
JR東日本・高崎車両センターに所属していて、長らくの間イベント列車の牽引を歴任してきたEF60 19号機が秋田総合車両センターに配給輸送されました。
JR東日本では近年、機関車牽引列車の廃止を掲げていることから、廃車の可能性が高くなっています。
ロクマルの過去を振り返るとともに、19号機が生き延びた理由を考えます。
★9/25加筆 その後の商業誌の取材により、秋田総合車両センター到着後すぐに除籍されていることが判明しています。現時点では解体等は行われていません。
国鉄型電気機関車の基礎を築いたロクマル
EF60形は平坦区の貨物列車牽引用に1960年~1964年に開発された機関車です。
東海道・山陽本線の重量貨物列車は、EH10形が牽引していたものの、これをモーター出力の向上によって6軸の機関車としました。
製造途中でEF58形のブルートレイン牽引列車を置き換える目的で旅客用の500番台が製造されました。
しかし、設計時点で平坦路線の貨物列車牽引を目的としていたため、高速性能に優れたEF65形の500番台P型が登場すると、置き換えられる形ですぐに撤退して貨物列車牽引にあたっています。
国鉄末期には、山陽本線瀬野駅=八本松駅間の「セノハチ越え」の後部補機としてEF61形200番台と、その後継となるEF67 0番台がこのEF60形の改造で登場しています。
19号機が長生きした理由は?
19号機は、貨物列車牽引ののちに1981年に高崎第二機関区に配置されました。
この高崎第二機関区は、旅客用列車牽引の機関区でした。
国鉄分割民営化直前の1986年に、ジョイフルトレイン「やすらぎ」の専用塗装機に抜擢されたため、EF60形の同僚たちが廃車・または国鉄事業清算団送りとなったなか、JR東日本に継承されてイベント列車の牽引を歴任していました。
1988年にはアメリカン・エクスプレス塗装となり、日本各地で展示をされています。
この際には海を渡り、沖縄県でも展示されて大きく話題になりました。
また、JR東日本ではEF55 1、EF58 61,89といった手動進段の機関車が継承されていたため、それらを操縦できる機関士に困ることがなかったことも大きいでしょう。
2007年には国鉄色復元、更に2010年・2011年にEF60初期車の特徴的だったライトを「ブタ鼻」シールドビームから、原形の白熱バルブ式1灯に復元したことで、多くのファンに愛されるようになりました。

その後もSLのわき役としての活躍ながら、客車列車の牽引の他にも、SLの検査入出場検査の配給輸送や高崎地区の工事用臨時列車といった裏方的な運用まで、幅広い列車の牽引にあたることとなりました。
今回の入場配給前の最後のELぐんま よこかわ号の牽引後には職員が撮影会をしているシーンが目撃されています。
登場時の茶釜への復元・または白Hゴムへの復元を検査入場とともにするという可能性も少なからずあるものの、JR東日本の近年の動向を踏まえると廃車の可能性が高いでしょう。
なお、最近の復元では、EF64 37が”Please look forward to the figure when come back!“:戻ってくるときの姿に期待していてください、EF64 1001も”I will return soon.“:私はすぐに戻ってきます、とそれぞれの回送票にヒントを記して入場していましたが、今回は特に記されていません。
また、区名札も外されていますが、これは以前から検査入場時にも時折されていました。
旧型電気機関車と、国鉄電気機関車の完成形と言えるEF65形の橋渡しとなったEF60。
長年の活躍で多くの鉄道ファンを魅了した機関車は静かに秋田へ向かいました。
19号機の保存はある?静態保存機一覧
19号機は最後まで生き延びた歴史の生き証人ですが、静態保存機が多数あることから、特別19号機に歴史的価値があるかと言えば微妙なところです。
強いて言うとすれば、EF60形の残存機では唯一となる2次車で、これは1次車が保存されていないために最若番となります。
19号機が静態保存される可能性はあまり高くないものの、解体処分となるとやはり残念に感じます。
そして、静態保存機は既に2機、カットボディも4機存在しますので、19号機を含めたロクマルの現役時代を偲んで見学をするのも一興ですね。
フルボディ保存
・123号機=栃木県足利市(JR足利駅前)
・501号機=群馬県安中市(横川駅周辺) 碓氷峠鉄道文化むら
カットボディ保存
・47号機=埼玉県さいたま市 大宮総合車両センター
・86号機=群馬県前橋市 前橋赤十字病院職員用駐車場(個人所有)
・116号機=埼玉県川口市 個人所有(外から見える)
・128号機=千葉県富津市 個人所有(詳細不明)
備考:黄色マーカーは常時見学可能、赤マーカーはイベント時に見学可能、青マーカーは個人所有または見学不可能
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