東急電鉄では2023年度以降、東横線の一部列車に着席サービスを開始する旨を公表していました。
このうち1編成目となる東横線所属の5050系4112Fについて、全車が一般車両として10月24日より営業運転を開始しました。
東横線“Q SEAT”導入発表とこれまで
東急電鉄が2021年5月に公表した中期3か年経営計画では、大井町線で導入された有料着席サービス“Q SEAT”について、「他路線への展開など、サービス拡充の検討を深めていきます。」(外部PDF)としていました。
この時点でファンの間では、東横線への連結が有力視されていました。これは、田園都市線と目黒線は直通運転の社(局)境の始発駅が1面2線であり、ダイヤ構成が極めて困難であることが背景です。東横線についても終着駅が1面2線である制約こそあるものの、他路線と比較して着席サービス投入へのハードルが低いことが容易に想像できます。
2022年4月8日に公開された運賃改定認可の資料でも「今後は他路線への拡充を検討」との記述が継続していました。
そして6月28日未明、総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所に改造のため入場していた5166Fの8両と無ラッピングで銀色一色の新造車2両をあわせた10両が4112Fとして出場しており、車両の外観から東横線での“Q SEAT”サービス開始に向けた車両であることが極めて濃厚となりました。
7月29日には「東横線におけるロング・クロス転換車両の導入について」(現在削除済)として東横線への有料着席サービス”Q SEAT”の将来の実施に向け、ロングシート・クロスシート可変座席(L/Cと記載される場合が多い)の車両が連結される旨が正式発表、のちに車両の報道公開も実施され、外観や内装がより明らかになりました。
そして10月21日には「【再掲】東横線におけるロング・クロス転換車両の導入について~一般車両としての運転開始日について~」(外部PDF)として内容が更新され、運転開始日が10月24日と公表されました。
1番列車の時刻こそ公表されていなかったものの、元住吉検車区を朝に出庫する59K運用(1番列車は059-071レ)から営業運転を開始しました。
副都心線・東上線での試運転が実施されていた一方で、西武線内はファンによる目撃がなく、西武線への入線可否が注目されるなかで西武線直通運用でのデビューとなりました。
営業運転を開始した4112Fを見る
今回営業運転を開始したのは、東急電鉄東横線所属、5050系4000番台4112Fの10両です。
1〜3号車と6〜10号車は元5166Fの8両で、4号車と5号車の“Q SEAT”座席を有するサハ4412・デハ4512は新造です。
1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 | 7号車 | 8号車 | |||
5166F | クハ5166 | デハ5266 | デハ5366 | サハ5466 | サハ5566 | サハ5666 | サハ5766 | クハ5866 | ||
↓改番 | ↓改番 | ↓改番 | 新造 Qシート | 新造 Qシート | 4号車 →6号車 | 5号車 →7号車 | 6号車 →8号車 | 7号車 →9号車 | 8号車 →10号車 | |
4112F | クハ4112 | デハ4212 | デハ4312 | サハ4412 | デハ4512 | サハ4612 | サハ 4712 | デハ4812 | デハ4912 | クハ4012 |
“Q SEAT”連結以外の要素としても、5050系では2007年度以前の新造車として初の編成組み換え・4000番台で最経年車となりました。特にスカート(排障器)が強化形でない10両編成は新形態で、違和感を感じる方も多そうです。
事前のイメージ画像の通り、大井町線6000系,6020系の“Q SEAT”と同様に車体全面にラッピングがされていますが、東横線5050系4000番台ではドアへのラッピングは無しとなっています。
ドアを開扉した状態でも、ドア周りの銀色が目立ちます。帯色より暗い落ち着いた色合いで、大井町線が明るいオレンジ色だったこともあり外観の印象は異なるように感じます。
内装については大井町線6000系,6020系の“Q SEAT”に準じた仕様となっており、大きな違いは見当たりません。
東横線の車両としては5177F,5178Fが同様に2020系ベースの内装で、これらの編成に“Q SEAT”を組み込めば内装デザインが揃うところですが、走行機器の仕様も異なるなどで実現には至らないのは少し惜しいところです。
新造された2両の車両番号・号車表記については、車外は5000系列準拠・車内は2020系準拠となっていますが、これは6000系の“Q SEAT”現デハ6301・デハ6302でみられる特徴で今回初の仕様ではありません。
ロングシート状態でもコンセント使用可能のランプが点灯しており、「座れたら乗り得」な車両です。
なお、同じく2022年度新造の京王電鉄5000系5737FではL/C可変かつリクライニング機構搭載座席の採用が公表されていますが、今回のサハ4412・デハ4512についてはこの機構は採用されていません。
4112Fの他8両も従来の5000系列のデザインで車号・号車表記が貼り直されています。製造から15年、今日は東横線初の複層ドアガラスの編成として登場して以来の晴れ舞台でしょうか。
運転台機器類についても、これまで5050系の8両編成・10両編成で相鉄直通対応のデジタル無線を搭載した車両とほぼ同一とみられ、旧来方式のアナログ列車無線装置も残置しています(現時点では東上線で使用)。
このほか、現時点ではVVVFインバータ制御装置が新旧混在状態となっており、4101F〜4104Fと4112F〜4115Fで交換すると仕様が揃う計算(過去記事)ではあるものの、5173F→4111Fと5175Fで行われたような仕様統一の動きはありません。
2023年2月以降にあと3編成へ連結か
今回の5166Fは総合車両製作所でデジタル無線装置の改造を済ませるとともに4112Fへ改番されていますが、同様に5167F〜5169Fの3編成についても「相鉄直通対応」準備がされている状態となっており、過去に示された2022年度の新造車両数からも、あと3編成が10両編成化されることが確実視出来る状態です。
また、今回の“Q SEAT”についての発表では、「2編成目以降は2023年2月以降に順次、運転の開始を予定」としていることからも、相鉄直通開始直前に増結するあと3編成6両についても“Q SEAT”仕様で落成するものと考えられます。
車両運用を考えても、現状の8両編成の運用で10両編成が代走できるものはないため、10両編成が直通することが確定的な相鉄直通開始による増結は直前に実施されることが想像され、時系列としても合致しそうです。
2007年度に新造された5166F〜5168Fは、ドアガラスが複層に変更された一方でスカート(排障器)が旧来タイプという過渡期の存在です。この組み換えが完了するとこの仕様の5050系は全て4000番台に改番されることとなることが確実な状態です。デジタル無線工事〜10両化までの限定的な現在の姿の記録も早めにしておきたいところです。
なお、直通開始時点で概ね出揃うことが確定的な一方で、既に東急・相鉄新横浜線の開業が2023年3月中旬予定と示されていることと、“Q SEAT”のサービス開始時期は「2023年度以降」=2023年4月以降であることから、新横浜線開業・直通開始時点ではサービスは開始されず、一般車両として運用されることが確実となっています。東横線“Q SEAT”がどちら方面への設定なのかはベールに包まれたままで、公式発表があるまでしばらくのお楽しみのようです。
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