【白い209系】神出鬼没の試験車・209系0番台改造“mue train”廃車の噂?

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白色の派手なグラデーションが特徴的で、根強いファンも多い209系改造の多目的試験車”mue train”(ミュートレイン)。

登場から既に12年目となり、去就を心配する声が多くなってきました。

JR東日本を中心に多大な功績を残している彼の見どころと今後を考えます。

登場から12年・試験車としては長寿

この多目的試験車”mue train”は京浜東北線で活躍していた209系ウラ2編成7両をベースに改造して製作され、2008年10月に登場しました。

当初は7両編成で改造されたものの、中間付随車=サヤ209-8は使命を終えて除籍されています。

この編成は先代の試験車“ac@train”が配置されていた川越車両センター所属とされています。

試験車には特殊用途の実験用として短命に終わる車両も多いですが、機器単位で載せ替えを行う多目的試験車として現在まで活躍を続けてきました

最近の長寿の試験車としては、14年半もの間JR西日本管内で様々な技術試験に貢献してきた“U@tech”・同じJR東日本管内ではハイブリッド駆動・蓄電池など最近の非電化路線向け技術開発に貢献してきた“ac@train”(関連記事)などが挙げられます。

1990年代までは目的の新技術に特化した外観の専用試験車を製造していた印象ですが、昨今は鉄道技術も成熟してきたことからか、新造・短命の試験車よりは比較的長い活躍を続ける多目的試験車も増えてきました。

なお、現役時代の京浜東北線の電車=ウラ2編成としての活躍は15年に満たないものでした。

同様に若番だった川崎重工製の209系0番台は一部の先頭車のみの転用となっていますので、幸運な余生と言えそうです。

試験内容は現役各形式に反映!

長い活躍の間には多くの新技術の貢献に貢献しています。

空気バネ式車体傾斜システム

従来は曲線通過速度向上のため、振り子式車体傾斜装置の採用が山岳路線を中心に投入されていました。

傾斜角を大きく取ることで速度制限を向上させる効果があるものの、車体側だけでなく架線などにも対策が必要で、莫大なコストが掛かることが課題となっていました。

安価でなるべく近い性能を発揮できる次世代の車体傾斜システムとして、台車に設置されている空気バネを作動させることで車体傾斜を発生させる仕組みが試験されていました。

この技術はE353系量産先行車S101+S201編成で長らく試験を行なったのち、中央線特急のE353系への形式統一・速度向上に大きな貢献をしました。

JR東日本管内ではこのほかにも、同時期に新幹線の試験車・“FASTECH 360”で同様の方式が採用されており、こちらはE5系・E6系に反映されています。

近年の高速走行をする車両では採用事例が増えていますが、空気ばね車体傾斜方式には空気圧縮機(コンプレッサー)を大量に搭載しなければならないという課題もあります。

JR四国では2600系4両で採用したものの量産化に至らず、振り子式の2700系製造となっています。

次世代型制御システム“INTEROS”の試験・比較

昨今ではE235系をはじめとする新造車両で会社を超えて普及が始まっている“INTEROS”。

209系世代の“MON8”・E231系〜E233系で大量に採用された“TIMS”の後継となる、車両の脳みそにあたる中枢を担うシステムです。

三菱が集中方式(先頭車に搭載)・日立が自立分散方式(各車両に搭載)と外観もそれぞれ異なるINTEROSを開発し、それぞれ試験車”MUE-train”で検証がされていました。

本採用となったE235系では三菱開発のものを搭載しており、営業運転開始初日に大きなトラブルを経験したものの現在は克服。大手私鉄各社にも採用が広がっています。

一方で、日立は独自システム“Synaptra”に継承されて私鉄車両で活躍……と思われていましたが、E261系“サフィール踊り子号”では日立製のINTEROSが採用されています。

乗務員支援装置などの画面表示が明らかに“Synaptra”に酷似したものとなっており、機能の違いや今後の採用基準が気になるところです。

線路・架線モニタリング装置

JR東日本の最近のトレンドとして、営業用列車を用いた地上設備のモニタリングが本格採用されていますが、この開発も“mue train”で長期間の試験が行われました。

従来はドクターイエローのような専用車両“East-i”を用いて検測列車を走らせていましたが、これを営業列車を活用することで高頻度・高品質なデータ取得をすることを目的にしています。

床下には軌道材料モニタリング装置・軌道変位モニタリング装置、パンタグラフ周辺には架線用モニタリング装置がそれぞれ試験搭載されており、E235系から本設置が始まりました。

特に線路側については各路線の既存車両への搭載が進められ、既に実用が始まっています。

外観では目立たない試験も多数

以上の試験機器は外観で大きく目立っていたほか、既に実用段階に移行しています。

当初の発表では、この他にも雨天時のブレーキ性能向上・台車の性能向上・WiMAXの検証・風速試験などが明らかにされていました。

このほかの目立つ最近の新技術としては、2020年3月にJR東日本の中長期計画で登場した“中編成ワンマン”についてもこの“mue train”を活用した試験が実施されており、その後はE531系3000番台で試験品・本採用となっています。

なお、時々搭載機器が一新されているものの、公式発表・文献はほとんど見当たらないため、最近の車両仕様についてはベールに包まれたものとなっています。

試験項目は概ね量産化しているけれども……

最近では、第5世代通信システム“5G”の実証実験にも使用されており、最近では3月末に試運転が実施されました。

関東の主力路線で一通りの入線を実現・機器類の大半は無事量産化されており、存在の大きさは絶大ですが、いよいよ今度は“mue train”の去就を心配する声も増えてきました。

最近廃車となった試験車“ac@train”では実質的な後継車両となるFV-E991系の製造が公式発表されています(関連記事)が、電車用にも後継試験車を開発するのか、それとも“mue train”を継続使用するのか気になるところです。

特に注目される点としては、既に2年以上そのままとなっている埼京線走行非対応でしょうか。

この“mue train”も川越車両センターに所属することとなったため、転用にあたり京浜東北線時代に使用していたATC-6型を残置・埼京線経由で他線区の試運転に出入りする列車も頻繁に設定されていました。

しかしながら、埼京線では2017年に新型保安装置“ATACS”へ移行することとなりましたが、“mue train”は改造対象外となりました。

埼京線を走行できないままとされたのは用途終了が近いからでは?と推測するファンの声もあり、今後の動向が気になるところです。

余生はまちまち!209系0番台の現在

主に房総地区へ転用された209系0番台ですが、このほかにも少しだけ残存車両は存在します。

転入したものの即全廃!不運の2200番台

元々0番台が2編成配置されていた南武線には、3編成が機器更新のうえで転入しました。

南武線に転用されたナハ52〜54編成は、205系捻出・同線の初期車ナハ1編成の代替として投入されたものの、E233系8000番台新製配置で増発分として残されたナハ53編成以外を改造から6年弱という短い期間で淘汰。

残されたナハ53編成は2017年にE233系0番台青670編成改造の8500番台・ナハN36編成登場により置き換えられています。

こちらについては、現在は房総地区で“B.B.BASE”=幕張車両センターJ1編成として新たな活路を見出しています。

車籍なしの訓練車!訓練機械としての転用

京浜東北線に配置されていた0番台の淘汰では、最終的には房総地区・南武線に転用されることとなるものの、当初は初期車を中心とした廃車だけが進められる動きとなっていました。

そのようななか、真っ先に登場したのは2両編成へ短縮改造が施された“訓練機械”でした。

彼らは未来の運転士の養成などの教材として活躍しています。

当初は東大宮・久里浜・新秋津の訓練センターに配置されていましたが、3000番台改造による配置箇所増加と機器更新とともに転配が続けられ、現在は久里浜・新秋津・長野に0番台由来の訓練機械が配置されています。(関連記事)

湘南色・横須賀色・中央線色・長野色といずれも209系0番台では存在しなかったカラーリングとなっており、“リアルうそ電”といった強烈な違和感を放っています。

久里浜以外の車両たちは、車窓からも容易にその姿を見ることが出来ます。

白い209系は他にも?京浜東北線色も残存?

209系の白色はこの2編成が現在も動いている車両ですが、この他にも車籍が残っていないものの、白色の209系はもう1両だけ存在します。

これは、ウラ7編成の先頭車だったクハ208-7が施設側の実験棟“smart station”にて、駅やホームドアなどの開発用に活用されています(関連記事)

なお、この編成の反対側となるクハ209-7が脱線復旧訓練用に活用されており、最近では前面FRPを踏切事故車用に捻出されたと推測できる動きもありました。

209系900番台の先頭車・クハ209-901が静態保存車として東京総合車両センター入口に展示されていますが、こちらは0番台で京浜東北線カラーを維持する唯一の存在となっています。

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コメント

  1. 紅蓮 より:

    噂通りだったとしてもmueの廃車は仕方ないものだと考えています。元が京浜東北線の209系で製造から27年経過していますし、試験車としても2009年から11年経過した上、INTEROSやモニタリング装置は既に導入されており役割も果たしましたからね
    更に同じ元京浜東北線209系である幕張車両センターの2100番台についても横須賀・総武快速線E235系1000番台と房総末端区間用E131系によって19編成114両が離脱する話があるのでmueの廃車と合わせて元京浜東北線209系の終止符が段々近づいていることになります