
秩父鉄道のSL「パレオエクスプレス」回送・補機として活躍しているデキ200形デキ201号が、6月26日より石灰石輸送の貨物列車に充当されています。
デキ200形の鉱石輸送充当はおよそ7年ぶり・現行カラーとなってからは初で、黒色の機関車が黒色の貨車を牽く、ファン待望の組み合わせがようやく実現して話題となっています。
秩父鉄道貨物輸送近況

秩父鉄道は旅客輸送とともに、石灰石が豊富な武甲山を資源とした貨物輸送の二本柱で現在まで経営が続いています。
全盛期と比較すると輸送量は減少傾向ですが、現在も影森・武州原谷(ぶしゅうはらや)の2駅から三ヶ尻駅に隣接する秩父セメント(現在の太平洋セメント)熊谷工場への石灰石輸送が実施されています。
かつては鶴見線扇町駅からJR貨物で熊谷貨物ターミナルまで・同ターミナルから三ヶ尻駅までを秩父鉄道経由で輸送する石炭輸送も実施されていましたが、2020年に廃止されています。
現在はデキ100形・デキ300形・デキ500形が主に貨物列車を、デキ200形がSL「パレオエクスプレス」の客車回送などを中心に運用されています。
運転された列車を見る

今回の列車は、秩父鉄道所有のデキ200形201号が、秩父鉄道に在籍・太平洋セメントが所有するヲキ100形・ヲキフ100形貨車20両を牽引しています。
2025年6月26日に三ヶ尻〜影森間を1.5往復したのち、27日は影森→三ヶ尻・三ヶ尻〜武州原谷間を往復で運転された模様です。いずれも上りが積車・下りが空車となっています。

秩父鉄道の貨物列車は上りの武川駅での停車時間に機関車を交換する事例も見られますが、所定の運用通りの順序で充当されています。

デキ200形は1963年に3機が製造され、「L型軸梁式」という特殊な構造の台車が採用されています。
粘着性能が高い構造ですが、軌道への負荷が大きいことや保守の煩雑さなどから後継機では見送られています。
それどころか、1990年代の貨物輸送減少に際して先輩格のデキ100形を差し置いて202号・203号が三岐鉄道に譲渡。中部国際空港の土砂輸送で供されたのち、2011年に除籍されています。
デキ201号は1996年に二代目の「パレオエクスプレス」牽引機となり、深緑の旧色・赤褐色の新色と客車にあわせた塗装とされていました。
以降、SL検査期間などを除いて原則としては貨物列車に充当しない体制となっています。
2020年にはSLに準じた黒色と警戒色を配した現在の塗装になりました。
その後は2021年に東武鉄道50090型回送の臨時貨物列車を一度牽引したものの、これまで鉱石輸送には使用されずにいました。

自慢の粘着性能を持ってなお影森の急勾配は大量の砂撒きをしつつ慎重に登っていきました。
普段は比較的平坦な線区で客車回送を担う同機、その自慢の設計が本領を発揮出来たのも7年ぶりと言えるでしょう。

今後の機関車采配は?

先述の通り、デキ200形の貨物運用は長年に渡り極力避けられており、201号の貨物列車登板は今後も続くとは考えにくいところです。
一方で、秩父鉄道では三岐鉄道とのコラボイベントとして、1機ずつ両社で塗装を入れ替える企画を実施しています。
既にデキ303号がこの塗色変更を受け、21日にお披露目イベントも開催されました。
秩父鉄道の公表(外部リンク)では、この機関車の運行区間として「秩父本線(羽生~三峰口)、三ヶ尻線(武川~三ヶ尻)」と明記しており、貨物牽引では使用されない影森〜三峰口間・東武鉄道の車両輸送貨物列車などで入線する羽生〜武川間も運行区間とされています。
秩父鉄道ではこの塗装変更に際して記念乗車券の発売も実施しており、今後は観光・趣味利用で注目されるSL「パレオエクスプレス」の回送列車牽引にこのデキ303号を使用することで、記念乗車券の販促を行う動きも想像しやすいところです。
これにより余った201号が貨物列車に使用されている……といった動きであれば今回の動きも納得のいくところです。
デキ202号・デキ203号が三岐鉄道で貨物列車牽引に従事し生涯を終えた“遺志”を、デキ201号が本業だったはずの秩父鉄道貨物列車復帰で果たすのも、意図があるかは不明ながらコラボイベントを盛り上げる粋な展開に感じました。







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