秩父鉄道では、長い歴史のあった石炭輸送廃止に伴い、貨物線の一部を廃線とすることを発表しています。
秩父鉄道の今後とともに、秩父鉄道を彩ってきた東武鉄道などの新車輸送の代替を考えます。
貨物列車自体の廃止ではない!
秩父鉄道ではJR貨物から乗り入れる形で石炭輸送を行なっていましたが、2020年3月付けで廃止となりました(実際に最後に運転されたのは2月末)。
これに関連して、貨物線である三ヶ尻(みかじり)線の三ヶ尻駅〜熊谷貨物ターミナル駅間の3.86kmが廃線となることが発表されています。
現在秩父鉄道で運行されている貨物列車は、自社線内完結の鉱石輸送・他社向け新型車両輸送のみとなっています。
このうち、大半を占める鉱石輸送の貨物列車は影森〜武州原谷〜三ヶ尻で運行されています。
秩父鉄道の発表は貨物列車運行自体が運転終了とも読み取れる記述だったために物議を醸しましたが、今回廃止となる三ヶ尻線の三ヶ尻〜熊谷貨物ターミナル間は秩父鉄道線内完結の列車が走行していない区間です。
そのため、今回の廃線で影響を受けるのはJR線との接続がなくなる、東武鉄道などの新造車両輸送のみとなります。
廃止後の甲種輸送はどうなる?
ファンから気になる点としては、東武鉄道への車両輸送が多く設定されているこの路線の廃止後の輸送方法でしょうか。
東武鉄道が貨物輸送を行なっていた2003年までは、東武鉄道の貨物列車同様に東鷲宮駅で受け渡しを行なっていましたが、廃止以降は現在の熊谷貨物ターミナル〜武川駅〜羽生駅or寄居駅といった経路が使用されています(東上線向けはそれ以前から使用)。
最近では東武鉄道の車両輸送に加え、東京メトロ日比谷線向けの13000系の輸送でもこの経路が使用されていました。
東武70000系列・東京メトロ13000系といった編成数の多い増備がひと段落することとなりますが、東武鉄道は今後も新造車両を搬入する場合の経路を確保する必要があります。
寄居駅経由での甲種輸送
JR貨物の拠点となっている高崎操車場か八王子駅から八高線を経由し、寄居駅から秩父鉄道線経由で東上線寄居駅・伊勢崎線羽生駅までの輸送が考えられます。
1987年の国鉄分割民営化の際に、JR貨物は第二種鉄道事業者(線路を借りて営業する事業者)となっていたものの、2005年3月末に廃止された経緯があります。
橋梁などの耐荷重は蒸気機関車=C58 363号機の配給輸送を時折行なっていることから現在も問題はなさそうですが、第二種鉄道事業者の手続きを再度行う必要があります。
この登録が明らかになれば、この経路を輸送ルートとすることが確実となりそうですね。
なお、これに加えて機関車の入線試験・乗務員訓練も必要になりますが、これ自体は今年だけでも2例(旧信越本線・伊東線)あるので大きな問題とはならなさそうです。
栗橋駅連絡線経由での輸送
多くのファンが注目しているのは、JR線・東武線直通特急“日光”・“きぬがわ”などが使用するために建設された、栗橋駅の連絡線の活用でしょうか。
東武鉄道では、SL大樹運行開始にあたってJR東日本からDE10 1099号機を購入したほか、SL複数体制確立にあたってDE10 1109号機を購入して注目を集めたばかり(関連記事)です。
蒸気機関車関係の列車は週末の運行となっていますので、平日・日曜夜間などであれば新車輸送を担当する分には特段支障はなさそうです。
なお、DE10形の設備ですが、車体表記からは東武鉄道譲渡にあたってJR時代の保安装置を残置しているとみられていますが、少なくとも列車無線についてはJR用のものを撤去した場所に東武鉄道用のものを設置していることが確認されています。
JR線内で使用する場合は可搬式のものを仮設するのか、それともJR対応のものに再変更するかが必要となりますので、特に譲渡されたばかりの1109号機の仕様も気になるところです。
反対に、JR貨物所有機が東武鉄道へ乗り入れる可能性も捨てきれませんが、JR貨物が既にDE10形淘汰に向けて動いていることを考えると、取り扱いが大きく異なるDD200形か、電気機関車のいずれかでしょうか。
東武型保安装置対応機を用意するほか、東武鉄道入線確認・乗務員訓練を行うこととなりますので、こちらもハードルは高そうです。
ただし、東武鉄道に内燃機関車操縦が出来る乗務員さんが複数いる以上、可能性はゼロとは言い切れません。
小田急電鉄がEF65形を運転出来る乗務員さんを確保しているように、栗橋駅〜南栗橋駅の短区間のためにJR貨物機を運転出来るようにする可能性もあります。
線路側の設備的な課題としては、現在の栗橋駅の配線は東武鉄道側が構内入れ替えに対応しているものの、両社とも機関車牽引列車の入れ替え作業を前提としたものではないため、簡単に機関車を付け替えて輸送……とは出来ません。
素人目で見る限りは用地の問題はあまりなさそうですが、年に数回しか使わない線路を新たに建設するのは少し考えにくいところです。
既存の設備でやり繰りをする場合は、大宮操車場or東鷲宮駅から東武所有DE10形2機によるプッシュプルを行う・JR東日本側の栗橋駅中線(上り列車しか入線できない)で機関車付け替えをして入れ替え作業を実施する……あたりが考えやすい動きでしょうか。
なお、この場合は東上線への輸送が複雑化するデメリットがあります。
そのままDE10形で羽生駅まで輸送し、そこから秩父鉄道本線を経由して寄居駅まで持ち込むか、一旦本線系統で性能確認試験などを行なってから後日羽生駅まで自走・東上線へ再度秩父鉄道経由の輸送をする、東上線系統の車両のみ先述の八高線回り……のいずれかが考えられますが、どれにせよ従来に比べると手間がかかることとなります。
熊谷駅連絡線の復活
同じく設備側の投資が少なそうな経路としては、2001年ごろまでJR東日本・秩父鉄道直通列車が使用していた、熊谷駅北方=熊谷〜上熊谷(・籠原)間の連絡線の復活でしょうか。
線路・架線などは維持されているものの、20年近く使用していない休止設備となっており、信号・保安装置などの機能維持がどこまでされているかは不明です。
このほか、東鷲宮駅〜東武久喜駅の連絡線復活に期待する声もありますが、東武鉄道の久喜駅改良工事で跡形なく撤去されていますので、現実的ではありません。これを生かすなら栗橋駅の配線改良の方が早くて近いです。
熊谷貨物ターミナルからの陸送
JR線と直接線路が繋がっていない路線や、線路幅が異なる路線では、トレーラーを使用した”陸送”が選択されます。
製造場所や近くの貨物ターミナルでトレーラーに載せ換え、車両基地搬入後に再度レールに載せるという輸送です。
最近ではつくばエクスプレスが同様の形態で輸送しているほか、有名どころとしては新幹線の輸送でしょうか。
東武鉄道の新造車両の多くは西日本で製造されていることを考えると、甲種輸送+陸送が選択されることとなります。
手続き・輸送費用などが複雑化するというデメリットがありますので、線路が複数箇所で繋がっている以上は少し考えにくいところでしょうか。
コメント
3.86kmが配線となることが発表されています。
熊谷駅でのJR⇔秩父鉄道の接続の復活があるのではと思っています。
現在は封鎖されていますが、形ばかりでも線路と用地は残っており、
限定的な工事でなんとかなるかなと。
JR熊谷駅→秩父鉄道上熊谷駅~石原駅→石原駅~熊谷駅~羽生駅の
ルートなら、石原駅と熊谷駅の側線を使っての機回しも可能ですし、
安全装置や無線設備の問題も、それほど複雑にはならないかなと。
または・・・栗橋搬入~性能確認試験後、
スカイツリーライン→半蔵門線→田園都市線→大井町線→目黒線→東横線→副都心線→東上線
このルートなら自走で行けないこともなさそうですが・・・?
東上所属車と本線所属車の行き来なら、メトロや東急まで巻き込む大回りルートより、今までどおりの秩父鉄道甲種輸送で十分でしょう…
東上側の整備拠点は森林公園で、成増で渡されるより、寄居の方が近いし…
現実的なのはたぶん…
寄居 での授受…
東武・秩父・八高 の並びだから、東上車は秩父の構内を行ったり来たりで転線…
本線系は寄居→羽生を甲種…
次は…
栗橋から貨物の機関車がそのまま東武へ 深夜に線路閉鎖の上で保線機械などと同様の無閉塞運転 で乗り入れ…
運転士は貨物のまま、指導運転士として東武側運転士が添乗…
東武内の適当な駅で自社DE10などの牽引車に付け替え、貨物機は無閉塞で帰る…
これなら設備投資無しでもなんとか…
熊谷の連絡線も電車対応で、機関車の付け替えなどには対応していないのでは?…
なんてあたりですかね…
栗橋経由の場合、有効長が足りるかどうか気になる所ですね
機関車も含めて6両以上の編成が収まりきれるかどうか
乗務員用のホームが6両なだけで、長さは構内図を見ればわかるが20両ぐらいある。
授受線は東北本線の下り本線へのポイントは東武とJRが立体交差しているところまで伸びてる。
JR栗橋の2番線副本線と同じぐらいありますね。その副本線には貨物が止まるときがあり、その貨物は15両ホームより5両ぐらいはみ出して旅客列車退避してる。
宇都宮線の下り前面展望動画でも見れば授受線がかなり長いことがわかると思う。
> JR栗橋の2番線副本線と同じぐらいありますね。その副本線には貨物が止まるときがあり、その貨物は15両ホームより5両ぐらいはみ出して旅客列車退避してる。
その動画。手前が授受線。授受線も20両分ぐらいあることがわかる。授受線はこの先の東鷲宮方の踏切あたりで下り本線へのポイントがある。
やはり栗橋経由でしたね。JR側だけじゃなく東武側でも10両対応しています。
誘導障害試験でメトロの13000系、東急2020系、東上の10000系10両固定編成が栗橋に入線しています。
今回500系9両で、新車通勤車両の基本10両より1両少なかったですが、まあ問題なくいけるでしょう。
甲種の標識、(◇の中に甲)が栗橋駅の上り線、ミクリ方にホーム6両分より5両先のところに建てられました。
11両分なのは栃木方にJRの機関車1両分ってことです。
次の東武新造車両は野田線用60000系の増備再開か、東上線の9000系置き換え用新車であると予想されます(支線の8000系列は10000系列や20000系列などの既存車改造で対応すると仮定した場合)。
60000系の場合、栗橋での受け渡しが一番現実的ですね。1109号機の仕様次第で、担当が貨物機か東武機かがわかるということでしょう。
9000系の置き換え用であれば、東急やメトロに対応した車両となることが予想されますので、長津田か綾瀬に搬入してしまうのもありうるかと思われますね。
個人的にですが、留置線として使用しているとはいえ、新車の受け渡しがなければ用途がない相鉄厚木線が廃線になっていないですし、新たに熊谷に連絡線が復活する動きがあるくらいなら三ケ尻線は廃線にならないと思うのです。
となると、すでに線路がつながっていてJR貨物の第2種免許がある区間で可能な地点(栗橋、綾瀬、長津田など)を探すのが現実的なのでは。
寄居駅経由での甲種輸送は思いつかなかったなぁ。寄居って線路繋がってるのでしょうか?
秩父鉄道とは直通運転もしてたしつながってるのはわかるのですが。
陸送以外だと栗橋連絡線・寄居・熊谷駅連絡線の復活の3つもあるんですねえ。
熊谷駅連絡線はレールの上に丸太が置かれてるぐらいですね。
本線は栗橋、東上線は寄居が現実的かなと。
秩父鉄道は貨物の輸送がさかんに行われていますが乗り鉄をしていると個人的に線路配線、交換駅、ワンマン運転が行われているのもかかわらず駅舎などインフラの無駄や車両数が多いのが気になりました。30分間隔で都市近郊ではないので旅客車輛も3両ではなく2車体連接車でも輸送ができるのではないでしょうか。影森~三峰口は西武高原バスも走っているので1両でも輸送できると思われますがどうお考えでしょうか。
確かに秩父鉄道は20分間隔の1時間3本ですね。日中でも。
これは東武日光線の南栗橋以北よりも多い。まあ東武は4両だが。
2両にすべきなのは賛成ですね。秩父鉄道は埼玉県から補助金を毎年貰っていますね
はじめまして。
東武の甲種輸送は東上線車両を含めて、栗橋駅での授受になるでしょう。その際、線路閉鎖をしてJR貨物の機関車が東武鉄道の乗務員によって本線上に進入して、踏切の先でDE10に牽引して南栗橋へ。JR貨物の機関車はJRに戻れば終了です。
小田急の新松田駅同様のやり方になると思います。
東上線車両は南栗橋で整備して、秩父鉄道経由で森林公園に回送して終わりです。
秩父鉄道は石炭輸送でなく
石灰とセメント輸送でないかい