【車両動向のヒントに】JR東海が315系4両ワンマン実施計画を公表

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JR東海は2024年6月6日、315系4両編成でのワンマン運転実施計画を明らかにしており、労組資料からはより具体的な実施時期も示されています。

実施線区としては想像のしやすかったところが選定されており、今後の車両動向を想像するヒントにもなっています。

公表された運転区間を見る

4両編成の315系3000番台では新造時から車載の安全確認カメラ(JR東海では「車側カメラ」呼称)を搭載しており、これまで画像認識技術を活用した試験が実施されていました。

単にカメラで乗務員が車両側面を監視できるだけでなく、これまでの営業列車でさまざまな時間帯・天候で撮影したデータをAIに学習させることで人物の列車への接近を検知する支援装置が搭載されている点が特徴的です。

315系4両編成でワンマン運転を実施予定とされている路線は下記の通りです。

JR東海リリースより

・2025年度中に実施予定

関西本線 名古屋駅〜亀山駅

武豊線 大府駅〜武豊駅

・2026年度以降

東海道本線 三島駅〜沼津駅、浜松駅〜豊橋駅、大垣駅〜米原駅

御殿場線 国府津駅〜沼津駅

2025年度中に実施予定とされている路線には、神領車両区の315系4両編成が既に運用中の路線です。

どのような画像認識処理をしているのかは不明ですが、315系の投入からワンマン運転実施時期に年単位のズレがあり、さまざまな時間帯・天候での撮影データをAIに学習させることが示されているように、車両の代替からしばらくは運用線区ごとに撮影データを学習させていることが推測される内容です。

労組資料でより具体的な情報も

JR東海労静岡地方本部が公開した資料では、下記の内容が記載されています。

一般向けに公表した時期より明細な時期となっており、JR各社のワンマン運転拡大でよく見られるダイヤ改正とともに乗務員運用を見直すことを前提に計画が組まれていることが分かります。

会社説明の具体的な実施予定時期

・2026年 春/3月

飯田線 2両ワンマン運転拡大

関西線・武豊線 4両ワンマン運転

・2027年 3月

東海道線 大垣駅〜米原駅

御殿場線全線・東海道線 三島駅〜沼津駅

・2028年3月

東海道線 浜松駅〜豊橋駅

会社と組合の質疑応答

Q.「御殿場線における2両ワンマンと4両ワンマンが混在するのか」

A.「基本的には4両ワンマンだけになる予定である」

これまでの新製車と代替車

・315系の投入計画

年度内訳判明した配置先
20218両7編成=56両全て神領
20228両6編成・
4両2編成=56両
全て神領
20238両10編成・
4両10編成=120両
全て神領
20244両16編成=64両2本神領
静岡増備中
20254両14編成=56両

・神領車の転出

形式両数/装備編成番号
211-04両編成K51,K52廃車
211-50004両編成K1〜K20廃車
211-50003両編成K101〜K117廃車
313-10004両編成B1〜B3大垣転属
313-11004両編成B4〜B6大垣転属
313-13002両編成
ワンマン追設
B401〜B408静岡転属
313-13002両編成
ワンマン
B501〜B524
313-15003両編成B101〜B103
→J151〜J153
大垣転属
313-16003両編成B104〜B107
→J161〜J164
大垣転属
313-17003両編成B151〜B153
→J171〜J173
大垣転属
313-80003両編成
ライナー
B201〜B206
→S1〜S6
静岡転属

・廃車対象

大垣車両区神領車両区静岡車両区対象総数置換状況
211系
0番台
配置なし4両×2編成
(K51,K52)
配置なし8両完了
211系
5000番台
配置なし4両×20編成
(K1-K20)
3両×17編成
(K101-K117)
3両×20編成
(LL1-LL20)
3両×11編成
(SS1-SS11)
2両×9編成
(GG1-GG9)
242両神領車淘汰
静岡車代替中

静岡車15両
三岐鉄道へ
213系2両×14編成
(H1-H14)
配置なし配置なし28両
311系4両×15編成
(G1-G15)
配置なし配置なし60両5編成20両が
残存
総数88両139両111両338両

これらの計画から考えられる車両の動き

これまでの315系投入状況とワンマン運転実施時期から、向こう数年の車両動向は想像しやすくなってきました。

315系の製造数が公表されて以来、長年の間ファンの間で予想が飛び交っていた313系転属を含んだ一連の車両代替の答え合わせに近い内容です。

名古屋エリア〜既に運用が分離

御殿場線が2両ワンマンと4両ワンマンの混在を避けることが示されたことで、関西線と武豊線も4両ワンマンへの統一が想像しやすくなってきました。以前から代替車両数より315系の新造数が多めに計画されていたのも、これによる車両配置数増加が背景だった……という答え合わせとなりそうです。

不正乗車が増える・車両数増加で業務増といった事業者側のデメリットが多少あっても朝晩に4両編成が適正輸送力とされている路線は4両ワンマンに統一しよう……というのは体力のあるJR東海らしい発想です。

利用者にとっては混雑緩和・精算による列車遅延などがなくなりメリットも多そうな内容です。

現在の315系4両編成は神領車両区にC101〜C114編成が投入され、関西線と武豊線を中心に運用されています。

静岡車両区向けU編成の車両番号末尾は29から付与されており、2025年度に製造される計画が示されている14編成は武豊線と関西線の2両ワンマン列車の4両化・311系の代替が目的と予想される内容となっています。

残された代替車両の1つである311系の運用体系が既に大垣駅〜米原駅が中心の5編成配置4運用体制となっており、2025年度に新造する14編成が代替する列車も311系の4運用相当と、313系B500編成のうち関西本線と武豊線関連の運用分を捻出して213系を代替する動きが濃厚な状態となりました。

B500編成は24編成配置されていて、中央西線運用が6運用・関西本線と武豊線関連の運用が16運用の構成とみられます。

代替対象の213系が14編成ですので、B500編成を16本転用すると仮定すると、神領の予備2を維持しつつ大垣の予備が2編成分増加となりそうです。

2024年3月改正では東海道本線の一部減車が実施されていますが、ワンマン車の予備が増加することにより2026年3月改正ではわずかに増車となるのか、単にY34,Y38編成が残留しているのがこの動きを待っているのかのいずれかでしょうか。

関西線は朝夕の2両編成2本併結列車を4両編成で代替するため運用数としては減少・武豊線2両運転は運用数としては同数となり、純粋に16運用が半減とはならず9〜10運用程度の構成に落ち着きそうです。

2025年度投入分の14本が浜松駅〜豊橋駅間のワンマン運転にまで進出するとは考えにくくなり、従来通り静岡車両区所属の315系がその役割を担いそうです。

静岡エリア〜次回改正で運用が更に変化?

静岡エリアでは315系14編成の投入が現在進行形で実施されていますが、現在の運用は313系2両を併結した6両編成での運転が基本となっています。

2024年3月改正で登場した4両運用には11月〜12月ごろと示されている御殿場線・身延線の富士駅〜西富士宮駅間が含まれており、本格的な4両運用への進出はこの頃になりそうです。

一方で、現在の4両編成運用には御殿場線の国府津駅〜御殿場駅と東海道線の三島駅〜沼津駅間が含まれていない点が特筆されます。

315系3000番台が2024年3月改正以前に運用を開始した線区が2026年3月とされていることから、最初の実施線区では丸2年、それ以降の線区では丸1年かけているようです。

先述の通り315系3000番台の画像認識を活用したワンマン化では撮影データ取得を運用線区で実施していることが推測できますので、2025年3月改正以降では315系4両運用に御殿場線の国府津駅〜御殿場駅と東海道線の三島駅〜沼津駅間が加わる運用構成になりそうです。

一方で、これまでの傾向から移行期間であっても要員数が増えるツーマン列車増加は避けていますので、まずは朝夕の313系2+2両の運用を置き換える形で御殿場線に315系運用を設ける……といった内容に落ち着きそうです。

気になる点としては、御殿場線が315系4両での運転が基本となった2027年3月改正以降、東海道線内で転換クロスシート車両比率が増加することでしょうか。日中時間帯は6両運転拡大で対処されるとして、朝夕時間帯の混雑は不評となりそうです。

313系初期車の置き換えも視野?

大手の鉄道事業者では昨今の減収減益や半導体不足などの影響を受けて既存の車両の延命を強いられる事例が散見されるなか、既存の車両に機器更新工事等を施さずに経年30年程度を目処に直接代替をするストロングスタイルを続ける鉄道事業者もJR東海と東京都交通局、あとは元々ライフサイクルが短めに想定されている気動車を採用している中小・三セク事業者くらいでしょうか。

JR東海のこのスタイルが変化しなければ、2030年ごろに313系初期車の代替時期に到達します。

313系初期車では日本車輌製造以外にも東急車輛・近畿車輛も製造に携わって一気に投入されましたが、JR東海の連結子会社となった日本車輌製造のみで後継車両を投入する方針であれば着手時期は意外と早めとなるかもしれません。

特に315系に搭載されたモニター表示イメージから6両編成でのワンマン運転想定をしていることは明らかで、これを実施するエリアとしては2024年3月改正で6両半固定化が実施されている静岡エリアの東海道線が想像しやすい状態です。

名古屋エリアで車内防犯カメラ搭載対象から溢れたのが313系300番台で、内装仕様が静岡エリアには不向きながら転出させたのも、将来的に313系初期車代替を見据えた動きだとすれば納得のいく内容です。

また315系投入の転用では、313系1300番台が静岡地区に転入し、しかも将来的に315系が投入される御殿場線を中心という中途半端な代替をしています。

これも御殿場線が4両ワンマン化された2027年3月改正時点では2両ワンマン車が過剰な状態(ツーマン区間で使用する状態)となるものの、2030年ごろの車両代替で身延線を中心に運用されている経年車の3000番台を置き換える際に東海道線へ6両ワンマン車を入れて玉突きで代替することを見越しているのであれば合理的です。

名古屋エリアについても313系0番台Y1〜15編成・300番台Y42〜Y46編成・1000番台J11〜J13編成・1500番台J151〜J153編成は8両固定編成を投入して置き換えることが予想しやすい一方で、飯田線で活躍する3000番台R101〜R116編成をどう置き換えるのかが気になるところです。

これまでの315系投入先と313系の転用のピースが綺麗にハマるのは313系初期車代替まで見据えているからであれば全て納得のいく内容で、昨今の各社が二転三転の車両計画となっている状況下で中長期の設備投資を見据えているのはさすがのひと言に尽きますね。

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