引退から1ヶ月が経過するも、各地で息を殺すように動きを見せない251系。
“Xデー”は近いかと思いますが、引退後の動きをおさらいしつつ、気になる4編成の今後について考えます。
運用離脱後に即疎開回送
最近は平日3編成・土休日4編成という運用体制が続けられてきた251系。
臨時便の最終運行となった3月8日。
検査期限が最も近く、日帰り完結の臨時運用中心となっていたRE-3編成が、一足早くその使命を終えています(関連記事)。
それ以降は現在までの間、このRE-3編成は東大宮センター内で小移動がされる程度です。
運行最終日となった2020年3月13日。
最後に東京駅を発着する列車にてワゴンなどの車内販売機材の荷下ろしが行われています(東京駅に荷物を下ろせない、3月13日のスーパービュー踊り子3,7,10号はワゴンでの販売はなし)。
本来は伊豆急下田駅で停泊する運用に就いていたRE-2編成は、普段は臨時のスーパービュー踊り子12号・14号として走行していたダイヤを生かして国府津車両センターへ回送。
定期列車3453Mで最後の活躍をしたRE-4編成とともに、国府津での余生を過ごすこととなります(関連記事)。
ダイヤ改正を迎えた3月14日には、特急運用としては最後のスーパービュー踊り子10号に充てられて運用通り東大宮センターへ入区したRE-1編成が川越車両センターへ疎開しています。
この川越車両センターには、251系の東大宮センター転入以来、車輪転削(車輪の表面を平らに削る作業)をするために稀に出入りしていましたが、停泊を絡めた動きは初めてのこととなります。
埼京線車両と並んで羽を休める姿は印象的です。
そのまましばらく過ごすかと思われていましたが、3月17日にRE-2編成が、翌18日にはRE-4編成がそれぞれ日帰りで東大宮センターに戻り、リネン(枕カバー)の撤去・汚物抜き取り作業などを行っています(両編成とも即日再疎開)。
残念ながら、営業運転が終了して以降も、251系4編成が一同に会する機会はありません。
何らかの撮影会でも期待したいところですが、大量の所属車両を抱える東大宮センターの余力、そして昨今の社会情勢などを鑑みると難しそうです。
ハイデッカーだけじゃない!転用が困難な理由
251系について、何らかの用途に転用されないか・他社への譲渡は実現しないかなどのファンからの期待は絶えません。
しかしながら、251系を転用するにはいくつもの壁が立ちはだかります。
両端がダブルデッカー!床下機器搭載不可能
251系は1,2,10号車がダブルデッカー(2階建て)となっており、3〜9号車はハイデッカー(平屋だが高床)となっています。
2階建て車両はドア付近・車端部を一般的な電車同様の高さとしつつ、ハイデッカー車は連結面も高い床のまま行き来が可能となっています。
それぞれの連結部としては、2号車の3号車寄りがハイデッカーの高さ・9号車の10号車寄りが平屋の高さとすることで対処しています。
そのため、編成短縮で一番ありがちな、中間付随車を抜き取る編成構成がそのままでは不可能です。
更に、先頭車が2階建てなので、215系のような特殊構造としない限りは先頭電動車への改造は不可能と言えそうです。
このため、3-4号車・5-6号車・7-8号車のいずれかを抜き取った8両編成が現実的です(一部床下機器移設程度で対応可能)。
もし編成短縮をするのであれば、車体の切り継ぎをすれば1-3-4-7-8-10号車での4両や6両編成は組成出来そうですが、自社転用であればE257系が余り気味。
私鉄特急では20m級10両の固定編成は存在しません。
最長は8両編成の西武特急ですが、既にJR特急購入実績のある富士急行・長野電鉄はいずれも20m級は3両での導入です。
伊豆ゆかりの電車なので伊豆急行で……という期待も、2ドアのリゾート21でさえ繁忙期の普通列車は代走となっていること、リゾート21以外はワンマン運用が絡むことを考えると非現実的。
そもそも編成短縮が出来るのか、出来たとしてもそこまでして欲しい出物かと言われれば疑問です。
バリアフリー関連対応で改造必須?
現役時代は9号車の多目的室をマルス上の指定席として設定しており、この“座席”が車椅子対応しているから乗車可能……というなかなか派手な対応をしていました。
もちろんそのままの形態で運用自体は可能ですが、編成短縮をするとなれば真っ先に外されそうな9号車に設定されています。
251系で平屋の高さを維持しているのはこの部分のみですので、改造は困難を極めそうです。
何をするにも高コスト……
編成短縮をするにもバリアフリー対応必須・動力車設置が困難。
さらに現役時代の車両故障の多さも目に余るレベルです。
同世代のE351系がそうであったように、特殊用途で製造された車両は短命となる例が非常に多いです。
せめて静態保存だけでも実現して欲しいところですが、社会情勢を考えるとこれも難しそうですね。
天寿を全う?延命で生き延びた251系
公式の発表はありませんが、251系・185系を巡る世代交代の動きは東日本大震災前から継続して行われていたという推測もあります。
JR東日本横浜支社内に次世代車両検討のためのプロジェクトチームがあったとか、車両仕様について本社の強い意向があったとか噂は聞きますが、今後何かの機会で明かされることを期待したいところ。
少なくとも、ここ数年は走行距離抑制の動きが続いており、目立つものとしては定番だったスーパービュー踊り子6号・11号の設定取りやめでしょうか。
臨時化以降しばらくは金曜〜日曜日の定番の臨時列車として活躍していましたが、設定自体も徐々に削減。気づけば設定自体がされなくなっていました。
とりわけ利用の多かったスーパービュー踊り子6号については、踊り子156号として185系にて運行を継続してきました。
同11号についてもJR線内では各種臨時列車・試運転にて、伊豆急行線内は河津桜臨時列車などで活躍。
そして2019年12月31日に1日限りの運転復活(関連記事)もあり、ダイヤ・運用上の設定自体は可能な状態が継続していました(列車番号も8000番台・予定臨として設定)。
さらに、長年に渡り定期検査での長期離脱以外は週末は全編成運行という体制が継続していたものの、2019年10月以降は閑散期である2020年2月頭まで、異例の臨時便設定なしの期間も設けられました(関連記事)。
スーパービュー踊り子号は5名(登場時のみ6名)のアテンダントへの委託業務が行われていたため、臨時便運転時も必ず往復設定という体制が続いていました。(輸送障害に伴う対応を除く)
このため、スーパービュー踊り子11号はいわゆる空気輸送状態でもしばらく運行が継続されていましたが、2015年ごろから185系全車指定席という体制に移り、同列車の臨時化以降も継続されていた、伊豆急下田でのアテンダントの長時間滞在の宿泊勤務体制も2018年夏ごろに廃止となった模様です。
また、車両故障関連の代走・移席対応なども徐々に増えていき、故障内容も走行機器系統の運用不可能なもの、特定号車の空調が効かない状態が継続、特定ドアが開かず該当編成でドアカットを継続(2両に1箇所しか開かないため、4両分間隔が開く)、個室席の電動リクライニング故障などがありました。
軽微ゆえに修理されなかった故障としては、RE-3編成の個室インターホン故障(5年以上)・RE-4編成の10号車海側方向幕故障(2019年夏頃から放置)などもありました。
また、特定車両の特定箇所が雨漏りする……という持病もあったようですが、定期検査明けでも頻発していたようで、もはや特殊構造の車両設計上の宿命なのかもしれません。
外板塗装の痛みばかりがファンからは指摘されていましたが、それ自体は運用に支障をきたす問題ではありません。
しかしながら、代走や移席を伴う深刻な車両故障が継続してあっても置き換えられなかったのは特筆すべき内容です。
以上を総合すると、何らかの理由により延命されたと考えて間違いなさそうな動静です。
背景として考えられるのは、E353系の開発遅れ(車体傾斜関連)・東日本大震災による大きな損害・豪華列車構想は“四季島”が優先となったことのいずれかでしょうか。
どのような背景があったのかは分かりませんが、見るからにボロボロになるまで頑張ってくれた251系。臨時列車での他線区走行も数えるほど。
デビュー経緯である伊豆方面の看板特急に生涯専念出来たのも、それはそれで本望だったのかもしれませんね。
251系関連については、次回大きな動きが出たら(近日中に実施されるであろう廃車の動きとなってしまいそうですが)レポート予定です。
コメント
20m級で8両固定編成の私鉄特急だと、西武001系(Laview)が該当しますよ。
先頭車が21m、中間車が20.5mの近鉄21000系(アーバンライナーplus)も中間増結車組み込みで8両編成を組めますが、増結車は中間運転台があるので固定編成とは呼べないですかね…。
RYUさま
閲覧・コメントありがとうございます。
NRA代替で8両化していたことをすっかり失念していました。
引き続きご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。