近畿日本鉄道は3月16日に鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」の運行を開始しました。
これは3月13日に終了した鮮魚専用列車の代替です。この記事では「伊勢志摩お魚図鑑」のルポを中心に、気になる折り返し列車についてもお伝えします。
鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」について
鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」は3月16日に運行を開始した車両です。近鉄は伊勢から大阪市内へ新鮮な魚介類を輸送する行商人のために鮮魚列車(行商専用列車)を運行してきました。しかし乗客減の影響で、3月13日を持って運行を終了しました。
鮮魚列車の代わりにデビューしたのが鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」です。この車両は平日朝、松阪6時44分発大阪上本町行き列車の最後部に連結されます。行商人専用車両という性格から一般利用者は乗車できません。
「伊勢志摩お魚図鑑」は2両編成の通勤型車両のうち1両の車体全体にラッピングを施したもの。伊勢志摩を代表する伊勢海老やイワシ、マンボウなど43種類が描かれています。種車は2410系モ2423です。2410系は1968年にデビューした大阪線向けに大出力モーターを装備した車両で、名古屋線系列の1810系に類似しています。この車両には筒状の送風機、ラインデリアが装備されました。一部の編成は廃車や改造されましたが、現在でも大阪線を中心に活躍を続けています。「伊勢志摩お魚図鑑」になっても、ベテラン車両が担当することには変わりがないようです。
「伊勢志摩お魚図鑑」には乗車できる?
「伊勢志摩お魚図鑑」の活躍ぶりを見るために大阪上本町駅に行きました。「伊勢志摩お魚図鑑」を連結した「快速急行」は大阪上本町駅3番線に8時46分に到着しました。筆者が訪れた日の編成は大阪上本町方から2400系2両+2400系2両+5200系4両+2400系2両(うち1両が「伊勢志摩お魚図鑑」)でした。
降車ホームには台車を持った男性が列車の到着を待っていました。到着すると、1人の行商人が持ってきた複数の発泡スチロールのケースを台車に移していました。車内はロングシートですが、荷物を入れるための専用ケースが用意されています。
「伊勢志摩お魚図鑑」を連結した列車は折り返し大阪上本町8時54分発松阪行き「快速急行」として運行されます。近鉄の公式サイトを見ると、伊勢方面へ向かう鮮魚運搬車両の設定はありません。それでは一般客も「伊勢志摩お魚図鑑」に乗車できるのでしょうか。答えは「乗車不可」です。行商人が降車した後「伊勢志摩お魚図鑑」の各ドアには乗車できないようにロープが張られました。一般客は大阪上本町方後ろ9両を利用することになります。
駅の案内表示機には「1番前の車両は貸切車両のためご乗車できません」と流れていました。事実上、下り方面の「伊勢志摩お魚図鑑」は締切状態で運行されます。まるで、特別車だけ締め切って運行する名古屋鉄道みたいですね。
思ったよりもイラストはくっきり
次に側面を見ていきましょう。先述したとおり、車体には伊勢志摩を代表する43種類の魚介類が描かれています。想像以上にそれぞれの魚のイラストは大きくインパクトがあります。
扉にもこのように多くの魚介類が描かれています。サバやボラは”大群”として大型の魚と共に描かれていました。外装のベースは白色なので、車体の美しさを保つのが難しいように感じます。運用は平日1日1往復なので、それほど車体は汚れないのでしょうか。
「伊勢志摩お魚図鑑」は一般列車と区別するためか、ドアや窓が半透明に近い状態となっています。車内は他の車両と同じ4扉ロングシートです。
先代の鮮魚列車と同じく側面の種別行先表示機は埋められていました。これも平日1本なので支障はないのでしょう。
「伊勢志摩お魚図鑑」に乗車するチャンスはあるのか?
普段の運用では一般利用できない「伊勢志摩お魚図鑑」。一般客が利用できるチャンスはあるのでしょうか。近鉄のプレスリリースでは同車は近鉄並びにクラブツーリズム㈱で企画するツアーで使用する旨が書かれています。また、伊勢志摩の人々と新鮮な海の幸を「伊勢志摩お魚図鑑」で直送・販売する「市場列車」の企画も持ち上がっているようです。上記の企画から近鉄では「伊勢志摩お魚図鑑」の特性を活かした貸切列車を運行することが予想されます。
また世情の影響により、3月22日に開催予定だった「伊勢志摩お魚図鑑」登場 新旧鮮魚車両撮影会ツアーは延期となりました。今後の予定等は別途案内するとのことです。
半世紀以上にわたり運行されてきた鮮魚列車のバトンを受け継いだ「伊勢志摩お魚図鑑」。日々の輸送だけでなく、観光・貸切列車としての活躍も大いに期待したいところです。
コメント