【大移転】古都らしい風景がなくなる?近鉄奈良線の地下化計画の概要と今後を考える

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7月16日、奈良県、奈良市と近鉄は近鉄奈良線・大和西大寺駅~近鉄奈良駅間4.4キロを移設することで協議に入りました。

この計画が実現すると、将来的に朱雀門を通る近鉄電車の姿は見られなくなります。

大和西大寺駅~近鉄奈良駅間が移設、一部地下化

7月16日、国と奈良県、奈良市、近鉄が合同会議を開催し、近鉄奈良線の一部区間(大和西大寺駅~近鉄奈良駅間 4.4キロ)の線路移設とそれを前提とする踏切改良計画をとりまとめることで一致しました。今まで近鉄が線路移設に難色を示していましたが、移設協議に参加することで、計画が大きく前進したと言っていいでしょう。

現在、大和西大寺駅~新大宮駅間は平城宮跡を横切るように走ります。朱雀門の前を近鉄電車が走る姿は近鉄奈良線の風物詩といっていいでしょう。新大宮駅~近鉄奈良駅間の一部は地下区間となり、近鉄奈良駅は地下駅です。近鉄奈良駅周辺が地下化されたのは1969年のことで、地下化以前は道路の上を走っていました。

さて、国土交通省は大和西大寺駅~近鉄奈良駅間にある4つの踏切を「改良すべき踏切」に指定し、改良計画を進めてきました。大和西大寺駅~近鉄奈良駅間にある新大宮駅は「快速急行」停車駅にわりに規模が小さく、周辺にある踏切により、道路が混みあうことは珍しくありません。

一方、奈良県は平城宮跡の観光拠点化を目指しており、その過程で近鉄奈良線が障害になることが予想されました。そこで、奈良県は近鉄に移設を代診し、協議を重ねてきました。

奈良県の計画によりますと、大和西大寺駅~近鉄奈良駅間を平城宮跡の南側を東西に走る大宮通りに移設します。大和西大寺駅~平城宮跡南側は地上区間、平城宮跡東側~近鉄奈良駅間は地下区間となります。

線路移設に伴い、朱雀大路駅(仮称)、新大宮駅、油阪駅(仮称)が新設される計画です。近鉄奈良駅地下化前、近鉄奈良線の電車は大宮通りを走り、近鉄奈良駅の隣に油坂駅がありました。

もし朱雀大路駅(仮称)、新大宮駅、油阪駅(仮称)が移設・新設されると、大和西大寺駅~近鉄奈良駅間の中間駅は現在の1駅から3駅に増えます。大和西大寺駅~近鉄奈良駅間において特急以外の種別は各駅に停車させるのか、それとも通過駅にするのか、そのあたりにも注目したいところです。

ちなみに油阪町(大宮通沿い)とJR奈良駅間の距離は約500mです。近鉄奈良駅とJR奈良駅が離れている分、500mだとギリギリ乗り換えができるレベルですね。

大和西大寺駅の高架化計画も

近鉄奈良線では線路移設だけでなく、大和西大寺駅の高架化も計画されています。大和西大寺駅は奈良線と京都線、橿原線が乗り入れる一大ジャンクションです。現在の大和西大寺駅は地上駅でひっきりなしに電車が乗り入れ、平面交差が行われています。大和西大寺駅周辺には4つの踏切があり、国土交通省から「改良すべき踏切」に指定されています。

2017年、奈良県、奈良市、近鉄は大和西大寺駅周辺の渋滞問題を抜本的に解決するために連携協定を締結。2018年11月、近鉄は3者による協議の場で大和西大寺駅高架化案を提出しました。現在、高架化実現のための調査を行っている段階です。

大和西大寺駅の高架化と大和西大寺駅~近鉄奈良駅間の線路移設はセットで物事が進んでいくことでしょう。これらの工事が完了すると、奈良市中心部の風景は大きく変わることでしょう。

前途多難?いつ工事が完了するか

これだけ夢いっぱいのプランですが、問題は具体的な開業時期などが一切示されていないことです。近鉄側は線路移設に伴う費用は行政側が負担する、現行時間など現在のサービス水準を維持する、この2点を示しています。

しかし、具体的には何も決まっていないとのこと。これから協議で詰めていくとしています。個人的には駅が増えることから「現行時間など現在のサービス水準を維持する」の実現は難しいのではと思っています。近鉄奈良線は大阪~奈良間でJR大和路線(関西本線)と競合しているため、少しでも所要時間を短くしたいと思っているはず。過去に近鉄が線路移設に難色を示したのも、このあたりが理由なのでしょう。

また、線路移設に伴う用地買収や立ち退き交渉、補償なども不透明なまま。具体的な費用負担も決まっていません。また、奈良市中心部は古都なだけに、遺跡が発掘されると工事がストップしてしまいます。

社会情勢が不安定な中で行われる大和西大寺駅の高架化と大和西大寺駅~近鉄奈良駅間の線路移設。なかなか前途多難な感じがします。とにもかくにも、今後の進捗状況に注目していきましょう。

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