2022年3月16日夜に福島県沖を震源とする地震の影響で大きな被害を受けた東北新幹線。
18日には新潟車両センターのE653系U102編成が仙台方面へ回送されており、19日から那須塩原〜仙台間で運転される臨時快速に使用されるものとみられます。
18日始発からの復旧は出来ず
2022年3月16日夜の福島県沖を震源とする最大震度6強の地震では、東北新幹線の「やまびこ223号」が脱線する被害に遭っているほか、架線柱・橋脚などにも大きなダメージを負っています。
在来線については17日より順次運転を再開しており、当初の仙台支社発表では最後まで残された区間についても18日始発からの運転を見込んでいました。
残念ながら東北本線の復旧は18日の日中となったほか、震源からも近い常磐線広野駅〜山下駅間については18日終日の運転見合わせ・再開時期未定に変更されています。
航空会社・バス会社への要請により代替経路も順次用意が進んでいますが、17日夕方には「東北本線・常磐線で臨時列車を運転」する計画が公表されていました(17日時点の発表:外部PDF)。
過去事例が活かされた?臨時快速列車運転へ
JR東日本では18日晩、那須塩原駅〜仙台駅間で2往復の臨時列車運転が発表(外部PDF)されています。
これに先駆け、18日日中時間帯には新潟車両センター所属のE653系1000番台U102編成が上越線〜高崎線〜東北本線(宇都宮線)を回送される姿が目撃されていました。
2021年2月13日の地震の際にも同区間・同形式の臨時快速列車が運転されており、この時と全く同じ体制が採られることとなりました。今回の発表と2021年2月の地震の際の発表(外部PDF)を見比べても、図表や本文などが合致しています。
2021年2月の事例では、E653系の送り込みについて、往路は一旦東大宮操車場に回送されていました。
前年の経緯は断定こそ出来ませんが、当時は仕業検査に関連したものと推察できます。これは、昨年時点で仙台車両センターでE653系の入線実績がほぼない状態で、485系や583系といった国鉄特急形電車が消滅して以降は配置事例がなく、“仙台ひたち”運転開始後も勝田車両センターに戻る体系で運用されていたため、6日に1回(当時)の仕業検査の同型・類型車両の施工実績がないことが想像されました。
この時は結果的に4日間の運転後に1日休みを挟んで返却回送される行程となり、仙台車両センターで仕業検査を実施したものと考えられます。
今回は大宮総合車両センター東大宮センターを経由せずに直行出来たのも、この時の経験があってこそと考えられます。特に今回の地震での影響は復旧まで相当期間が見込まれており、22日以降の運転計画は別途発表とされているものの、復旧まで長期間の運行が見込まれます。1編成で長期間運転する体制となりそうで、ぶっつけ本番にならずに済んだのは不幸中の幸いでしょうか。
また、17日から実施されている「いなほ5号・10号」の延長運転についても継続されています。
2021年2月13日深夜の地震発生による増発対応については、15日から「いなほ」・「ひたち」の延長が実施されていました。
今回の地震では発生から僅か13時間後に発車する特急「いなほ」の延長対応が実施されており、こちらも前回以上に速い運転開始となっています。
また、現時点では常磐線の広野〜山下駅間の運転再開目処が立っていないためか、常磐線特急「ひたち」の定期列車運転や、2021年事例のような「ひたち」2往復の延長運転は示されていません。
当初発表では18日始発列車から東北本線・常磐線全線の運転開始を計画していたほか、17日晩時点でも常磐線に臨時列車運転の記述も見られ、運転再開が叶っていれば「ひたち」の延長も着手出来たのかもしれません。
また、前回も「いなほ」・「ひたち」の延長区間と東北本線の臨時列車については全て臨時快速列車・自由席とされており、今回の運転でも同様の対応です。公表こそしていませんが前回もグリーン車は特急区間のグリーン特急券を所持する旅客にのみ継続利用する体制とされるなど、かなり柔軟に運用されていました。
定期の秋田発着「いなほ」・仙台発着「ひたち」と差額が発生するため不思議がる声もありますが、指定席発売の変更対応の煩雑さを考えれば極めて妥当な対応です。他社でも東海道新幹線・山陽新幹線などの突発的な臨時列車は、普通車全車自由席・グリーン車は車内発売として輸送力を確保している事例も同様です。
まずは輸送力を確保することに全力を注ぐ公共交通事業者の務めを全うしている姿には胸を打たれます。復旧に向けて全力で職務にあたるJR東日本と関連事業者の皆様に心より御礼申し上げます。
参考:2021年2月の臨時快速列車ダイヤとの比較
・下り列車
2022年 | 2021年 | 2022年 | 2021年 | |
那須塩原 発 | 10:20 | 11:00 | 19:28 | 18:47 |
新白河 発 | 11:02 | 11:25 | 19:58 | 19:13 |
郡山 発 | 11:37 | 11:56 | 20:40 | 19:45 |
福島 発 | 12:13 | 12:32 | 21:23 | 20:21 |
白石 発 | 12:40 | 12:59 | 21:51 | 20:48 |
仙台 着 | 13:18 | 13:32 | 22:24 | 21:25 |
・上り列車
2022年 | 2021年 | 2022年 | 2021年 | |
仙台 発 | 6:57 | 6:58 | 14:56 | 14:36 |
白石 発 | 7:39 | 7:39 | 15:33 | 15:18 |
福島 発 | 8:07 | 8:08 | 16:05 | 15:47 |
郡山 発 | 8:45 | 8:45 | 16:55 | 16:24 |
新白河 発 | 9:15 | 9:17 | 17:36 | 16:54 |
那須塩原 着 | 9:41 | 9:42 | 18:04 | 17:19 |
参考:2021年2月のE653系U101編成の動き
13日(土) 深夜 | 地震発生 |
19日(金) | 送り込み回送 仙台→大宮→東大宮操 |
20日(土) | 送り込み回送 東大宮操→大宮→仙台 |
21日(日) 22日(月) 23日(火祝) | 仙台〜那須塩原 臨時快速 2往復/日運転 |
24日(水) | 仙台〜福島 臨時快速 6往復?設定(一部運休) |
26日(金) | 返却回送 仙台→大宮→新潟 |
仙台〜盛岡駅間でも臨時快速列車運転へ
仙台支社・盛岡支社では、仙台駅と盛岡駅を結ぶ臨時快速列車1往復の運転も計画されています(外部PDF)。記事公開時点では19日(土)〜21日(月祝)の運転で、キハ110系2両編成が使用されます。
運転本数が限定的な印象も受けますが、2021年の事例は一ノ関駅〜盛岡駅間が仮復旧し、臨時ダイヤの「やまびこ」との接続列車としての設定でした。今回は全区間を走破する列車としての設定です。
片道2時間半〜3時間を要する仙台〜盛岡間の長距離で多くの本数を確保することは、車両数・要員数を考えれば困難であることは想像に難くありません。また、往路と復路で所要時間が大きく違うのも、あらかじめ準備されたダイヤでない中で設定した事情が垣間見られます。
参考:2021年2月の臨時快速列車ダイヤとの比較
下り列車
運転年 | 2022 | 2021 | 2021 | 2021 | 2021 |
仙台 発 | 13:26 | 11:33 | 12:40 | 14:49 | 18:41 |
小牛田 発 | 14:01 | 12:19 | 13:13 | 15:24 | 19:29 |
石越 発 | 14:21 | 12:48 | 13:34 | 15:46 | 19:54 |
一ノ関着 発 | 14:40 | 13:04 = | 13:52 = | 16:02 = | 20:11 20:20 |
水沢 発 | 14:59 | 20:39 | |||
北上 発 | 15:12 | 20:50 | |||
花巻 発 | 15:24 | 21:10 | |||
盛岡 着 | 15:51 | 21:39 |
上り列車
運転年 | 2022 | 2021 | 2021 | 2021 | 2021 | 2021 | 2021 | 2021 |
盛岡 発 | 7:09 | 6:25 | ||||||
花巻 発 | 7:42 | 6:54 | ||||||
北上 発 | 7:55 | 7:10 | ||||||
水沢 発 | 8:10 | 7:25 | ||||||
一ノ関 着or発 | 8:35 | 7:45 = | 10:00 | 11:14 | 13:23 | 16:08 | 19:15 | 21:50 |
石越 発 | 8:53 | 10:26 | 11:31 | 13:41 | 16:30 | 19:31 | 22:05 | |
小牛田 発 | 9:25 | 10:48 | 11:52 | 14:03 | 17:00 | 20:04 | 22:26 | |
仙台 着 | 10:05 | 11:27 | 12:31 | 14:35 | 17:39 | 20:48 | 23:01 |
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