【211系で延命工事】長野車一部代替?余剰気味なE233系の今後

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中央線快速電車では以前よりグリーン車連結に向けた準備が進められていますが、この対象から外れた車両たちの今後についてはさまざまな憶測が飛び交っています。

これに加え、首都圏各線区では運用数減少により経年が浅い車両が余剰気味な傾向となっている一方で、車両の余裕を活用する動きはこれまで発生していません。

211系に延命工事施工が開始するなど何らかの活用が見込まれる状況で、今後はどのような動きが生じるのでしょうか。

着々と進められている未来への改造

現在JR東日本では、ワンマン化・将来のドライバレス化を目指した車両改造など多岐に渡る改造が各線区の車両で実施されています。

首都圏各線区の車両で改造が進められている一方で、コロナ禍の減収減益などを背景とした新製車投入抑制・既存計画の見直しも進むなど、複数回の計画変更が生じていることも見て取れる状態です。

2024年に入って211系を対象とした10年程度の使用を想定した延命工事が開始されているなど、600億円の設備投資抑制のなかで新製車両投入数の削減はかなり大規模で実施されることとなりそうです。

E235系:ワンマン化対応

山手線E235系ではワンマン運転対応工事が概ね編成番号順に改造が進行しており、全車新製車であるトウ04,トウ05編成に続きトウ09編成から番号通りに進行しています。

トウ01〜03とトウ06〜08の6編成が改造順には加えられておらず、今後の動向が注目されます。

E235系として新造された10両の経年が比較的進行している車両が飛ばされている状態で、量産先行車となったトウ01編成は2015年・改造対象から外された編成は2017年に新造された車両となっています。

山手線E235系は当初、50編成配置48運用の構成とされていました。コロナ禍の減便で運用数減少が進んでおり、朝のみ・夕方のみの運用を同一編成で回すと想定すると38運用と10編成程度の余剰が生じている状態です。

これらの動向から、2028年ごろに導入を目指すとされているATO・2028年から2031年ごろとされているATACS導入とそれに付帯したATO高性能化といった動きが生じるまでに何らかの転用を実施することもありうる状態です。

ただし、E235系は最新鋭の技術や検査体制で設計されている車両で、検査体制や周期が異なるE235系とE233系以前の車両が中長期で他形式と混在する状況がどこまでデメリットとなるのかが鍵となりそうです。

長期の形式混在を許容するのであれば、山手線と同じ改良が実施される計画の京浜東北線へ転用してE233系1000番台を玉突き転用・将来的な2030年代前半にINTEROS世代の車両新製先として有力かつ6編成の異形態車両を先行代替が可能な中央・総武線各駅停車への転用などが想像されます。

改造対象から外した理由が京浜東北線転用だと仮定すると機器類の改造を先行して実施していてもいいはずで、現時点では将来的な仕様統一が図れそうな中央・総武線各駅停車への転用が一番想像しやすいでしょうか。

一般型長編成の次期投入先や209系・E231系世代の代替順序は全く決まっていない (各線区で当面活用が前提となっている) ことが推測される状況から、E235系余剰車の今後も確定はしていない……あたりが現状でしょうか。

E233系:改造車と余剰車が共存

現在E233系では各線区で様々な改造が進められていますが、特に転用計画が明るみになったのちに異なる動きとなった京浜東北線・横浜線のE233系を中心に、計画変動の影響を強く受けています。

2020年以降の運用数減少はどこの線区でも生じており、E233系の余剰数は合計すると結構な数となりそうです。

0番台:グリーン車組込準備とワンマン化

中央線快速電車で使用されている0番台では、以前から進められていたグリーン車組み込み準備・普通車トイレ設置工事が進められており、2023年度までに57編成の改造が実施されました。2024年には1編成の

グリーン車の導入数は当初58編成と公表されたのち、2022年ごろには57編成とされる報道、その後は再び58編成と流動的でした。2024年度は1編成のみが対象となるなど、1編成相当が保留とされていたことを裏付ける内容となっています。

現在はこの改造が未施工とされていたT40編成が入場中で、状況からこの編成が再びグリーン車組み込み対象になったことが推測される動きです。

また並行して、青梅線・五日市線で運用されている青編成では、ホームドア対応改造とホーム検知装置追加が実施されています。

労組資料では「中央快速線」とされていますが、現在未施工となっているのはH49編成のみが該当しますので、H49編成は青編成と同等の仕様となることとなりそうです。

中央線快速電車のグリーン車は11月ごろから連結が開始されて2025年3月のダイヤ改正で営業開始となるスケジュールとなることが濃厚な動向です。

H49編成とT71編成はダイヤ改正以降に異なる用途で活用されることが確実な状況となってきました。

1000番台:ATOやATACSなど搭載が進む

京浜東北線で使用されているさいたま車両センター所属のE233系1000番台についても運用数は減少しており、82編成配置に対して75運用とされています。

かつてはE235系投入計画が報じられたものの、現在は山手線と同様にワンマン運転・ATACSを搭載する改造が進んでいます。

これに加え、当初の電動車廃車を含む転用を見越して発注済だったと推測される一部電動車機器更新工事が始まっており、現在は編成番号が大きく経年が浅めの車両を中心に改造が進められている印象です。

いずれも工事開始着手が近年の動きで、検査周期の都合がありうるためどの工事をどの編成にするのか、余剰車として転用有無があるのか・どの編成が対象から外されるのかなども読み取りにくい状態です。

新製時の予備は3編成で設定されており、改造予備を2編成を加味しても2編成はすぐに捻出可能でしょうか。仮に先述のE235系が京浜東北線に転入する場合は、2031年度までに散発的に8編成程度の捻出が進みそうです。

2000番台:ワンマン化対応

常磐線各駅停車・東京メトロ千代田線直通で使用されているE233系2000番台では、以前よりワンマン運転対応工事が長野総合車両センターにて実施されており、2023年度に19編成中17編成の工事が完了しました。

労組資料では以前より改造対象が17編成とされていることが示されており、現在の定期運用数も16運用に留まっています。

ワンマン運転開始は2024年下半期とされており、これまでJR東日本では乗務員運用数の変動があるワンマン化をダイヤ改正日から開始してきたことを考えると、単純に2025年3月改正で開始されるものとみて間違いなさそうです。

改造対象から溢れたマト2編成・マト11編成は同ダイヤ改正後は営業運転から外されることとなり、他線区への転用が濃厚な状態となっています。

地下鉄直通用の形式として車体幅・ドア位置・保安装置が異なるため、転用先の候補が少なく改造メニューが多岐に渡る点が特筆されます。

現時点でホームドア整備の動きがない京葉線、事実上は10両固定運用が組まれている青梅線、編成短縮を含む転用などが想像されます。

かつての1000番台の転用では電動車の廃車を含む計画だったことを踏まえると、都市部での転用ではどの線区でもホームドア関連・輸送力でイレギュラーな対応が求められる2000番台は、ホームドア整備が完了する2030年代を見据えると編成短縮をして中編成ワンマン車として地方線区に配置する方が無難な印象も受けます。

3000番台;ホームドア対応は?

現在はE231系近郊タイプで機器更新工事とともにホームドア対応工事が進行していますが、現時点ではE233系3000番台に波及する動きは見られません。

こちらは単純に機器更新工事と並行して実施するE231系を優先しているだけのように見えますが、E231系で進むこれらの工事がまだまだしばらく使用する前提となっており、E231系を継続使用するなら併結対応車であるE233系3000番台転用する可能性が極めて低い状態には変わりなさそうです。

E231系近郊タイプの機器更新工事完了後の事情として、今後はE233系3000番台の機器更新施工、その先には羽田空港アクセス線開業による運用数増加や経年による故障増加という将来的な要素も残されており、基本編成数編成が捻出出来そうなE233系3000番台についても車両の予備車数は現行の体制が維持されそうです。

捻出する場合は経年や編成構成が大きく異なるE-01,E-02編成が筆頭になるでしょう。

5000番台;特に動きはないが……

京葉線では2024年3月改正で批判轟々のダイヤ改正が実施される(過去記事)などの変化がありました。

現在の京葉線はE233系10両貫通編成が20本・6+4両分割編成が4本、これに加え209系500番台1本で25編成配置22運用とこちらも余剰気味な状態です。

将来的な10両長編成ワンマン化を実施するにあたり分割編成の処遇が注目されます。

固定編成で統一した方が運用面では合理的な一方で、この運用の置き換えは東金線沿線からの反発が強そうです。

通勤快速を廃止してもなお維持している辺りは中央線快速電車の直通分断はしつつ通勤種別は維持する施策と対照的です。

固定編成統一となれば、分割編成は地方線区への転用車両としてはなにかと使い勝手が良さそうな車両です。

6000番台;改造再開

横浜線のE233系6000番台では、新津で新造されたH001編成〜H015編成まではワンマン運転・ホームドア対応改造を済ませている一方で、横浜で新造されたH016編成〜H028編成は未改造という中途半端な状態となっていました。

単に予算から後回しにされていただけにも見える動向で、今後は横浜新製組に改造が波及していくものとみられます。

橋本駅以南の整備完了を以て東神奈川駅〜橋本駅間のワンマン運転が開始されそうです。

7000番台;しばらく無風?

相鉄直通用に追加投入された経年が浅い編成を含む7000番台では、これといって目立つ動きはありません。

相鉄直通大増発・快速種別を再度速達化することで走行距離が大幅増加のような天変地異でも起きない限りは現行体制を維持しそうです。

8000番台(8500番台)N36編成は未改造

南武線用のE233系は新造車である8000番台が35編成と、青梅線運用減少により転用・209系2200番台を代替した0番台改造のN36編成の36編成体制とされています。

南武線の運用数は列車番号からも読み取れ、現在は平日33運用構成とコロナ禍前ダイヤと比較すると1運用が削減されている状態(2023年3月改正で削減)です。

南武線でもこれまでワンマン運転対応改造工事が進められており、8000番台35編成は改造済み・8500番台は未施工で今後の転出が想像しやすい状態となっています。

2024年度のホームドア設置計画(外部PDF)でも南武線各駅をホームドア設置の優先順位としてかなり上位に据えていることが明らかです。

実施時期は未公表ながら既に土壌は整いつつあり、時系列的にはホームドア設置が完了する計画の2026年3月改正あたりのワンマン運転開始が想像しやすいところです。

N36編成へのこれらの機器搭載を見送っている状況は、将来の再転用時に改造を施す狙いや、機器更新工事と同時施工とする狙いなどが考えられます。

転用される場合は、元が0番台の転用であったことから0番台への復元以外は考えにくい車両です。

E231系:ホームドア改造

E231系では通勤タイプの機器更新工事は完了しており、現在は近郊タイプの機器更新工事が進められています。

通勤タイプでは中央・総武線各駅停車において、元山手線E231系500番台で使用されていたTASC(定位置停止装置)・ホームドア連携装置が活用されており、同線に残留した0番台6編成は機器更新時に対応しています。

近郊タイプの機器更新工事においても、ホームドア連携などの改造が並行して実施されています。

後述の通り211系が10年程度の延命をする前提で、E231系を代替するのはそれと同時期またはそれ以降と長期間の活躍が見込まれていそうで、少なくとも2031年度とされている首都圏のホームドア設置完了目標時期までは現行の車両配置を維持する計画となっていそうです。

211系:延命工事

211系では「当面使用に伴う延命化工事」が2024年に開始されており、高崎・長野に配置されている211系に相次いで施工が開始されています。

屋根上のベンチレーター撤去が目立つ工事内容で、2024年度は大宮総合車両センターで10編成、長野総合車両センターで9編成が実施される計画とされています。

これまで211系高崎車では4両編成・6両編成の双方が改造対象とされていましたが、長野車では3両編成で同様の改造が実施されている一方で、5月27日に6両編成のN611編成が延命工事を実施せずに出場しています。

改造メニュー・施工本数・入場時期から定期検査(全般検査・重要部検査)と同時に施工を進めていくものとみられる一方で、211系長野車6両だけが対象から外された点は特筆されます。

高崎の211系は6両(3+3両半固定)編成が7本・4両編成が14本と一般的な定期検査周期で工事完遂を見込んでいることが想像しやすい一方で、長野の211系は3両編成39本・6両編成14本に対し年間9編成と6両編成を工事対象外とするなら計算が合いそうな数となっています。

年間計画で予算や工期を決めるなかで、211系長野車6両編成だけが偶然に後回しになったとは考えにくく、211系全ては淘汰出来なくともE233系の余剰車だけで代替可能な区分は置き換える……という動きとなるのは自然な流れにも思えます。

この動きが生じたことで211系長野車6両編成には代替の目処が立って延命工事対象から外されたと捉えることも出来るようになりました。

2025年3月改正は大きな転機となりそう

以上のように、転用適齢期のE233系が各線区で余剰気味となっており、番台区分の差異を飲んで長野の211系6両固定編成のみ置き換えを先行させる……といった動きが想像しやすい状況となってきました。

コロナ禍の減車減便による余剰車を集めてひと区分の車両を代替する動きはJR西日本の京都エリアで見られた手法で、こちらも複数形態の221系・223系を寄せ集めて113系・117系を代替しています(過去記事)。

中央線では立川駅〜高尾駅がホームドア設置対象駅となっており、211系の都内運用だけでも優先的に置き換えたい事情も想像されます。

211系6両固定編成全数置換・大月駅での完全分断は2面3線で構造上困難という事情を汲むと、運用範囲としては甲府駅・韮崎駅・小淵沢駅のいずれかが西限となります。

トイレ設置・中編成ワンマン対応改造をしつつ青600編成との運用共通化といった展開でしょうか。

現実的にはまず立川駅〜豊田駅間を含む運用、豊田駅〜高尾駅を含む運用、最終的に大月駅以東は4扉車両で統一といった、車両改造の進展とともに段階的にE233系に代替する動きとなりそうです。

これまで述べてきた各形式は計画が流動的ななかで保留としつつ計画を複数回練り直した試行錯誤が見えますが、2024年度末=2025年3月改正では少なくともE233系0番台と2000番台の改造対象外とされた編成は現行の任務を解かれることが確実な状態となっています。

転用とともに機器更新工事を施工・線区差異による仕様統一……といった改造が加わることも想像でき、各車両センターの2025年度年間計画が示された労組資料で答え合わせとなりそうです。

当該車両の走行距離調整や運用離脱などの動きが先行することもあり得るなど、ダイヤ改正が近づくにつれ転用計画の断片的な情報は出てくることとなりそうですので、それまでに改造対象から外されつつも古巣で元気に走る現在の姿はしっかり目に焼き付けておきたいところです。

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コメント

  1. マトの日常人 より:

    マト2編成とマト11編成ですが、現在運用が16で19編成配置3予備ですから、この2編成を捻出して長期的に予備を1にする可能性・減便する可能性は利用者面からしても流石に低いのではと思います。さらに、労組資料で千代田線のワンマン化がまだ先、とX上で発信されている方のツイートを見ました。オタクが勝手に騒いでいるだけで、この2編成だけ引っこ抜いて転属させても正直、良いことがあまり思い付かないです。
    また、3000番台に関しては、工場や車両センター側の都合からみると、E231系を今のうちに集中改造して、E233系のホームドア対応は後から集中してやった方がやりやすそうです。さらに、京浜東北線や山手線は、今後増便の可能性もあるので、要注目だと思います。

    • にげにーな より:

      2000番台松戸車では予備車が足りなくなっても他社から車両を借りて代走させることが可能ですので、長期的に予備1編成とすることはできます。千代田線系統の場合、小田急の車両が直通運用の数に対して編成数が多くなっています。

      • マトの日常人 より:

        その理論は基本通じないですね。他の相互直通のある路線でも、代走が出来たとしても予備は各社ごとにしっかり置いています。検車区での交番検査などを兼ねた予備もあるのと、代走はあくまでもイレギュラーなので、短期的なことでない限りはこのようなことはしません。

        • しつ より:

          E233系の改造本数もそうですが、小田急4000形も在籍本数の内2本が改造対象外となっている情報が労働組合経由で出ています。

          現状のまま予備本数を減らすのではなく、千代田線全体での運用見直しで予備車を捻出するのが自然な流れじゃないかなと。

  2. ミスパレード より:

    千葉は近郊型のE231系や、E233系を入れるべきでは?(千葉エリア限定)京葉線が一番問題。通勤快速の見直し(やたら通過は廃止)、快速、特急の充実。それのさなかに255系が定期運用なくなったからね。