【会津鉄道ダイヤ改正2022】普通列車の東武,野岩鉄道直通終了・気動車化〜本数も減少

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会津鉄道は2021年12月17日、2022年3月12日のダイヤ改正の概要を発表しました。

前週に東武鉄道・野岩鉄道がダイヤ改正の概要を発表(過去記事)していましたが、長年続けられてきた両社との直通運転も大きく運転体系を変えることとなります。

東武・野岩と共に歩んできた会津鉄道

会津鉄道は、国鉄の特定地方交通線だった会津線(西若松〜会津高原)を継承し、1987年より会津線鉄道事業を行なっている第三セクター事業者です。福島県や会津若松市などの自治体や、東武鉄道・地元銀行などが株主となっています。

西若松からは国鉄時代と同様にJR東日本只見線に乗り入れ、会津若松駅発着での運転を基本としています。

会津高原駅(現在の会津高原尾瀬口駅)から南側は未成線となっていた国鉄野岩線を第三セクター方式で開業させた野岩鉄道を介し、新藤原駅から南は東武鬼怒川線〜日光線〜伊勢崎線と都心から1本の線路でつながっている点が特徴です。野岩・会津両社のダイヤは両社の株主でもある東武鉄道の情勢変化の影響を強く受ける傾向があり、直通運転体系がこれまで何度も変更されている点も特徴的です。

野岩鉄道への直通運転のため、会津田島駅〜会津高原駅間が1990年に直流電化され、東武鉄道・野岩鉄道との直通運転が始まりました。

会津鉄道も6050型1編成2両(61201F)を所有し、直通運転開始とともに普通列車と快速急行「おじか」が、翌1991年から「おじか」に代わり東武350型による急行「南会津」が直通運転を始めました。

しかし、バブル崩壊で国内観光需要が低迷したことを受け、当初2往復設定されていた「南会津」も1.5往復・1往復と数を減らし、「南会津」は2005年に運転を終了しました。

会津田島以北の非電化区間では、2002年から名鉄キハ8500形を譲受した快速「AIZUマウントエクスプレス」が運転を開始しており、2005年の「南会津」廃止後は「AIZUマウントエクスプレス」が特急スペーシアきぬのリレー列車として鬼怒川温泉発着で運転される体系となりました。

翌2006年にはJR・東武線直通特急「日光」「きぬがわ」「スペーシアきぬがわ」の運行が開始されたことに合わせ、これらと接続するダイヤ構成とされるなどの変化もありました。

キハ8500形は停車駅の多いこの列車との相性が悪く短命に終わりましたが、「AIZUマウントエクスプレス」がAT-700形・AT-750形に置き換えされた一方で、2012年にはこの列車が鬼怒川温泉〜下今市〜東武日光への乗り入れという新たな体系の直通運転が始まりました。

2013年から2016年まで臨時特急「スカイツリートレイン南会津」として634型の乗り入れで都心からの有料列車が復活したのち、2017年からは東武500系による特急「リバティ会津」が運転を開始しました。東武線下今市駅以北は優等料金不要という良心的な設定です。

しかし明るい変化の裏では、直通運転開始時からの特徴だった6050型による快速列車が2006年に区間快速化・2013年に減便、「リバティ会津」が運転を開始した2017年改正で浅草発着の快速・区間快速は廃止となり、実質的な東武線内の特急化とも捉えられます。

この2017年改正以降は都心直通を「リバティ会津」・普通列車は下今市などの発着となったものの、会津田島以南の直通・会津田島以北の気動車という基本構成は維持されていました。

普通電車運転終了 会津鉄道線内の変化

東武鉄道・野岩鉄道は12月10日の発表でしたが、JRと直通運転をしている事業者という都合か、会津鉄道のダイヤ改正発表は12月17日付け(外部PDF)でされています。

これまで運転されていた6050型の老朽化と、東武鉄道線内の20400型によるワンマン運転拡大を理由に、会津高原尾瀬口〜会津田島間の普通電車列車運転を終了・気動車列車を新設としています。

また、快速「AIZUマウントエクスプレス」は、鬼怒川温泉発着の1,2号のみ運転を維持し、東武日光まで乗り入れる3,4号の運転が取りやめとなります。

リバティ会津150号で実施されていた会津鉄道線内途中駅停車も通過とされています。

会津高原尾瀬口〜会津田島駅間は気動車普通列車7往復・快速「AIZUマウントエクスプレス」1往復・特急「リバティ会津」4往復の計12往復と従来と比べて4往復の減少となっています。このほか、会津田島〜西若松間についても1往復の減少です。

今回の改正により、6050型の会津鉄道所属車両の廃車が予想できます。61201Fは2021年12月時点で営業運転から離脱している状態となっており、このまま廃車の時を待つのかもしれません。

利用者にとっても事業者にとっても厳しい内容

会津鉄道の6050型は1編成のみ在籍

前週に発表されていた野岩鉄道の大幅本数減少とともに、利用者にとってはかなり厳しい変化となっています。

先週の東武鉄道の改正で明らかになったように、特急「リバティ会津」の下今市〜鬼怒川温泉間の有料化により、下今市から野岩鉄道・会津鉄道へ向かう際には特急料金が必要となります。東武日光〜野岩・会津鉄道といった経路で乗車する場合、1区間だけ特急料金が発生するという利用者目線とは言い難い設定です。

東武鉄道にとっても背に腹は代えられない……という厳しい事情にも見えますが、昨今の東武鉄道の動向を見ていると、500系を無料開放したのが快速列車廃止のショックを薄める一時的な措置だっただけにも思えてしまいます。

事業者目線では、東武鉄道は以前から進めていた6050型の淘汰を予定通り進め、会津鉄道は気動車により運転本数を削減することが出来ますが、間に挟まれた野岩鉄道は対応に難儀していそうです。

野岩鉄道はそもそも沿線に住宅などが非常に少ないエリアで運転されており、行楽客が居なければ存続は不可能と記しても過言でない路線です。

従来のこの系統では、電車の会津鉄道乗り入れ=野岩鉄道運転士・気動車の野岩・東武鉄道乗り入れ=会津鉄道運転士と運転士が乗り入れ先まで運転する体系が採られていました。

最終的に野岩鉄道は東武側に合わせて20400型の乗り入れに対応させるか、会津側に合わせて気動車単行に改めるかの2択が想像できますが、東武鉄道に合わせるなら4両編成受け入れで運行コスト増・会津鉄道側に合わせるならば車両調達・乗務員の免許など多額の支出が発生します。

野岩鉄道としては2022年度改正では6050型を残存させる選択としているものの、将来的な展開が気になるところです。現実的な落とし所は東武10000系列のリニューアル2両編成の譲受にも思えますが、それもすぐには難しそうです。

また、会津鉄道の電化設備についても、維持コストの問題が心配されます。

今回の改正で印象的なのは「リバティ会津」です。東武鬼怒川線・会津鉄道線内は停車駅を減らして速達化・野岩鉄道線内は減便する普通列車の代わりにほぼ全駅停車化と、同じ列車とは思えないほど輸送体系が変化する不思議な改正となりました。各社の思惑の違いが如実となっており、お世辞にも完成された形とは言い難いところです。

今回の改正で各社は赤字を抑えることが出来るのか、利用者離れが進んでしまうのか……各社の今後の動きも見守りたいところです。

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コメント

  1. hiroto より:

    野岩鉄道の開業後暫くは南会津地域の安定的な交通手段として担い、また東北本線が長期の不通になった際に代替ルートとして機能したことは記憶に新しいと思います。
    しかし、業界誌などでは以前から指摘されていましたが
    沿線は人口希薄地域であるが故に観光客が減れば自ずと経営に影響が出ることはわかっていたことでしょう。現在では周辺道路が整備され、東北自動車道とのアクセスが容易となり、利用者の減少に繋がったと思われます。
    野岩鉄道の今後については筆頭株主の福島県の考え次第だと思われます。理由として、野岩鉄道における福島県内の駅は1駅のみで他は日光市に属していること。日光市はコミバスに関する知識を持っていると考えられること。
    このことから福島県が経営から手を引いた際、栃木県・日光市・東武鉄道の三者が経営できるのか?と言う不安はあります。
    未確認情報ではありますが、これまで野岩鉄道が日中1時間に1本運行していたのは福島県からの要望だったとも言われています。