2021年3月のダイヤ改正にて定期運用が終了した215系と、昨年よりE235系の投入により置き換えが進められているE217系。
東海道線の湯河原駅上り・下り各1線ある側線への留置と所属区への行き来が続けられており、珍しい光景となっています。
他路線でも車両代替が進んでおり、関東エリアでは複雑な車両采配が続けられています。
東海道線ライナー列車の特急化とその後
東海道線では、E257系2000番台・2500番台の転用改造・投入が完了することと併せて、これまで運行されていた東海道線の「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」を特急「湘南」に代替しました。
踊り子号でも多く運用されていた185系とともに215系が定期運用を終了し、現在は両形式とも車庫の片隅で余生を送る状態となっています。
ダイヤ改正前後の動きとしては、185系は夜のライナー列車で下ったのちに臨時回送で当日中〜翌朝に東大宮へ戻され、215系についても全編成が国府津車両センターへ戻されました。
比較的余裕のある国府津車両センターですが、夜間は従来形式の代わりにE257系の夜間停泊が設定されているほか、横須賀線のE217系の長期の疎開にも使用されていました。
215系は3月より平塚駅への電留線に疎開する動きが続いており、4月5日には新たに湯河原駅の側線へ疎開する動きとなりました。ただし、こちらは一時的なものとなっています。
両駅とも仕業検査を実施する場所ではないため、概ね5日周期で所属区である国府津車両センターへ出入りしています。
疎開=廃車前提ではない?複雑怪奇なE217系
横須賀線・総武線の世代交代では、E217系を同数のE235系1000番台に代替する動きとなっており、これ自体はダイヤ改正と直接の因果はありません。
ただし、2021年3月ダイヤ改正までに8編成(基本+付属)とされていた編成数が落成して以降も記事公開日現在で基本・付属各10編成となるなど、製造は引き続き速いペースで進められています。
置き換え対象となるE217系の動きは少し複雑で、次回検査が指定保全(かつての重要部検査)となっていた初期車の検査が進行する一方で、次回検査が装置保全・車体保全(かつての全般検査)となる後期車を中心に置き換えとなっています。
これはE235系の投入完了が検査周期1巡より少し長くなっていることが背景と推測出来ますが、疎開関連の動きは更に複雑です。
疎開対象となる編成が“廃車回送”待ち・入場前・営業車と都度状況が異なっており、広告の撤去状況や検査順序などから推測をする必要があります。
検査を待つ車両はなるべく延命・廃車順序となっている車両をギリギリまで使用……などのバランスを考慮して選定されているものとみられており、疎開対象・疎開場所と廃車順序の因果が必ずしもないことが動向が読みにくくしています。
E235系が営業運転を開始してからしばらくは東京総合車両センター田町センター(品川駅の留置線)・幕張車両センター・国府津車両センターが活用されていましたが、ダイヤ改正以降の疎開場所には新たに横須賀駅・湯河原駅の側線が活用されています。
215系の疎開同様に横須賀・湯河原では仕業検査を行う体制がなく、こちらも概ね5日程度の周期で所属区となる鎌倉車両センター(大船)を出入りしています。
E217系の廃車の動きは製造ペースと少し不釣合いな印象もあります。オリンピック・パラリンピック期間中の鹿島サッカースタジアムへの臨時列車の設定も考えられますので、総数が一時的に増やされている状態は夏ごろまで維持する狙いがあるのかもしれません。
湯河原疎開は過去にも
側線に留置するという方法は本来の使途とは少し異なるようにも思えますが、横浜支社管内では鎌倉駅と湯河原駅の側線については留置線の色合いが強くなっています。
湯河原駅については深夜帯の夜間停泊などが設定されていた時代もあり、鎌倉駅は同駅への団体臨時列車で使用された車両の留置が日常的に実施されるなど、乗務員の昇降台があり車両の一時的な停泊に適した設備を有しています。
一方で、湯河原駅の場合はJR東海管内のダイヤ乱れなどで貨物列車の待避で活用される事例もゼロではなく、それを前提とした有効長があります。この事情を考えると、余裕があれば他の場所の方が適しているようにも思えます。
しかしながら、現在は185系・209系・215系・E217系と廃車待ちとみられる車両が首都圏各地に点在しているほか、成田エクスプレスの運休により大船から近い鎌倉駅の側線も日中毎日使用する臨時ダイヤが敷かれています。
これらの事情から、近場の疎開先として湯河原駅の側線が使用されているものと考えられます。
かつてのE217系・205系横浜線といった横浜支社管内の電車が伊東線伊東駅に疎開した事例が多くありました。
営業エリア外の走行シーンはファンにとって気になるポイントです。新たな疎開先が出てくるのか、珍しい車両同士の離合など、今後の動向も気になるところです。
185系の解体は後回し……?
車両数の割に疎開の動きが少ない185系についても、尾久・川越・宇都宮への疎開のほか、長野総合車両センターへ配給輸送が一部で実施されています。
しかしながら、配給輸送・自走回送が済んでいる編成についても解体は先送りとされています。
一方で、E217系と先日新たに配給輸送が実施された209系については、長野への到着後すぐに解体作業が開始される忙しない動きが続いています。
これらの動向の違いの理由は定かではありませんが、解体作業の煩雑さの違いが考えられます。
185系は国鉄時代に製造された車両のため、解体作業にはアスベスト除去作業を別途実施する必要があります。
現状として新しい順にE217系・209系・215系・185系と首都圏各地に余剰車が点在しています。都内各地の車両基地が手狭になっていることから、効率よく解体を進めるために作業行程が少ない新しい車両の解体を優先していると考えることが出来そうです。
この動向から逆算すると、真っ先に配給輸送が実施された185系は解体を速やかに行う為というよりは、転用改造後のE257系2000番台などと同様に疎開を兼ねて長野総合車両センターへ先に入場させておいた……といった色合いでしょうか。
ダイヤ改正以降は毎週のように1編成が長野へ旅立つ流れとなっていますが、今後も配給輸送や解体は車齢の若い新系列電車から優先されるのか、動きが少ない185系や215系の今後の動向など、廃車回送関連の動きは興味が尽きません。
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