【ダイヤ改正2023】草津,あかぎ号にE257系・全車指定に〜651系全廃?

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JR各社では2022年12月16日、2023年3月のダイヤ改正の概要を発表しています。

以前からファンの間で注目されていた、E257系へ「草津・四万」「あかぎ」表示が追加された動きの答え合わせとなる発表内容ですが、651系で運行されている「草津」「あかぎ」へE257系が投入されることが正式に示されました。

一方で、依然として車両数や運用に疑問点が多く残ります。現時点で分かること、どのような対処が想像出来るのかを考えます。

発表内容をおさらい

今回の発表内容を端的に記すと下記の通りです。

・高崎線特急にE257系を投入

・土休日「あかぎ」も“スワロー”方式で全車指定化・“スワロー”呼称が廃止

・「草津」は「草津・四万」に名称変更・(旧来方式の)全車指定化

本社リリース大宮支社リリース高崎支社リリース高崎支社リーフレット

老朽化の進む651系

JR東日本では以前より国鉄末期からJR化直後にかけて新造された車両の代替を以前から進めていますが、在来線特急では2021年3月に185系が定期運用を離脱したのを最後に、それ以降の車両代替について公式には示されていません。

特に高崎線特急「スワローあかぎ」「あかぎ」と吾妻線直通特急「草津」で使用されている651系1000番台は製造から30年が経過しており、JR東日本の現役特急車両としては最古参です。

また近年では、205系・211系世代の界磁添加励磁制御車の部品調達に苦労していることが労組資料や車両の動きから読み取れます。

今年だけでもJR東海が3月に引退させた211系0番台の廃車回送後、長野総合車両センターの社用車が西浜松まで訪れている姿が目撃されたほか、2022年改正での余剰廃車が211系1編成・651系1編成発生していました。

全列車E257系化と解釈していい……?

今回のリリースでは、本社・大宮支社・高崎支社いずれも「651系が定期運用を終了」や「全列車をE257系に代替」といった明言がなされておらず、651系の完全な定期運用終了か否かはどちらとも解釈できる内容です。

高崎支社のリーフレットで「グリーン車はありません」と記載されていること(外部PDF)・グリーン車連結時の料金が一切記されていないことから、651系がモノクラス化されて臨時便や代走で入る可能性自体は排除出来ませんが、リリース文を自然に読めば全列車代替を示唆していると考えられます。

651系は平日5運用・土休日3運用設けられており、予備を含めて6編成が配置されています。

過去記事でも記していた通り、E257系5500番台のコンセント付き車両は現時点でOM-53〜55の3編成に留まっており、単純代替は不可能です。

当サイトでも部分的な投入しか困難と記載していた通り、今回の発表で一番不可思議なポイントは投入そのものより全列車代替を示唆している点で、どのようなカラクリで実現できるのか考えます。

なお、ダイヤ改正までに残りのOM-51,52編成にコンセントを設置する可能性こそ否定は出来ないものの、それであれば高崎線で乗務員訓練が始まって稼働が増えている今からではなく、もっと早いタイミングで済ませられたはずという疑問が残ります。

6編成を3編成で代替するカラクリを考える

まず高崎支社のプレスリリースを読むと、平日朝の「あかぎ8号」の始発駅が高崎駅から本庄駅へ、平日夜の「あかぎ1号」の終着駅が本庄駅から鴻巣駅へそれぞれ短縮されていることが分かります。

これらの区間短縮は、回送することで同一編成を同時間帯の2列車に充当させて運用数を削ることが出来る構成となっています。

平日朝では、本庄5:50頃発-「あかぎ2号」-上野7:05頃着-回送-本庄8:25発-「あかぎ8号」-上野9:39着と回すことが新たに可能となり、平日朝は3編成あれば賄えることとなります。

夕方についても同様に、上野18:00発-「あかぎ1号」-鴻巣18:49着-回送-上野20:00発-「あかぎ9号」-高崎着と同一車両を使用することが新たに可能となります。

現在は金曜日に運転されている上野駅21:00発「スワローあかぎ91号」についても、上野駅18:30発 本庄行き「あかぎ3号」と同一車両で運転出来る算段です。

しかしながら、これだけでは平日夜の所要は4編成となり、現行のコンセント設置済みの3編成だけでは不足してしまいます。

本体の発表では「なお、臨時列車等は、コンセントを設置していない車両で運転する場合があります。」とされているのに対し、支社発表では「なお、コンセントを設置していない車両で運転する場合もあります。」(大宮支社)「なお、電源コンセントを設置していない車両で運転する場合があります。」(高崎支社)と表記ゆれがあります。

推測の域を出ませんが、本社としては繁忙期の臨時便を想定していて、両支社は車両故障等での定期運用の代走も含んでいそうです。ただ、いずれにせよコンセント非設置の編成を日常的に使用する前提とは考えにくい表記ですし、そもそも日常的に運用するのであれば全編成に付ける・全編成に付けないのいずれかが選択されていたはずです。

次に注目したいのが、「踊り子」「湘南」で使用されている2500番台の存在です。

現在2500番台はNC-31〜34の4編成が配置されており、平日・土休日ともに3運用・1編成が予備となっています。

また、「あかぎ」「草津・四万」は平日朝と土休日に3編成・平日夜のみ4編成必要なダイヤに対し、「湘南」「踊り子」は平日朝と土休日に3編成・平日昼以降は2編成を使用している状態です。

これらの状況を考えると、平日夜の一列車を2500番台の所定運用とすることで所要数を賄うことが出来そうです。単純に回送距離が短い運用を考えれば、上記の掛け持ち制約がなく高崎まで行かない「あかぎ7号」1本を東大宮出庫・当日中に入庫する独立運用と出来ますので、この列車が2500番台の所定運用となっていても全く不思議ではありません。

東海道・高崎の混み運用は185系時代を彷彿とさせますし、特に近年では線区跨ぎの特急車運用は避けてきた傾向が続いていましたので、かなり特異な事例となりそうです。

また、これをしてもなお、5500番台が何らかのメンテナンスで離脱する時・臨時列車運転日には使用車両が不足します。

高崎線運用のうちどこかが1泊24時間以内に東大宮センターへ戻る運用があれば、現在の2500番台の予備車を共通予備車として活用することが出来そうです。

以上のことを総合すると、「あかぎ」「草津・四万」はE257系5500番台を中心に運転するが、2500番台の固定運用や代走もあり、それも不可能な際にOM-51,52編成を使用・651系は全て代替が一番現実的でしょうか。

書き方を変えると「コンセント付き7編成配置で6運用、うち東海道特急を含む3運用が2500番台限定運用」「コンセントなし2編成が波動用として残存」とした方がわかりやすいかもしれません。こう捉えれば他の特急車と差異がない現実的な数字であり、651系を定期運用から外すという目的を達成出来ていそうです。

こういった二段構えの予備車設定といえば、特急「日光」「きぬがわ」設定当初が蘇ります。485系が所定・東武100系が代走を基本とし、それでも賄えない場合は189系“彩野”を使用するとした構成でした。運転開始当初はレアだった189系“彩野”の運用は頻度がどんどん上がっていき、後継の253系はしっかり2編成用意されました。

とはいえ、この考察がどこまで実際の計画と近いかは不明です。コスト面を排除すれば5両編成全てにコンセントを設置したり、2500番台と完全に仕様統一をする追加改造をしたりした方が良いはずなど疑問が残ります。

不足する波動輸送車はどうする?

現在E257系波動用編成は、9両編成3本・5両編成5本が配置されていましたが、ダイヤ改正後は後者が2本のみとなります。

5両編成は毎週のように運転されてきた特急「富士回遊」増発1往復と、「ホリデー快速鎌倉」の後継である特急「鎌倉」だけで2本使用しており、他方面で使用する余力がなくなります。

特に繁忙期だけでなく検査時等にも波動用編成を使用する前提の房総特急の分は必須です。

また平日についても、横浜線・南武線・御殿場線からの修学旅行臨時列車(集約臨)には9両編成が使用不可能です。

不足する波動用短編成を補うべく急遽用意されることとなったのが、最近新幹線リレー号塗装となって注目されている185系C1編成6両と考えられますが、それでもなお球数不足の印象は否めません。

一方で、9両編成については5両編成と比較すると使用頻度が低くなっています。全3編成が稼働した事例は近年では少数です。

捻出できそうなところとしては、最近では毎週末のように運転されている中央線特急「あずさ」「かいじ」「富士回遊」等の臨時便は削れそうです。今回改正で2022年3月改正以前のようなE353系12両編成での運転が多い定期列車設定とすることで、臨時便の設定を抑える方向に調整していることが考えられます。

また、ときどき必要となる房総特急運用をはじめ、5000番台でも運用できる列車は(過剰な輸送力となっても)5000番台を使用する方向にシフトしていきそうです。このほか、「踊り子」が最繁忙期でも全臨時列車使用となっていない現状から、東海道線方面を中心とした一部の臨時列車や東海道貨物線での乗務員訓練は2000番台の運用に持ち替えることも考えられます。

651系1000番台をモノクラス6両編成として波動用とする動きもあり得そうですが、運用可能範囲の広い185系・E257系と比較すると不利な印象です。

趣味的目線では交流機器復旧をして新たな活路を見出してほしいところですが、勝田と新潟からE653系を借りてくる方がはるかに無難である以上、実現可能性は低そうです。

やっぱり場繋ぎ的……?

今回のE257系の投入も運用構成や運転区間を調整してなんとか帳尻合わせたことが色濃い発表となっており、651系の老朽化・部品調達が極めて困難になってきた等の事情から行われた苦肉の策であることは想像に難くありません。

車両の動きの時系列から、最後のOM-55編成の改造が行われた年度初めの時点では未確定で、コンセント設置が始まった夏ごろまでの間にこれらのシナリオが決定したことが想像されます。

また、もしE257系を高崎線特急で中長期で使用する計画であれば、一部の「あかぎ」は9両編成の5000番台にしたり、残りの5両編成2本にもコンセントを設置したりと現実的な投資をするはずです。

上記のような区間短縮や混み運用を設定してもなお、651系を残さない以上はE257系に長い離脱がない・余裕が少ない運用構成であることには変わりありません。

次回の保全時期となる4年後までには本来の後継車が登場することも十分考えられます。それであれば改造時期が遅く、改造後の走行距離が比較的短い旧NB-10〜NB-12の3編成がコンセント設置=転用対象とされたのも納得のいくところです。

コロナ禍前の車両動向としてはE259系の転用を見越した動きであることが想像しやすい状態でした。

過去記事の通り、特急車を新造する場合は概ね1年半前には概要が示されていますので、昨今の情勢がなければ既に新造車両の型式・投入路線・本数は示されていた時期と考えられます。

過去の労組資料では同じく老朽化が指摘される房総特急の255系について、コロナ禍直前の2020年3月時点で「現在のところ、2023年までは使用する計画である」とされており、この時点では2024年3月改正で255系の取替を実施する計画だったと推察できます。当時は2023年または2024年に房総特急の全車指定席化をも示唆する内容でしたので、他路線同様に車両代替と同時に料金改定を実施することを目指していたことも読み取れます。

機器更新がされている255系がこの時期だったことを考えると、より経年車かつ界磁添加励磁制御の651系の取替は、当時の計画でも転用工事を優先されていることが想像でき、この時点で651系は2023年3月改正で置き換える計画だったのかもしれません。

車両代替計画に遅れが生じていること・代替時期が迫っている車両は他にもあることは確実で、近い将来どこかに何らかの新製特急車が入ること自体は変わっていないはずです。

羽田空港アクセス線開業後の輸送体系次第では異なる計画に刷新されているかも?という見方が出来る一方で、単純に「成田エクスプレス」E259系が大幅な運休で走行距離が伸びており、機器更新・改造時期が延びてしまったという見方も出来ます。

今回改正の内容だけでは中長期計画の全貌は読み取れませんが、“答え合わせ”が出来る日を楽しみにしたいところです。

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