2024年度内に増備が完遂となりそうな横須賀線・総武線快速電車のE235系1000番台。
基本編成45本目となるF-45編成が出場し、11月19日に配給輸送が実施されています。
従来編成と搭載機器等などに変化は見られないものの、帯の色が上下反転しているエラー箇所があり、輸送も終盤となるなかの珍事でファンを盛り上げました。
2024年度内に増備完了か
横須賀線・総武線快速電車への投入が続くE235系1000番台は、現行のE217系を代替するため同数となる基本11両編成51本・付属4両編成46本が新造される計画が2018年9月に公表(JR東日本 PDF)されており、2020年7月にトップナンバーが本線上に姿を見せました(過去記事)。
その後、コロナ禍での大規模な設備投資抑制の動きはE235系にも影響があり、国土交通省の鉄道車両等生産動態統計月報の数字の変動から、2編成ずつ投入数が削減されて基本11両F編成が49本・付属4両J編成が44本の体制となることが推測される状態です。
この総数は2024年6月に公表された移動等円滑化取組計画書(JR東日本 PDF)の26編成202両とも合致しており、計画変更後の新造予定数の投入は2024年度末に完了となりそうです。
出場したF-45編成を見る
今回配給輸送が実施されたのは、鎌倉車両センターに配置されることとなるE235系1000番台 F-45編成の11両です。
注目される帯のエラー箇所は、グリーン車の隣となる6号車の5号車寄りの1箇所となっています。
素人目線では間違えてもすぐに気付きそうな印象も受ける反面、ゼロ距離で向き合って作業をしていると案外、ほかの箇所と違う向きとなっていても気付きにくいのかもしれません。
E235系1000番台はグリーン車をJ-TREC横浜・普通車をJ-TREC新津で製造しており、製造過程においては複数両数繋げた際に“端”になる=作業時に一番最初または一番最後に貼り付ける場所と想像しやすい箇所です。
また、一旦作業を完了したのちに浮き上がりなどの施工不良があり、別日に当該箇所だけやり直した際に間違えた……などの事情があったのかもしれません。
こういったお茶目なミスがある車両は昔から時々発生します。
有名な事例では、811系原色における菱形模様の色・形の間違いが複数編成で生じており、現在も一部が残存しています。
今回の配給輸送牽引機であるEF64 1031号機自身も、JRマークのサイズが本来より一回り小さいものとなっていた時代がありました。兄弟格の1032号機においても、貼り付け位置が間違っていた時代がありましたが、いずれも次回全般検査で修正するまでそのまま運用されました。
近年の事例だと、E257系2500番台のNC-34編成において、スカートの水玉模様が塗り忘れられたまま(過去記事)半年以上運用されていました。
有名なエラーでは、国鉄の「JNR」マークの上下逆転があり、最近でも381系・185系でリバイバル時に間違えて修正した事例がありました。
塗装を含めると更に派手な間違いをした事例があり、東海道線113系を横須賀線(スカ色)の塗り分け高さで塗装した事例や、レジェンド的な存在として「ぶどうをイメージした色」と「ぶどう色」(旧型車両の茶色)の伝達ミスで茶色に白帯で走行した身延線115系……など、やはりエラー個体が発生するたびファンの間で話題となるのは昔も今も変わりないようです。
現実は小説より奇なり……そこ間違える?と感じるものも多いですが、巨大な組織と巨大な車体でも人の手で作業をしているからこそ生じる笑い話と言えるでしょう。
意外と修正されず運用入りしちゃうかも?
もちろんいずれは帯の貼り直しをすべきですが、必ずしも大船到着後すぐに実施されるとは断定できません。
横須賀線・総武線快速電車では代替となるE217系の置き換えも順調に進められており、置き換え初期のように余剰車を大量に抱えている体制ではなくなっています。
特に最近、撮影会用に装飾をし予備車状態となっているE217系Y-101編成が1往復だけ営業運転に充てられる話題(過去記事)もあった通り、両形式間で併結運用が不可能という事情も踏まえると余裕は最小限となっている印象を受けます。
鉄道車両の運用計画は事業者によって多少の違いはありますが、一般に所有する各編成の検査までの日数や走行距離を勘案して1ヶ月単位などで作成し、ダイヤ乱れや車両故障等により適宜修正する……といった体制が組まれています。
鉄道事業者にとっては安全安定輸送が最重要項目であり、走行に支障がある故障などは最優先で対応する一方で、トイレなどの付帯設備の故障修繕は後回しにしがちな傾向があります。
帯の色の向きが間違っていようと一般利用者にとっては特段問題はなく、走行に支障がない以上は優先的に解決すべきものではありません。
このような事情を考えると、メーカー・納入先双方ともこの間違いには既に気づいているが、その修正をするためだけに納入日を遅らせて試運転・配給輸送、この編成の営業運転入りによるE217系廃車スケジュールまでを再度設定する煩雑さを避けてひとまず受領することとしたJR東日本側の意向がありそうです。
資本関係がない他社向けの車両新製・改造で製品に初期不良はあってはならないことですが、自社子会社ゆえにこの程度の製品エラーには柔軟な対応があっても不思議ではありません。
新潟エリアでの公式試運転を済ませ、配給輸送の時点で既に総合車両製作所からJR東日本の所有物となっているF-45編成。
営業運転までの短期間で修正対応が可能であれば貼り直しをするでしょうし、余裕がなければそのままの姿で営業運転に充てられるかもしれません。
ファン目線ではせっかくだし日光東照宮陽明門の「逆さ柱」よろしくそのままでも……とは思いますが、車両を新造した総合車両製作所としては赤っ恥でしょうから、ひっそりと修正されることとなりそうです。
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