JR東日本長野支社は2022年2月21日、長野駅〜茅野駅を結ぶ臨時特急「信州」ほか臨時列車の運行を発表しています。
2022年3月のダイヤ改正では中央線特急も区間減便・減車が進められており、今回の特急「信州」は余剰が生じるE353系付属編成の活用とみられます。
ファン層にも注目される発表内容
JR東日本長野支社のリリース(外部PDF)では、「春の信州を楽しむ臨時列車を運転します」として善光寺御開帳・諏訪大社の式年造営御柱大祭・穗髙神社の式年遷宮への観光に向けた臨時列車のほか、篠ノ井線塩尻駅〜西条駅間が開業から120周年を迎えることを記念した臨時列車を発表しています。
4種類の列車が発表されていますが、特にファン目線で注目される列車を抜粋します。
快速「篠ノ井線120周年号」
ファン層に一番嬉しい列車は、篠ノ井線を走行する客車列車の設定でしょうか。
EL+12系客車3両+ELのプッシュプル編成とされており、松本→西条(1号)・西条→塩尻(2号)・塩尻→長野(3号)が2022年6月25日・26日の2日間の運転です。
牽引機については明言されておらず、客車と同じく高崎車両センター所属のEF64形1001号機と1053号機が使用されると考えるのが自然ですが、長岡車両センター所属の1030,1031,1032,1051号機がやってくるかもしれません。
1001号機は以前から同所の僚機と異なり中央線への入線機会に恵まれないほか、双頭連結器を持たない1051号機についても中央線の入線頻度が低い機関車で、彼らの登板に期待したいところです。
そもそも12系客車の篠ノ井線・回送経路となる中央線の入線自体が久々となるため、多くのファンから注目される列車となりそうです。
新設の臨時特急「信州」
E353系付属編成(3両編成)を活用し、茅野駅〜長野駅間を2往復する特急列車が新設されています。運転日も多くなっています。4月23,24,29,30日、5月1,7,8,28,29日、6月4,5,11,12日が運転日とされています。
一般に新設列車は日付・本数などが限定的になりがちですが、週末の多くの日数に設定されていることから、試験的な色合いではなさそうです。
特にこの区間では、既存の臨時快速「リゾートビュー諏訪湖」(長野〜富士見)と同一の経路となっており、運転日も綺麗に重ならない(「リゾートビュー諏訪湖」は4月16,17日、5月21,22日、6月18,19日)ようにされていることから、事実上は「リゾートビュー諏訪湖」の発展形と捉えることが出来そうです。
「リゾートビュー諏訪湖」はHB-E300系“リゾートビューふるさと”の活用で近年登場したばかりの列車ですが、運転機会も増加傾向となっていました。同編成は1編成しか在籍していないため、「リゾートビュー諏訪湖」運転日には「リゾートビューふるさと」(長野〜松本〜南小谷)の設定が出来ません。
今回は7年に一度の御柱大祭という観光需要の大きい期間ですが、利用動向によっては今後も運転が期待出来そうです。
なお、リリースに記載されている長野・諏訪エリアを直通する特急列車が約6年ぶりとされていますが、これは189系で運転された「甲信エクスプレス」を指しているものとみられます。同列車は山梨県民を北陸新幹線開業で盛り上がる富山・金沢方面へのアクセスを促す列車でしたが、2015年から2016年で運転を終了しています。
今回の列車は全国各地から長野・諏訪の集客を促す列車ですので、列車の性質としてはやはり「リゾートビュー諏訪湖」寄りにも思える一方で、「信州1号」「信州4号」は「甲信エクスプレス」のような地元民の利用に期待したダイヤにも感じます。
「おはようライナー」「ホームライナー」(長野〜塩尻)が189系引退とともに廃止されて久しいですが、E353系付属編成の活用としては「信州1号」「信州4号」は将来的な定期化さえ狙える列車にも思えます。
12両「あずさ」大幅減!中央線特急の両数変化
E353系付属編成の大胆な活用となる臨時列車設定ですが、背景を紐解いて考えるには定期列車の変化を考える必要があります。
E353系の運用数は踏切事故による離脱期間を除き、基本編成が17運用(+予定臨2運用)20編成配置・付属編成が10運用11編成配置体制となっており、付属編成を使用した臨時列車は最繁忙期に予備を削って実施するのみとなっていました。
定期列車では「かいじ」は「富士回遊」併結を除き全て基本編成9両で運用されているほか、「あずさ」は9両と12両が混在していました。
・2021年3月改正時点での両数(あずさ号のみ抜粋)
12両下り | 1号,3号,5号,13号,17号,29号,33号,43号,45号,49号,53号 | 11列車 |
12両上り | 4号,6号,10号,22号,26号,34号,44号,46号,50号,54号,60号 | 11列車 |
9両下り | 9号,19号,21号,25号,37号,41号,55号 | 7列車 |
9両上り | 14号,16号,18号,30号,38号,42号,58号 | 7列車 |
・2022年3月改正後の両数(あずさ号のみ抜粋)
12両下り | 1号,3号,5号,33号,49号 | 5列車 |
12両上り | 26号,44号,50号,54号,60号 | 5列車 |
9両下り | 9号,13号,17号,21号,25号,29号,37号,41号,45号,53号,55号 | 11列車 |
9両上り | 4号,8号,12号,16号,18号,22号,30号,34号,38号,42号,46号 | 11列車 |
今回のダイヤ改正では「富士回遊」併結を除く12両編成の「あずさ」が10往復から4往復と大幅に減少している点が目立ちます。
平日の需要で気になるのは、特に朝の上り便は全て9両化されており、区間減便された列車を含めてかなりの座席数削減となっています。
また、南小谷発で土休日に需要が多い46号までもが9両化されている点は意外に思えます。既存運用通りであれば、需要に応じてあずさ46号〜53号のみ12両に増結……などを想定しているのかもしれません。
一方で、「富士回遊」の運転本数・「はちおうじ」は12両編成で運用という現行体制は踏襲されており、これらの情報を踏まえて既存の運用構成から推測すると6運用体制とみられます。従来から1編成は予備としていたことを差し引いても、4編成程度が余剰となる計算です。
参考:付属編成運用イメージ(実際の運用は現時点では不明です)
充当列車 (過去運用からの想像) | 停泊 |
●あずさ60号 | 新宿 |
富士回遊11号-富士回遊48号-はちおうじ3号 | 三鷹 |
あずさ1号▲ ●あずさ26号-あずさ33号-あずさ54号(+臨はちおうじ7号) | 三鷹 |
はちおうじ4号-富士回遊7号-富士回遊36号-はちおうじ1号-はちおうじ5号 | 三鷹 |
はちおうじ2号-あずさ5号▲ ●あずさ50号 | 幕張 |
富士回遊3号-富士回遊44号-あずさ49号▲ | 松本 |
基本的には都心側の停泊数を維持し、松本車両センターでの停泊増加を避けつつ、日中に整備も可能な構成である印象も受けます。
この前提を理解した上で今回の臨時列車を見てみると、付属編成を2本使用するダイヤ構成とされていることも納得がいくところです。
あずさ号の臨時便で整備作業が増える土休日の日中に長野総合車両センターを発着する運用を組むことで、運用減少で圧迫される松本車両センターの構内に余裕を持たせる・もしくは同センターへの疎開を実施して疎開編成の入れ替えを営業化する前提での運用なども考えられます。
単純に長野〜茅野間の直通需要を開拓するのであれば、定期または臨時列車の「あずさ」を長野発着に延伸すれば良いはずです。これまでも「風林火山号」や毎日運転の長野〜松本間の快速列車(松本〜新宿間は「あずさ」になる)を運転していた実績がある長野支社ですので、この点は理解した上で“あえて”付属編成の活用としているはずです。
今回の臨時列車の利用が上手く伸びれば、“リゾートビューふるさと”とともに中央線・篠ノ井線・大糸線での活用機会が増加するかもしれません。さらに189系時代に運行された「木曽あずさ」などもE353系の増解結構成を活かせばより柔軟な運行が可能となり、期待が膨らみます。
しなの鉄道・えちごトキめき鉄道との直通列車や、旧来の「おはようライナー」代替特急など、長野支社管内では代替車が不在のため運転が継続されなかった列車も多くあり、これらの実績に基づいて活路を見出せそうです。E353系の柔軟な編成構成を存分に活かし、幅広い活用がされることを期待して止みません。
将来的な転出も否定出来ない余剰数ですが、戻らないと言われている通勤需要とは異なり、今後の社会情勢次第では復活の芽もあります。すぐの転出は考えていないようにも思え、引き続き動向を見守りたいところです。
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