【謎の欠番】E7系1編成“製造不良”で繰り下げ〜依然として姿を見せないF28編成

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JR東日本ではE7系新幹線の増備が続けられており、上越新幹線のE2系・E4系の置き換えとともに長野新幹線車両センターの水没編成の代替分の投入が進められています。

これまで概ね番号順に近い投入となっていましたが、最近ではF30番台とF40番台が不規則に出場しているほか、依然としてF28編成が欠番状態です。E7系の投入状況を整理しつつ、残されたF28編成の今後を考えます。

上越新幹線の世代交代

上越新幹線ではE4系“Max”とE2系を使用して運行されていましたが、2018年度より北陸新幹線用のE7系を上越新幹線にも投入することで、現行形式の置き換えを進めていました。

2017年4月の発表(外部PDF)では、2018年度から2020年度までに11編成を投入してE4系を2020年度までに置き換えることが示されています。

2019年3月には初めて定期運用が設定され、これを記念して“朱鷺色”帯の装飾をしたF21,F22編成・通常カラーのF20編成の3編成体制で運行開始しました。

また、上越新幹線では最高時速を240km/hとされていた大宮〜新潟間について、275km/hへの向上をすべく改良工事が行われていました(外部PDF)。

この際、2022年度末にはE7系の投入完了により、上越・北陸新幹線の使用車両が全てE7系・W7系による運用に統一されることが示されています。E2系代替分のE7系の投入本数自体はこの時点で示されていません。

長野新幹線車両センターの水没

上越新幹線の世代交代とJR東日本を大きく苦しめたのは、2019年の台風被害です。

千曲川の氾濫により、JR東日本所有のE7系8編成・JR西日本所有のW7系2編成が床下機器と車体の下部が冠水し、運用不能となりました。その後、これらの10編成は全車両が廃車とされることが発表されています。

当時は長野新幹線車両センターにE7系19編成・白山総合車両所にW7系11編成が配置されていましたが、30編成中10編成が全損・さらに長野の新幹線の拠点が使用できなくなった影響はあまりにも大きいものとなりました。

2019年度後半は大規模な減便での運行となったものの、少しずつ運転本数を増加させ、2019年3月改正で定期列車については概ね運行出来る体制にまで持ち直しました。

具体的には、2019年度に新潟新幹線車両センターへ投入された上越新幹線向けのF23〜F27編成の5編成を北陸新幹線で運用し、不足分を補いました。このほか、同センターに2018年度に配置されたF20編成についても、ほとんど北陸新幹線運用とされています。その後、F23〜F27編成については2021年1月1日付けで正式に長野へ転属したことが後に明らかになっています。

2020年度はF28編成を飛ばし、F29編成からF31編成の3本が新潟へ配置されています。

2021年度にはF32編成のほか、番号・車両番号を大きく空けたF40編成からの増備が再開されました。

これまでF40〜42編成が長野へ・F32編成とF43編成が新潟に配置されており、車号も配置もまちまちで今後の推測が難しい状態です。

複雑化する増備の動き

2018年度投入分

編成名製造配置備考
F20川崎重工業新潟
F21日立製作所新潟2019〜2021 朱鷺色
F22川崎重工業新潟2019〜2021 朱鷺色

2019年3月改正でデビューした3編成は、とき号4往復・たにがわ号1往復で3編成配置・2運用とされました。装飾がされたF21,F22編成はE7系投入のメリットとなる運用共通化をせず、1年間は上越新幹線のみで運用とされました。

2019年度投入分

編成名製造配置備考
F23日立製作所新潟2021 新潟→長野転属
F24日立製作所新潟2021 新潟→長野転属
F25川崎重工業新潟2021 新潟→長野転属
F26日立製作所新潟2021 新潟→長野転属
F27日立製作所新潟2021 新潟→長野転属

2019年度の増備車両は、全て北陸新幹線の運用に回されました。このため、2020年3月改正では上越新幹線の運行本数は維持されました。

このお詫びの意図かどうかは不明ですが、上越新幹線の“朱鷺色”ラッピング2編成は当初発表から1年延長した2年間となり、この両編成が上越新幹線の運用を中心とし、F20編成も北陸新幹線へ応援。

一方で長野車の日常的な検査も新潟と金沢で受け持ったため、長野車の上越新幹線運用も実施されるなど車両の動きは活発化しました。

車両新造については短期間で完結するものではないため、E4系の延命が実施されています。

2020年度投入分

編成名製造配置備考
F29川崎重工業新潟
F30川崎重工業新潟
F31日立製作所新潟

本来であれば2020年度までに11編成を投入し、この時点でE2系・E7系の体制となる予定でした。

労組資料では2020年度に5編成の投入・移動等円滑化取組計画書(外部PDF)では4編成の投入が示されていましたが、実際に納入された編成は3編成の留まりました。

特にF28編成が飛ばされていることから、何らかの事情でF28編成の受領が先送りされたことが伺えます。

2021年度投入分(記事公開日まで)

編成名製造配置備考
F32川崎重工業新潟
F40日立製作所長野
F41日立製作所長野
F42川崎重工業長野
F43総合車両製作所新潟

そして情報が錯綜する2021年度ですが、労組資料では10編成の投入とされているものの、最近発表された移動等円滑化取組計画書では11編成の投入(外部PDF)とされています。

2020年度の計画数と実際の落成数の変動があったことから、これに関連した動きと考えることができそうです。

編成番号についても、従来車両の続番号となるF32編成と、大きく飛んだF40編成以降が登場しています。現在空いている番号は28・33〜39の8編成分あり、新造予定数から少なくとも2021年度にはこの穴が埋まることはありません

F28編成は“製造不良”で繰り下げ

鉄道車両製造では、基本的に発注した時点で車号が決まっている事例が多く、少なくとも既存形式の増備であれば車号まで決まっていることが一般的です。

そのため、複数メーカーに発注された車両では、製造側の都合で車両番号順と少し異なる落成順序となっているものが存在します。東武8000系で最初に落成したのが8106Fだった事例が有名どころでしょうか。

一連の計画変更が発生する前の2017年4月の発表時点で、2018年度〜2020年度に11編成の投入が示されており、これらが番台区分も行われずに落成した状況を見ると、F20〜F31編成はこの時点で発注済だった車両と考えるのが自然です。

そして、今回のF28編成についてを示している記述が移動等円滑化取組報告書(PDF)に示されています。この書類は、前年度に示した計画の遂行状況を記しているものです。

前年度計画の実施状況について、「※製造不良により1編成(12両)を2021年度に繰り下げ」という記述が入っており、これまで発表されていた計画を総合すると、2020年度までに納入されるはずのE4系淘汰分11編成(F20-F31)のうち、F28編成が製造不良により計画が遅れていることが断定できる状態です。

この「製造不良」が示している内容こそ定かではありませんが、総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所では2020年末時点で完成形に近い通電試験状態のE7系が複数回目撃されていました。

これが仮に2021年7月に輸送されたF43編成だとしても期間が開き過ぎており、総車で久々に作った車両で大きめの不具合等があったことが推察できます(これについては推測となるため、F28編成が出てきたタイミングで答え合わせとなりそうです)。

納車が大幅に遅れる例は珍しい?

何らかの事情でF28編成の納車が飛ばされていることは明らかですが、具体的には不明です。ただし、製造側の都合で納車時期が遅れる事例はこれまでも時折発生しています。

有名な事例では、683系のトップナンバーでは日立製作所の構内で事故があり、クロ683-1が作り直されています。この際は残りの8両は予定通り出場させ、しばらく8両で試運転が実施されました。

このほか、東急車輛製造(現在の総合車両製作所横浜事業所)ではサロE231-1005が納車直前の構内事故により製造し直しとなった事例が知られています。こちらは敷地の塀を突き破って道路上に出る大規模なもので、新聞報道もありました。

最近の事例では京急1625編成を川崎重工業で製造中、作業中の事故により1625号の構体が廃棄・作り直しとなったものがあります。こちらも甲種輸送が直前でキャンセルされたほか、製造中の1631編成・1637編成が先に納入されました。

いずれも車両メーカーから鉄道事業者への受け渡し前の事象のため、メーカー側の負担(保険等もありそうですが)で作り直しをする流れが基本と見られます。

余談ですが、逆に事業者が受領後に損傷したことによりデビューが後回しにされた事例も存在します。東武鉄道では東上線地上運用向け50000型51003Fを新製。久々に通常用途の東上線向け車両が導入されて沿線ファンから期待されたものの、森林公園検修区での事故により後から納入した編成が先のデビューとなりました。

明るみになりやすいのはこれらの素人でも分かる事故での損傷ですが、今回のF28編成については“製造不良”という文面を素直に受け取れば、製造過程で基準を満たせなかった箇所があったことが考えやすいところです。車体構体などの手直しに長い期間を要する箇所であれば、事故と同様に数ヶ月〜半年程度の期間が開いても不思議ではありません。

それ以外も番号が飛んでいる理由

最終的な陣容が明らかになればある程度の法則性が見えてきそうですが、新造車と一部部品が流用された代替新造分で外観上は明確な違いは見受けられません。

単純に考えれば、番号が大きい8編成が後から発注された代替新造分・それ以外が先に発注された新造分となることが最も自然な流れです。

発表の時系列を追えば、F20〜F31編成が2018〜2020年度までとして発注されたE4系と一部のE2系代替分・F32〜F39編成が2021〜22年度分として発注した残りのE2系代替分、F40〜F47編成が水没代替で追加発注された編成だとすると、概ね辻褄が合います

(8/27:代替新造を10編成と記していましたが、JR東日本所有の水没車両は8編成ですので数を修正しました)

2021年度以降ははもともと発注していたF32編成からの新造分と、水没の代替で(一部部品の流用と思われる)F40編成からの追加発注分が並行して投入されることとなりそうです。

ただし、2019年度新造分が新潟から長野に転属したため、5編成程度は後から発注した車両が新潟にも配置されるなど、納入時期と車両需給により最終的な配置はまちまちとなりそうです。

E7系・W7系では既に輸送中の軽微な損傷がファンに目撃されている物だけでも2回・そして10編成の大規模廃車などもあり、不運が続く印象が拭えません。再び“輝ける”投入完了まで、引き続き増備過程を見守りたいと思います。

画像投稿者紹介

記事内掲載写真は、鉄道ファンの待合室公式ラインアカウントにてk様(Instagram)より投稿いただきました。

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