への置き換えを進めてきました。
このうち、211系は2025年2月に静岡地区分の置き換えが完了していましたが、2両編成4本が流鉄(旧;総武流山電鉄)への譲渡のため7月5日より甲種輸送が実施されています。
JR東海の世代交代

JR東海は313系以来22年ぶりの一般形電車の新形式となる315系の投入により、211系・311系・213系の順に置き換えが行われています。
これら一連の動きでは、中央西線の8両固定化(過去記事)や静岡エリアでの白紙改正(過去記事)など運転体系自体の見直しが加わったほか、313系の転用を数多く含む複雑な動きとなっています。
これまで神領車両区の211系が先行的に置き換えられ、続いて311系と静岡車両区の211系が同時進行で置き換えられています。記事公開時点ではこれらの淘汰が完了し、残された213系の代替が進行中です。
用途廃止となった車両のうち、三岐鉄道に静岡車両区の211系5000番台が3両編成8本譲渡され、5000系として順次改造が進められています。
これに加え、長らく浜松に211系6000番台2両編成4本が留置されており、動向が注目されていました。

甲種輸送の様子を見る

今回、流鉄株式会社(旧;総武流山電鉄=2008年に社名変更)へ譲渡されたのは、JR東海 静岡車両区に所属していた211系6000番台の2両編成4本です。
211系6000番台は213系と同様の1M方式(211系他番台を含む多くの鉄道車両で見られる、電動車2両1ペアでなく単独の電動車として構成)が採用されている点が特徴的な車両でした。
2両ワンマン運転でも活躍している313系とは異なり、増結用途での運用に特化していました。
9編成在籍していた区分で、このうちGG5,GG6,GG8,GG9編成が譲渡対象となりました。

車両前面・側面には流鉄のマスコットキャラクター「りゅうのしん」のポスターが掲出されており、今回譲渡先が断定出来るようになったのはこのポスター掲出でした。
事業者側の公表や、甲種輸送で見られる「特殊貨物検査票」で譲渡先が明らかになる例がほとんどで、甲種輸送の前にポスターを掲出したために明らかになった点は他に類を見ません。

西浜松駅ではJR貨物 新鶴見機関区に所属するHD300形7号機の牽引で入換作業が実施されました。

甲種輸送までしばらくブレーキ要員として連結されていたコキ200形コンテナ貨車も一緒に移動しています。

その後、同 岡山機関区に所属するEF210形17号機の牽引で西浜松駅から東へ向かっています。

熱海駅以東では、番台区分こそ違えど211系がJR東日本管内の東海道線で見られるという点もあり、多くのファンの脚光を浴びながら川崎貨物まで東進しています。

JR東海車のJR東日本管内走行は、かつての113系や373系で見られたものの、JR東日本のATS-PとJR東海のATS-PTではそれぞれに異なる機能があるため対応車が限定されており、211系5000・6000番台では見られない光景でした。
流鉄での動きは?

今回の甲種輸送では、4編成がまとめて川崎貨物駅まで向かったのち、それぞれ分割されたのち馬橋駅まで輸送される体制となっています。
このことは「特殊貨物検査票」(甲種輸送では鉄道車両を貨車と見立てて輸送するため、JR貨物による貨車としての検査を行い、この検査票が掲出されます)に記載されていました。
馬橋の両社間の連絡線が非電化となっていることから、全行程または一部行程はディーゼル機関車の牽引となりそうです。現在活躍している5000系(元・西武新101系)の搬入事例では、越谷貨物ターミナルにて電気機関車から付け替えたのち馬橋へ向かっていました。
また、こちらの過去の事例では、流鉄線内においては現役車両が牽引される形で日中に回送されています。明るい時間帯に元西武の電車が211系を牽引するという光景が見られそうです。
搬入後は三岐鉄道の事例と同様に、1編成ずつ整備が進められることとなりそうで、デビュー日程やカラーリングなども気になります。
7月8日加筆;川崎貨物→馬橋 輸送の様子

川崎貨物駅にて編成分割作業が行われていた211系6000番台ですが、このうちGG9編成2両の輸送が8日(火)に実施されています。
川崎貨物駅から馬橋駅まで愛知機関区所属のDD200形6号機が牽引しています。

新鶴見信号場・武蔵野貨物線・武蔵野線・馬橋支線と首都圏近郊をぐるりと回り馬橋駅へ向かいます。
211系は転用・疎開等の動きや団臨等で武蔵野線・常磐線の走行歴がありますが、馬橋支線となるといつ以来でしょうか。

目的地の馬橋はもうすぐです。場内信号機がなかなか開通しなかったようで、非常にゆっくりとした速度で通過していきました。

馬橋駅到着後はW字型で繋がった連絡線をDD200形の牽引・推進で少しずつ移動しています。

常磐線車両との顔合わせも早速実現しています。
JR東日本にも高崎エリアで同色が活躍していますが、常磐線各形式は定期検査の出入りを含めて211系1000,3000番台と顔を合わせなくなって久しいので、仕様差こそあれど十数年前まで上野口で見かけた組み合わせに懐かしさも感じられました。

DD200形が流鉄の馬橋駅1番線手前まで推進し、その後は5000形“なの花”が小移動して連結作業が実施されました。

5000形“なの花”と連結し、馬橋駅構内を移動。このまま流山駅へ回送……と思いきや、従来の元西武車の新車搬入とは異なり、今日の作業はここで一段落のようです。
全く設計思想が異なる車両を営業中にいきなり白昼回送するわけにはいかないのか、はたまた馬橋駅構内留置が先行するのか。引き続き要注目です。
7月9日加筆;流山駅搬入

日中時点で“なの花”が通電状態のままとなっており、終電後に元211系が検車のある流山駅まで回送されました(状況から線路閉鎖扱いとみられます)。
流鉄では途中駅通過を想定していないシステム構成だからか、各駅とも一旦停車をしながら流山駅へやってきました。

ホーム到着後、検車の建屋まで引き込んだのち側線へ移動してきました。

元・西武と元・JR東海の連結面。
アダプターを介して連結しており、連結面の間隔が広いのも新車搬入ならではの光景です。

“流星”が馬橋側に連結され、一時的ながら6両編成となりました。

その後すぐに“なの花”が解結されて入換ののち、“流星”により押し込まれ当夜作業は終了となりました。
9日朝には正式に導入もアナウンスされ、暑くて熱い211系譲受の第一章が完結となりました。今後の輸送・改造の進展も楽しみですね。









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