【60両の小所帯】もう1つの“歌う電車”〜常磐線E501系の気になる今後

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2021年7月18日、京急電鉄で“歌う電車”・“ドレミファインバーター”などの愛称で親しまれていたシーメンス社製造のVVVFインバータ制御装置を搭載した1033-編成を使用した団体臨時列車が運行されました。この夏で運転を終了することが発表されています。

この制御装置は京急2100形・新1000形の1,2次車で採用されており、発車時に音階を奏でることで知られていました。

京急以外で唯一の採用例となったJR東日本E501系は、画期的な車両として開発されたものの不運なその後を辿っています。

沿線悲願の常磐線快速電車土浦延伸

昔から現在まで、常磐線は取手駅以南での折り返し運転とそれ以北を直通する列車に大別されます。これは、常磐線が取手駅〜藤代駅間を境に電化方式が異なることが背景です。

前者には103系通勤形電車が、後者には415系などの近郊形電車が使用されていました。

土浦周辺がベットタウンとなって混雑が激化しており、以前から沿線からも快速電車の土浦駅までの直通の声が大きかったことを受け、当時製造されていた209系通勤型電車をベースに開発された全国初の「通勤形交直流電車」がこのE501系です。

当時開発されたばかりの209系0番台の設計を活用した10両+5両の4扉車両・トイレ無しという103系の構成を継承しつつ、交流電化区間に対応させた電車です。

ATS-P形保安装置による交流・直流の自動切換システムも初採用とされています。

走行機器では、“歌う電車”として知られるドイツのSIEMENS(シーメンス)社の「SIBAS32」(シーバス32)を採用した点が大きな特徴です。

京急2100形・新1000形1,2次車と異なり、起動時だけでなく停車時にも聴くことが出来るほか、加速度の違いから音階がゆっくり聴くことが出来る車両で乗り鉄層から人気の車両となっていました。

415系などの普通列車は白地に濃青帯・快速電車はエメラルドグリーンの塗装となっていましたが、このE501系ではエメラルドグリーンの帯に差し色で白が加わったデザインとされました。この電車があくまで

デビュー前に決まっていた運命

E501系は1997年3月改正より営業運転を開始するべく製造が進められたものの、量産先行車の開発から量産までの間に運転体系の見直しが行われ、E501系は1996年度の発注以降の増備は行われませんでした。

そして、あくまで開発時点では常磐線快速電車の延長というスタンスであったものの、デビュー時には415系などと同様に普通列車の扱いとなっていました。

当初は置き換え対象として想定もされていた常磐線快速電車103系の代替は後に登場する直流電車E231系となり、常磐線快速電車の土浦駅延伸の夢は完全に途絶えることとなります。

E531系で置き換えられ茨城へ

後に普通列車の代替としてE531系が投入されると、上野口はE531系とE501系の時代を迎える……こととはならず、2007年3月のダイヤ改正でグリーン車連結開始などを背景に土浦駅以北のみの運用となりました。

本来の上野口で活躍出来た期間はわずか10年。方向幕こそ常磐線の青色とされつつも、カラーリングは維持しての転用となりました。

この際、電動車ユニットが編成内で1組のみという構成からか5両編成のみ機器更新が施工され、10両編成のみが引き続き「歌う電車」を維持したまま運用されていました。

2012年には残されていた10両編成についても機器更新工事が施工され、JR東日本の“歌う電車”は京急より先に姿を消すこととなりました。

以後は都心部にも乗り入れず、編成数も少なく常磐線沿線のファン以外からはあまり話題に上らない静かな余生を送っています。

安住の地だったはずの水戸線からも撤退……

2016年からE501系のうち付属編成の運用が水戸線中心となり、今後も同線での活躍が見られると思われていました。

しかし、2018年ごろに小山駅〜小田林駅間の交直流セクション通過時の車両故障が複数回発生。同年秋には一連の運用をE531系5両編成と交換され、再び常磐線のみの運用に戻されることとなりました。

2019年ごろより行き先表示器のLED化が始まっているものの、一部編成に留まっています。

現在は209系2100番台の一部に廃車が発生しており、今後は廃品流用で一部編成のLED化が進むかもしれません。

一方で、E501系も機器更新工事からまもなく10年〜15年が経過し、置き換えが検討される時期が近づいてきました。E501系と同世代の車両の置き換えも少しずつ進行しています。

また、東北本線運用も兼ねたE531系3000番台に続き、現在では水戸線も中編成ワンマン運転とされています。今後この動きが常磐線系統で進行するとなれば、E501系の置き換えの優先順位が上がりそうです。

60両の代替のために新形式を起こすことは考えにくく、向こう数年で代替するとなれば2020年に続きE531系の増備となる動きが考えやすいところです。

E531系の初期車が機器更新を受けている最中で再び増備されるかどうか、10両編成の代替は10両編成で行うのか5両編成で行うのかなど、今後の展開が気になります。

JR東日本黎明期に新たな挑戦をした形式は数多くありましたが、少しずつ姿を消しています。

小所帯の車両は特急形であろうと保存はされておらず、どちらかといえば失敗作のE501系も外部団体が手を上げない限りは絶望的ですので、都心から少し遠いですが今のうちに乗車・撮影をしておきたいですね。

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コメント

  1. 赤羽線ユーザー より:

    直流/交流電化区間境界は取手~藤代間です(神立だと土浦の先まで死電区間に・・・)。

    E501系の置き換えは順当にE531系かと思われますが、この時に現在高萩までとなっているグリーン車入り10連の運転区間を延長するかどうかが注目されるところかと思います。