【JR5社目】東急「ザ・ロイヤルエクスプレス」静岡,浜松で運行へ

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JR東海と東急株式会社は2024年5月30日、「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤル・エクスプレス)を横浜から静岡・浜松エリアで運行するクルーズの催行を明らかにしました。

これまでJR東日本、JR北海道、JR西日本・JR四国管内で運行実績があり、JR旅客会社での運行は5社目の事例となります。

北海道を皮切りに各地へ

「THE ROYAL EXPRESS」は、2017年から横浜駅~伊豆急下田駅間を中心に東急株式会社が催行するクルーズ列車(旅行商品・団体臨時列車扱い)として運転されており、伊豆急行所有の2100系R-5編成を改造して運用されています。

2020年夏季より「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」としてJR北海道管内でも運行が開始され、2024年1月からは「THE ROYAL EXPRESS ~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」として瀬戸内エリアでの運行も実施されています。

これらのクルーズでは車両の送り込み・返却をJR貨物による甲種輸送、現地では機関車牽引の客車扱いで運行されており、昨今では数少ない機関車牽引の営業列車という点や通常運行エリアからかなり遠方で運行される点などファンからも注目度が高いものとなっていました。

そして、2024年5月30日には「THE ROYAL EXPRESS~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~」として、横浜発着で三島、静岡、浜松と静岡エリアを幅広く運行するプランが新たに公表されました(JR東海PDF東急)。

2024年11月8日から12月16日までの6週間、金曜発月曜着の日程で運行されます。

このうち「THE ROYAL EXPRESS」を使用する区間は下記の通りです。

「THE ROYAL EXPRESS~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~」

1日目(金) 横浜駅11:50頃発→富士川駅→三島駅15:00頃着

2日目(土) 沼津駅11:00頃発→新居町駅14:30頃着

3日目(日) 浜松駅11:00頃発→静岡駅14:00頃着

4日目(月) 静岡駅11:00頃発→横浜駅15:00頃

公表されたイメージイラストから、今回のクルーズは自走形式での運転とみて間違いなさそうです。

伊豆急行2100系のJR東海管内の自走事例はこれまでなく、初の動きとなります。2004年までJR東海所有の113系が伊豆急行に乗り入れていた実績がありましたが、逆の動きが20年越しに見られるようになるのは意外な展開です。

ダイヤも横浜駅11:50頃発と初日の横浜駅から熱海駅までは従来の伊豆急下田駅発着「THE ROYAL EXPRESS」の運転時刻と合致します。

踊り子52号の時刻で伊豆高原から送り込み回送をし、横浜駅7番線で折り返して踊り子61号の時刻で下る、ここまでは従来のパターンとなりそうです。

最終日もJR東日本管内は踊り子58号で運行されたのち踊り子65号の時刻で伊豆高原へ返却回送と推測でき、こちらもJR東日本管内で特段の寄り道はなさそうです。

あとは普通列車や貨物列車も数多く行き交うJR東海管内でどのようなダイヤが組まれているのかが注目ポイントとなりそうです。

富士エリアの通過が1,2,4日目に散らされており、初日に天候が恵まれなくとも旅程中のどこかで富士山を楽しめるよう工夫が凝らされており、参加者はもちろん沿線で富士山と絡めて撮影をしたいファンにとっても嬉しい設定です。

また、浜名湖を渡る2日目も午後に新居町駅に到着するスケジュールで、こちらも順光時間帯に弁天島駅〜新居町駅の浜名橋梁を通過する設定で想像するだけで楽しみな列車設定となっています。

車両の動きとしては単純に沼津・浜松・静岡の各車両区に留置されそうですが、その気になれば毎日所属区に戻せる距離感なだけに異なる動きとなるのかもしれません。

2024年は伊豆での運行なし?

2024年は1月から3月にかけて瀬戸内エリアでのクルーズ列車に使用されたのち、4月から6月は定期検査施工により運転を行なわないことが示されていた「ザ・ロイヤルエクスプレス」。

検査明けの運用は7月から9月にかけて今年で5周年を迎える北海道エリアでのクルーズであることもこれまで示されていました。

11月上旬から12月中旬という期間設定を考えると、10月に入ってから北海道から甲種輸送で伊豆高原に帰ってきて電車としての整備を終えたらすぐにJR東海への入線確認・乗務員訓練、オペレーション訓練をするスケジュールが想像されます

これに加え、そのあと2025年も1月〜3月の期間に瀬戸内クルーズを実施するのであれば、前年と同様に年末年始の貨物列車運転本数が減って余裕がある期間に発送する動きが想像されます。

2022年までは12月の最後に「クリスマスクルーズ」を実施していましたが、2023年はこれが12月6日到着分で終了となる前倒しのスケジュールが組まれていました。

今回の静岡エリアでの催行も12月16日到着分で終了と少し早めで、再び四国行きの準備期間を設けているような印象も受けます。

もはや伊豆半島に運行する期間の方が短くなってきた「THE ROYAL EXPRESS」。

他エリア催行が高倍率で人気だった話は過去の催行時の発表でも積極的に発信していたので、今後も各地で活躍が見られそうです。

一方で、当初目的だったはずの伊豆エリアでの催行頻度の低さもちょっと気掛かりです。

伊豆半島での催行頻度が下がることで結果的に1催行あたりの参加者数も増えてくる腹積もりなのかもしれませんが、たまには比較的リーズナブルに乗車出来る“本業”での活躍も見たいところです。

各社でひそかな越境ブーム

これまで全国各地の観光列車では、大規模検査時期に列車愛称や内装仕様などを改めるリブランディングをする手法が各地で見られましたが、走らせる路線自体を変えるというアクセントを加える手法は他の事業者でもどんどん応用されていきそうです。

これまで会社間での調整の煩雑さなどから自社管内完結とされていた観光列車についても、会社跨ぎでのクルーズ列車運行の先行事例や収益性が他社事例で認められれば新たな越境も見られるかもしれません。

近年の先行事例では、北陸新幹線並行在来線各社では観光列車の“相互乗り入れ”が以前からときどき実施されているほか、最近では東武鉄道「DL大樹」の会津若松乗り入れツアーなども催行されているなど、投入から少し期間が経過した観光列車を通常の運行範囲外で活用する取り組みが各社・各地で見られます。

コロナ禍の収益減で負った傷が新たな観光列車を開発・投入する予算を組みにくくさせている背景事情もありそうですが、これらの取り組み自体は既に乗車済みの層や遠方に居住している層への訴求力が強い印象を受けます。

会社間の壁を越えた列車運行では、通常の運行エリアから遠ければ遠いほどインパクトは強く、2012年に実施されたアンパンマントロッコのJR東日本エリアでの運行は子どもから大人まで元気付けられるビックイベントとなりました。

庶民としては「カシオペア」から「WEST EXPRESS 銀河」あたりの手が届きそうな価格帯のクルーズ列車が登場してくれると嬉しいという気持ちもありつつ、こういった越境の動きだけでもやはりファンの心をときめかせてくれます。

……今回のプロジェクトで親睦がより深まるであろうJR東海さんと伊豆急行さん、手始めに今回のクルーズで乗務員訓練を実施済みとなることを活用して“黒船電車”や“キンメ電車”使用の直通臨時特急などはいかがですか?

途中で進行方向が変わる形態でも問題ない座席構造、河津桜最繁忙期土休日に普通列車運用を避ける“リゾート21”の運用特性などともピッタリな印象です。

近年のJR東海の会社方針がどんどん柔軟になってきた昨今、JR東海が久しく所有していない観光用の車両が再登場することにも期待したいところですね。

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コメント

  1. あんず より:

    これでJR九州にも入ればJRグループ完全制覇となりますよ。