JR東日本や報道各社によって積極的にアナウンスされ、大きなトラブルなく始まった山手線渋谷駅の52時間工事。
工事と臨時列車の概要は過去記事でお伝えしていますが、本記事では弊サイトTwitterのフォロワーさんのお写真を紹介しつつ、実際の運行状況を見ていきます。
山手線内回り「池袋行き」外回り「大崎行き」
山手線では、外回りの環状運転列車を毎時12本程度・内回りの大崎→池袋・外回りの池袋→大崎を往復する列車が毎時6本程度とするダイヤで運転されています。
特に池袋駅では、利用頻度が非常に少ない目白側へ引き上げる運用体系となっています。大崎・池袋の行き先表示もラッシュ時間帯に見られるのみで日中は珍しいほか、池袋駅6番線止まり・8番線始発、大崎駅の1番線からの始発列車はいずれも数少ないものとなっており、終日見られる点も特徴的です。
このほか、東側で並行する京浜東北線の快速運転が終日取り止められていますが、こちらは過去の大規模工事・リフレッシュ工事などで時折見られてきた光景で、珍しさはそこまでない印象です。
相鉄線直通は池袋発着へ
2019年11月に開業した相鉄直通列車は、朝ラッシュ時間帯以外は新宿駅での折り返し運転とされています。前回工事では大崎駅での折り返し運転が行われたこの系統ですが、今回の2日間は、これらの新宿駅発着列車を池袋駅発着に延長する体制で大活躍しています。
従来の直通列車では、新宿駅以北へ直通する列車運行がされていますが、従来は新宿駅以北が埼京線の「電車」・新宿駅以南が相鉄直通の「列車」となっており、前者は埼京線の大宮運転区・車掌区が、後者は湘南新宿ラインなどの新宿運輸区が乗務するなど明確に分離していました。
今回の延長運転では、新宿〜池袋間を原番号+9000の臨時「列車」としている反面、池袋駅以北の回送列車は埼京線の付番規則に倣った6000番台+Kの「電車」です。
池袋駅の発着番線も1,2番線発・3,4番線着とまちまちで、通常の列車の合間を縫って増発運行する難しさを感じさせられます。
ファン目線では、土休日に1本だけ設定されている大和駅止まりも池袋始発に延長されているので、これが最大の見どころと言えそうです。
このほか、通常の新宿駅発着に比べて運用数が増加する分はJR側が用意されており、相鉄線の運用としては初めて98運行が登場しています(97運行は2021年3月改正で平日に登場)。
もともと土休日ダイヤの日中はJR車の比率が高くなっており、相鉄車の撮影難易度が少し高い印象です。
大量に走るりんかい線直通
通常の日中時間帯は毎時3本の埼京線〜りんかい線直通列車ですが、日中で毎時7〜8本と大幅に増強されています。
事実上は新宿以北で折り返す埼京線と、大崎以南で折り返すりんかい線を繋げる格好での運転ですが、毎時1本程度は純増となっています。朝ラッシュのような高頻度で終日運転されるダイヤも新鮮です。
普段は山手線が輸送を担う早朝・深夜帯まで埼京線の運転時間帯も拡大しており、通常はりんかい線内運行に留まる、川越始発東京テレポート行きのような通常では見られない珍しい列車も複数登場しています。
新宿〜品川間の臨時列車
発表時点からファンを賑わせていたのは、山手貨物線を使用した新宿〜渋谷〜恵比寿〜品川間の臨時列車です。山手貨物線のうち大崎(ホームなし)〜品川間は成田エクスプレスと、ごく一部の臨時列車のみに限られており、乗車機会の少ない路線です。この系統では運休中の成田エクスプレスのダイヤなどを活用して、1時間に2本程度運転されています。
特急車では前面展望が望めないことなどから、最前部・最後部の景色は今回ならではの景色が見られると注目されていました。
直前のテレビ報道で使用車両が示された通り、国府津車両センター所属のE231系・E233系15両2ペアを使用しており、新宿〜大崎間で正調の編成向きとなる運転体系です。品川駅では、東海道線を走る本来の向きの編成・臨時列車の逆向き編成の離合も見られます。
前面・側面の行先表示器は「品川」「新宿」の単体表示ではなく、「臨時」表示で運用されています。両車両は編成数・営業範囲の広さの割には「臨時」表示を見られる機会は少なく、初日は2運用ともE231系+E233系の異形式ペア、2日目はE231系15両とE233系15両……組み合わせが異なり、乗車・撮影ともにファン目線では嬉しい采配となりました。
そして、通常はグリーン車として営業している二階建て車両(4号車・5号車)は「ご利用いただけません」等の文言でアナウンスされているものの、出庫する時点でボックス向きにセッティングされた状態とされているほか、乗降扉や普通車との貫通扉の締切措置は行われていません。
案内上は「通路扱い」と呼ばれる対応ですが、今回の利用可否については案内も不明瞭な表現がされている(もしくは意図的に濁している)ものも多く、ファンの間では乗っていいのか悪いのか……といった論争が散見されました。ファン心理としては気になるところですが、JR東日本東京支社にとってはどちらでも良いことだったのでしょうか(コロナ禍なので特定号車への集中は避けたいから積極的には出来ない)。
一般利用者向けにグリーン券を買ってしまった場合の払い戻し案内などもしっかりとされており、このグリーン車の処遇で困惑するのは筆者を含めたファン層だけですので些細な問題でしょうか。
JR東日本では長年に渡り、運転士・車掌側のどちらかが貫通扉で全車両へ辿り着ける=旅客が緊急時に直接乗務員のもとへ向かえる編成構成(通りぬけ出来ない場所は1箇所のみ)を原則としています。私鉄では普通に通り抜けが出来ない号車がある事業者(京急・名鉄など)や、反対に編成貫通を原則としている事業者(東武・近鉄など)もありますので、あくまで内規的な条件です。
上野東京ライン・湘南新宿ラインなどでは、ラッシュ時に普通車とグリーン車の間の貫通扉を締め切っているものの、これもアテンダント乗車区間に限定して行われています。
この条件に加え、新宿〜渋谷〜恵比寿間で同一経路を走行する湘南新宿ラインのグリーン車との整合性を保つこと・恵比寿〜品川間のグリーン車Suicaシステムが非対応などの条件を総合的に判断し、「グリーン車サービスとして利用不可」としているものと考えられます。
このほかの直近の事例では、2021年夏に発表されていた五輪関連の臨時列車(東京〜鹿島神宮間)でもグリーン車の営業はしない旨が発表されており、今回と同様の取り扱いを前提としていたものと考えられます。
一方で、常磐線では現在も、グリーン車を普通車として開放する事例があります。これは、通常E501系10両で運用されている列車の代走でE531系基本編成を使用する場合に発生する対応で、駅の電光掲示板などでも乗車可能であることが明示されています。
過去の大規模な事例では、2004年夏の宇都宮線・高崎線へのグリーン車連結、2008年初めの常磐線へのグリーン車連結の際、営業開始までの期間は普通車としての利用が可能とされていました。
今後も中央線快速電車へのグリーン車増結時期に同様の対応が想像できますので、このお得感を味わいたい場合は再来年ごろまで楽しみに待っておきたいところです。
次回の外回り工事の際にも同様のダイヤが想像できますが、この列車にも何らかの改善が施されるのか、今回のような玉虫色の対応とされるのか、はたまたその頃には成田エクスプレスの需要が戻っていて設定自体がなくなるのか……。次回も目が離せません。
肌寒いなか作業に携わる関係者の皆さまに感謝するとともに、新しくなる渋谷駅の姿の完成を楽しみにしたいですね。
画像元ツイート紹介
記事内掲載写真は、フォロワーの相 模 電さま(@sagami_so)・東西善子(とうざいぜんこ)様(@Aqours3051F)・TTTDさま(@TTTD21637338)・南北ヒカリ様(@nanbokuhikari)・かいりん様(@kairin_asuka・YouTube)から掲載許諾を頂戴した上で掲載しています(お名前は許諾を頂いた順です)。
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