東京臨海高速鉄道は開業時から使用している70-000形の後継として、新型の71-000形を投入することを明らかにしていました。
最初の1編成目となるZ11編成が総合車両製作所(J-TREC)新津事業所を出場し、甲種輸送にて大崎駅までの輸送が開始されました。
営業運転開始は2025年度下半期
東京臨海高速鉄道は2023年11月、「りんかい線に新型車両71-000形を導入します」(東臨PDF)として、現行の70-000形(ななまんがた)に代わる車両として、新型71-000形(ななまんいっせんがた)の導入を公表しました。
第一編成の営業運転を2025年下半期に開始し、2027年度上半期に投入完了する計画とされています。
デビュー時期はまだまだ先ですが、夏ごろより総合車両製作所(J-TREC)新津事業所にて71-000形らしき車両の姿が目撃されるようになり、早めの登場が見込まれていました。
そして、2024年11月20日に1編成目となるZ11編成が同所を出場し、甲種輸送が実施されています。
有価証券報告書から2025年度末までに4編成の導入も明らかとなっており、単純に考えれば2025年度と2026年度は3編成ずつ、2024年度と2027年度には1編成ずつといったペースで導入が続きそうです。
落成した車両を見る
今回落成したのは、東京臨海高速鉄道の東臨運輸区に配置される71-000形Z11編成の10両です。
車体はE235系より更に凹凸の少ないsustinaブランドの車体・走行機器構成はE233系に準拠しており、この構成は同じく埼京線直通で使用される相模鉄道の12000系と同様です。
導入が完了すると、埼京線とその直通列車で使用される3社3形式の走行機器類が同一設計となることで、車両不具合時に他社職員も初動対応などがしやすくなるなどの効果も期待されます。
真正面から見るとE233系と同一の窓ガラスを使用していることから、一見すると単なる塗り分けのようにも見えます。
しかし、横から見てみると、窓ガラス上部にヒサシが付いていたり、前面下部に出っ張りがあったり、FRP自体の丸みが強いものとなっていたり……と、大幅なアレンジが加わっていることが分かります。
この辺りは相鉄11000系の前面と同様に、ベースは同一ながら独自性を出す工夫を感じます。
特にE233系準拠の前面窓ガラスを採用しながらこの丸みを持たせたのはなかなかハイセンスに感じました。
所属表記「東臨運輸区」「定員〇〇名」の表記は先代の70-000形を踏襲しており、その基となったJR各社が所属表記を省略する方針とするなかで嬉しいポイントです。
編成番号は70-000形の続番となるZ11、埼京線内の保安装置“ATACS”のIDは初の3桁となる171が付与されました。
車号は号車番号順に71-101,71-102,71-103,71-104,71-105,71-106,71-107,71-108,71-109,71-110となっており、百の位が編成番号・1〜10で号車番号と合致する付番となっています。
70-000形では、号車番号順で見ると70-019,70-018,70-017,70-016,70-015,70-014,70-013,70-012,70-011,70-010(Z1編成の例)と逆順で、編成番号は十の位と百の位で編成番号を表していました。
搭載機器自体はE233系に倣ったものですが、71-000形の電動車の連結位置は70-000形と同様で、71-104(4号車),71-107(7号車)が中間付随車となっています。
70-000形の編成構成は、国鉄〜JRの標準的な(新木場側10号車から)Tc-M-M’-T-M-M’-T-M-M’-Tc’という中間付随車の偏りがない構成となっていました。
番号の振り方こそ全く異なりますが、車両の向き・編成構成は埼京線205系の6扉車組み込み前の編成と同一なものが採用されました。
埼京線205系は6扉車を混雑する大宮・川越側に集中して連結するため、中間付随車を2,3号車とする(新木場側10号車から)Tc-M-M’-M-M’-M-M’-T’-T’-Tc’といった偏りのある構成となり、E233系7000番台では中間付随車を6,7号車とするTc-M-M’-T-T-M-M’-M-M’-Tc’といった構成となりました。
相鉄12000系が編成向きや電動車の位置を自社他形式と変え、E233系7000番台と同一としたのとは対照的です。
形式 | ←川越 10号車 | 9号車 | 8号車 | 7号車 | 6号車 | 5号車 | 4号車 | 3号車 | 2号車 | 新木場→ 1号車 |
71-000 | 71-010 | 71-009 | 71-008 | 71-007 | 71-006 | 71-005 | 71-004 | 71-003 | 71-002 | 71-001 |
70-000 | 70-000 | 70-001 | 70-002 | 70-003 | 70-004 | 70-005 | 70-006 | 70-007 | 70-008 | 70-009 |
12000 | 12000 | 12900 | 12800 | 12700 | 12600 | 12500 | 12400 | 12300 | 12200 | 12100 |
E233 | クハE233 -7000 | モハE233 -7400 | モハE232 -7400 | サハE233 -7200 | サハE233 -7000 | モハE233 -7000 | モハE232 -7000 | モハE233 -7200 | モハE232 -7200 | クハE232 -7000 |
205-6扉 | クハ205 | モハ205 | モハ204 | モハ205 | モハ204 | モハ205 | モハ204 | サハ204 | サハ204 | クハ204 |
205-4扉 | クハ205 | モハ205 | モハ204 | サハ205 | モハ205 | モハ204 | サハ205 | モハ205 | モハ204 | クハ204 |
71-101(川越側先頭車)
クハE232形に相当する先頭車です。
アンテナの量の多さもE233系同様ですが、2024年度新製車両ですので信号炎管が非設置となっています。
71-102
モハE232形に相当する中間電動車です。
埼京線E233系だと7000番のユニットに相当します。
71-103
モハE233形に相当する中間電動車で、パンタグラフ2基搭載の電動車ユニットが川越側とこれもまた埼京線用E233系とは異なる構成(7000番台は真ん中のユニットが2基搭載)であることが注目されます。
71-104
サハE233形に相当する中間付随車です。
埼京線E233系だと7200番台の方のサハに相当する機器構成です。
71-105
モハE232形に相当する中間電動車です。
このユニットが埼京線E233系だと7200番台に相当します。
71-106
モハE233形に相当する中間電動車です。
71-107
サハE233形に相当する中間付随車です。
埼京線E233系だと7000番台の方のサハに相当する機器構成です。
71-108
モハE232形に相当する中間電動車です。
こちらのユニットが埼京線E233系だと7400番台に相当します。
71-109
モハE233形に相当する中間電動車です。
弱冷房車となっています。
71-110(新木場側先頭車)
クハE233形に相当する先頭車です。
70-000形と付番が変わった点の1つである、2桁を使用して10号車の“10”となっており、71-100となっていない点が特徴的です。
10両編成で5桁を使用する事業者でこのような付番を採用する事例は珍しく、8編成で増備が完遂することが明らかな事業者ゆえの贅沢(?)な付番と言えそうです。
東京総合車両センターへ
今回の甲種輸送では、新津駅から新潟貨物ターミナルまでDD200形の牽引で一旦北上し、そののちにEH200形に牽引機を交換して上越国境を越え都心へ向かうダイヤとされています。
この措置はこれまでの東急電鉄2020系の甲種輸送などと同様です。
また、搬入先については特殊貨物検査票(甲種輸送では貨車と見做して貨物列車として輸送するため、その検査をJR貨物が実施)の記載内容から目的地は大崎駅であること、東京臨海高速鉄道の名前とともにJR東日本の東京総合車両センターの名が記されていることから、同センターにて受け渡しに必要な車両整備を実施するものとみられます。
この対応は先代の70-000形のうち、大崎までの延伸工事以後に増備された車両でも同様の対応となっていました。
大崎までの開業以前は京葉車両センターで受領する体制だったことからそのルートに期待する声や、貨物線として構想・建築された路線であることから機関車牽引のまま東臨運輸区に運ぶのでは?という憶測も飛び交っていましたが、最もシンプルな搬入先となりました。
今後は同センターで整備ののちメーカーから鉄道事業者へ納入・車籍を得るために公式試運転を実施、その後は性能確認の試運転や直通先であるJR東日本線内での各種試験、乗務員訓練ののち営業運転を開始する流れとなりそうです。
71-000形のデビュー時期は「2025年度下期」=最速でも2025年10月以降となりますので、実際に乗車する機会はしばらく後となります。
特に埼京線系統では、相鉄12000系が直通開始前の試験で東大宮操車場や東海道線の根府川駅まで入線するなど、営業運転では絶対に見られない光景が注目を集めました。
JR東日本での性能確認は東海道貨物線を使用する事例が多く、71-000形でも同様の試運転が実施されるかもしれません。
このほか、埼京線では最近、2030年までのワンマン化方針が明らかになりました(過去記事)。
公表時期・実施時期からも71-000形にはある程度の準備が実施されているものと推察されますので、今後より詳細な仕様が明らかになることも楽しみです。
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