【315系】JR東海・在来線新型電車開発着手へ〜仕様と置換を考察

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JR東海が新年早々ファンを賑わせています。

長年製造を続けてきた313系に続き、新型車両315系の開発に着手する旨が報道されています。

報道内容が限定的ですので、車両の仕様・投入路線・置き換え対象の今後などを考察します。

315系開発着手の報道

報道各社が伝えている、315系についての内容を整理すると下記の通りとなります。

・2020年度中に開発着手

・形式名称は315系

・置き換え対象は211系・213系・311系

今回明らかになっている内容はそこまで多くはありません。

デビュー時期・車両の仕様・置き換え車両の今後などは推測の域をでないものとなります。

新型車両はどんな形態になる?

全くその仕様が明らかになっていない315系ですが、JR東海の最近の車両動向、同業他社の新型車両などからある程度の推測が可能です。

在来車の傾向と、最近姿を現したばかりの新型特急車両・HC85系がヒントになりそうです

まず、外観として、長年にわたり製造を続けてきた313系で最後まで維持されてきたビートプレス工法ではない車体と考えて差し支えないでしょう。

同業他社で未だにこの車体を作っている車両はありませんし、JR東海自身も313系設計のキハ25形では2次車以降で車体設計を見直しました。

前面形状の変化も気になるところですが、こちらは何とも言えません。

313系では、キハ75形・キハ25形といった非電化路線向けの車両と最大限の共通化が図られたため、同一の前面形状を踏襲してきました。

人身事故などで破損するリスクを考えると、予備品共用が出来るように仕立てるかもしれません。

前面貫通扉が廃される可能性はかなり低いので、313系の顔立ちをベースにライト形状を最近のトレンドに寄せる……あたりが想像できますね。

行先表示器については、313系の後期車両のフルカラーLEDが設置される可能性も捨てきれませんが、HC85系で採用された大型のユニバーサルデザイン対応のものが設置される可能性が高そうです。

走行機器類ですが、こちらもHC85系に新たに搭載された機器類が一部共用となる可能性が非常に高いでしょう。

従来車でも先述のように同世代で電化向け・非電化向けで共通化されていたり、311系と211系5000番台で設計が酷似していたり、ディーゼルカーもエンジンを揃えたりと、様々な共通化が実施されています。

同業他社でも一般的な方法ですが、特にJR東海は黎明期からこれらの合理化を積極的に行っていました。

今回もあえて異なる機器を使用する理由がないものについては、並行製造となるHC85系と共通化されるとみて間違いなさそうです。

走行機器類に関しては、HC85系からエンジンを外しただけの設計であっても不思議ではありません。

HC85系では従来のJR東海車両では見かけなかった機器を多く採用されていますので、HC85系開発の時点で共通化を見越しているとも捉えることが出来ますね

内装については、JR東海在来線車両では採用してこなかった液晶ディスプレイ方式の車内案内・広告画面設置が考えられます。

新幹線の最新型・N700S系では他社でみられない寸法でJR東海初の車内液晶ディスプレイ導入が行われています。

在来線では他社で標準的な17インチワイドディスプレイとなるか、それとも個性的なものを設置するか、はたまたHC85系で採用されたフルカラーLED・ユニバーサルデザインの車内案内装置とされるのか。

少なくとも名古屋地区向けについてはクロスシートとなるかと思うので、これらの配置も気になるところです。

先輩格の313系では、長年の製造過程で路線ごとに特化した細密な番台区分が行われてきました。

315系についても、置き換え対象の用途がバラバラですので、番台区分などが多岐にわたる可能性が高いでしょう。

置き換え対象は211系・213系・311系

今回報道されている置き換え対象として、211系・213系・311系の3形式が挙げられています。

彼らの全てが直接置き換えられるのか、特定路線への集中投入で313系の玉突き転用が行われるのかは明らかになっていませんが、経年車から少しずつ置き換えを進めていくものとみられます。

まず211系ですが、彼らは0番台と5000番台に大別されます。

2編成8両のみとなっている0番台ですが、こちらについては国鉄分割民営化前の車両=国鉄型となりますので、国鉄型全車両引退の報道から廃車は確実とみられます。

国鉄分割民営化から30年が経過しましたが、国鉄生まれの車両が全廃されるJRの会社は初となります。

一方で、大幅な改良が行われ、別形式と言っても差し支えない211系5000番台・6000番台も置き換え対象と報じられています。

0番台よりは若い車両ですが、こちらも少しずつ置き換えが進められる模様です。

同世代の国鉄末期開発の車両~JR化後も製造された例として、JR東日本の205系や211系が近い存在ですが、JR東日本211系が高崎地区・甲府,長野のローカル線区に再転用されたばかりであることを考えると、早いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、JR東日本についても、2021年度以降のE235系の製造により、E231系近郊型のローカル線区転用が組合情報・走行機器類更新工事見送りなどの車両の動きなどから確実な情勢ですので、どちらが先に211系の置き換えを完遂するかは微妙なところです。

一方の213系ですが、2扉クロスシートという使い勝手の悪さから淘汰は妥当なところでしょう。

119系置き換え以降、飯田線を中心に活躍していますが、そのドア数から左遷された背景を考えると、少数形式であることもあり、211系より先に淘汰が完遂する可能性が高そうです。

余談ですが、211系・213系については他社への再就職も考えられますね。

特に213系は、ワンマン対応設備が充実している珍しい2扉車の2両編成ということで、20m級の電車が入線可能な地方私鉄にとっては欲しい車両でしょう。

トイレ設備・クロスシートが不要な会社も多いかとは思いますが、静岡地区の211系ならその対応は無改造で行えます。

VVVFインバータ制御・回生ブレーキが大手の主流となった昨今、変電所設備増強という負担がない界磁添加励磁制御であるという点も中小私鉄にとっては嬉しいポイントです。

119系に続く211系・213系の地方私鉄譲渡、どこかしらが手を挙げるのではないでしょうか。

意外と感じる方も多かったのは311系でしょうか。

JR東海初の通勤型の新規形式で、313系の直属の先輩車両です。

同世代として括られるのはJR西日本の221系・JR四国の6000系・JR九州の811系が挙げられます。

製造経緯も211系世代の設計を継承した、JR黎明期の車両という点で共通していますね。

どれも第一線で活躍している形式で、機器更新工事などが近年施工されていることを考えると、やはりJR東海の車両置き換えペースと経済力の強さを感じさせられますね。

尤も、直接的な置き換え対象であることのみが報道されていますので、全車両の引退は大分先となるとみられるほか、そもそも211系のうち国鉄製造の8両のみが「廃車」として明らかにされている車両です。

全車両の完全引退までの道のりなどは明らかにされていませんので、それぞれの形式消滅はだいぶ先のこととなりそうです。

311系と211系5000番台の製造時期ですが、実は並行製造された車両同士です。置き換えも同時進行となる可能性は十分に考えられますね。

また、117系の先例のように、晩年に311系の優等列車や豊橋以東への直通運用が設定されない……という可能性もありますので、現在の311系の姿を記録するのは早めに越したことはないでしょう。

報道済の置き換え対象と現在の活躍路線

● 東海道本線 名古屋エリア

311系(4両編成):15編成60両

● 中央西線

211系0番台(4両編成):2編成8両

211系K編成(4両編成):20編成80両

211系K100編成(3両編成):17編成51両

● 東海道本線 静岡エリア

211系LL編成(3両編成):20編成60両

211系SS編成(3両編成):11編成33両

211系編成(2両編成):9編成18両

● 飯田線

213系編成(2両編成):14編成28両

全車両合計 338両

ファンからは静岡地区の改善に期待

ファンの方にとって気になるポイントとしては、静岡地区の輸送体系改善があります。

211系のうち、東海道本線の豊橋以東で使用されている5000番台・6000番台については、ロングシート・トイレ無しという仕様となっています。

現在も一部のロングラン列車でもトイレ無しという状態が続いています

JR東海側もこのこと自体への理解はあるようで、なるべくトイレが付いた313系との連結で運用するように車両運用を設定してきました。

静岡地区の211系代替車両が直接投入か、他線区のお古かは推測の域を出ませんが、いずれにせよトイレ無しという状況については改善される可能性が高そうですね。

一方で、こちらも長年ファンを中心に要望が多い静岡地区の快速列車運行や、クロスシート車両の導入については疑問符が付くところです。

静岡地区では、国鉄由来の113系の代替車両として現在の車両群を投入してきましたが、この際に113系以上に小回りが効く両数でロングシートとすることで、車両連結数の減少をしています。

経営上の合理化としては妥当ではあるほか、中小駅の利用者も多い=旅客の入れ替わりが激しい静岡地区の輸送体系に沿っていると考える方も多いかと思います。

ただし、混雑するなら増結するのが本来あるべき姿です。

本来なら、混雑路線である名古屋地区こそクロスシートではなくロングシートを導入するのが筋ですが、こちらは名鉄という競合路線があることからクロスシート車両で速くて快適な輸送……といった背景があります。

静岡地区の競合路線は速くて快適な自社の新幹線ゆえに、ファンから「新幹線誘導」などと揶揄される静岡地区の現状ですが、30分に1本しかないこだま号の輸送体系が変化する可能性があるリニア開業が控えていますので、今後もあまり期待は出来ないですね。

青春18きっぷは通勤・通学利用が落ち込む時期の増収策として設定された経緯がありますので、この時期に向けた投資をすることは本末転倒……と考察する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただし、JR東海では、ライナー・優等列車用の車両を普通列車で使っている例が多く存在します。

特急型車両373系についても、身延線特急ふじかわ号の間合いでホームライナー運用をした車両を更に普通列車で活用しています。

それどころか、中央西線・名古屋〜中津川の着席サービスとしてデビューしたセントラルライナーが不振に終わり、現在は使用車両の313系8500番台も一般車両に混ざって同路線の普通・快速などで活用しています。

ただ単に増車をすることは収益改善にならないことは明らかですが、持て余し気味の313系8500番台が新たなお金を生み出してくれるなら、JR東海にとっても利用者にとっても悪くない話だと思います。

例えば、普段は普通列車とホームライナーで活躍しつつ、青春18きっぷシーズンに三島〜豊橋を主要駅停車で結ぶ有料快速列車……500円くらい払ってでも乗りたいという利用者も多いのではないでしょうか。

JR東日本がほとんどの列車に連結するという大胆な施策で利用者が定着した普通列車グリーン車や、JR西日本もA SEATといった着席サービスを始めている昨今ですが、JR東海はセントラルライナーが失敗に終わって以来、有料着席サービスには消極的になっています。

平日だけでなく、土休日もホームライナーを走らせ続けている東海道本線静岡地区ですが、今後のサービス・優等列車の設定は注目点となりそうです。

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コメント

  1. 広岡リモコン江尻 より:

    >20m級の電車が入線可能な地方私鉄にとっては欲しい車
    20m車といっても幅が2950mmのいわゆる幅広車なので、入線可能な地方私鉄は国鉄やJRからの乗入があったり、過去にあったところに限られそうですね。
    思いつくのは長野電鉄、秩父鉄道、富山地鉄、富士急行…とか。

  2. 豚犬 より:

    どの車輌も 中小私鉄でなくても、JR西日本なら行き場があると思うなぁ、113系や115・117系沢山居るしなぁ

  3. 井田清助 より:

    長文失礼します。
    JR東海の傾向だと、直接置き換えだと思われます。
    313系のような形態になりそうだと思います。
    211系や311系は、3ドアかつ20m車なので、20m車が入れる中小私鉄にとっては、大きな出物と考えられる。
    213系は、朝夕ラッシュがひどくない中小私鉄が欲しがるかも?
    考えられる譲渡先
    三岐鉄道しかおもいつきません。
    ただ、三岐鉄道は、西武の車両を使っているため、西武からだと4ドア車に限られるし、出物が思いつかない。今どき3ドア20m車はあまりない。
    そうなると、トイレ無し・ロングシートの211系が来る可能性がある。
    801系の西武カラー復刻もその布石となると、辻褄が合う。

    • 通りすがり より:

      311系ですが早朝岐阜行きと掛川まで乗り入れがあります。うわさだと311はあまり静岡運転所では評判が悪いらしい(クロスシート)静岡はロングシートが好きらしい、以前に静岡で花の木金号でこの電車をかりやったことがあります。しばらくたって木金号は廃止になりました。
      315系ですが、あくまでの予想は静岡もロングシートと思います。まず、試験的に中央線に4~6両をいれ静岡地区に2~3~4両編成をいれるかもです。あくまでも予想ですが、

  4. Motsubishi Electric より:

    大変面白い記事ですね。技術屋の観点からちょっと補足してみます。
    ・211,311系のような直流モータは、もはやメーカが作っていないので壊れたらどうしようもないのです(修理専門のニッチ業者はあるようですが…)
    JR東海が211系ならしも、311系もやめちゃう理由としては、直流機のメンテナンスをやめたい理由が大きいからだと思います。
    (大井川鉄道は今でも直流機バリバリですが、モータのメンテもできるのかな?!)
    ・主回路装置ですが、HC85は東芝PMSMであることが公開されています。315系はSiCとしかまだ発表がありませんが、PMSMではない可能性があります。
    PMSMは装置価格が高いので、大量に置き換える315系では、313系の東芝デュアルモードタイプをハイブリッドSiCにしただけの可能性が高いと思います。つまり名鉄9500系と同じですね。
    …ちょっとメカ視点になってしまいましたが、楽しんで頂けたらと思います。

  5. みずほ800 より:

    おはようございます。
    315系なんですが、2両編成も製造してほしかったです。ラッシュ時の列車増結や閑散時の短編成運用にも対応できるよう。

    また、客用ドアの押しボタンは設置されるのでしょうか?
    それも気になります。