2021年6月25日に正式発表された、JR西日本の電気式気動車DEC700形。
28日には量産先行車と見られるDEC700-1が川崎重工業兵庫工場を出場し、幡生操車場=下関総合車両所へ向けて甲種輸送(貨物列車としての輸送)が実施されています。
当面は各種試験が実施されるDEC700形
JR西日本では2021年6月25日、新型電気式気動車DEC700形の投入を明らかにしています。
リリース(PDF)は抽象的な表現が多いものの、将来的にキハ40系列を代替するための量産先行車または試作車としての色合いが強い車両となっています。
他社でも採用実績のある電気式気動車(エンジンで発電してモーターを駆動させる方式)とされているものの、今後の技術検証時にバッテリー(蓄電池)を搭載してハイブリッド方式とすることも可能な構成とされている点が他社形式との大きな違いです。
電気式気動車・ハイブリッド方式ともに車体重量増加の課題がありましたが、昨今の電車技術の進展による軽量化が進んだことなども後押しして、JR各社で採用されています。
参考:これまでの国内の新方式車両(旅客車のみ抜粋)
ハイブリッド:JR東キハ200系・HB-E300系・HB-E210系、JR東海HC85系、JR九州YC1系
電気式気動車:JR北H100形、JR東GV-E400系
蓄電池車:JR東EV-E301系・EV-E801系、JR九州BEC819系
参考:各社新方式車両の形式名
JR東 HB=HyBrid・EV=Electric Vehicle・GV=Generating Vehicle・FV=Fuel cell Vehicle
JR東海 HC=Hybrid Car
JR西 DEC=Diesel Electric Car
JR九州 BEC=Battery Electric Car・YC=Yasashikute Chikaramochi(優しくて力持ち)
落成したDEC700形を見る
今回落成した車両は、JR西日本(西日本旅客鉄道)のDEC700形・DEC700-1の1両です。
リリースで明らかにされているように、広島支社・下関総合車両所新山口支所所属となります。
ただし荷票にも示されているように、甲種輸送の着駅は幡生操車場となっており、一旦下関の本所にて整備を受けるものと思われます。
JR西日本が民営化後に投入した車両は、キハ120形・キハ126系列(キハ126系,キハ121系)・キハ127系列(キハ127系,キハ122系)があり、レールバス(NDC)・裾絞りなし・裾絞りありとそれぞれ設計が異なります。
今回登場したDEC700形は裾絞りなしに戻される格好となりました。
前面形状は227系に似たものとなっていますが、平面形状となっており印象が大きく異なります。ライトは輸送対策で養生されており細くなっているように見えますが、養生されていない反対側を見る限りは227系と同一品とみられます。
運転台・助手席の窓ガラスはキハ126系(キハ126系・キハ121系)に似ているものの、肩の処理が異なるものから別形状と思われます。貫通扉・種別窓については227系と同一品に見えます。
将来的には増解結を前提としているようで、転落防止幌が設置されています。輸送に際して連結器が交換されていますが、製造中の姿やリリース画像から、密着連結器・電気連結器なしとなりそうです。
側面では片開き扉2箇所の設計です。トイレのほか機器搭載スペースと見られる機器室があり、側面窓が片側3箇所となっている点が印象的です。反対側は7箇所となっています。
中国地域色やかつての広島地域色をベースとした黄色帯のほか、音階をD,E,C=レ,ミ,ドとしてあしらったイラストが側面窓周りに大きくプリントされている点が特徴的です。
床下機器が埋まっている外観から、客室部の機器スペースは他社車両でも見られる蓄電池スペースとなっている可能性が高く、この場合は将来の量産車両がハイブリッド方式を採用しなかった場合は客室スペースが少し拡大するかもしれません。
試験車ゆえに座席定員等が示されていないものの、外観からは2列の転換クロスシートが窓1枚につき1列配置されているものとみられ、トイレ前は車体表記からフリースペースと考えられますので、クロスシートについては16席程度となりそうです。機器室前にはロングシートが数席加わっていそうですが、それにしても座席数はかなり少ない構成です。
他社車両では機器室や多機能トイレなどで立ち席スペースが減少することを受けてか、オールロングシートで製造される車両が多く、単行のハイブリッド駆動車で転換クロスシート採用は異色の存在です。
同じく川崎重工業が手がけたJR北海道H100形・JR東日本GV-E400系に似ている一方で、JR西日本標準設計も取り入れられておりなかなか興味深い印象を受けます。
細部では、227系同様に大きな行き先表示器が設けられているほか、ワンマン運転時の降車・乗車の情報表示パネル・半自動押しボタンなども同一品が採用されているものと見られます。
保安装置はATS-Sの表記で、Swのみの搭載となっているようです。
製造時より屋根上の機器箱が注目されていますが、詳細は不明です。最近の車両では、本来床下にある機器を屋根上に設置している事例がいくつかあり、同様の経緯が考えられます。
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