【9000系が対象か】東急電鉄が大井町線へ「新型車両」を投入・既存車の譲渡考察

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東急電鉄は2022年1月7日、運賃改定申請についての発表のなかで、大井町線への新型車両投入について発表しています。

形式・編成両数・代替対象などは明らかにされておらず、今後の車両の動きが注目されています。

運賃値上げと発表された「新型車両」

東急電鉄は2022年1月7日、「2023年3月の実施に向けて鉄軌道旅客運賃の改定を申請」(外部PDF)として、国土交通大臣宛に旅客運賃改定の変更認可申請をした旨を発表しました。

テレワークなどの新しい生活様式での定期利用者減少・従来より進めていた安全対策等の設備投資による維持費の増大を理由に挙げ、今後も高水準の鉄道インフラの維持・更新を適切に行うことを目的としています。

特に定期収入が緊急事態宣言解除後も低迷しており、関東大手民鉄で最低となる約3割減とされています。推測の域を出ないものの、沿線の平均所得が高いと言われる東急線ユーザーの属性が、テレワークが可能な業種・部署に勤めている比率が高かった……といった現状になったようにも見えますが、予想できなかった規模であることは間違いありません。

今後も人件費削減に直結する東横線ワンマン運転の推進なども続けられるものの、多くが初期投資・維持費ともに増大する安全性・快適性への投資となっており、至極納得のいく内容です。

今回の発表のなかで、「田園都市線に続き、大井町線で新型車両への置き換えを実施」の記述があります。

「新型車両」という単語が使用されており、単語の意味をそのまま解釈すれば新たな形式の可能性も否定できません。ただし、イメージ画像として6020系の写真が添えられているほか、他の記述で2020系・3020系・6020系を「新型車両」と記述していることや、まだ開発から年数が経過していないことを考えると、6020系の投入と考えることが自然です。

このほか、車両動向に関連が起きうる内容としては、大井町線の有料着席サービス「Q SEAT」について他路線への拡充を検討している旨の記述があります。

西武鉄道「S-TRAIN」が土休日に乗り入れる東横線については、既設の設備の活用と、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅の折り返し線整備が完了すれば土壌が整いそうです。今回の改定で運賃でのJR東日本との差が詰まるため、京浜間では割高・着席が難しい湘南新宿ラインのグリーン車に対抗出来る着席サービスとなりそうです。

田園都市線についても着席ニーズは高そうですが、田園都市線は渋谷駅の改良が完了しない限りは難しそうな印象も受けます。

東急電鉄の路線網では、いずれも直通先との連携が不可欠となるため、運転体系が気になるところです。

置き換え対象は9000系のみ?9020系も含む?

今回の発表は代替される車両についても示されておらず、どのような動きとなるのかは現時点では明らかになっていません。

一方で、大井町線所属車両のうち、急行用の6000系・6020系が置き換え時期でないことは明らかです。東横線から大井町線に転用された(9007Fのみ新造時から大井町線所属)、各駅停車用の9000系5両編成15本が主な置き換え対象と考えることが自然です。

発表時点で全編成をすぐに代替する計画なのか、部品確保のために一部廃車のみが決定しているだけなのかが不明されますが、後者だとしても遠くないうちに淘汰が考えやすいところです。

一方で、同世代ながら田園都市線から転用された9020系5両編成3本の動向はファンの予想も割れています。機器更新をしてからまだ日が浅く、主要機器の減価償却さえままならない状態です。内装工事も9000系で行われたシートモケットのみの交換ではなく、床面なども張り替えられており、まだまだ使用されると考えることも出来る状態です。

なぜ置き換えを進めるのか

東急9000系は製造時点からVVVFインバータ制御を採用している見た目も若い車両ですが、東急8500系の後期製造車両と9000系の初期製造車両の経年は大差なく、代替が検討される時期としては少し早い印象こそありますが妥当な範囲です。

東急9000系は2022年時点で経年31年〜36年で、実際に置き換えが進められるのは目黒線,新横浜線の増結作業・8500系の淘汰・デジタル無線工事などで逼迫する長津田検車区に空きが出来る2022年度後半以降、または2023年度以降です。40年程度を代替時期としている事業者が多いものの、関東ではJR東日本や東急電鉄などはリニューアルを走行機器類と最低限度の内装工事に絞り、新造車の投入を優先する傾向があります。

計画変更で置き換えまでに時間を要した8500系も、今回の9000系もこの前提で動いていたことが明らかな車両でしたが、最近登場した2000系改造の9020系は継続使用を前提とした大規模な改造内容となっていました。

東急電鉄の今後の方針が明らかにされていないものの、運転体系として密接に関わる田園都市線系統では、信号システム更新の話題がありました。

田園都市線系統では、直通先の東京メトロ半蔵門線でCBTC(無線式の信号システム)化が2025年度末を目標に進められていおり、これに向けた車両改修が実施されることとなります。

以前には、これに加えて田園都市線にもCBTC導入も検討段階ながら報じられています。

8500系の淘汰で田園都市線所属車両は5050系と2020系となり、半蔵門線と同時期に整備をすること自体は可能な土壌が整います。田園都市線全線で実施すると仮定すると、大井町線所属車両についても同世代の車両に置き換えをしておきたいといった事情は理解されるところで、目黒線の3000系を継続使用・大井町線に新造車を直接投入とされたことも納得できます。

一方で、東急電鉄が田園都市線へのCBTC導入をいつ・どこまで検討しているのかは不明で、更に定期検査の回送のため他路線所属の車両についても対応させる必要が生じます。

現実的には当面は渋谷〜二子玉川駅間で導入するのみに留まるような気もしますし、結局のところ目黒線に3形式が混在する構成となった背景も見えてきません。

これまで度々計画変更が行われてきた東急電鉄ですので、腹の中を探るのは非常に困難です。

譲渡は実現する?

以上のように、今回の代替対象は、明言されていないものの9000系15編成・または9020系を含めた18編成が対象であると考えることができます。

東急グループは東急テクノシステムで改造を請け負ってから発送できるという大きな強みがあり、過去の実績の多さからも、これを活かした譲渡が実現する可能性は低くない印象です。

これまで東急電鉄で活躍した電車は、東急グループの伊豆急行・上田電鉄に優先的に譲渡が行われる傾向があります。

東急電鉄は車両の売却益・東急テクノシステムは改造工事受注・譲渡先は今後の保守・部品供給の安定性などメリットばかりです。上田電鉄は2008年に製造から20年に満たない1000系2両編成4本が大きな改造不要な状態で譲渡されるなど、非常に優遇された対応が採られたことでも注目されました。

グループ全体の利益を考えれば、東急株式会社傘下の事業者への譲渡を優先的に実施するのは至極当然で、同様に西武グループの伊豆箱根鉄道・近江鉄道についても、西武鉄道からの車両購入が基本とされています。

これまでの動向を考えると、一部をJR東日本から車両を購入して置き換えに着手した伊豆急行は、東急9000系の出物待ちまでの繋ぎだった……とも考えられる動向でした。

このほか、これまで東急電鉄からの譲渡車を運用している事業者にとっても、ステンレス車の中でも作りが良く、機器更新さえしてしまえば今後も長く使用出来そうな東急電鉄9000系は魅力的な車両に思えます。

これまで東急車の譲渡実績のある事業者のうち、20m級車両の導入が見込まれる主な事業者の現在の事情を考えます。なお、以下は過去の実績からの想像を記述しているに留まるため、各社へのお問合せはおやめください。

伊豆急行:8000系13編成程度

伊豆急行では、東横線で活躍していた8000系を3両15編成譲受し、伊豆急8000系として運用しています。

2021年にはJR東日本から千葉エリアで活躍していた209系2100番台を2編成譲受。3000系として2022年春のデビューへ向けた整備が進められています。これまでの報道等で、8000系2編成が代替対象となることが示されているものの、残りの13編成の処遇は明らかになっていません

また、3000系については4両編成で使用されることが発表されているものの、これまで4両編成でのワンマン運転実施に向けた車両・地上用設備の改修は確認できません。お披露目が予定される3月下旬まで3ヶ月を切っており、デビュー時点ではツーマン運転で使用する前提であるものと考えられます。

伊豆急行にとっても、輸送力や運用上の使い勝手が良いのはワンマン運転可能な3両編成であることは明らかで、209系の購入が2編成に留まっていたのも東急9000系待ちの繋ぎが狙いなのではないか?という推測も以前から聞かれていました。

単純に考えれば、これまでの8000系15編成体制と9000系の編成数が合致しており、改造内容も揃えて譲渡を行うことが可能です。東急9000系は先頭車が付随車・中間車は1両完結構成の電動車の3M2T構成ですので、2M1T構成の3両編成での譲渡が想像されます。

従来の運転体系を維持するならば9000系は最適な車両と言える一方で、特急列車の運転本数が大きく落ち込んでおり、相互直通運転の精算が絡む伊東線・伊豆急行線の輸送体系の抜本的な見直しが実施されても不思議ではありません。

現在は特急列車や運賃収受のために車掌配置が必須な伊豆急行にとって、3両編成はワンマン・6両編成はツーマンであっても特段不便はなさそうです。しかし、2020年以降急激な減収で駅の無人化も発生するなど依然として厳しい状態が伺え、既存のワンマン運転の体系にも見直しが考えられます。

JR東日本にとっては、9000系の改造の3+3両編成では通りぬけの出来ない編成構成で、伊東線のワンマン化が向こう十数年は困難となります。JR東日本にとっては現行の6両編成以上でもワンマン運転が出来る環境が理想に思えます。直通運転を維持するならば両社区間でワンマン運転が可能な車両が望まれ、これに合理的な車両選定が必須となります。

また短期的な導入コストを考えても、新たに購入した209系2100番台は非常に良い出物だったと言えます。既存車同様に程よくボックスシートとロングシートが配置され、トイレも設置済、保安装置類は無改造で対応可能と、導入コストは最小限に抑えられている印象です。

今回導入した3000系に大きな問題がなければ、JR東日本で本格的に置き換えられる2024年度以降にJR車を本格的に調達・この際に既存編成を含めてJR東日本方式の中編成ワンマン運転設備を準備……などが現実的な展開でしょうか。特に209系での中編成ワンマンは、八高南線・川越線用の3500番台で既に採用されており、新規設計も少なく済みそうです。

自社新造車・JR東日本中古車・東急中古車と推移し、そして2021年に再びJR東日本の中古車導入に回帰した伊豆急行。主力の8000系の代替が開始されるなか、同社の顔ぶれが今後どのように変化していくのか引き続き注目です。

秩父鉄道:5000系3編成

秩父鉄道ではこれまで、国鉄101系を譲受した1000系の代替として、東急8500系・8090系を7000系・7500系・7800系として運用をしています。

このほか、都営三田線で使用されていた6000形を5000系として運用しており、5000系は2022年で製造から50年を迎えます。

代替が検討される時期で、他形式との取り扱いを考えれば引き続き東急車・または急行用で運用中の西武車がまず候補に上がります。

2020系投入により廃車となった8500系の譲渡が実現していない以上、それよりは経年の浅い車両での代替を想定しているものと考えられ、東急9000系は選択肢に含まれそうです。

新しい車両を待っていた印象も受ける一方で、初のVVVFインバータ制御車導入で電化設備・信号保安設備を更新する必要が生じる可能性が考えられます。

どの程度のコストとなるかは不明ですが、東武8000系のSIV装備車両(末期製造車両)がSIVを使用しない状態で回送されていることも知られているように、対策はそれなりの投資となりそうです。

東急9000系と同程度の経年で、これらの対応・大きな車両改造もなく導入が可能な205系がJR東日本から放出(特にまだ明言されていない鶴見線3両編成・南武支線2両編成は改造も最小限)されることを考えると、こちらの方が選択肢に入りそうな印象も受けます。

養老鉄道:600系・620系

18m級の東急7700系をあと30年使用すると発言して話題となった養老鉄道は、この7700系導入後も製造から60年前後が経過する600系・620系が3両4編成・2両2編成残存しています。

近鉄は依然として通勤車の新造車投入がない状態で、今後捻出された場合も出物の経年・状態なども期待しにくい状態です。

東急車の導入実績があり、かつ18m級車両を譲受した事業者ながら20m級でも運用が可能な養老鉄道にとっては、9000系の放出は悪くない選択肢です。

9000系は2両編成として導入し、大型車2両と小型車3両で運用される展開も、9000系を3両編成で導入・一部の7700系を2両化して部品確保をする展開も、そして想像できます。

一方で、改造内容は最小限に留めることが出来た7700系の導入とは異なり、9000系の導入には運転台設置改造・機器更新工事が必要となるなどの導入コストの高さが障壁となりそうです。

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コメント

  1. 名無し より:

    養老鉄道への譲渡が実現した場合、同様に譲渡された7700系が、計画では2M1Tの編成のモーター車一両をカットした状態で運用すると伺いました。
    9000系の場合、両先頭の制御付随車と中間独立Mを組み合わせた1M2Tの編成が予想されます。
    同様の編成は交流電車ではよく見かけられますが、直流ではあまり見かけない特異な編成になるのではないでしょうか?

  2. ひろげんひ より:

    僕本人はやはり秩父鉄道にて、元都営三田線からの既存による5000系は勿論だが、かつて東急から8090・8500系さえ転用してから既存の7000・7500・7800系さえ丸ごと置き換えた方がよっぽどだとも言う。

  3. 中部の気まぐれ動画 より:

    西武は東急・小田急と連携して「サステナ車両」計画が発表されてます。東急からは9000系が、小田急からは8000形が西武支線系に譲渡が決まっています。
    本線系については車両新造させることにより、西武はVVVF車100%達成を目指すとリリースされてます。
    従って、伊豆急行・秩父鉄道・養老鉄道に譲渡する可能性は低いと思われます。

  4. 3104 より:

    この記事の時点では想定外中の想定外、9000の西武行きが発表され
    両数的に9000 15本となりそう
    異端となる9020 3本は…
    都6000の置き換えで秩父 なんていうのがありそうに思えるけれど
    誘導障害対処がどうなるか次第?