2020年6月25日、JR東日本の労働組合の1つ、国鉄千葉動力車労働組合サイト内にて、千葉エリアの閑散区間・短編成ワンマン化向けのE131系に加え、中編成ワンマン向けにE233系を導入する計画がある旨が記載されました。
27日には京浜東北線向けに長編成ワンマンを行うための新車両導入報道もありました。
JR東日本内部での車両運用に何らかの変化があったと考えられますので、断片的な情報を総合してJR東日本の新しい「ベストプラクティス」の全貌を考えます。
組合発表から代替車がE233系との記述
先日、京浜東北線のワンマン化に向けた動きとして、新車両の導入・在来のE233系を代替する旨が報道レベルで飛び交いました。
過去の発表されるタイミングを考えると、JR東日本から正式なプレスリリースが出されるのは、車両メーカーとの契約〜1両目の製造が始まる時期と推測できる1年半前〜2年前程度=2022年ごろまで待つ格好となりそうです。
ただし、この京浜東北線の車両の世代交代を示唆する話題はここ1ヶ月程度匿名掲示板やSNSなどで記されることがあったほか、この報道と前後して労働組合から2018年5月に車両置き換え計画「ベストプラクティス」の大幅な改訂があったことも明らかにされており、計画自体は以前から存在したものと考えることが出来そうです。
このほか、2020年6月25日には、JR東日本の労働組合の1つ・国鉄千葉動力車労働組合のWEBサイト内にて、千葉エリアへE233系の導入・中編成ワンマン化についての記載がされており、労働組合発表という一定の信頼がおける情報ソースからE233系投入(他路線からの転用と考えられる)の動きが初めて明らかにされることとなりました。
当初はE231系の転用計画があったものの……
小山車両センター所属のE231系と松戸車両センター所属のE231系について、中間付随車・グリーン車の機器更新を見送り、将来的な編成短縮を想定した動きが2017年早春まで行われていました。
同時期の労働組合の質疑応答資料などでは、中央東線などの複数路線についてE231系の転用を示唆する記述が見られました。
この中間付随車の機器更新を実施する方向に変更となった2017年春を前後して、E231系松戸車・小山車については配置区所で経年まで使用する方向に変更が入った可能性が高そうです。
計画変更が加わった背景としては、東日本大震災以降の車両置き換え計画の変更(遅れ)が考えられそうです。計画が数年遅れたことで、E231系は配属路線で継続使用に変更、数年先に機器更新時期を迎えるE233系の一部線区車両を転用する動きに改訂されたと考えるのが一番自然でしょうか。
また、将来的なドライバレス・ワンマン化をベースに車両計画を再検討した場合の計画修正として、今回の京浜東北線への新型車両投入が具現化してきたことも考えられます。長編成ワンマンを実施する線区として、ホームドア整備・TASC導入・他路線からの乗り入れの少なさなど、条件としては山手線同様に想定しやすい線区でした。
E233系の登場からしばらくは、E233系以降は首都圏では配属線区で1度機器更新をして使用・地方線区では2度機器更新をして使用……といった動きを前提とした動き・組合資料などの記述が散見されており、E233系の登場時を知るファンにとってはかなり意外な動きと言えるのではないでしょうか。
E233系1000番台の京浜東北線投入自体も計画変更で209系の置き換えを優先して生まれましたが、自身も時代の流れを受けて早々に淘汰される存在になってしまいました。
東海道・高崎・宇都宮線向けの処遇が鍵
いよいよ製造が本格化したE235系1000番台。
他の近郊線区への投入も意識した構成にも見えるが……?
横須賀線・総武線快速電車向けのE235系導入が発表された際、2021年度からは上野東京ライン・湘南新宿ラインなどで活躍している小山・国府津への投入計画があることが報道されていました。
この報道の後追いで鉄道趣味雑誌各社により、2023年度の投入完了を目指すとしています。こちらについてはE217系のバラけた検査タイミングに合わせて順次投入するペースとして妥当ですので、特段大きな変更はなさそうです。
E235系1000番台はE217系と同数となる基本11両51編成・付属4両46編成の合計745両の製造計画が公式発表されています。最近姿を現したE235系1000番台の製造の動きを考えると、グリーン車102両が総合車両製作所横浜事業所・それ以外は同新津事業所という体制で最後まで製造されるものと考えられます。
一方で、ここ数年は山手線側の都合により、新津事業所は1日1両・年間250両程度の製造能力を十分に生かしきれない時期が続いていました。これは、山手線の10号車がE231系4600番台の転用改造で連結することとなったためです。
本来の新津事業所は1日1両ペースでの製造が可能と言われていますので、横須賀線向けの1000番台を4年がかりで製造すると、643両の製造対象を単純に考えると年間160両程度となります。
最近では東急電鉄向け2020系の製造や、2020年度に限ってはE131系の製造などが並行するものの、2021年度以降の製造が考えられるのは2022年度までの計画となっている東急2020系程度でしょうか。
一方で、湘南色のE233系3000番台は10両33編成・5両39編成の布陣で、合計525両。グリーン車は横浜で製造するとして459両となりますが、2021年度からの3ヵ年で割ると150両。2023年度までに近郊タイプのE233系の置き換えを済ませようとすると、今度は新津の製造能力を超えてしまいます。
以上を踏まえると、報道レベルで記されたE235系の東海道・宇都宮・高崎の各線への投入は計画先送り・取りやめ・規模縮小・京浜東北線と並行製造……あたりが現実的な動きと言えそうです。
この「ベストプラクティス」の改訂は2018年5月とされており、時系列としては国府津・小山へのE235系投入報道の前となります。
旧来の計画のみを知る関係者経由で報道に載った可能性こそあるものの、時系列と報道・組合情報が全て正しいものだったと仮定した場合、E235系の小山・国府津への投入計画自体は京浜東北線への新車両投入と並行して残されている可能性も十分考えられそうです。
E233系が転用される路線はどこ?
つい最近転用が行われたばかりで置き換えが考えにくい八高線・武蔵野線を除いた209系以前の世代の車両が活躍する、E233系の転用で置き換えが進められる可能性が高い車両・路線を2020年6月時点での情報を添えて考えます。
209系幕張車 6両×26編成+4両×42編成+6両×1編成[B.B.BASE]
209系2000・2100番台自体は転入時に機器更新こそされているものの、今回の組合資料でE233系の転入が明らかになった線区です。更なる計画変更がない限りは、遠くない未来に209系の菜の花カラーは見納めとなることでしょう。
千葉エリアには2020年度にE131系が2両12編成投入されることが明らかにされており、E233系の転入数は現在の209系よりは幾らか少なくなりそうです。
このほか、総武線快速電車や京葉線からの直通列車も多く設定されており、こちらの本数増加で代替が進められる可能性もありそうです。特に京葉線への直通列車を増発する場合、在来車両となるE233系5000番台との車両共通化という大きなメリットもあります。
一方で、常磐線のように都心直通とローカル運用で形式を分けず、E235系1000番台を投入することも考えられそうでしたが、姿を現したE235系1000番台の付属編成は中編成ワンマン設備がありません。既に組合資料でE233系転入が報じられていることを考えると、E235系の運用は選択肢になさそうで、運用増加の可能性自体はあるものの、あくまで都心直通関係列車に留まりそうです。
やはりファンの間で疑問が残るのは、転入してくる車両の仕様でしょうか。過去の205系や209系、211系の大規模な車両転用を考えると、転出元の置き換えから転入先での運用開始までは数年のブランクが発生することが多いですが、京浜東北線の新造車両と千葉エリアへのE233系投入はともに2024年度から順次とされています。
過去動向と各車両センターの改造余力を持て余す(E257系転用機器更新が済めばE233系0番台・E531系の機器更新程度)ことを考えると、
上記のような大きな輸送体系再編がなかったと仮定すると、E131系新造分を差し引いて6両26編成程度・4両30〜36編成程度の投入が考えられ、E233系3000番台の初期車2編成ずつを除いたほぼ全編成が単純に転入する動きが有力でしょうか。
E235系の東海道線・高崎線・宇都宮線への投入計画が維持されていた場合は、ボックスシート・トイレなど設備が充実しているE233系3000番台が編成短縮と機器更新のみで投入されそうです。
一方で、こちらを京浜東北線向けの1000番台の大規模な編成短縮で実施する場合、56編成〜62編成程度の所要数となり、この場合も1000番台は更に20編成以上を他路線への配置が可能です。ただし、この数では他路線で目ぼしい配置先の所要数には届きません。
このほか、6両編成は1000番台・4両編成は3000番台付属編成……とすると中間電動車の余剰廃車を減らせますが、機器類の構成が大きく異なることを考えると改造メニューが複雑化しますので、あまりいい転用とは言えません。
房総の輸送体系がE131系投入で変化することもあり、このあたりの考察は2021年3月改正以降のダイヤ・車両運用が明らかになると大きなヒントとなるほか、そもそも湘南色のE235系の計画が残っているか否かは向こう半年程度で明らかになるでしょうか。
211系長野車 6両×14編成+3両×39編成
労組資料からE231系転入の具体的な記述があったこちらです。世代交代時期変更でE231系からE233系に転入形式だけが変更されたと考えるのが自然でしょうか。
当時の労組資料では短編成化が3両そのままとは限らないとしており、4両編成が投入される可能性が高そうです。
211系長野車は115系の運用をほぼそのまま置換したのみとなったほか、中央線特急・中央快速線の輸送形態の変更が控えており、こちらは輸送体系の見直しとともに車両構成についても白紙の変更が加わりそうです。
可能性は限りなく低いものの、高尾~大月・甲府間走行列車にグリーン車組み込みすると3000番台転用で余剰となるグリーン車を効果的に運用できそうです。
以前八王子支社が211系転用の際にグリーン車をキープしていた動きもあったように、中央線快速電車へのグリーン車組み込みに合わせて4両編成と8両編成の編成構成とすると、継続使用が約束されている都心側の0番台との運用共通化も見えてきます。
高尾駅以西は中編成ワンマン運転が適当な線区ですが、高尾〜大月駅間については中央線快速電車との兼ね合いで長編成ワンマンも検討材料に含まれる区間。快速列車グリーン車運用開始後の高尾駅以西の利用動向次第といったところでしょうか。
尤も、中央東線は拠点駅でも旅客扱いが出来る設備は2面3線。特急列車の待避も多く、他路線で実施されているようなダイヤの完全分断も難しい設備です。
一方の長野側に目を向けると、しなの鉄道SR1系がE129系ベースで製造されており、2両3扉車両で統一する方がスムーズです。長野県内は短編成ワンマン車としてE129系・E131系などが候補に入ってきそうで、一部新造・一部E233系といった置き換えになる可能性も十分考えられる線区で、こちらも予想が難しいですね。今後の情報発表に期待したいところです。
E127系松本車 2両×12編成
機器更新工事を施工済で当面安泰にも思えるE127系100番台ですが、こちらもE233系に余剰が生じる2024年の時点で経年ベースで26年・機器更新ベースだと8年程度となります。
走行機器類がE129系相当のものに改装こそされていますが、209系・E217系の同世代車両が既に置き換えの動きが進んでいることを考えると、211系の淘汰と関連した運用再編でひっそりと置き換えが進められる可能性が考えられます。
E233系で代替する場合は、4両×6編成~最大12編成程度でしょうか。E129系・E131系の投入であれば同数程度(運用共通化などで予備車削減程度?)でしょう。
211系高崎車 6両×7編成+4両×23編成
3+ロザ+5+5の編成で活躍していました。3両編成で転用されると思っていましたが……
高崎エリアでは、2両3扉の107系と3〜4両3扉の115系を置き換えるにあたり、211系を4両・3+3の6両で投入しています。
本来、投入された211系の1000・3000番台は製造当初から短編成化を前提とした編成構成で、改造なしで3両編成として使用することが可能となっていました。普通列車グリーン車組み込み時に、3両編成+グリーン車+5両編成、という固定編成を組んでいたのでご存知の方も多いと思います。
しかしながら、せっかくの3両編成化できる構成を無視して、あえて3+3両の6両固定編成として登場しました。115系よろしく3両編成をたくさん配置すればよかったわけで、運用整理をした理由が将来的な置き換えを見越しているからだとしたら納得です。
従来は多く設定されていた2両運用・3両運用を211系導入時に淘汰しており、211系の時点で次世代車が4両以上となることを想定済なのではないかと考えることが出来そうです。
先述の長野車が今後の輸送形態の変更を前提に車両置換に留めたのとは異なり、211系投入時点で今後の運行形態を見据えたダイヤとなっているのが対照的です。
なお、単純な数合わせとしては、長野・高崎の211系の編成総数と、さいたま車両センターのE233系1000番台は共に82編成です。特に長野エリアは所要数が大きく変化することが考えられるために同数転用とはならないかと思いますが、これが一番スッキリした動きと言えそうです。
205系小山車 4両×11編成+4両×1編成[いろは]
京葉線と埼京線の205系が転用されたグループです。
211系同様に、転用の際に制御装置の更新を見送って新系列電車化をしなかった経緯を踏まえると、早めの世代交代が計画されているのではないでしょうか。
しかし、上野東京ライン・湘南新宿ライン系統の小山車や、東北本線黒磯〜白河駅間で使用されているE531系3000番台と運用共通化を行うことが容易な路線です。特にE531系3000番台は中編成ワンマン設備を有しており、回送列車での送り込み・日中留置などが発生していることを考えると、いつ宇都宮線区間で営業運転を開始しても不思議ではありません。
車両共通化を採るかローカル運用に適した転用車が入るかは予想しづらい路線と言えそうです。
205系仙石線 4両×17編成
こちらも労組資料で名前の上がった路線です。
仙石線はその独立した路線事情を生かして、最新技術の保安装置ATACSを初採用した路線です。中編成ワンマン化も車両代替と共に進めることが出来そうです。
在来車両の転用で置き換えをする動きが自然な一方で、上記のような211系・209系といった首都圏近郊の代替を進めることを考えると、車両数の観点から適当な出物がありません。
E721系2両編成が機器更新時期に近づいていることを考えると、ワンマン化の標準設計として開発されたE131系とE721系機器更新車で部品共用が出来ればメンテナンス性も上がります。
205系相模線 4両×13編成
相模線の205系が電化記念の投入であったことを考えると、こちらも次は新車でない可能性は十分にあります。
一方で、適当な代替車両がなければワンマン化の標準車両・E131系の投入候補にも入ってきそうです。
相模線自体も運用面で独立している色合いが強く、中編成ワンマン化を実施するのに妥当な路線とも言えそうです。
置き換え時期はワンマン化位次第といったところでしょうか。
205系鶴見線 3両×9編成・南武支線 2両×3編成
こちらの2路線については、編成短縮工事が必須であり、先頭車化改造を避ける傾向から候補にないと考えられます。
将来的なメンテナンスコスト削減を目的とした架線レスの燃料電池車・FV-E991系試験車がこの路線を対象としていることを考えると、将来的な量産化まで205系を継続使用すると考えて差し支えない動静です。
FV-E991系は2両編成で1ユニット構成ですが、鶴見線の4両化は現実的ではなく、3両構成を意図した構成となっているかどうかが肝でしょうか。
115系新潟車 3両×7編成・E127系 2両×2編成
以上の2形式についてもE129系の増備で済ませるかと思っていますが、しぶとく残っています。
E129系設計自体はしなの鉄道向けに当分製造が約束されていますので、そのどこかのタイミング(E127系0番台の機器寿命)で置き換える狙いで後回しにしているのでしょうか。
弊サイトが推測する車両の動き
2020 | 2021〜2023 | 2024〜2025 | 2026〜 | |
鎌倉 横須賀線 | E235系投入 →E217系淘汰 | E235系 投入完遂(時期?) | ||
小山・国府津 UT/SSほか | E235系投入? →E233系転出 サロは再利用? | E235系投入再開? →E231系淘汰 | ||
さいたま 京浜東北線 | 新型投入開始 →E233系転出 | |||
幕張 千葉エリア | E131系投入 | →209系一部淘汰 | E233系転入 3000番台? →209系淘汰 | |
長野総 甲府・長野 | E233系転入? 1000番台? →211系淘汰? →E127系も淘汰? | |||
高崎 高崎地区 | E233系転入? 1000番台? →211系淘汰? | |||
仙石線 相模線 | 置換時期・車両不明 E233orE131? | |||
南武支線 鶴見線 | 置換時期・車両不明 FV車で架線レス? |
青字:過去計画から考えられる動き、緑字:時系列をベースとした筆者の推測
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参考文献
国鉄千葉動力車労働組合「ワンマン運転拡大 絶対反対! なぜワンマン運転に反対するのか①」
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