【ne@train】クモヤE995-1 廃車?長野に配給・新技術試験で活躍

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JR東日本では、キハE200形・HB-E300系・HB-E210系といったディーゼルハイブリッド気動車のほか、EV-E301系などの蓄電池車両といった新技術の車両導入が積極的に行われています。

先進的な技術投入が強みのJR東日本ですが、このハイブリッド車や蓄電池車の開発に大きな成果をもたらした生みの親・クモヤE995-1が長野へ配給輸送されました。

試験車としては幸運すぎるその歴史と功績を振り返りつつ、今後の動きを考えます。

製造当初は“キハ”

特に前面形状などがE127系や701系にそっくりの電車のような外観の車両ですが、この車両の製造当初は意外にも気動車である“キハ”を名乗っていました。

キハE991-1と付番されたこの車両は、JR東日本とJR総研(総合技術研究所)の共同開発により2003年にハイブリッド気動車の試験車両として登場しました。

愛称は“ne@train”とされ、同時期に登場した次世代電車の試験車・“ac@train”とともに新技術の試験車両として各地を走行していました。

システムとしては、電車に蓄電池と発電用エンジンを備えた車両=電気式気動車に蓄電池を付加した車両となっており、当時は蓄電池の小型化によってこういったハイブリッド車両が鉄道や自動車などの各分野で開発が進められていました。

外観上の見た目はE129系・701系といった209系ベースの近郊型車両に準じていますが、電装品や台車などはE231系に準じたものを装備しています。

同世代の試験車両であるac@train E993系試験車両同様に大宮支社所有とされ、烏山線・日光線・東北本線宇都宮〜黒磯駅間などを中心に平坦線区・勾配線区の回生エネルギー吸収効率・燃費向上効果などが測定されました。

このE995系 ne@trainで培われたノウハウを生かし、小海線向け単行ハイブリッド気動車・キハE200形という直系の後輩が2007年夏に営業運転を開始しています。

その後、HB-E300系リゾートハイブリッド車両・HR-E210系仙石東北ライン専用車両が相次いで登場、JR東日本の気動車に代わる新製車両の基本を築く大きな功績を残しています。

電車版の試験車・ac@trainはE331系にその未来を託す形で2006年に引退後に除籍・解体されましたが、ne@train E995系は小海線向けキハE200系が登場した同年となる2007年3月に除籍された後も長野などでその余生を過ごすこととなりました。

車籍復元・気動車から電車に大改造?

除籍後に待っていたのは、これまた新技術・燃料電池ハイブリッド車開発のお仕事でした。

水素を燃料とする燃料電池と回生ブレーキを蓄電池に溜めた電力の双方を使用することによりモーターを駆動する方式で、このne@trainが世界初の鉄道車両となっています。

そもそもこの車両は計画段階からこの改造を想定していた車両となっていました。

2006年にプレスリリース発表、とともに65kw燃料電池2基を搭載する改造が施され、燃料電池の性能・環境負荷低減効果・水素供給方式などの様々な試験が行われています。

2007年に除籍されてからも長野総合車両センターをベースとして試験が行われました。

その後、2009年には電化路線と終着駅での急速充電により走行する試験車両“スマート電池くん”として再改造が施されています。

この翌年となる2010年には新製車両として車籍が復活、電車扱いのクモヤE995-1という現在の番号が付与されて以来、烏山線での運用を意識した小山車両センターに所属しています。

この蓄電池車両として、直系の後輩となるEV-E301系が開発されており、先行量産車が2014年に営業運転を開始・さらに後年に量産車が登場して烏山線で活躍していた気動車・キハ40系1000番台の淘汰に成功しています。

その後、EV-E301系の活躍を見守る形で小山車両センターで余生を過ごす日々が続いていましたが、目立った動きはありませんでした。

そして2019年12月18日、配給輸送の形で長年走り込んだ宇都宮線を後にし、かつての古巣・長野総合車両センターに輸送されています。

今後の新技術試験車としての活躍にも期待したいが……

除籍されていた期間を含め、姿を変えながらもJR東日本のローカル線に多大な影響を与えたクモヤE995-1。

今後JR東日本が挑戦する新技術車両としては、燃料電池ハイブリッド車両が存在しますが、これについては既に新造の試験車両での試験が発表済となっています。

この試験車両=FV-E991系では、烏山線で活躍するEV-E301系などと同様に3ドア2両固定編成となっており、より営業運転形態に近い試験車となりました。

先述のように、燃料電池ハイブリッド車両はne@trainが世界初の試験車として登場していました。

屋根上に大量の蓄電池を搭載した当時の試験を思い浮かべると、やはり単行車両ではコスト・車両重量・機器搭載スペースなどの観点から実用化は難しいのでしょうか。

同様に蓄電池を多く搭載したEV-E301系・JR九州が開発したBEC819系・それをベースにしたEV-E801系は全て2両編成となっており、これらについても機器搭載都合が大きいようです。

これらの経緯を踏まえると、2両固定編成の試作車として製造されるFV-E991系が後継の試験車両になると言っても差し支えなさそうです。

このことと今回の長野総合車両センターへの配給輸送から、クモヤE995-1の試験車両としての使命が終わったものと考えられますね。

JR東日本では貴重な単行電車

1形式1両という存在ながら、JR東日本の単行電車という珍しい存在のクモヤE995-1。

両端に両開きドア2つという車両は、単行ワンマン線区での運用や事業用車としても有用な車両でしょう。

今だに残存する国鉄型事業用電車・クモヤ143やクモヤ145が残存しているほか、1形式1両の単行車両で近年まで残存していたクモハ123-1の代替を2両編成のE127系で行っていることを考えると、何らかの改造での活用に期待したいところです。

廃車となる可能性も高い車両ですが、稀な単行電車の若年車両です。

JRの他路線・他社を問わず、どこかしらの引き取り手・何かしらの用途で更なる伝説を作ってくれることに期待して止みません。

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