
2019年10月2日深夜(3日未明)、東海道線熱海駅〜湯河原駅間で工事用機材と回送列車の衝突する事故が発生していたことがJR東日本の組合複数の発表により明らかになっています。
2014年に川崎駅構内で発生して大きな話題となった京浜東北線の脱線転覆事故とそっくりな事故であるにも関わらず、異音感知としてアナウンスしていたことも明らかにされており、管理体制・安全意識に疑問の声が上がっています。
2014年の川崎駅構内脱線事故と今回の事故の違いは?
2014年に川崎駅構内で発生した工事用機械と回送列車の衝突事故では、終電の後を走る回送列車が通過する前・線路閉鎖手続きが完了する前に工事用機械が線路上に進入してしまったことによる事故となっています。
今回の事故も線路閉鎖が終わる前に工事用機械が本線に進入、上り定期回送が工事用機械と衝突……という酷似した事故となります。
よって、川崎駅の脱線転覆事故との違いは車両の損傷度合いが軽度だったことと、それにより外部に発表せずに済んだことの2点くらいでしょう。
当日は異音感知による遅れとして報じられ、翌朝には問題なく運転再開されていたものの、発見が遅れたり、機械やより大型のものだったりと考えれば重大な事故となります。
京浜東北線の事例では、1編成丸々廃車・翌朝には京浜間で深刻な輸送障害となり、メディア・世間から大きなバッシングを受けた過去があります。
一乗務員の居眠りでもプレスリリースでお詫びする鉄道各社の最近の傾向を考えると、今回の事故が明るみになったら大きなバッシングを避けられないでしょう。
あえて正式に発表しなかったのではないかという推測する声も聞こえてきます。
もちろん悪いのは保線作業員なのだが……
今回の事故のポイントとして、30年以上続くJR東日本の歴史の中でも特に批判を集めた事故であるにも関わらず、全く同型の事故を起こしている点が挙げられます。
福島県白河市にある総合研修センターの「事故の歴史展示館」にて、川崎駅脱線転覆事故の当該車両が保存されている(一般には非公開)ように、線路閉鎖前の進入がどれだけ危険であるかはJR東日本の鉄道員に鮮明に記憶しているものとなっています。
今回も保線車両進入や作業員が接触という事故事例ですが、鉄道各社の歴史で時折出てくる古典的な事故原因です。
それにも関わらずこういった事故が未だに再発してしまう管理体制について、大きく考え直す必要があるはずです。
JR東日本の事故区間の管轄は小田原保線技術センターとなりますが、同区間では他の路線同様に東鉄工業などと連携して作業を行なっています。
現時点では責任の所在・事故の背景などはまだ明らかにはなっていません(このまま大きな話題にならなければ今後も発表されないことでしょう)。
最近、現場職員・子会社に責任を押し付けるという動きは一部の鉄道会社で耳にします。
JR東日本が積極的に進めている子会社への委託化の動きについて、以前より安全体制に疑問の声が上がっていました。
現在、JR東日本では駅・保線・車両といった分野で子会社化が進んでいますが、JR東日本社員のキャリアを大きく覆すジョブローテーション制度・その後のドライバレス推進など、今後は更に加速していきそうです。
ドライバレス化など耳触りのいい表現をしていますが、現在のJR東日本の人員削減による初歩的なヒューマンエラーは同社の今後を危惧する声は社内外から聞こえてきます。
最近になって同社・他社問わず、ヒューマンエラーによる鉄道事故の報道も続いています。
ミスをした現場職員を批判するのではなく、ミス・インシデント・事故が発生した背景要因について、しっかりとした議論が必要なのではないでしょうか。
コメント
社員ですが初めて知りました。
外注化の加速もジョブローテーション施策も「お客さま」(社員、関係者ではなく)に死傷者が出るところまで、会社は推し進めると思います。
個人への責任追及も以前より確実に強くなっています。
故意ではないミスで他系統へ転勤させられるようになりました。
残念ながらそういう会社です。
JRは人の命を預かる仕事だと言うことを再認識して下さい
私が見つけたJR東労組東京地本のソースでは、列車間合いでの作業が終了後、工事用機材(トラックマスター)が載線のまま線閉を解除したことが原因、とありました。ですので、
「今回の事故も線路閉鎖が終わる前に工事用機械が本線に進入、上り定期回送が工事用機械と衝突……という全くの同型事故となります。」
は正確ではないかなと思います。
しかし、川崎事故と類似しており、重大な事故の芽であることには変わりありません。