国鉄型特急485系が風前の灯火となり、今や生き残りはJR東日本のジョイフルトレイン3編成16両となりました。
2021年に入っても動きが多く、ファン・一般利用者からも人気の高い高崎車両センターのYD-01編成“リゾートやまどり”は、同所でかつて運行されていたお座敷車両“やまなみ”・“せせらぎ”の再改造で生まれました。
両編成が兄弟のような活躍をしていましたが、一度だけ混結の“やせらぎ”状態で運行された経歴があります。
やまなみ・せせらぎの誕生から現在
国鉄分割民営化以降のJR東日本では、管内各支社が所有していたジョイフルトレインの運用効率向上などを目的として、485系特急形電車をベースとしたジョイフルトレインを数多く改造にて竣工させて行きました。
特に1994年に登場した485系“宴”では、掘りごたつと高い屋根の構造で好評となりました。
その後もこの改造を基本としつつ、当時製造が続けられていた209系の部品などを一部共用としつつ開放感のある車体形状、交直流電車の強みを生かしつつ狭小トンネルにも対応させるなどの改造をした兄弟車両が首都圏各地に誕生し、JR東日本管内各地で大きな活躍を続けてきました。
現在も活躍を続けている485系“華”、千葉支社が所有していた“ニューなのはな”に続き、高崎支社についても12系お座敷客車“くつろぎ”の後継として1999年に“やまなみ”が、“やすらぎ”の後継として“せせらぎ”がそれぞれ4両編成にて登場しました。
他のジョイフルトレインとともに、特に4両編成という小回りの良さ・4+4両の8両編成での運用も可能という柔軟さを武器に活躍を続けていましたが、2011年の群馬DC(ディスティネーション・キャンペーン)の看板車両として、「乗ってたのしい列車」として「リゾートやまどり」として生まれ変わりました。
従来のお座敷電車から一般的な座席車両となりましたが、改造前の窓割を生かした3列シートとなっており、JR東日本管内では特に“乗り得”感のある豪華な設計です。
この改造では“せせらぎ”4両と“やまなみ”中間電動車2両が再改造の対象となり、残された“やまなみ”先頭車2両は盛岡支社の“ジパング”に再活用されており、全車両が現役となっています。
代走じゃダメ?1両だけ差し替えて運用
“せせらぎ”は5〜8号車と付番されているように、基本的には両者単独走行または4+4両の8両編成での運行を前提としており、団体臨時列車で8両での運行はたびたび実施されていました。
単独走行に比べて設定頻度が少ないことから、485系ジョイフルトレインでは他社管内走行と並んでファンから注目される存在でした。
しかしながら、10年前後の短い歴史のなかで一度だけ“混結”が実施された経歴があります。
これは、2008年4月29日から30日にかけて伊勢崎〜熱海駅間で設定されていた“せせらぎ”使用予定の団体臨時列車について、所属基地基準で上野側に連結されるクロ484 7の代わりとして“やまなみ”のクロ484 4が連結された異色の編成で運行された事例です。
クロ484 7に何らかの不具合があって実現した編成であることは間違いなさそうですが、わざわざ編成を組み替えてまで運転されたことが意外に思える運行体系でした。
背景については想像の域を出ませんが、車両構成上の違いが挙げられます。
“やまなみ”の2年後に改造された“せせらぎ”では、座席数が116席と“やまなみ”の100席から16席増加しています。
このため、“やまなみ”の代走を“せせらぎ”で行うことは可能でも、逆は発売座席数の都合から難しかったことが考えられます。
このほか、「せせらぎ号で行く〜」など、ジョイフルトレインは車両自体が売りのポイントであることを考えると、本来の車両以外を充てることをなるべく避けたいという思惑も考えられます。
“ジョイフルトレイン”後継は……
このような編成を急遽仕立てたり、他社跨ぎの団体臨時列車が数多く運行されたりといった活躍の柔軟さも、485系ならではの強みを活かした運行と言えそうです。
現在は183,189系・485系から185系へ、そして現在はE257系やE653系へ移行の最中の波動輸送。
JR東日本では呼称もジョイフルトレインから“のってたのしい列車”となり、団体臨時列車よりは供食などを含めた観光列車がトレンドとなっています。
かつての団体臨時列車・ツアーで人気だったお座敷列車の文化は廃れつつあり、2010年代以降は観光列車か一般的な座席車両の二極化傾向が続いています。
昨年以降の鉄道業界では何かと暗い話題が相次いでいます。特に団体臨時需要が落ち込む昨今、ツアー客に響く魅力的な車両の登場はしばらく期待出来ません。
観光特急のフラッグシップ「サフィール踊り子」が一定の成功を収めていますが、今後もファン層だけでなく一般利用者にとって魅力的な車両が登場すること、そしてウィズコロナ時代に対応した新しい“のってたのしい列車”が登場することを楽しみにしたいですね。
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