【試験から3年】E493系デビュー戦!キハE130系配給輸送で車両牽引開始

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2021年に先行量産車が、2023年に量産車が落成したものの、依然として開発目的の牽引車としての出番が与えられてこなかったE493系。

2024年5月17日、久留里線用キハE130系の郡山総合車両センター入場のための配給輸送として牽引車としての運用が開始されました。

試験から3年が経過

JR東日本では2021年より機関車牽引列車の代替として、配給輸送牽引用の事業用電車E493系を開発・投入しています。

量産先行車となるオク01編成は2021年2月8日未明に製造メーカーである新潟トランシスを出場、翌9日に甲種輸送が実施されていました。

その後は4月から車両牽引の試験が開始され、EF81形を牽引して常磐線を、EF64形を牽引して中央本線を、ED75形重連を牽引して仙台エリア……とJR東日本管内の各地で今後を見据えた準備が進められていました。

2022年5月13日には「量産先行車の性能試験や技術的検証が完了」(JR東日本 PDF)したとして量産車1編成の追加を公表。

2023年に量産車となるオク02編成が落成してJR東日本管内の各地へ出向き訓練と推定される動きが続いた一方で、車両基地内での連結訓練やE493系自体の乗務員訓練が実施されるに留まっていました。

運転された列車を見る

今回運転されたのは、木更津駅から内房線・京葉線・武蔵野線・東北本線経由で郡山駅までの配給列車です。

これまでEF81形を使用して入場・出場を機関車牽引の配給輸送が実施されており、4月にE493系とキハE130系の連結訓練が木更津駅(木更津統括センター)にて実施されたのち今回の配給列車運行となりました。

量産先行車の01編成は落成後に本線上で電気機関車の牽引試験を実施したものの、量産車の02編成は構内での連結試験に留まっていました。

側面に帯がない02編成が本線上で車両牽引をする事例は初、E493系が本線上で車両牽引を実施するのは2021年以来約3年ぶりの出来事となりました。

E493系は電車牽引を主目的として開発された車両ながら、当初の訓練では電気機関車、運用初回も気動車と未だメインになるであろう電車の牽引が実施されていない点も面白いポイントでしょうか。

近年は事業用気動車キヤE195系やGV-E197系が各地を自走で駆けるなか、キハE130系の入出場が牽引方式のままとされた点も興味深いところです。

同じキハE130系でも八戸線用の500番台は郡山まで自走で入出場回送する体制ですし、GV-E400系が試験のため自走で上越国境を越えた事例があるなど、内燃免許取得をキヤE195系導入にあわせ進められた背景からか自走回送とされる事例が増えてきました。

象徴的な事例では、これまで久留里線の“east i-D”検測のための送り込み・返却も以前は機関車牽引だったところを近年は自走に改める動きがありました。

また、久留里線用のキハE130系100番台はATS-P・Snを設置しており、デジタル無線装置の搭載がないものの可搬式のものを設置して団体臨時列車で千葉駅まで自走した実績もあります。

近年の動向を踏まえると、電車牽引という新たな体制が組まれたのはやや不思議な印象です。

都心部では単行気動車の運転実績がないため2023年に東海道線で発生したE195系2両編成の信号検知トラブルのような事象を避ける・車両配置数が少なく入手場の運転頻度が低いから沿線乗務員の訓練をするより手っ取り早い……あたりが背景でしょうか。

控えめな走り出し

E493系は電車10両程度の牽引を想定して開発されたことが落成直後に報じられていましたが、その後の動きは試験結果が開発時の期待を下回ったことが推測しやすい状態となっていました。

2022年3月から4月にかけてE655系5両とE231系10両、2023年8月には205系3両と連結訓練が実施されたものの、その後は目立った動きはありませんでした。

また、2024年度に機関車全廃を掲げていましたが、2023年には双頭連結器を装備し配給輸送に使用されているEF64形が相次いで全般検査をした動きがあった一方で、最も走行機会が多いであろう上越国境越えの試験は実施されていません。

特に鶴見線の205系との連結訓練が実施されていたもののこれまで半数の編成の輸送が機関車牽引とされたことは、E493系の現状を如実に示しているようにも思えます。

鎌倉車両センター中原支所は、武蔵中原駅の高架化以降に電気機関車の入線例がなく、入出庫線の勾配または高架橋の設計からか不可能なものと推定されていました。

現在は国府津車両センターへ回送したのち配給輸送が実施されていますが、仮にE493系が運用可能であれば中原支所から直接搬出が可能となる恩恵が想像されますし、3両編成の輸送だったこともE493系の足慣らしにも適していたようにも思えます。

残り4編成の輸送に使用されるのかは不明ですが、一切使用されないとなるとファンの間で飛び交っている牽引能力不足の裏付けとなってしまいそうです。

当面は久留里線キハE130系や八高線キハ110系など比較的平坦な線区で短編成の牽引をしつつ、今後の運用体制を模索中……といったところでしょうか。

はたまた、もう新津からの新製車や長野への廃車といった輸送での運用は諦め気味なのかもしれません。

GV-E197系・E493系電車の今後の試運転・運用状況は、機関車牽引列車を追うファンにとってはJR東日本管内に残されていた電気機関車の活躍の場が完全に淘汰されるのか否かを左右する重要な要素となります。

一方で、E493系が長編成を従えて峠越えをする姿もそれはそれで見てみたいところではあります。

今回は平坦な路線かつ1両という最小構成での運用開始となりました。今後E493系の活躍の場がどこまで拡大されるのか、ファンからの噂が絶えない性能面での不安要素が残っているという言説がどこまで事実なのかが気になるところです。

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