【珍事】E653系「国鉄色」K70編成ダブルブッキング?撮影会使用車両変更に

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春夏秋冬の季節毎に発表される臨時列車は、概ね半年前から入念な調整の上で設定と発表が行われます。

2022年1月15日には勝田車両センター所属のE653系K70編成に「ダブルブッキング」とみられる事態が発生しており、昨年から対処が注目されていました。

勝田に帰り咲いた人気者

E653系はモノクラスの7両編成8本・4両編成4本が勝田車両センターに配置され、651系とともに常磐線特急で活躍をしていました。停車型の「フレッシュひたち」のほとんどを担っており、5色のカラフルな塗装で運用をされていました。

東日本大震災による計画変更もあり、2012年から2013年にかけてE657系により置き換えが進められたのち、2013年から2015年にかけて新潟車両センターへ転出。

新潟エリアでは、7両編成が新潟から酒田・秋田へ運転されている特急「いなほ」を中心に運用され、4両編成は新潟から長岡・直江津を経由し、えちごトキめき鉄道 妙高はねうまラインに直通する「しらゆき」などで運用されています。

いったんは全車両が転出したものの、U-108編成7両が2018年に勝田車両センターK70編成として再転入となっており、この際に485系の国鉄特急色をイメージしたリバイバル塗装が施されています。

冬の臨時列車 vs 有料撮影会

波動用として新たな活躍をはじめたK70編成は、水戸支社管内発着の臨時列車・団体臨時列車で運用されています。

2021年10月15日に発表された同年度の「冬の臨時列車」では、仙台・松島・小牛田方面へのお出かけに便利な臨時列車として、同年12月18日(土)・25日(土)には「冬をまるごと仙台松島号」が水戸〜小牛田間の日帰り往復運行で、2022年1月15日(土),16日(日)と22日(土),23日(日)には「冬の宮城ホッと温泉号」として土浦〜土浦間の片道運行(土曜下り・日曜上り)が設定されています(水戸支社・外部PDF)。

これらはいずれもE653系7両編成使用とされてイメージ写真として国鉄特急色のK70編成の編成写真が掲載されていたほか、11月15日に発売された交通新聞社・鉄道ダイヤ情報2021年12月号では「E653系勝田車 国鉄特急色編成」の記述もされています。

この直後となる11月19日には、『勝田車両センター60周年記念!第4弾「赤電」撮影会を実施します!』(水戸支社・外部PDF)として、同所の開設時に配置された401系「赤電」をモチーフとしたE531系(K451編成)・通常のE531系・国鉄特急色塗装のE653系の3編成が並んだ有料・少人数制の写真撮影会実施が発表されました。

同日からSNS上では「E653系K70編成 ダブルブッキング」に気づいたファンの投稿が飛び交うなど動向が注目されていたものの、撮影会は内容変更がされないまま発売開始・催行中止にもならず、また臨時列車も設定取り消しは行われずに発売が開始されました。

直前となる1月12日に参加予定者による複数のSNS投稿により、撮影会の車両がE653系からE501系に変更されることが告知されたことが記述されています。

時系列としては手配ミスが濃厚だが……

一般に、四半期毎に発表される臨時列車は半年前ごろから計画が進められるもので、特に今回発表されていた「冬の宮城ホッと温泉号」は新設列車かつ支社境を越えて設定されている列車ですので、以前から計画されていた列車であることは間違いありません。

一方で、撮影会については支社単独で企画が可能で、支社の企画部門または勝田車両センターの内勤者の発案で進められたことが想像できます。展示車両も勝田車両センター所属車両のみですので、調整もそこまで複雑なものではなかったはずです。

企画段階でE653系を撮影会で使用するため、「冬の宮城ホッと温泉号」の使用車両を当初計画されていた勝田車ではなく新潟車を借り入れる変更を想定していたとは考えにくいところです。

車両が所属する新潟車両センターと新潟支社はもちろんですが、送り込み回送・返却回送の経路となる高崎支社・大宮支社・東京支社を交えて調整を進めるには費用対効果が薄すぎますし、そもそも撮影会の設定を異なる日程で行えば良かっただけです。また、送り込み回送・返却回送・当日の社員配置・記念品作成費用を総合した経費以上の収入も撮影会の価格設定からは期待できません。

しかし、本当に直前まで気づいていなかったことも考えにくいです。撮影会などのイベント企画でSNSでの声も多く参考にしていると各媒体で伝えられている通りで、SNSでは発表直後から1月12日の対処公表まで、多くのファンがこの話題で盛り上がっていました。

車両運用は日常的な保守のスケジュールのために事前に計画を組んでおり、JR東日本では各センターが月毎に運用計画を一覧で作成しています。撮影会で使用する車両は1日空けておく必要があり、遅くとも運用計画作成段階=12月後半に事態に気づいていたことが想像できます

コアなファン層をターゲットにしていたイベントで、恣意的に直前まで伏せてやむを得ない事情を装う……といった一般向けなら通せる偽りも通用しないことも容易に想像でき、気づいた際の担当者は相当頭を抱えたことと思慮されます。

本来であればこの時点で参加者へ連絡が入っていたことは想像に難くありません。ただし、水戸支社担当者の意地で諸々の損失を理解した上で各所へ交渉し、新潟車両センター所属編成を「冬の宮城ホッと温泉号」へ充当する手配を進め、この問題の回避を進めていたことも考えられます。

この場合は、商業誌に情報(「冬の宮城ホッと温泉号」への勝田車充当)を提供した内容に変更があればそちらも情報提供がされるはずで、その記載もなかった以上は送り込み・返却回送が設定される前の段階で頓挫したか、ここ数日に手配が間に合うも新潟の悪天候により設定が取り消されたかのいずれかでしょうか。

これらの状況を総合すると、「撮影会発表時点ではダブルブッキングに気づいていなかった」「後に事態に気づくも、新潟からの借り入れで対応することで調整することとした」「最終的にこれが不可能となった」……といった時系列であれば、今回の内容も止むを得ない事情と理解は出来るところでしょうか。

どのような事情があってこのような事態に至ったのかの真相は明らかになっていませんが、15日の撮影会の中で参加者へ事情の説明・裏話などがありそうです。

1/15加筆:当サイトで想像していたように、「冬の宮城ホッと温泉号」は新潟車の手配を計画していたものの、悪天候で設定が取り消されたことが公表されています。一方で、撮影会を発表した時点でこれを前提に計画していたのか否かは触れられていません。

特定編成を用意するのは大変ですが……

最近は毎週末のように各社・各所で実施されているように、ファン層をターゲットとした有料・少人数制のイベントは、事業者とファンの双方にメリットも大きく急速にマーケットを拡大しています。

一方で、まだまだノウハウは蓄積途上……といった印象もあり、今回も支社内での連携が上手く出来ずに「ダブルブッキング」状態となってしまったことが想像されます

他所からの借り入れであれば事前の手配が必要ですが、勝田車両センター自身の所有する車両ということで、確認漏れとなっていた……といったところでしょうか。本来であれば水戸支社の中で完結するはずの手配内容ですが、この辺りは1つの地域支社内だけでも携わる職員数が多い、大規模事業者ゆえの連携の難しさが垣間見られます。

一般に、特定の車両を目玉とすることは運用調整の難易度が大きいものと言われます。運用範囲も広く、定期列車でも使用されるK451編成の運用調整は大変そうですが、今回のK70編成については臨時列車の有無さえ確認していれば事態を防げました。

国鉄色リバイバルの2種類が並ぶことを楽しみにしていた参加者も多く、イベントのメインとして展示車両に記載していました。K70編成をサプライズに据えておけば事態は回避できた一方で、集客の目玉となりうる車両を出さずに催行自体が不可能になってしまえば本末転倒です。

E501系の今後を考えると貴重な機会であることには変わりはなく、通勤近郊タイプの車両同士の並びの方が魅力的と感じるファンもいらっしゃる反面、突発的な事象でもない理由で目玉商品を変更している事態には変わりはなく、催行中止やキャンセル対応がされても不思議ではない変更です。

E653系が好きなファン・2つのリバイバルカラーの並びであることを目的に参加するファンにとっては残念な結果で、不満の声が上がるのもやむ無しでしょうか。

参加者以外のファンにとっては笑い話に過ぎず、じゃあ有料撮影会はもうやらない!と言われることが趣味者にとって一番の不利益となるため強く批判することも避けたいですが、少なくとも事業者側にとっては大きな反省材料を残す結末となりました。

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コメント

  1. まさ より:

    新潟車を手配したものの天候不良で回送できなかったのが真実のようですね。

    https://twitter.com/chihanai/status/1482154603848560643?s=21