
2024年10月29日、早朝に上野駅始終着となる高崎・宇都宮・常磐線が地平ホーム発着へ変更されています。
工事のための発着番線変更で、滅多に見られない緑色の常磐線快速電車が地平ホーム発着となる珍しい対応です。
工事のための発着変更

上野駅は高架ホームと地平ホーム(旅客案内では“高いホーム”・“低いホーム”)の2層構造となっており、高架ホームは上野東京ラインが開業した現在も多くの列車が行き交う反面、かつては東北・上越・信越の各特急や夜行列車の拠点となっていた地平ホームは朝夕ラッシュの始終着列車などに限定され閑散とした空気が漂う場所となっています。
在来線優等列車が行き交っていた頃の名残で現在も尾久までが複々線化されており、上野東京ライン開業後は東海道線上り=北行と宇都宮・高崎線の上り=南行の上野止まり列車を同時に捌くために活用されています。
客車用のホーム高さとなっている13番線は夕方1列車のみが錆び取り目的であろう設定で使用されるのみとなっているほか、上野東京ライン開業時点では複数本あった常磐線特急の上野駅始終着列車も平日1往復のみに減少、日中に毎時1本ずつ高崎線・宇都宮線の上野駅始終着列車があったもののコロナ禍で淘汰されるなど年々寂しさが増している印象です。
一方で、上野東京ラインとしての整備で品川・田町車両センター付近は集中的に設備改良が実施されたものの、上野駅北側は一部配線が追加されたものの基本形は現行設備を踏襲しており、現在も常磐線直通列車で平面交差支障が発生するほか、保守コストが高い複雑な分岐器が残存しているなどの課題が残されています。
上野駅では駅の掲示により10月28日・10月31日・11月4日・11月7日の夜間に「故障に強い分岐器への交換工事」を行うとして、これに関連して一部列車の発着番線変更がアナウンスされていました。
この対応では、工事日程の翌早朝に上野駅を発着する列車について、地平ホーム発着へ変更する体制が組まれています。
同様の発着番線変更は10月29日のほか、11月1日(金)・5日(火)・8日(金)にも実施予定とされています。
なお、この変更は発着番線のみのため告知は駅掲示など限定的で、時刻表への反映は見られません。
常磐線の発着変更
上り | 下り列番 | 上野駅発 | 行き先 | 発着番線 |
上野駅停泊 臨時回送 松戸?→上野 | 471H | 4:33 | 取手 | 9番線→16番線 |
430H 松戸→上野4:56 | 531H | 5:03 | 取手 | 12番線→16番線 |
秋葉原停泊 321M 秋葉原→上野 臨時回送 尾久?→上野 | 321M | 5:11 | 勝田 | 9番線→17番線 |
450H 取手→上野5:24 | 551H | 5:31 | 取手 | 11番線→16番線 |
432H 取手→上野5:43 | 533H | 5:51 | 取手 | 12番線→16番線 |
尾久停泊 回325M 尾久→上野 | 325M | 6:04 | 水戸 | 9番線→17番線 |
宇都宮線・高崎線の発着変更
上り | 下り列番 | 上野駅発 | 行き先 | 発着番線 |
上野停泊 停泊変更? | 521M | 5:10 | 宇都宮 | 5番線→14番線 |
上野停泊 停泊変更? | 821M | 5:13 | 高崎 | 6番線→15番線 |
尾久停泊 回523M 尾久→上野 | 523M | 5:32 | 宇都宮 | 6番線→14番線 |
尾久停泊 回823M 尾久→上野 | 823M | 5:43 | 高崎 | 7番線→15番線 |
尾久停泊 回525M 尾久→上野 | 525M | 5:46 | 宇都宮 | 5番線→14番線 |
常磐線では上野駅6:04発の325Mが地平ホームに変更されているのに対し、高崎線では上野駅6:00発の1820E(小田原駅始発高崎行き=上野東京ライン北行き始発)は通常通り運行・高架ホーム発着を維持しています。
このことから、5時台を上野駅北側の工事作業時間として確保しつつ、本来の輸送体系を維持する工夫がされていることが読み取れます。

現地に赴いてみると、やはり作業は上野駅北側で実施されていました。この辺りは分岐器が狭い用地内に並んでおり、保守作業が煩雑なのも想像に難くない場所です。
地平ホームを発着する列車を見る

今回発着番線の変更対象となったのは、上野駅を6時ごろまでに発着する宇都宮線・高崎線・常磐線の11往復の列車です。
このうち一部は上野駅や同駅南方の秋葉原駅に隣接する電留線停泊とされているため、停泊地変更に伴う臨時回送が設定されています。

発着番線変更の1番列車は4時33分発の快速取手行き471H電車です。
常磐線快速電車は1970年に上野駅11,12番線(第六ホーム)が増築されて以降、この第六ホーム発着が原則となり、9,10番線は中距離電車(普通列車)・特急や急行が地平ホームといった棲み分けがされてきました。
回送列車として常磐線各駅停車・快速電車の通勤タイプの車両が上野駅を出入りする事例こそ稀にあれどいずれも“列車”扱いで設定されており、地平ホームに“電車”がやってきた事例は耳にしません。
ご存知の方がいらっしゃいましたらぜひコメント欄でご教示いただければ幸いです。
特に16,17番線に限ると、特急専用ホームの時代が長く、2015年までは中間改札が設けられておりこのような運用は難しい構造でした。
上野東京ライン開業後の「ひたち」「ときわ」は朝夕の一部列車や繁忙期の臨時列車のみとなったため、従来から高崎線・宇都宮線が使用してきた13〜15番線に加え16,17番線にも定期・臨時列車などの出入りが増えてきましたが、輸送障害時でも常磐線系統が地平ホーム始発とされるのは青い中距離電車の方が上野東京ラインの直通中止でたまに発生する程度です。
今回の取り扱いは遡れば遡るほど“ありそうでなかった”光景です。

常磐線普通列車の始発321Mは通常、秋葉原の電留線に停泊していた車両を使用していますが、こちらも臨時回送が仕立てられています。
偶然にも1本目にやってきたE531系は“赤電”リバイバルのK423編成。臨時回送の列車番号を掲げ、作業現場付近を通過していきました。

E531系を使用する普通列車は415系を使用していた頃から現代まで上野駅行き地平ホーム着の定期列車が設定されてきた一方で、上野駅地平ホーム始発列車は特急以外設定しない傾向が続いていました。
赤電カラーが現役だった時代には上野駅地平ホーム発の常磐線普通列車が残存していたようですので、品川駅を行き来するよりこちらの方が自然な光景なのかもしれません。
なお、地平ホームとE531系の組み合わせは定期列車で358M(上野駅16番線11:02着)〜回358M(尾久入庫)・2394M(上野駅16番線平日16:58着・土休17:01着)〜回2394M(尾久入庫)・454M(上野駅17番線22:56着)〜回454M(尾久入庫)の3往復が設定されているので、地平ホーム止まりの列車の乗車・撮影は意外と難しくありません。
逆に、地平ホーム始発の前面展望や「あゝ上野駅」発車メロディとの組み合わせは輸送障害時以外に見られないので、そちらの記録を狙う場合は残りの工事日程で早起きして訪れる価値がありそうです。

臨時回送に続いて、上り始発430H電車が地平ホームに進入してきました。
お恥ずかしながらLED前照灯となったE231系は初撮影で、光量に驚きました。
工事作業現場を添えて撮ったつもりでしたが、ヘッドライトの主張が強く夜間撮影には難儀する車両です。

かつて「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」が並んでいて、その昔は国鉄型特急電車が行き交った由緒正しい旧特急ホーム。
なんちゃって赤電とエメラルドグリーンの常磐線快速電車が停車しているインパクトはなかなか強烈でした。

駅の電光掲示板も、駅構造物も、車両のカラーもレトロな上野駅。
早朝のアメ横で飲み疲れたであろう客層も相まってそれはそれで情緒溢れる空間です。

地平ホームに並ぶ高崎線・宇都宮線・常磐線の下り普通の1番列車たち……ありそうでなかった新鮮な光景でした。
近郊タイプの車両が掲げる路線名単独表示、113系・115系・415系世代の普通単独幕の系譜を感じます。
思い返せば211系がたまに「東北線」「高崎線」表示なだけで嬉しかった世代としては、上野東京ライン表記のないこの空間はタイムスリップしたようでした。

懐かしい気持ちに浸っていたら、LED前照灯に改装して雰囲気が変わったE231系がやってきました。
ちゃんと2024年の上野駅地平ホームに緑の常磐快速がやってきた……という記録としては、今どきの仕様の編成の方がレトロな上野駅地平ホームとのギャップがあって映える印象も受けます。

回823M〜823M列車と450H〜551H電車。
頻繁に顔を合わせる両形式、上野駅地平ホームとなっただけで強烈な違和感を放っています。

E233系3000番台は上野東京ライン開業直前に投入された車両なので、未だに地平ホームで見かけると不思議な気持ちになります。
E233系のフルカラーLED表示器では、115系や211系、E231系が宇都宮線の列車は行き先を緑色で表示……という文化を継承してくれてとても好感が持てました。
上野東京ライン開業後はほとんどその表示が見られませんが、何世代も前の車両からの誤乗防止措置と地平ホームの組み合わせだけでも嬉しいものです。
宇都宮線の地平ホーム始発列車自体は通常ダイヤでもあるので、E233系充当を狙って見てみる価値はあると思います。

LEDに換装した編成もカッコいいですが、やはり見慣れたハロゲンライトと見慣れた地平ホームの組み合わせが一番テンション上がる光景でした。
デビュー当初から真上の線路を行き交う車両なだけに、見られそうで見れなかった光景でとても新鮮でした。

発着番線変更最後は回325M-325M列車。
上野駅に18番線があった頃の姿が残る北側で入線を撮影してみました。

現役の電車が高頻度で発着するだけでも往時の賑やかさを少しだけ感じられました。
筆者が物心ついた頃は長野行き新幹線開業・碓氷峠廃止の過渡期で当時の上野駅の記憶が乏しいだけに、元気な上野駅地平ホームを見られただけで満足感を得られました。
撮影会で珍しい列車が並ぶ以上に活気ある上野駅を体験出来るので、お近くにお住まいで早起きに自信がある方にぜひ訪れて欲しく思います。
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