【元209系】E231系900番台試作車・MU1編成として武蔵野線で“再出発”

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209系950番台として製造され、E231系900番台に改番された後も試作車特有の雰囲気を維持してファンから人気の存在だった中央・総武線各駅停車の元ミツB901編成。

量産車同様に武蔵野線への転用改造を終え、2020年7月20日より営業運転を開始しています。

209系950番台として製造

現在のE231系900番台は、209系950番台として1998年に10両1編成が製造された試作車です。209系時代はミツ24編成・のちにミツ23編成を名乗りました。“TIMS”を中心に、次世代の一般形電車の先駆けとして様々な機能を搭載して登場しています。

209系・E217系などでは各機器類の動作状況をディスプレイに表示するとともに、マスコンからの制御指令(運転操作での力行・ブレーキ操作)を制御する“MON8形モニタ装置”が導入されていました。これの次世代系として、それ以外のドア開閉・放送・車内外の案内表示器・空調などを統合したシステムとしたのが”TIMS”と呼ばれる制御伝送装置・モニタシステムです。209系950番台で初めて営業車両として搭載された機器で、様々な試験も実施されています。

この“TIMS”は、山手線の新型車両E235系で後継となる“INTEROS”が開発されるまで、JR東日本のE231系・E233系をはじめとする非常に多くの車両に採用されています。

この編成については、車両外観として目に留まる側面窓構造・窓のスモークの色合いが209系500番台同様である点が注目されがちですが、そもそも車体の設計自体が209系500番台と同様となっています。

落成日で見れば209系950番台が先・209系500番台が後(1ヶ月差)です。

元を辿れば中央線・総武線各駅停車で使用されていた103系の故障が多かったため、E231系開発完了までの繋ぎとして製造されたのが500番台……となっています。209系950番台の設計があったからこそ急場しのぎで500番台が生まれたとも言えるでしょう。

このほか、この編成は従来の通勤型・近郊型の統合車種となる“一般型”として開発されたE231系の試作車であったため、後に近郊タイプで採用されることとなったリニアモーター式ドア・VVVFインバータ制御装置など、量産車とは異なる特徴もありました。

製造も他の試作車などで見られる、東急車輛製造・JR東日本新津車両製作所(それぞれ現在の総合車両製作所横浜・新津事業所)で5両ずつ分担となっています。

車体設計こそ前世代とはいえ、TIMS搭載の車両としての特徴はE231系量産車同様です。

中央線・総武線各駅停車としての運用についても、6扉車連結の量産車同様にB運用を中心とした活躍が続けられていました。

試作車では珍しい長寿車両に

試作車・量産先行車では、その特異な取り扱い・車齢の違いから真っ先に廃車されてしまう事例が非常に多く存在します。

209系の試作車・901系→209系900番台3編成が真っ先に置き換えられるなど、他社を含めても短命・不運な最後となる例や、運用上の制約が発生する例が目立ちます。

一方で、今回のE231系900番台については、量産車とは異なる付随車を廃車にするなど、他編成の転用以上の手間を加えながら、量産車同様に転用改造が実施されています。長めの入場期間でしっかりと機器更新を実施して安泰である一方で、2タイプ混載のVVVFインバータ制御装置などの個性が一部失われてしまうこととなりました。

今回の場合は、209系500番台とE231系0番台の合いの子的な存在で、両形式が共通運用される路線では特段支障がなかったのでしょうか。

また、そもそも武蔵野線の205系の代替をするためには、同編成を転用しても足りるかどうか……といった編成数ゆえに、転用しない選択肢は当初からなかったのかもしれません。武蔵野線転用ではE231系の編成番号付番規則が複雑でしたが、当初から残されていたMU1編成はこの900番台に残されていました。

走行音やJRマークなどの個性は薄れてしまいましたが、209系設計の車体骨格や自身の功績により受賞したローレル賞プレートなど、この特徴を維持している箇所も多いです。

武蔵野線では編成番号もトップナンバー“MU1”が用意されており、これからもちょっと珍しい存在としてファンからの注目を浴びそうです。

武蔵野線転用もまもなく完遂だが……

今回の転用対象から外された中間付随車2両はB81編成の余剰車とともに大宮総合車両センターの片隅に留め置かれていますが、こちらもいずれ配給輸送されるものと思われます。ただし、それまで余剰付随車輸送を担当していたB31編成が入場しており、輸送方法が気になるところです。

このほか、残されるは秋田総合車両センターに入場中のB82(→MU43)編成、伴走車としてしばらく活躍したB31(→MU19)編成となります。

武蔵野線の205系は記事公開日の7月20日時点で5編成が残存しており、今回のMU1編成で1編成捻出されるとあと4編成となります。

単純計算で2編成相当が不足することとなり、これをどのような方法で埋め合わせるのかが今後の注目ポイントでしょうか。

車種だけで考えれば、常磐線快速電車に転用されたマト118,119編成や、209系500番台で唯一京葉線に残存しているケヨ34編成などが思い浮かぶところです。

この数が合わない点についてはこの転用劇が始まって以来ファンの間で推測が飛び交っていますが、いよいよ答え合わせも近いのでしょうか。今後の動向にも注目していきたいですね。

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画像元ツイート紹介

今回のお写真は、フォロワーのChaser 7707様(@GammaZ_257)より営業運転初日のお写真を許可を頂いて掲載しています。

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