JR東日本では2021年12月17日、翌2022年3月ダイヤ改正の概要を発表しています。
事前の予告通り各社とも厳しい内容が並びますが、ファン目線で特に注目の動きが大きいのは新潟エリアの在来線です。ダイヤ改正発表を眺めつつ、背景や運用を紐解いていきます。
快速「信越」1年で廃止
快速「信越」は、従来から信越本線で運転されていた座席指定制の「おはよう信越」・座席定員制の「らくらくトレイン信越」の座席発売方法を前者に統一したことで名称を統一して2021年3月のダイヤ改正で設定された列車です。特急「しらゆき」用のE653系4両編成が使用されていました。
「らくらくトレイン信越」は新潟→長岡間で運行されていた通勤ライナー要素の列車でしたが、2012年の急行「きたぐに」廃止の代替として直江津駅まで延長・対となる「おはよう信越」が新設された、急行「きたぐに」の置き土産的な列車でした。
以前から乗車率は低い傾向がありましたが、昨年改正で愛称変更(首都圏のライナー列車全廃に合わせて実質値上げ)がされたものの、僅か1年であっけなく廃止されることとなりました。
快速「信越」運用は2021年7月に発生した車両故障でE129系4両編成の代走が実施された経歴もあります。「おはよう信越」「らくらくトレイン信越」時代には、E653系「いなほ」編成での代走実績もありました。
特急「しらゆき」1往復削減
在来線特急全般で進められる減便ですが、特急「しらゆき」では現行の8号・9号の1往復が廃止となり、従来の5往復体制から4往復体制に改められることとなります。
同時発表されたえちごトキめき鉄道では、従来運転されていた115系使用の通称「新井快速」が同社線内では設定取り止めとなっており、妙高はねうまラインではしらゆき9号と2連続で列車が削減されることとなり、利用者への影響が心配されます。
特急「いなほ」酒田〜秋田間1往復削減
特急いなほ号は、これまで新潟〜秋田間で3往復・新潟〜酒田間で4往復の合計7往復14列車が設定されていました。
今回のダイヤ改正では、秋田発着列車のうち秋田16:04着のいなほ5号・秋田13:00発のいなほ10号の1往復が酒田発着に区間短縮されます。利用状況によっては延長運転をするとしています。
車両運用では、これまでいなほ1号-いなほ10号・いなほ5号-いなほ14号と折り返していましたので、消去法でいなほ1号の折り返しがいなほ14号となります。
一方で、いなほ5号は酒田14:41着・いなほ10号は酒田14:31発となり、一見すると微妙に運用が噛み合いません。
しかし、従来の車両運用では酒田13:00着いなほ3号〜酒田15:56発いなほ12号という運用があるため、いなほ3号-いなほ10号・いなほ5号-いなほ12号と折り返す運用構成とすることが伺えます。
特急「いなほ」1往復に「しらゆき」編成充当
先述のいなほ3号-いなほ10号の1往復は、従来のE653系7両編成から4両編成での運転とすることが発表されており、利用状況によっては延長運転をするとしています。
グリーン車の連結なしと記述されており、車両構成から「いなほ」編成の減車ではなく快速信越削減で運用数が減少した「しらゆき」編成を使用することが断定できます。
JR東日本では今回発表以前より、在来線特急の減車・減便を検討している旨の発表がなされていました。近年はJR東日本の在来線特急の多くが固定編成化されており、減車の想像が難しい印象でしたが、「しらゆき」編成の「いなほ」運用とすることで対処するのはなかなか妙案に感じます。
「しらゆき」用のE653系1100番台は、定期検査で秋田総合車両センターを行き来する以外で交流電化区間を走る運用が設定されていませんでしたので、常磐線撤退以来久々に交流電化区間の定期運用が設定されることとなりました。
本発表の直前には、1100番台を使用した試運転が設定されており、これに備えた動きだったことが読み取れます。
余剰となったE653系はどうなる?
今回の運用削減により、新潟車両センター所属のE653系の運用数は7両編成が4運用・4両編成が3運用となることが予想されます。
特急「いなほ」E653系1000番台8編成・特急「しらゆき」E653系1100番台4編成はいずれも常磐線特急「フレッシュひたち」用として製造され、全車が新潟エリアに転用されました。
その後、E653系1000番台はラストナンバーのU108編成が勝田車両センターK70編成として転出し、現在は7編成配置です。
日本海に近い気候条件による輸送障害に見舞われやすい路線であること・需要に応じて区間短縮したいなほ号を秋田へ延伸すること、新潟エリアのイベントに合わせた臨時列車・団体臨時列車での運用も多いを考えると、引き続き2編成の予備を維持することが考えやすいですが、それにしても1編成が余剰となりそうです。
最も考えやすいのは、K70編成と同様に波動用編成として運用することでしょうか。
JR東日本管内では高崎車両センターに485系“華”・“リゾートやまどり”の2編成が配置していますが、両者の置き換えに最適な余剰車が生まれることなりました。このうちのどちらか、もしくは両方をまとめて置き換えることとなるかもしれません。
波動用編成として配置する場合の所属先も注目されます。
JR東日本では支社ごとの縄張りが(良くも悪くも)強く、従来も臨時列車が支社境発着で運転されるなど利用者へのデメリットにもなっていました。
最近発表された労組資料では2022年10月から2023年6月にかけて組織の変更が記述されており、従来の12支社構成から首都圏エリア・東北エリア・新潟エリアへ再編が計画されています。この動きで、車両センター・総合車両センターは各支社の機関から新幹線統括本部・首都圏本部・東北本部・新潟支社のいずれかに属することとされています。
これまで支社ごとに行っていた企画部門も再編となり、車両配置や臨時列車設定などへの影響も注目されます。
快速「あがの」廃止・快速「最上川」短縮 ほか
新潟近郊では上記の有料列車のみの記述ですが、それ以外の線区では減便傾向です。
磐越西線新潟〜会津若松間で1往復運転されている快速「あがの」1往復が削減され、前後の普通列車のダイヤが調整されています。
羽越本線・陸羽西線を直通する酒田→新庄間の快速「最上川」が始発駅を陸羽西線の分岐点である余目駅始発とされ、羽越本線内は同線の普通列車への接続と変更されます。この対となる新庄→酒田の普通列車1本も余目行きとなります。
このほか、電化区間ながら交直流セクションがある都合でディーゼルカーでの運行とされている羽越本線村上~鶴岡間はGV-E400系による運用に統一され、ワンマン運転が開始されます。これにより、その他の新津運輸区所属のディーゼルカーが使用されている線区ではキハ110系を見かける機会が若干増えそうです。
直接的に記載されていない115系の行く末
ファン目線での最大の関心ごとは、115系の行く末でしょうか。
新潟駅高架化工事の運用増加分を賄うため、E129系の投入がひと段落した2018年度以降も3両編成7本が残存しており、新潟ゆかりのリバイバル塗装で地元・遠方からファン人気を集めていました。
ネガティブな変更が多い今回のダイヤ改正で定期列車全てが新型車両に統一……となれば、リリースに記載があってもおかしくはありません(今回改正のJR西日本おおさか東線の記載など実例多数)。
先述のように、えちごトキめき鉄道ではJR東日本所属の115系を使用して運行されていた「新井快速」と通称される、新潟→直江津→新井の快速列車(→折り返しで直江津)の運用が丸ごと削減されています。
JR東日本管内については触れられていませんが、仮にE129系で直江津までの運行を維持すると仮定すると、えちごトキめき鉄道へE129系の乗務員訓練をすることを避けた……とも考えられます。
これに加え、2021年6月30日に発表された「移動等円滑化取組計画書」(過去記事)では、2021年度は在来線について38編成161両の投入とされていました。本年度はE235系1000番台が7編成56両落成済となっているほか、相模線向けE131系(500番台)4両12編成=48両・宇都宮エリア向けE131系(600番台)3両15編成=45両が発表済で製造が続いていますが、残された4編成12両がどの路線・どの形式となるのかが注目されており、刊行物でE129系を製造する旨の記述も確認されています。
この12両が全てE129系(2両・4両2編成ずつ)と仮定した場合、高架化工事完成による運用効率化と合わせて115系の完全淘汰も十分可能と考えられます。
快速信越代替として、直江津~長岡間にE129系車両を使用した快速列車が設定されているものの、従来の長岡停泊列車の活用で対応できそうな範疇にも思えますし、難しい場合も減車で捻出することもあり得ます。
状況を考えると十中八九淘汰されるように思えますが、トラブル防止等で意図的に伏せているか、何らかの理由で新潟駅高架化後も115系が少数残存することとなったかのいずれかでしょうか。
少なくとも7編成のうち一部の廃車は確実な状態ですので、心の準備をしておくに越したことはなさそうです。
コメント