【困惑】3月に定期運用終了予定だった255系、6月末まで続投へ

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2024年3月のダイヤ改正発表では、京葉線のダイヤ改正の話題とともに注目されていた房総特急の車両代替。

2月10日より開始されたダイヤ改正初日の事前予約で一部の房総特急に「グリーン車」の発売があり注目されていましたが、翌11日に公表された労組資料により6月30日まで一部の運用がE257系5両編成から255系9両編成またはE257系10両編成へ変更されることが明らかになりました。

大規模な減車が計画されていた房総特急

JR東日本は2023年12月15日、翌2024年3月16日(土)のダイヤ改正概要を公表していました。

千葉エリアでは京葉線の大規模な速達種別の各駅停車化が注目されていましたが、成田空港特急「成田エクスプレス」、総武本線特急「しおさい」、外房線特急「わかしお」、内房線特急「さざなみ」は既存の車両運用の垣根を取り払った大規模な輸送体系変更が計画されていました。

「しおさい」の大半を「成田エクスプレス」用だったE259系使用とし、「わかしお」「さざなみ」は従来9,10両だった列車もE257系5両に置き換えるものとなっていました。

これらの車両運用効率化による255系定期運用離脱は、JR東日本が高崎線特急「スワローあかぎ」から進めていた新たな料金体系に基づいた全車指定席化を房総特急でも適用することに加え、「成田エクスプレス」の空港2駅を含まない区間での乗車にも同様の料金を適用することで東京〜千葉間をはじめとする特急の短〜中距離需要もシフトさせる狙いが見える複雑な内容となっていました。

車両が変更される列車をみる

今回255系使用へ変更対象となったのは、外房線特急「わかしお」下り6本,上り5本と内房線特急「さざなみ」1往復です。これに加えて「わかしお2号」1本はE257系5両編成から10両編成へ変更されています。

新旧時刻の変更とともに比較すると、255系の充当列車自体も大きく変化している点が特徴的です。

・下り 新旧ダイヤと使用車両比較

改正前始発駅終着駅車両改正後始発駅終着駅車両
わかしお1号東京7:15勝浦8:45E257わかしお1号東京7:15勝浦8:45E257
新宿わかしお新宿7:18安房鴨川9:36255新宿わかしお新宿7:22安房鴨川9:36E257
わかしお3号東京9:01安房鴨川10:54255わかしお3号東京9:00安房鴨川10:53E257
255
わかしお5号東京10:00安房鴨川11:59E257
一ノ宮まで10両
わかしお5号東京10:00安房鴨川11:59E257
255
わかしお7号東京11:00安房鴨川12:52E257わかしお7号東京11:00安房鴨川12:52E257
わかしお9号東京13:00安房鴨川14:52E257
わかしお9号東京14:00安房鴨川15:53E257
255
わかしお11号東京15:00勝浦16:26255
わかしお13号東京17:00勝浦18:26E257わかしお11号東京17:00上総一ノ宮18:01
勝浦18:31(特定日)
E257
255
わかしお15号東京18:00上総一ノ宮19:03E257×2わかしお13号東京18:00勝浦19:30E257
255
わかしお17号東京19:00勝浦から普通
安房鴨川21:06
E257
一ノ宮
まで10両
わかしお15号東京19:00勝浦から普通
安房鴨川21:03
E257
わかしお19号東京20:00上総一ノ宮21:06255わかしお17号東京20:00上総一ノ宮21:08E257
わかしお21号東京21:00勝浦から普通
安房鴨川22:59
E257×2わかしお19号東京21:00勝浦22:32E257
255
わかしお23号東京22:00勝浦23:26E257×2わかしお21号東京22:00上総一ノ宮23:03E257

・上り 新旧ダイヤと使用車両比較

改正前始発駅終着駅車両改正後始発駅終着駅車両
わかしお2号茂原6:09東京7:08255わかしお2号茂原6:08東京7:08E257
×2
わかしお4号勝浦6:44東京8:25E257
わかしお4号勝浦7:26東京9:03E257×2わかしお6号勝浦7:27東京9:02E257
255
わかしお6号安房鴨川7:39東京9:34E257×2わかしお8号安房鴨川7:39東京9:35E257
255
わかしお8号安房鴨川8:39東京10:37E257わかしお10号勝浦9:07東京10:37E257
わかしお10号勝浦10:36東京12:05E257
わかしお12号安房鴨川11:41東京13:36255わかしお12号安房鴨川11:41東京13:36E257
255
わかしお14号安房鴨川14:06東京16:04E257わかしお14号安房鴨川14:08東京16:04E257
わかしお16号安房鴨川15:35東京17:34E257
一ノ宮から10両
わかしお16号安房鴨川15:42東京17:34E257
255
新宿わかしお安房鴨川16:20新宿18:29255新宿わかしお安房鴨川16:20新宿18:29E257
わかしお18号安房鴨川16:39東京18:41E257
一ノ宮から10両
わかしお18号安房鴨川16:42東京18:41E257
255
わかしお20号勝浦18:14東京19:42255わかしお20号勝浦18:10東京19:42E257
わかしお22号上総一ノ宮19:28東京20:37E257×2わかしお22号
特定日のみ
勝浦19:03東京20:39E257
わかしお24号勝浦20:08東京21:40E257
一ノ宮から10両

狙いはどこに……?

E259系の塗色変更が2023年3月には公表済みであったことからも分かるように、房総特急の世代交代をE259系「しおさい」投入とE257系500番台の運用持ち替えというダイヤ改正発表内容を前提に検討が進められていたことが明らかな状態でした。

短い期間で決められた内容ではないことは明らかな変更を、ダイヤ改正の直前……それも座席発売開始直前の近々のタイミングで覆すことは労組・会社双方が認めているように「異例」の内容です。

余剰車両となる255系を検査時期まで効率的に活用することが目的であれば、そもそも計画時点で段階的な置き換えを進める手順を組んでいたはずで、255系の活用以外の何らかの事情があってやむを得ず使用車両を変更する必要が生じたものと考えられます。

255系とE257系の運用数は、運用順序は不明ながらダイヤ構成から下記のような運用構成が推定されます。

3/18〜6/30 255系充当運用推定 (青字は平日のみ)

○幕張-回送-君津 7:39-さざなみ6号-8:48 東京 9:00-わかしお3号-10:53 安房鴨川 11:41-わかしお12号-13:36 東京 14:00-わかしお9号-15:53 安房鴨川 16:42-わかしお18号-19:41 東京 19:00-わかしお15号-21:03 安房鴨川△

○安房鴨川 7:39-わかしお8号-9:35 東京 10:00-わかしお5号-11:59 安房鴨川 15:42-わかしお16号-17:34 東京 18:00-わかしお13号-19:30 勝浦△

○勝浦 7:27-わかしお6号-9:02 東京-回送-京葉セ-回送-東京18:30-さざなみ3号-19:40 君津-回送-東京 22:00-わかしお21号-23:03 上総一ノ宮-回送-幕張△

3/18〜6/30 E257系充当運用推定 (青字は平日のみ)

○幕張-回送-佐倉 6:52-しおさい4号-7:43 東京-回送-幕張-回送-東京 20:45-しおさい11号-21:33 佐倉-回送-幕張△

幕張-回送-木更津 7:03-さざなみ4号-8:12 東京-回送-京葉セ-回送-東京 19:30-さざなみ5号-20:37 君津-回送-幕張△

幕張-回送-茂原 6:08-わかしお2号-7:08 東京-回送-幕張セ(解結)-回送-東京 17:30-さざなみ1号-18:36 君津-回送-東京 20:30-さざなみ7号-21:41 君津-回送-木更津△

○木更津-回送-君津5:52-さざなみ2号-6:57 東京 7:15-わかしお1号-8:45 勝浦 9:07-わかしお10号-10:37 東京 11:00-わかしお7号-12:52 安房鴨川 14:08-わかしお14号-16:04 東京 17:00-わかしお11号-18:01 上総一ノ宮-回送-東京 21:00-わかしお19号-22:32 勝浦△ ※特定日わかしお11号勝浦延長・臨時わかしお22号で運転

勝浦 6:44-わかしお4号-8:25 東京-回送-勝浦 18:10-わかしお20号-19:42 東京 20:00-わかしお17号-上総一ノ宮-回送-幕張△

幕張-回送-茂原 6:08-わかしお2号-7:08 東京-回送-幕張セ(解結)

パッと思いつく経緯としては、使用車両のE259系・E257系500番台の改造が間に合わないなどといった事例が思い浮かびます。

特にE257系500番台については当初計画から255系使用に変更された3運用分が減少、朝の増結で1運用増となっているものとみられ、平日6編成稼働・土休日は新宿発着臨時3運用が加わって5編成稼働と配置数10編成に対してかなり少ない数に留められており、何らかの理由でE257系の稼働数自体を抑えている印象も受けます。

しかし本改正に関連して整備したとみられるコンセント設置工事は2023年内に10編成全てで施工済みとなっています。

また500番台では東海道用・波動用編成と異なり機器更新工事が未施工となっていますが、同様の工事の対象に加えたとしてもこの3ヶ月間で集中的に実施することは考えにくいものですし、半導体不足なのか車両投入計画の変更なのかで中途半端な機器更新車が一般タイプで相次ぐなかでそのような部品供給がされているとも考えにくい状態です。

こちらも機器更新工事が決まっていたのならば元々255系を併用する前提のダイヤ・運用構成にしていたはずでは?という疑問が拭えず、目的に沿った対応には見えません。

そしてE259系の改造都合であれば「しおさい」使用車両が変更されるはずですし、塗色変更も順調に進んでいてこの因果でもなさそうです。

これらの車両改造の都合を排除出来るならば、「さざなみ3号」以外はダイヤ改正前に255系9両編成やE257系10両編成が使用されていた需要が高い列車が“増車”対象としている点から座席供給数の都合と考えることができます。

これまでのJR東日本の特急料金体系移行・ライナー列車の特急化では、高崎線・常磐線・中央線・東海道線いずれも料金改定前と同等の座席数を提供していました。

特に値上げ幅が利用に影響したと言われている、乗車距離が50kmを超える利用が多かった「湘南ライナー」の特急化ではライナー時代より利用が低下している印象で、房総特急の料金改定も過去の他路線特急で見られた利用者数変動を織り込んで計画されていることは想像に難くありません。

ただし、これら過去の列車群は同等程度の輸送力を提供したのちに適正化を進めており、今回のような料金改定と同時の大規模な減車は(車両運用都合で生じた中央線ライナー19時台始発減便を除き)発生していませんでした。

これらの過去事例を考えると、ダイヤ改正後の一定期間は利用者数変動のデータを取得出来るまで座席供給数を確保する方針に急遽変更された……と考えると納得がいく内容です。

このほかの背景事情として、京葉線の朝夕通勤ラッシュのダイヤ変更とその後の沿線自治体・利用者からの批判もありそうです。

今回のダイヤ改正は外房線・内房線発着の利用者にとっては大規模な所要時間増で、代替手段にもなる京葉線経由の通勤特急の減車を同時に実施したことで、改正後に特急の輸送力が足りず批判が噴出する事態を避ける狙いもありそうです。

7月1日という日付は「季節の臨時列車」“春”と“夏”の境界となっており、まずは春の4ヶ月間のみを変更の対象とした……といった解釈もしやすい内容です。

この6月29日または7月1日が京葉線のダイヤ修正の目処となっているのか、単に季節の境目で以後未定となっているのかは定かではありませんが、元の改正案が酷い内容だったなかで場繋ぎ的ながら柔軟な調整をした点については評価したいポイントです。

そして趣味目線では現在定期運用がない「さざなみ 君津行き」255系が見られるほか、従来と異なる運用体系から離合・交換などで新たな光景も見られそうです。

「しおさい」から撤退する前の記録はみなさん済ませているかと思いますが、255系が「ビューわかしお」「ビューさざなみ」で活躍していた頃を彷彿とさせる京葉特急に専念する姿が再び見られる点は新たな楽しみとなりました。

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コメント

  1. 竹藪4WD より:

    「新旧ダイヤと使用車両比較」の改正前ダイヤにおいて、新宿わかしおの使用車両が255系となっていますが、正しくはE257系ですよ。
    新宿さざなみ(1・4号)の方が255系です。時刻表を見てもグリーン車連結の有無で明らかです。

  2. とある通りすがり より:

    学旅集約臨絡みとかかもしれませんね。
    今回のダイ改でいきなり減車通達が来て学生担当が激怒してましたから、、、
    相当数の学校修旅が行程見直しを強いられたようですので。