【SDGs】日本国内でもブルトレ復活なるか?欧州の夜行列車復権の流れ

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日本国内では「サンライズ出雲・瀬戸」を除き定期運行がなくなって久しい寝台列車。

欧州ではここ数年、夜行列車が急激に復活の動きがあります。ヨーロッパ圏で再注目される事情とともに、国内で復活の見込みがあるかを考えます。

欧州で急速に復活する夜行列車網

日本国内では夜行列車の削減が相次ぎ、現在の定期列車は東京と出雲・高松を結ぶ「サンライズ出雲・瀬戸」のみとなって久しい状態です。

これは日本国内特有の変化ではなく、ヨーロッパ各国でも高速鉄道網の整備や格安航空会社(LCC)の成長により減少傾向でした。

2021年5月、フランスでは首都のパリとニースを結ぶ約1,088kmの夜行列車が運転を開始しました。2017年に既に廃止された路線で、フランスでは既にTGVによる高速輸送が実現しています。フランス政府としては大きな舵が切られた格好です。

同月にはオーストリアの首都ウィーンとオランダのアムステルダムを結ぶ「ナイトジェット」も運行を開始しています。

「脱炭素社会」

一部日本国内メディアでは夜行列車のノスタルジーが復活の背景にあるとした的外れな報道さえありますが、実態は大きく異なりそうです。夜行列車の復活は、この環境問題を起因とする“国策”です。

これらの背景を紐解くには、国際政治の動向を考える必要があります。

欧州各国では以前から環境問題に関心が強く、近年では「カーボンニュートラル」「SDGs」といったフレーズが日本でも聞かれる機会が増えてきました。

「カーボンニュートラル」はその文字通り、CO2の排出を実質的にゼロとするものです。排出量を抑制して森林などによる吸収量と釣り合う状態とすることを目標としており、2050年の実現に向けて各国が様々な取り組みを行っています。

「SDGs」(Sustainable Development Goals)は2015年に国連で採択された、2016年から2030年までの15年間の目標です。「持続可能な開発目標」と訳されるように、環境問題以外にも貧困や紛争、差別などの諸問題の解決を17の目標に分け、各国が成長することを目指しています。2015年の採択から日本国内でも議論が進み、2019年ごろから大手企業を中心に取り組みが発表されています。

最近の欧州各国の夜行列車復活は、これらの環境問題への対策の一つとして相次いで計画されています。

近年のヨーロッパ各国では、「飛び恥」(フライトシェイム)といった言葉が広まっています。国土交通省の統計では約6倍・欧州連合の統計では約20倍とされている航空機のCO2排出量が槍玉に挙げられた格好です。

フランスでは今後、鉄道で2時間30分で到達出来る距離の航空便の禁止を法律化するとしています。日本国内で考えれば羽田〜伊丹便が対象となる格好です。

もし日本でこの法制が検討された場合、社会の関心を惹きつけるにはかなりの効果がありそうです。

国境炭素税の時代へ

昨今では、日本国内でもプラスチックごみ削減に向けてビニール袋やプラスプーンの有料化が話題となっています。

日本国内では大企業が「持続可能な成長=SDGs」を相次いで掲げており、特にかねてより環境問題への取り組みに熱心だった鉄道事業者はこの取り組みに積極的です。

世界へ目を向けてみると、欧州では国内で炭素税の導入が進んでいます。さらに欧州連合(EU)では2026年から「国境炭素税」の導入が進められる方向で調整が進められています。導入当初は品数は限定的になる見通しですが、将来的にはより多くの品目・国がこれらの仕組みを導入することとなりそうです。

そのため、将来的には日本がこれらの仕組みを積極的に導入しなかったとしても、輸出する際に高い関税が発生する状態となるため、国内産業にも将来的に影響が発生することが予想されています

国民的にはメリットが見えない

国内の企業が相次いでSDGsなどの取り組みを掲げる一方で、国民の関心は非常に低い印象です。

SNSでは小泉環境大臣の掲げるプラスチック製品の有料化やスウェーデンの環境活動家グレタ氏の発言への批判は右派左派問わず噴出しており、国民の厳しい懐具合のなかで支出が増加することへの懸念が多い印象です。

報道ベースだと一部の環境活動家が過激な運動をしているようにも思えてしまいますし、筆者も痛い出費だと感じている点でもあります。

しかし先述のように、国際社会として既にCO2削減が必須項目となっています。経済対策という観点からも環境問題への対応が求められる時代になりました。

一般に環境省と経済産業省の二項対立で見られがちですが、経済産業省資源エネルギー庁が記していたコメントが印象的です。

「忘れてはいけないことは、経済と環境の両立を図っていく姿勢です。経済発展がなければ、温暖化対策に有用な革新的イノベーションも生まれませんし、画期的な省エネ製品への買い替えを促すことも難しくなります。低排出型社会実現のため、排出削減の取り組みを、経済や社会の発展に向けた取組みとセットで進めていくことが重要となります。」(外部リンク)

有料化で家計への負担が批判されるように、環境問題への対応をするには経済の発展も必要です。国民の理解を得るには、まずは30年以上停滞が続く日本経済の活性化が急務に思えます。

これ以上は各所の政治的な思惑も出てくるかと思いますが、少なくとも鉄道趣味の観点では今後さらに密接に関わっている分野ですので、背景知識としてこういった駆け引きがあることを知っておきたいところです。

採算性が悪く減少した夜行列車

日本国内に目を向けると、“ブルートレイン”が2000年代に大幅に数を減らしました。

車両の老朽化が主な理由とされていたものの、収益が期待できれば代替車両を投入することが自然です。これが実現したのは「サンライズ出雲・瀬戸」のみとなりました。

両路線ともに新幹線が直結しているエリアではなく、ダイヤ構成としても他の移動手段に対して優位性がある絶妙な距離感です。

比較的高い乗車率があり、会社跨ぎがないという優位性があった上野〜秋田・青森の「あけぼの」、豪華な設備でファンも多かった上野〜札幌の「北斗星」「カシオペア」についても運行を終了しています。

この流れは寝台列車だけに留まらず、ひっそりと設定がなくなった新宿〜新潟間の臨時快速「ムーンライトえちご」、最近では新型コロナウイルスを理由に東京〜名古屋・大垣を結ぶ臨時快速「ムーンライトながら」が廃止されるなど、夜行列車については旅客会社が何かにカコつけて廃止したい思惑が伺えます。

旅客会社側の思惑としては、終電後の時間帯に列車が運行されるという負担が挙げられます。

貨物列車が数多く運転されている線区以外では、深夜帯の保線作業時間を潤沢にすることが可能です。

東海道本線や東北本線のような貨物列車が運行されている路線でも、夜行列車がなければ駅を開けている時間を短縮でき、業務の負荷が軽くなります。駅の人員配置削減・無人化が積極的に進められている昨今では、利用者が少ないこれらの時間帯の業務削減が最優先となるのも妥当です。

寝台列車については寝台車両のリネン交換などの作業・長区間走ることで輸送障害に巻き込まれるリスク・遅延時に朝ラッシュ時間帯のダイヤに影響するなどのデメリットが挙げられます。

夜行快速列車については520円の座席指定料のみで乗車でき、旅客会社としては新幹線に乗って欲しいのは明らかです。特に青春18きっぷと組み合わせて利用されるため、運行する乗務員や駅員の人件費など、デメリットも大きそうです。

WEST EXPRESS 銀河は成功するか

JR西日本が2020年に運行を始めた「WEST EXPRESS 銀河」は、コンパートメントやフルフラットシートなど、比較的安価な在来線特急として長距離運行する列車となっています。

2020年のデビュー以降、京阪神〜山陰エリアへの夜行列車・京阪神〜山陽エリアへの昼行列車に続き、2021年にはかつての紀勢本線新宮夜行を彷彿とさせる、下り夜行・上り昼行の運転が始まりました。

いずれも新型コロナウイルス関連で、当初の目的であった一般の特急列車ではなく旅行商品としての発売となっているものの、着々と様々な経路での運行を実現しています。

運転日を限定した実験的な要素が強い列車運行となっているものの、これらが将来的な鉄道のあり方を模索する列車であることは容易に想像出来るところです。

JR西日本の取り組みが大きな成功を収めれば、「ななつ星 in 九州」登場後に相次いでクルーズ列車がデビューしたように、急速に全国に広まるかもしれません。

意外と鍵を握る貨物輸送

近年は「モーダルシフト」の機運にトラックドライバー不足が重なり、環境負荷が小さく大量輸送が可能な鉄道貨物輸送が再注目されています。

JR貨物の収支が年々改善していることはファンの間でも知られつつあり、特に昨今の旅客会社の大幅な減収により相対的に貨物輸送の好調が目立ちます。

自動運転技術が年々進化しているものの、依然として課題も多く挙げられています。電気自動車についても航続距離・車両価格・充電インフラなどの課題が残されています。

鉄道貨物輸送の復権も決して夢物語ではなく、単独事業で黒字化されるとともに話題となった線路使用料が引き上げられたとしても、引き続き黒字を維持出来るかもしれません。双方が納得のいく金額まで線路使用料を引き上げられた場合は鉄道インフラを維持する事業者の負担が軽くなり、旅客輸送にも還元されるといった好循環にも期待できます。

最近話題となっているように、物流需要が大きい一方で旅客輸送が壊滅的な北海道方面などはもはやJR貨物が鍵を握っている状態です。

最終的にはヨーロッパや昨今の第三セクターのような上下分離方式が好ましいようにも思えますが、まずは線路使用料の問題を早期に進展させ、旅客・貨物双方が鉄道インフラを維持するために協力出来る体制づくりが望まれます。

新しい夜行列車はどの体系が理想か

目下の課題として、使用車両の問題が挙げられます。「WEST EXPRESS 銀河」は余剰となっていた117系の改造で登場しています。定期運行となれば車両数が必要で、特殊な車両であれば設計のコストなども難点です。一方で、少ない車両数で輸送力を担保するには二階建て車両が理想です。機関車牽引列車を復活させることは現実的ではなく、電車方式・非電化路線もEDC方式が望まれます。

利用者目線では「ブルートレイン」で課題となっていた、寝台列車の寝台料金6,300円といった価格設定を割高と感じられる方も多いのではないでしょうか。

短距離〜中距離の移動では、様々な座席仕様を織り交ぜた「WEST EXPRESS 銀河」のように、高速バスに対抗出来るような安価な値段設定が望まれます。

一方で、航空機がライバルとなる遠距離移動では、価格の安さを優位性としつつ移動自体が魅力となるような車両作りが求められそうです。「サンライズ出雲・瀬戸」のように、のびのびシートからA個室まで幅広いニーズに応えられる席種が欲しいところです。

ファン目線では食堂車の連結に期待したいところですが、費用対効果を考えると難しそうです。JR東日本が実証実験を行うモバイルオーダーで途中駅からの商品積み込みのスキーム(外部PDF)が具現化すれば、途中経路のお弁当を食べられるといった列車内無在庫での供食は可能性が残されます。

いずれの場合も鉄道事業者単独では課題も多いため、環境負荷軽減に向けた国からの支援に期待したいところです。

日本国内の現状では、肝心の鉄道事業者が夜行列車に対して極めて消極的であること・自動車産業が国内外で影響力があること・国民の関心が薄いことなど、乗り越えなければならない課題がいくつも挙げられます。

ただ、鉄道業界は今後も環境問題ビジネスが浸透すること自体の恩恵を受けやすく、上手く転べば航空機や高速バスに奪われた国内輸送のシェアを取り戻す好機になりそうです。

鉄道ファンの端くれとして、日本の活性化の一助として鉄道の重要性が増すことに期待したいところです。

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コメント

  1. ユーマォ より:

    物凄く安直ですが、215系を夜行用に改造するのってどうでしょう?
    二階建てで、製造年数は経っているけど、実際の運用を考えるとまだまだ劣化と言えるほどの劣化はなく、再利用の価値があるのではないでしょうか。
    もちろん、内装はガラッと変える必要があり、何かしらの付加価値が必要で、それなりに費用はかかるでしょうが、例えば池袋発、新宿、品川、東京、上野経由の常磐線経由の仙台行き夜行列車(ただし、何かしらの交直流化対応が必要)だったり、東京発中央本線経由の名古屋行きなど、新幹線対応区間外の都市間移動は見込みが有りそうな気がします。

  2. くまさん より:

    大垣夜行も指定席化か
    急行銀河もあれば欲しいです
    寝てる間に移動って意外と便利です

    上下分離案いいかも知れません
    あと有料で良いのでWiFi付けて欲しいです

  3. 匿名希望 より:

    夜行列車の話では無く、羽田ー伊丹の航空路線を廃止した場合のお話です。
    長くなりますがご一読頂ければ幸いです。

    メリット
    1.CO2排出量を削減出来て気候変動を抑えることが出来る。
    1ー1.グレタ氏が喜ぶ。
    2.羽田・伊丹空港の発着枠に余裕が出来て、その分を長距離国際線の増便に充てられる。
    3.伊丹空港の騒音問題がある程度解決される。
    3-1.伊丹空港を廃港に出来る。
    4.JR東海の売り上げが大幅に伸びる。

    デメリット
    1.利用客が日本4位、世界でも上位の航空路線で比較的客単価が高い為、
    航空会社の経営が悪化し、その分税金で補填しないといけなくなる。
    (コロナで現実になりそうだが…)
    2.羽田・伊丹空港へのアクセスが便利な京急・阪急の沿線からの関西・関東へのアクセスが不便になる。
    3.東海道新幹線の輸送力増強を強いられる。
    4.JR東海の殿様商売に磨きがかかり、更なる値上げをするだろう。
    4-1.JR各社の売り上げの格差が増大する。

    対策
    1.新幹線利用客がCO2排出量の削減に貢献した見返りとして国策で東海道新幹線を値下げさせる。
    1-2.税金での航空会社救済額を減らす為、
    JR東海に羽田伊丹の航空路線を廃止することによる
    東海道新幹線の増収分のある程度を航空会社救済に充てさせる。
    1-3.EX予約の特定都区市内制度を適用させる。
    (飛行機に無い強みであるので、東京・横浜・大阪以外の全ての都市で設定させる。
    JR東日本の新幹線eチケットはどうするか?)
    2.京急・阪急の沿線から新横浜・新大阪へのアクセス路線を全額税金で建設する。
    または新横浜・新大阪への利便性向上の為の費用を全額税金で賄う。
    (例、横浜線を全て横浜駅に乗り入れる。
    横浜市営地下鉄の快速列車を終日にわたって大幅に増便させる等。)

    最後に、「税金での航空会社救済額を減らす…」には、
    ここの読者の方は反対されるでしょうが、
    納税者として経営不振・大減収の航空会社への税金投入を減らして欲しいという意味で言ったのであり、
    決してJR東海の経営を圧迫しろとは言っていない事をご理解頂きたい。