【複雑な転属の幕開け?】2022年3月の運用数削減・転用考察〜209系以外も注視

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JR東日本は2022年3月のダイヤ改正にて、首都圏で朝ラッシュを中心とする列車本数削減を行うことが示されており、車両運用への影響が注目されます。特に1形式1本の京葉線209系500番台や、中央線快速電車で2編成が運用される209系1000番台2編成の去就が注目されます。

これらの車両だけでなく、首都圏一円の車両計画が大きく修正されていることが予想されます。

運転体系別に見る列車本数削減状況

JR東日本からは路線ごとの運転本数見直し概要が発表されています。

別項で記載されているものには一体的に運用されている線区もあるため、車両の運用実態ごとに見ていきます。ただし、常磐線快速系統については、E231系とE531系の内訳が明示されていません。

路線名朝ラッシュ
減便本数
日中
見直し
夕夜間
見直し
車両所属使用形式
東海道線
高崎線
宇都宮線
▲2
▲1
▲2




国府津
小山
E231系近郊タイプ
・E233系3000番台
横須賀線
総武線快速電車
▲1
▲1


鎌倉E217系
E235系1000番台
山手線▲3+2東京E235系0番台
中央線快速▲1豊田209系1000番台(2)
E233系0番台
青梅線▲1豊田E233系0番台(青編成)
中央総武線各駅停車▲4+1三鷹E231系0番台・500番台
京浜東北・根岸線▲2さいたまE233系1000番台
常磐線快速(普通)
:内訳不詳
▲4松戸
勝田
E231系0番台
E531系
常磐線各駅停車▲3松戸E233系2000番台
南武線▲1中原E233系8000番台
横浜線▲2鎌倉E233系6000番台
京葉線▲2京葉209系500番台(1)
E233系5000番台
緑太字:投入中の車両 赤太字:置き換え進行中の車両 赤細字:少数のみ配置されている経年車(配置数)

一般に、朝ラッシュの運用減少は車両の最大稼働数が削減されるため、中長期的には配置数削減とコスト削減効果が非常に大きいものとなります。

ただし、今回各路線で削減された列車数と運用数がそのまま老朽車が配置されている線区に転出するとは限らず、予備車を増加させることで運用の安定1編成あたりの走行距離を抑制=検査期限の延長に留まる線区もありそうです。

JR東日本では1つの路線に3形式以上の車両が混在することを避ける傾向があり、今回のように運用数の軽微な増減だと、玉突き転用となる事例が多い印象です。

各路線の車両の現状を踏まえつつ、今後の車両運用に与える影響を考えます。

山手線:7〜9編成程度の予備車配置に→転出濃厚?

山手線では、2015年に量産先行車・2017年から2019年にかけて新形式E235系0番台の投入が進められました。

従来のE231系500番台が52編成配置されていたのに対し、E235系は50編成体制とされています。これは上野東京ライン開業後の混雑緩和が背景です。

E235系投入時点では48運用とされていましたが、2021年3月改正で社会情勢を受けて外回り・内回り各1運用が削減されていました。

列車番号から読み取れる山手線の運用構成は平日で外回り=27運用・内回り=29運用ですが、朝のみ運用と夕方以降のみの運用があるため、事実上の運用数は46です。

2022年3月の減便は朝ラッシュ・日中・夕夜間の全時間帯が対象とされており、3〜5運用程度の削減が想像できます。

前年に2運用を削減したばかりで、E235系の投入時点で予備を2編成としていることから、5〜7編成程度の捻出が可能な状態となります。

50編成のうち48編成は10号車がE233系設計の特異な車両となっており、これを編成から外せば一般的な10両固定編成となります。

余剰編成の活用策としては、これまでであれば1編成あたりの走行距離を抑制して検査周期延長……とされる事例が多かったものの、このE235系は「新保全体系」から「モニタリング保全」に移管しており、こちらも走行距離を基準とした検査が行われるものの、従来に比べると費用圧縮効果が期待しにくい印象です。

他路線への転出としては、従来車両と検査の流れが大きく異なることを考えると、少数のみ配置とすることは好ましいとは言えず、現在進行している路線・近年のうちに増備が計画されている路線に0番台が転出し、その路線の新規投入数を抑えることが予想されます。

横須賀線・総武線快速電車向けのE235系1000番台は普通車をオールロングシートとしているものの、編成構成の違いによる組み換えを前提とすること・トイレ設置改造が発生することを考えると現実性は低そうです。

一方で、以前の報道でE235系の投入先とされていた、京浜東北・根岸線の投入数を削減する場合はかなり合理的に思えます。詳細こそ発表されていませんが、保安装置などの今後のワンマン運転実施に向けて要求される仕様が合致しており、山手線のE235系が余剰となる場合の転出先としては京浜東北・根岸線が最適な印象です。

ただし、京浜東北線へのE235系投入は事前報道時点で2024年度の計画とされていました。300億円の削減が示されている昨今、この計画がどこまで進むのかも不明な状態です。一番新しい車両ゆえ、遠くない未来に何らかの活用がされることは確実ですが、2022年度にすぐに転出が発生するか否かは断定できません。

中央線快速電車:209系1000番台への影響

中央線快速電車では、E233系0番台を運用していましたが、グリーン車連結準備・トイレ設置の工事期間中の不足分を補うため、常磐線各駅停車〜千代田線直通で使用されていた209系1000番台2編成が転入し、2019年3月改正より運用されています。

2022年3月のダイヤ改正では、朝の1列車削減と日中の削減が示されています。

グリーン車連結準備には新造したE233系T71編成も運用されており、改造区所の余裕を考えてもこれ以上のスピードアップは考えにくく、単純に余剰となった209系1000番台を廃車とすることがスムーズな印象です。

一方で、2編成の捻出は困難な印象もあり、209系を引き続き残置するのか、2023年度末のグリーン車営業開始までの2年のために他路線の余剰車両(機器更新された経年車など)で代替するか、運用効率を重視して他路線で余裕が出来たE233系が転入するのか……さまざまな転用が可能で想像しにくいところです。

機器更新工事すら施行されておらず、苦肉の策として投入されたこの車両。八高線のワンマン化工事の予備車として残存していた209系3100番台の廃車が確実な昨今、動向が最も心配な車両でしょうか。

常磐線快速・常磐線(普通列車)

本社発表ではE231系・E531系どちらの本数が減るのかは読み取れませんが、水戸支社のリリースは時刻表ベースで公開されており、本社発表の朝ラッシュ最ピーク時間帯に削減される4本のうち、2〜3本は取手以北からの列車であることが読み取れます

E531系勝田車:事故車の今後とE501系に影響?

日中時間帯の上野口については、上野駅発着・品川駅発着が毎時2本とされていたダイヤから、品川駅発着が毎時3本に変更されます。また、日中は土浦駅で対面乗り換えをすることで、土浦以南10両・土浦以北5両の輸送体系となります。

E531系については現在、機器更新工事を施工している最中で、予備車を持ち合わせている状態です。交直流電車という特殊性を考えると、他路線への転用は考えにくく、走行距離を抑制することで検査期限を延長する方向で進められるものと考えられます。

特にE531系は投入期間が長期に渡り、機器更新工事も経年ごとに施工が進められることを考えると、無駄にはならなさそうな印象です。

このほかE531系をめぐっては、2021年3月に発生した自動車衝突により、事故時のK417編成10号車=クハE531-17が使用不能の状態となっています。その後は機器更新工事の都合かK409編成のクハE531-9がK417編成として運用されているほか、K409編成は付属編成のK461編成の15号車のクハE531-1011を一時的に使用するなど、複雑な動きが続いていました。

2022年3月のダイヤ改正でE531系の運用数が削減されることで、代替新造をせずに廃車……とされるシナリオが色濃くなってきました。代替新造・基本編成丸ごと廃車・事故車と付属編成4両を廃車の3択が考えられ、廃車が発生する場合は機器更新未施工かつ初期に投入されたグループが選定されることが予想され、今後の動向に注視したいところです。

そして、水戸支社管内には209系世代のE501系が10両編成4本・5両編成4本配置されています。土浦駅以北で運用されており、現時点では廃車は発生していませんが、機器更新から10年程度が経過しています。

常磐線で車両配置数を絞るのであればE501系を廃車とすることが最も合理的に思えます。

多くの編成が2021年に定期検査を通過したばかりですが、これから漏れた編成を中心とした廃車が発生するかもしれません。朝ラッシュの削減数だけで見れば全編成が一気に……とはならないようにも思えますが、安泰ではないことは間違いなさそうです。

E231系松戸車:運用は微減だが……

快速電車についても上野・品川駅発着で1〜2列車の削減が読み取れ、朝に片道運転とされている運用の削減がありそうです。公式に示されているのは千葉支社リリースによる成田線の828Mの5両化のみで、具体的な列車は不明です。

828Mは付属編成2編成を連結している列車ですが、これは我孫子到着後に増結車両として使用する構成でしたので、付属編成の所要数変動は不明です。

10両編成所定・5両編成2本で代走としている35H運用を解消するなど運用体制の改善のみに留まるのか、車両配置数を削減するのかは何とも言えない程度の変更量です。

転出させる場合は車齢・仕様が異なるマト119編成が選択されることとなりそうですが、他路線の状況を考えると編成単位での廃車は免れることが確実に思えます。E231系の同仕様車両は武蔵野線で運用されており、マト118編成の後を追って武蔵野線へ転属し、209系500番台を捻出……などが想像しやすいところでしょうか。

京葉線:209系500番台の捻出は確実?

京葉線では朝ラッシュ2列車と日中の削減が示されています。現在の使用車両はE233系5000番台が24編成・209系500番台が1編成で、25編成配置・23運用となっています。

今回の京葉線の規模であれば、朝のみの4運用のうち2運用が純減+1〜2運用程度を終日運用から朝夕の運用に変更とすることが考えやすいところでしょうか。

1編成分は将来の機器更新時期の予備車として残置するとしても、1編成のみ配置かつ経年車の209系500番台のダイヤ改正以降の運用は絶望的と言えそうです。

捻出後も他路線に転用するにも自身より老朽化した車両が運用される路線に留まるため、廃車となるシナリオも十分考えられます。しかし、車齢と比較して機器更新からまだ5年しか経過しておらず、廃車とするには微妙な時期です。

もし再活用されるとしても選択肢が限られ、機器更新をせずに運用されている中央線快速電車の1000番台・同じ千葉支社管内で廃車が進む2000番台・2100番台の4+4両運用の代替程度でしょうか。

209系1000番台の代替は中央線快速電車の項でも触れた通りで、趣味的には中央線快速から京葉線に転出した201系の逆となり面白そうですが、残された2年のためにわざわざ……という印象も受けます。

先述の常磐線からもE231系1編成が捻出されれば、武蔵野線編成とともに幕張車両センターに8両固定の209系500番台を2編成配置……なども出来そうですが、将来的な置き換えが確実・取り扱いが多少異なる車両をわざわざ玉突き転用するとも考えにくい印象です。

今回はあえて中央線にE233系を転出させ、中央線のグリーン車組み込み完了後に余ったところで再度転入として廃車とするのも、機器更新車の活用としては考えられるものの、首都圏全体で余剰が発生している状態ですので期待しにくいでしょうか。

既に異端児で乗車・撮影を済ませている方も多いかとは思いますが、心の準備はしておいた方が良さそうです。

京浜東北線:2運用程度削減されるが……

京浜東北・根岸線向けのE233系1000番台は83編成が製造されましたが、2014年の川崎駅での脱線横転事故によりウラ177編成(当時)1本が除籍され、現在は82編成体制です。2015年の上野東京ライン開業による運用削減により代替新造が不要だったことが背景に挙げられ、現在は79運用構成となっています。

2020年には京浜東北線にE235系を2024年度以降に導入することが報道されており、E233系は各地への転用が見込まれる状態でした。最近ではワンマン化・ATACSの導入線区にも選定されており、導入時期に多少の延期があってもE235系の投入計画自体は維持されていそうです。

2022年3月改正では朝ラッシュピーク時間帯に南行2列車の削減が発表されており、片道運行の運用なども多くある京浜東北線系統では純粋に2運用の削減が想像されます。

機器更新時期が遠くないことを考えると、今後も予備3編成前後を維持するものと考えられますが、それにしても若干の余裕が生まれます。

これを検査周期延長に充てるのか、E233系と他形式が混在している路線(中央線・京葉線)を巻き込んで転用などが行われるのかは想像しにくいところです。

ただし、京浜東北線へのE235系の導入を多少延期する計画だとすれば、機器更新時期の目安となる車体保全(全般検査相当)を遅らせるために現在の車両数を維持する判断がされていることが妥当な印象です。

上野東京ライン/湘南新宿ライン系統:転用先はある?

かつては上野東京ライン・湘南新宿ライン系統にE235系を投入し、E231系を地方転用する計画だったものの、現在は明確な置き換え計画が不明な系統です。E231系では後期に製造された編成の機器更新工事が現在も進行中で、当面は現行体制維持が想像出来ます。

列車本数としては朝晩の運用が削減されており、基本編成・付属編成の運用数削減が想像出来ます。

また、これまで朝晩に運転されていた宇都宮〜黒磯間への乗り入れもE131系600番台投入により廃止されることが決定しています。

ある程度の数が余剰となりそうですが、近郊タイプという他路線とは異なる設備を有しており、単純に転出する置き換えは考えにくいところです。

一方で、この系統は朝晩の末端区間運用を代替する展開が考えやすい線区です。

特に、特急「踊り子」の設定数が減少しており、JR東海・伊豆急行との走行距離精算に狂いが発生していそうです。沼津・伊東発着列車の運用が将来的に増やされたとしても不思議ではありません。

また、かつての211系のように、高崎エリアの普通列車での運用が開始されることも考えられます。211系を全車置き換える量にはならなくとも、所要数削減の効果が期待出来ます。

中央・総武線各駅停車:捻出するなら0番台

中央線・総武線各駅停車は、山手線へのE235系投入によりE231系500番台が転入して活躍しています。既存の209系500番台・E231系0番台の多くを武蔵野線と八高線に転用していますが、500番台52本では全車両の代替は出来ず、0番台6編成が電動車比率を500番台に揃えて運用しています。

2022年3月改正では、朝ラッシュピーク時間帯に東行きが4列車・西行きが1列車削減されることから、最大で4運用の削減が想像出来ます。

E231系500番台は全編成が三鷹に集約されているため、転出は考えられません。転用するならば0番台であることは確実で、既存のE231系運用線区である武蔵野線の209系500番台・仕様が特殊なE231系試作車の代替などが考えられます。

常磐線各駅停車:転用困難だが……

常磐線各駅停車では、東京メトロ千代田線・小田急電鉄乗り入れに対応したE233系2000番台19編成を運用しています。既存の運用数は17と、予備車比率もそれなりに高い印象です。

落成から現在まで頻繁に改造が行われている車両で、現在も同線のワンマン化改造が進行している最中です。

2022年3月のダイヤ改正では朝ラッシュピークに3列車・夕夜間の削減が発表されていますが、直通先との兼ね合いもあるため現時点では断言は難しいところです。

素人考えではJR東日本・東京メトロとも転用が難しい車両で、小田急電鉄車の運用が削れれば地上運用の1000形を代替可能……ではあるものの、一般的な直通運転の事例に倣えば、単純にJR車両の運用が削減されそうです。209系1000番台のように、他所へ転出しても設計の違いから限定運用とされるなど扱いが難しく、当面は配置維持が妥当でしょうか。様々な改造が進められており、将来的にも機器更新をして同系統で使用する車両であることは間違いありません。

余剰分を転出する場合は、東西線直通用のE231系800番台7編成の代替が想像しやすいところですが、全車両の代替が出来ないこと・取り扱い車種が増えることのデメリットも目立ちます。

E231系800番台は11月末に配給輸送の連結訓練が実施されており、機器更新が始まるのか、一部編成をE233系転入で賄い置き換えるのか、はたまた将来的な直通列車廃止に至るのか……東西線直通系統にも何らかの動きが近いうちに始まりそうですが、配置数が少ないだけに想像が難しいところです。

全貌は依然不明ながら……

車両数削減でのコスト圧縮を明言している以上、少なからず車両の動きが発生することは確実です。これまでのJR東日本の代替は特定路線に集中して車両投入を行い、捻出された車両が各地へ散らばる流れが多く、各線区で少しずつ余剰が生まれる2022年改正は従来とは異なる展開が予想されます。

今後の展開の全貌こそ不明ですが、既に労組資料で置き換えが示されている205系・211系・209系2000,2100番台などの前倒しや、1形式少数配置の異端車両の転用など、以前から動向が注目されている世代の車両はあっさりと姿を消す可能性があります。

ドキドキしながら2022年を迎えることとなりそうですが、引退発表や廃車が発生して騒がしくなる前に乗車・撮影を楽しんでおきたいところです。

コメント

  1. とんとん より:

    記事を拝見した後の推測になりますが、将来的なワンマン運転等を見据えて山手線で余剰になったE235系(6編成程度?)で総武緩行線E231系0番台6編成を置き換え、さらに常磐線緑快速のE231系0番代1編成を武蔵野線に転出し、209系500番台7編成(11編成→5編成)と京葉線209系500番台1編成の計8編成を幕張車両センターへ転属の上、209系2000番台・2100番台を置き換えるのが現実的かな・・と思います。
    しかし、本文にもあった通り、機器更新から年数が経過していないこともあり、予想は難しいです。