JR東海より、最近話題を集めていた新型通勤型車両・315系の詳細が発表されて話題となっています。
当サイトでも以前に仕様の予想もしておりましたが、発表された内容とともに、今後の展開を考察します。
既報の内容と新情報を整理
正月にファンを賑わせた315系製造計画では、車両形式名が“315系”となること、代替車両は211系・213系・311系となること程度の情報のみが解禁されており、様々な推測が飛び交っていました。
今回のプレスリリースにより、車両の特徴やデザイン、投入計画、製造両数といった多くの情報が新たに判明しています。
外観〜正当進化?曲面ガラスは非採用か
前面デザインについては、「直線を使用した幾何学的な形状」とされており、313系で曲面ガラスを使用していたのとは対照的な、平面主体の前面形状となっています。
ライト形状が未発表ですが、東急8090系・8590系に似た顔立ちといったところでしょうか。
車体としては、多くのファンの予想通り、ビートプレス工法から脱却したボディが採用され、キハ25形の2次車以降・HC85系に続く動きとなります。
また、従来のJR東海車両では、頑なにコーポレートカラーのオレンジの細帯で統一されてきました。
今回の315系では、JR東海の通勤型車両では初めて帯から窓の高さへのラッピングに変更されています。
東武50000系やJR西日本の323系を連想されたファンの方も多そうですが、これも近年のホームドアで隠れないデザインという背景が考えられますね。
どこかでみたことがあるような外観……という辺りはJR東海らしい車両でしょうか。
内装〜トイレとロングシートが注目
内装面について、ファンからの注目度の高い点としては、腰掛についてロングシートである旨が記載されている点でしょうか。
113系・115系はセミクロスシート=ボックスシート、211系ではオールロングシート、新快速用の117系・311系ではクロスシートとまちまちになっており、313系では静岡地区の大半がロングシートとなったものの、それ以外の線区はクロスシート車両となっていました。
また、315系では編成に1箇所の車椅子対応トイレの設置が掲げられており、これによってJR東海が保有する電車については全ての列車・編成にトイレが設置されることとなります。
そして、JR東海の在来線車両としては初となる液晶ディスプレイを使用した車内案内装置が採用されています。
このほか、LED照明の採用や車椅子スペースの全車両への設置といったトレンドの取り入れや、JR東海の車内保安への強い拘りもあって1両辺り5箇所の防犯カメラ設置も明らかにされています。
走行機器類
座席については様々な憶測を呼ぶ一方で、特に静岡地区で課題となっていたトイレがない列車については全廃となるのは長距離移動をするユーザーには嬉しいところですね。
走行機器類としては、SiC素子のVVVFインバータ制御の採用、HC85系同様の新しい台車の採用、保安装置・電力変換装置の二重化、車両〜地上のデータ通信によるメンテナンス、振動検知装置の搭載が明らかとなっており、この辺りはJR東海の昨今の車両に沿った改良といったところでしょうか。
JR東日本ではモニタリング保全への移行に全力を注いでいる印象ですが、315系も似たような検査体制が採られるかもしれませんね。
投入車両数から考える今後の展開
今回、315系は2025年度までの5年間で352両の製造を明らかにしており、既報の置き換え対象形式である211系0番台・同5000番台、213系5000番台、311系の総数である338両を超える製造となります。
このため、これらの置き換えは遅くとも2025年度までに完遂するとみて差し支えがないほか、JR東海管内のいずれかの線区で輸送力増強または予備車増配置が期待できます。
参考:置き換え対象車両と運用線区
【大垣車両区】 東海道本線名古屋地区 飯田線 | 【神領車両区】 中央西線 関西本線 | 【静岡車両区】 東海道本線 静岡地区 | 総数 | |
211系(0) | 配置なし | 4両×2編成 (K51,K52) | 配置なし | 8両 |
211系(5000) | 配置なし | 4両×20編成 (K1-K20) 3両×17編成 (K101-K117) | 3両×20編成 (LL1-LL20) 3両×11編成 (SS1-SS11) 2両×9編成 (GG1-GG9) | 242両 |
213系 | 2両×14編成 (H1-H14) | 配置なし | 配置なし | 28両 |
311系 | 4両×15編成 (G1-G15) | 配置なし | 配置なし | 60両 |
総数 | 88両 | 139両 | 111両 | 338両 |
5年間という比較的短期間で行われる車両代替となりますが、直接投入となるのか、既存車両である313系の転用を伴うのか否かについては不明のままとなります。
プレスリリースでは315系の投入先は「名古屋・静岡都市圏を中心に、中央本線、東海道本線、関西本線等」とされています。
腰掛仕様をロングシートと記載していますので、わざわざ名古屋地区のクロスシート車両を静岡地区に島流し……といった転用は考えにくいところです。
静岡地区については、従来同様のロングシートの新造車両の直接投入が濃厚でしょうか。
名古屋地区については神領から大垣へ313系1000番台等の転用などにより、311系と同数のクロスシート車両を名鉄と競合する東海道本線で維持する可能性は捨て切れません。
東海道本線名古屋地区へ投入するとは記されていないので、東海道本線への投入=静岡地区のこと……という穿った解釈もできます。
はたまた、混雑する名古屋近郊をロングシートの新造車両で統一して、313系を地方に飛ばす……という大規模な輸送体系の変化を行うかもしれません。
この辺りの采配の予想は難しいところですが、315系がオールロングシートと読めるプレスリリースがファンにとっては波紋を呼びそうですね。
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画像:JR東海ニュースリリースより引用
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