北陸新幹線敦賀駅延伸とともに、「サンダーバード」「しらさぎ」で使用されている681系・683系に新しい京都支所の編成番号が掲出され、車両の動きも活発となっています。
6月23日には683系0番台にリニューアルしらさぎ色の編成が新たに登場し、イベントにて初公開となりました。
ダイヤ改正前後の動向を振り返りつつ、今後の車両采配を考えます。
金沢延伸時に大きな動き・その後も変更が続く
近年の681系・683系を巡っては登場から現在までの長きに渡り転用が実施されていますが、2015年の北陸新幹線金沢駅延伸に関連した他線区転用・同時期に「サンダーバード」のサービス向上を目的としたリフレッシュ工事が実施した動きが特に大きなものとなっていました。
この時には「しらさぎ」用の683系2000番台を直流化して阪和線・紀勢線特急「くろしお」と福知山方面各特急に転用、「サンダーバード」「はくたか」で使用されていた681系は3両編成1本を「サンダーバード」増結用に残し、その他を「しらさぎ」に転用。「しらさぎ」用には北越急行所属だった681系・683系も加わりました。
また「サンダーバード」リフレッシュ工事を巡っては、当初公表時点で177両とされていた点が当時も話題となりました。
対象車両が明確に示されていなかったものの、主力である683系4000番台の9両編成×12本108両・683系0番台の6両+3両編成×6本54両だけでは162両となっており、付属3両編成が5編成ほど対象に含まれることが推測できる点が注目されました。
その後のリニューアル工事の進展状況から、これらの対象は当初からサンダーバード号の増結や波動輸送での利用を目的に製造された“しらさぎ色”でない683系2000番台3両編成4本(R10〜R13編成)が対象に含まれたほか、2015年3月改正後も京都に残ることとなった681系V11編成も対象に含まれていたことが読み取れます。
2015年3月改正時点では681系3両・683系174両がリフレッシュ工事の対象として進行していたことが読み取れます。
同年内には一度「しらさぎ」用とされた681系3両編成2本が再度「サンダーバード」用となり、681系の本数が増加しています。
2019年には「サンダーバード」増結の状況に関連して、転用・転属・リフレッシュ工事対象増加がありました。
「しらさぎ」から福知山特急に転用されていた289系FH301編成・FH306編成の3両編成2本が使用停止とされていた交流機器を再整備の上で車番は元番号に復帰、金沢に配置され「サンダーバード」増結用683系2000番台の続番号であるR14,R15編成となりました。これらの2編成はリフレッシュ工事の対象とはならず、原色のまま使用されていた点が注目されました。
2015年に追加された2編成は途上で「しらさぎ」用とトレードの動きが生じたのちリニューアル工事が実施され、681系のリニューアル色は3編成体制となりました。
最近の動向としては、2023年3月改正とともに金沢総合車両所を拠点に運用されていた「サンダーバード」車両の多くが吹田総合車両所京都支所に転属しています。
金沢へ集中配置されていた683系4000番台全編成と、金沢の増結用車両で2019年にリニューアル工事対象に追加で選ばれた681系3編成“T編成”が京都に転属。
これにより金沢には「しらさぎ」用の車両のほか「サンダーバード」増結用の683系2000番台6編成が残されていました。
2023年改正〜2024年改正前の布陣
「能登かがり火」はR10〜R13編成
ダイヤ改正前夜となる2024年3月15日晩には金沢から京都・宮原へ向けて681系・683系が相次いで回送されました。
ダイヤ改正以降も「能登かがり火」で使用されるために金沢に残留した編成は、683系2000番台R編成6本のうちリニューアル工事施工済みの4編成となりました。
前年度の転属の采配から想像しやすい状態でしたが、通常時は3両編成2運用、繁忙期は2編成併結したモノクラス6両で運転されることが確定的になりました。
基本編成と付属編成の間にドアがないというデメリットを解消するために「サンダーバード」増結用に製造された編成が、その強みであったはずのドア位置の違いから「サンダーバード」使用車両から外されてしまって強みが活かせていない点は少し残念な印象も受けます。
同僚たちが去ったあとも新製配置場所に残り続け、新幹線延伸と七尾線の災害復興の顔として末長く活躍することに期待したいところです。
当面は既存のカラーリングのまま使用されるとは思いますが、今後専用の塗装やラッピング等で独自色が出されるかもしれません。
京都に集結した681系,683系
金沢に残された683系R10〜13編成と、金沢所属からそのまま廃車回送となった681系W08編成を除いた681系・683系は吹田総合車両所京都支所に転属となり、あわせて京都支所の編成番号が新たに付与されています。
この編成番号掲出はダイヤ改正5日前に転入し、ダイヤ改正前日に営業運転を開始した681系V44編成を皮切りに運用間合いに順次施工が進む格好となり、ダイヤ改正時点では新たな編成番号が明らかになっていない状態でした。
これに加え、多数の681系・683系の疎開が実施されており、ファンの間では様々な憶測が飛び交う状態が続いていました。
681系0番台 3両編成9本・6両編成8本
681系3両編成では、旧W15編成がV15編成となり、旧W11〜W14編成がV41〜V44編成に改められました。
W15編成は2000年代はじめの時点で「サンダーバード」用T編成として活躍していたグループで、その際に683系0番台の付属編成と同仕様とするため9号車(12号車)のドア拡幅・バリアフリートイレ・車椅子対応座席設置などの改造を受けたクハ681-200番台が連結されています。
その後「はくたか」転用・「しらさぎ」転用とグループ内では異端な存在となっており、今回の転入では「サンダーバード」由来の車内設備をもつV11〜V14編成の続番とされたものと考えられます。
なお、後述の通り中間のモハ681は200番台である204が連結されており、1列座席が少なくなっています。「サンダーバード」3両編成は異なる形式・番台の編成を充てた場合でも移席が発生しないように発売する仕組みとなっており、現状としては特段問題ない状態であると考えられます。
その他の旧W11〜W14編成はV41〜V44編成とされました。これらのグループは先述の改造を受けていないクハ681-0番台が連結されており、両端先頭車の車番順に編成番号が付与され直されています。
W42編成の中間車は「サンダーバード」用T編成として改造を受けたモハ681-307が連結されています。
これらの背景は2005年の転用・2014年の組み換えで元に戻ればよかった中間車のトレードを異なる編成とトレードした結果、クハは0番台でモハは300番台、クハは200番台でモハは200番台という異端車が1本ずつ生じています。
単純に考えればW42編成とV15編成で中間車をトレードすれば編成ごとの座席数を2種類に整理することが可能であり、素人目には運用上のメリットも大きそうですが検査周期を崩すデメリットが上回っているものと推測されます。
6両編成についても編成番号が変更されていますが、こちらも番号順が複雑に変動しています。
「はくたか」用増備車である旧W01,W02編成がW11,W12編成となり、W03編成以降は先頭車の車番順に振り直しとなっています。
設備上の差異ではなく、何らかの意図を持って付与されていることが想像される内容でした。
旧W08編成は金沢から直接廃車回送されており、この編成は吹田総合車両所本所の公開イベントリリース時の展示車両として“名指し”で廃車となることが公表されていました。
これに加え、旧W05編成はW91編成とされました。廃車を目的としつつ一時的に転入したものと考えられる状態で、このW91編成はダイヤ改正後に運用されることなく3月29日に吹田総合車両所本所へ回送されました。
681系基本編成は付属編成と異なり「しらさぎ」転用時点で仕様統一を図る改造が済んでいますので、形態差よりは検査期限から廃車編成を選定していそうです。
681系2000番台 3両編成2本・6両編成2本
北越急行出身の2000番台は元々京都に配置されていた681系・683系に準じた3両V編成・6両W編成とされており、仕様の差異からか20番台の編成番号に区分けされています。
この付番は直感的でファン層もすんなりと受け止められそうな変更です。
683系0番台 3両編成6本・6両編成6本
従来から3両編成がV30編成・6両編成がW30編成を名乗りそれぞれ6編成が配置されていましたが、3両編成はダイヤ改正以降も「サンダーバード」増結に使用される一方で、6両編成はダイヤ改正後に営業運転で使用されず、宮原支所に大勢が疎開される状況が続いていました。
何らかの転用改造が想像しやすい状態で、動向が注目されていました。
683系2000番台 3両編成2本
2019年の転用時にリニューアル工事対象とならずに原色のままとなっていたR14編成・R15編成がN01編成・N02編成として京都支所へ転入となりました。
大阪側先頭車のドア位置に相違があり、案内上はこちらも事前に充当列車を決めておく必要が生じます。
単純に考えれば2019年に2編成を捻出した福知山支所に戻る動きがスッキリしますが、少なくとも編成番号からそうならないことは確定的な状態です。
現時点では疎開対象となっており、運用に就く姿は見られません。
683系8000番台 3両編成6本・6両編成6本
北越急行所有で「はくたか」のアイドル的存在で、「しらさぎ」でも681系に混ざって使用されて人気を博していたN03編成6両・N13編成3両ですが、京都支所ではA編成を名乗っています。
3両編成がA03編成・6両編成がA06編成となっており、現時点でA編成は683系8000番台固有の区分となるものとなっている状態です。
現在はA06編成がダイヤ改正に先駆けて受けた定期検査にて「サンダーバード」リニューアル色に改められ(内装は未更新)、3月20日に「しらさぎ」塗装のままのA03編成とともに「サンダーバード83号」にて営業運転に復帰しました。
683系0番台と運用上は共通で扱うことが可能である点が大きな強みですが、現状としてはA06編成が「サンダーバード」リニューアル塗装に変更・A03編成とともに半固定状態で運用されており、683系4000番台を補う体制とされています。
「サンダーバード」9両編成はA編成orB編成……という整理意図であればスッキリはしています。485系「雷鳥」が使用していたA編成の区分が割り振られたのは嬉しいポイントでしょうか。
〜京都支所681,683系の編成番号〜
・V10,W10 681-0 V10はクハ681-200連結
・V20,W20 681-2000
・V30,W30 683-0
・V40 681-0 クハ681-0連結
・W90 681-0 廃車前提の転入車
いずれもVが3両編成、Wが6両編成
・B30 683-4000 9両編成
・A 683-8000 (3両編成が03,6両編成が06)
・N 683-2000 3両編成
683系0番台でリニューアル「しらさぎ」塗装
683系0番台6両編成6本は、京都支所と宮原支所に留置される状態が続いていました。
2024年6月23日の有料撮影会イベントにて、吹田総合車両所本所に入場していたW32編成が初登場となる「しらさぎ」リニューアル塗装となっている姿がお披露目されました。
撮影イベントでは貫通扉があるクモハ683系側が、撮影可能な場所にクロ683側の姿が確認できます。
非貫通側の前面塗装は黄色(オレンジ色)の面積がかなり狭めとなっています。
側面の印象変化が最も目立ちます。
また、「サンダーバード」リニューアル塗装で描かれていた雷鳥モチーフと推察されるイラストは「しらさぎ」塗装では見られません。
今回の塗装変更車登場により、W30番台の編成の一部または全編成が転用、「しらさぎ」は今後683系0番台充当列車が大半となり、将来的に681系6両編成の更なる代替が実施されることまでは確実視できるようになりました。
ただし、現行の「しらさぎ」関連運用は6運用となっており、検査時の予備を考えると683系0番台だけで賄うことは困難です。
一番構成が近い683系8000番台も「サンダーバード」9両編成を補うために使用されている状態ですので、681系6両編成も一部残存することは間違いなさそうです。
なお、イベントに参加されたはにゅ様(Twitter:@kiha183_4562)によると、一部画像は編成番号がN32編成に変更されているようにも見えるものの、窓ガラスの湾曲でそのように見えるだけで他の編成表記と同様にW32編成の表記のままとのことです。
681系はどの編成が残存する?
「サンダーバード」「しらさぎ」を巡っては、過去記事でも複数回紹介している通り「つるぎ」で使用されるE7系・W7系新幹線と「サンダーバード」9両・「しらさぎ」6両の座席数が概ね合致している都合から両列車と接続するパターンの定期「サンダーバード」は9両編成での運転とし、不足する輸送力は臨時列車の設定本数増加で補う構成となっています。
そのため、基本編成の稼働数は路線長が短くなった割には減少しておらず、本来的にはすっきりしそうな683系4000番台のみで「サンダーバード」運用を賄うことが出来なくなっています。
また従来とは異なり、新たに加わった8000番台が使用される列車が運用上分離されていない点も特徴的です。
グリーン車・普通車とも座席数が異なるため、事前に運用計画に基づいてシートマップが変更されており、指定席予約のシートマップから使用列車を推測することが可能な状態です。
付属編成側がどのタイプの車両が充当されても問題ない構成とされているのとは対照的で、ダイヤ乱れや突発的な車両故障時には一部旅客に移席対応が発生します。
また、681系の今後の推測に役立つものとして「らくラクびわこ」の方向幕の用意がされているか否かがあります。
2024年1月の「らくラクびわこ」運転開始案内時点(JR西日本 PDF)で『当面の間「特急」表示となる車両があります』とされていました。
ダイヤ改正前から「スーパー雷鳥信越」の代わりに「らくラクびわこ」種別幕が装備された編成が目撃されているものの、交換は未だ一部編成に留まっています。交換が行われていない編成では「特急」表示とされており、基本編成と付属編成の交換状況の違いから「スーパー雷鳥信越」誤表示も複数回目撃例があります。
681系基本編成ではW11編成・W12編成のみが交換対象とされている一方で、「サンダーバード」塗装となった683系8000番台A06編成は交換済みとされているなど、この種別幕の更新は中長期の使用を見込んでいるか否かを見分けるヒントとなりそうです。
W11編成・W12編成は681系0番台のなかでは比較的経年が浅い編成で、京都転入時に先頭車の番号順で付番する原則を崩して付与されていました。この2編成を継続使用とし、W13編成以降は廃車とする計画であればスッキリする内容です。
この場合は、代替する対象は681系0番台4編成ですが、2000番台2編成も代替する場合は683系0番台6両編成を全て転用する必要が生じます。
ただし、この場合は繁忙期「サンダーバード」に使用する車両が不足してしまいます。
2024年のゴールデンウィーク期間にW32編成とW36編成が「サンダーバード」運用に復帰していたように、最繁忙期の運用数を考えると9両編成として使用出来る車両が2本程度は必須です。
特にW36編成はダイヤ改正後に定期検査を出場しており、従来の「サンダーバード」塗装で出場となっています。
この状況から、683系W31〜W34編成が「しらさぎ」色となるに留まり、W11,W12編成に次いで経年が浅い681系2000番台2編成も残留対象とする……あたりが現実的でしょうか。
もしくは「しらさぎ」自体の列車設定を抜本的に見直すことも考えられ、例えば米原発着一部便の3両化・快速列車への代替などにより運用数削減が進む可能性もゼロとは言い切れません。
付属編成では少なくともV42,V43編成が種別幕が更新済みとなっているなど、V40番台区分の編成も継続使用が見込まれていそうです。
また、681系で唯一「サンダーバード」原色を纏っていたV12編成も「らくラクびわこ」種別幕装備がされているようで、こちらも継続使用の対象となっているようです。
681系は6両編成が「しらさぎ」用4編成程度残存・3両編成が繁忙期以外は疎開をしつつ大勢を維持……といった体制に落ち着きそうです。
ただし、車両のライフサイクルを考えると現状の「付属編成ばかり経年車」という状態は決して悪いものではありません。
現代の鉄道車両の定期検査は走行距離に基づいて算出されており、現行の運用構成だと運用機会が少ない付属編成の方が走行距離が嵩みにくくなっています。
経年車が付属編成に集中していれば、基本編成の代替適齢期に丸ごと置き換えられることとなり、これは大きなメリットと言えます。
当サイトで過去に触れた話題で例示すると、JR東日本の地下鉄直通用車両は東西線直通用のE231系800番台より千代田線直通用のE233系2000番台の方が走行距離が嵩んでいる事例(過去記事)が挙げられます。
ある程度見えてきた新幹線開業後の特急車の動向。当面使用する681系の予備部品確保をしつつ、将来的な681系・683系初期車代替時に同一形式でまとめて代替可能とする合理的な布陣とも言えます。
掲載元ツイート紹介
本記事に掲載している683系0番台リニューアル「しらさぎ」塗装車のお写真は、はにゅ様(Twitter:@kiha183_4562)より掲載許諾をいただいています。
コメント
らくラクびわこ幕は681系V44編成も持っていたはずです