【代替が始まる?】潮風を受けて15年以上……伊豆急行8000系の現在と気になる今後

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東急電鉄田園都市線では間もなく8500系の活躍が見納めとなりますが、“兄貴分”の8000系はグループの伊豆急行でその勇姿を見ることができます。

車齢が嵩んでいること・塩害が懸念される海岸沿いを走ることから、ファンの間で置き換えの噂が飛び交っています。

特殊な歴史を持つ伊豆急行の車両変遷とともに伊豆在住の筆者私見を交え、今後の車両代替を考えます。

なお記事内では黄色線が事実・赤太字は事実に基づく筆者の推測となります。

伊豆急行8000系導入から現在

東急ファンには堪らない伊豆高原駅

東急電鉄では田園都市線8500系の淘汰が実施されており、2022年度に完遂する見通しです。2021年度には2020系9編成が投入され、年度末には8500系の勇姿はほとんど見ることができない状態となりそうです。

東急傘下の伊豆急行では、東急東横線などで使用されていた8000系(1両のみ8500系)を短編成化・トイレ設置などの改造をした8000系3両15編成を2005年より運用しています。

寿命が長い東急のオールステンレスですが、伊豆急線は海沿いを多く走る路線性質から、潮風の影響を強く受ける路線です。

屋根やコルゲートの溶接部分などを補修した痕跡も多く見られる状態となっており、今後も継続して運行されるとも言いにくい痛々しい状態の車両も見られます。

8000系の複雑な導入

TA-7編成に加えてTB-7編成も施工されることが発表された“無ラッピング”

伊豆急行では2004年度の車両納入当初、8000系を4両+2両で運用することを想定しており、クハーモハーモハークハの4両編成とクモハークハの2両編成が用意されました。

しかしながら、納入後の試運転で3M3Tの空転が頻発。のちに2両編成については両電動車化改造が施されました。これにより、先頭付随車を電動車化した車両・中間電動車を先頭車化した車両という他の譲渡ではどちらかとなりそうな2タイプの車両が存在します。

そして、導入が完了する直前となる2008年には、導入車両数の見直しとともに4+2両から3+3両に変更する組み換えが実施されています。

これらの経緯により現在までTA編成・TB編成の2種類の車両構成で運用されています。編成構成の違いによる運用区分はされておらず、両者が共通運用となっています。

短命に終わった200系

伊豆急行は東急・西武の“伊豆戦争”の末に建設された路線で、開業時は新製の100系電車を導入していました。

伊豆観光が最盛期を迎えた1980年代には豪華な普通列車として“リゾート21”を製造。

しかし、バブル崩壊後は観光客減少や沿線の少子高齢化など苦しい状態が続いており、それ以降は他社で使用されていた中古車両の導入となっています。

100系の代替が検討されていた頃から、親会社である東京急行からの車両調達を主軸に検討されていました。

しかしながら、代替車として適切な東急8000系列の廃車は始まっておらず、それまでの代替車両が模索されました。

この結果、乗り入れ先であるJR東日本から113系4両編成・115系3両編成を調達することとなりました。当時は113系の乗り入れ運用があったことなどが主な背景と見られます。

彼らは200系を名乗り2000年にデビューし運用され、2003年まで車両数増加が行われていましたが、翌年となる2004年には早くも200系の代替車両となる8000系が伊豆急行に入線。2005年より順次運用を譲り、2008年に淘汰されています。

“場つなぎ”として投入された200系の活躍はあまりにも短いものとなりました。

代替車両も4扉が好ましい?

伊豆急8000系の代替については現時点で明確な情報はなく、記事公開日時点ではあくまでファンが噂している段階です。

仮に置き換えが実施される場合、選定の条件として考えられるのは20m級で2〜4両編成の車両です。

現状としてステンレス車両が使用されており、線区を考えるとやはり腐食の恐れが少なく塗装工程が省けるステンレス製車両が好ましそうです。

また、地方私鉄として意外な点としては、4扉車両が好ましいという点が挙げられます。

通常時は長閑な伊豆急行線でのんびりと走っている一方で、繁忙期である夏休み、そして同線が最も賑わう河津桜まつり開催期間中は、多くの観光客で賑わいます。

河津桜まつり期間中は途中駅である河津駅の30秒程度の停車で乗客の大半が乗降することとなっており、普通列車で利用が多い時間帯に運行される“リゾート21”・2両に1箇所のドアで乗車口で検札を行う「スーパービュー踊り子」などが遅延の引き金となっていました(スーパービューの下り便は全扉扱いを実施)。

これまでは午前中から少しずつ発生した遅延が単線で増幅し、夕方には20分〜30分程度の遅延が常態化することが続いていました。

しかし、ここ数年は河津桜まつり開催期間中、看板車両“リゾート21”7両編成の普通列車運用を8000系6両で代走することで、遅延幅をそれまでに比べて抑えることに成功しています。

このことから、収容能力以上に乗降時間短縮で威力を発揮する4扉車両が重宝されている模様です。

今後の代替車が3扉車両となる可能性は否定できないものの、地方私鉄としては珍しく4扉の恩恵を受けることが出来る路線であり、昨今の大手私鉄で導入される20m4扉車両をそのまま使うのが自然です。

このほか、朝晩に4扉10両が走るJR東日本伊東線での運行を考えても、4扉車両の方が好ましいと言えそうです。ただし、ホームドア設置などは現時点で考えにくい路線であるほか、全くドア位置が異なるリゾート21が定期運用されているように、これ自体は大きな判断材料にはならなさそうです。

代替はどの車両?

やはりファンにとって気になるのは、代替車両をどこから調達するかでしょうか。

先述のように伊豆急行の車両調達はバブル期を最後に中古車両に頼っており、元々厳しい経営状態に昨今の社会情勢が加わっており、新車の調達は考えにくいところです。

総合車両製作所(J-TREC)新津事業所にて水色の帯のE131系を見たという目撃情報もあり、運用上はそれが最適にも思えますが、それだけの体力があるとは考えにくいところです。

伊豆急行の過去の導入車両はJR東日本・東急電鉄の2社で、8000系の代替についてもこれらの会社が最も自然と言えそうです。

最近ではファンから209系導入が噂されていますが、それ以外の車両の近況とともに今後を考えます。

東急電鉄の車両事情

伊豆急カラーで長年活躍した8614F

まずはグループの東急電鉄ですが、現在置き換えが実施されている車両は田園都市線の8500系です。8000系と同世代の車両となっており、意味を為さない状態です。

また、今後は目黒線8両化による中間車新造なども継続することとなりますので、編成単位での廃車はそれ以降となりそうです。

東急8500系代替後に大井町線の9000系の代替が始まることが予想できますが、こちらもトイレ設置・3両化などを実施することを加味すれば、8000系の導入同様にそれなりの改造工期を必要としそうです。

本命にも思える東急車の後継を望む場合、3年程度は現状の車両でやり繰りする必要がありそうです。

“場つなぎ”であれば8500系でも良いような気もしますが、日夜高速走行を繰り返しており、状態は負けず劣らず……な印象も受けます。

JR東日本の車両事情

廃車の動きが一旦終了した209系2100番台

一方のJR東日本では、2021年3月ダイヤ改正にて「踊り子」185系・「湘南ライナー」215系・そして房総エリアの209系2100番台、継続してE217系の用途廃車が続けられている状態です。出物は多くあります。

このうち特急形で経年車である185系は伊豆急行での走行実績こそありますが、車齢や用途を考えると現実的とは思えません。215系についてもリゾート21の代替には適していそうですが、現状としてR-3編成が定期検査を受けていることを考えると、導入は叶わないでしょう。

8000系の代替となりそうなのは209系・E217系ですが、E217系は製造から現在まで海沿いを走り続けており、塩害腐食を指摘する声が多い状態です。拡幅車体の入線自体は211系の入線実績などもあり伊豆急行側としての支障はなさそうですが、車両のコンディションで考えれば209系に軍配が上がりそうです。

2021年3月改正で代替された車両のうち、4両化で余剰となった電動車12両と6両3編成は既に廃車解体済となっています。これらの解体車両では部品取りをしたのちで解体されているほか、千葉エリアでは6両数編成が休車と見られる運用離脱をしており、現時点では廃車の動きは見られません。これらの譲渡実現は十分考えられそうです。

一方で、209系2100番台の本格的な代替開始は早くとも2024年度以降のE233系転入と見られており、継続的な車両投入=8000系全車両の導入は現実的とは言えません。

209系以降の“新系列電車”は車両構造上中間車の先頭化は本線走行をしない訓練機械(車籍なしの訓練車)に留まっており、伊豆急行への譲渡でも3両化は難しそうです。

伊豆急行側としても4両・6両の固定編成となれば、従来の車両運用を見直す必要があり、無改造ではせっかくのワンマン運転にも支障が生まれます(8000系導入初期は4両ワンマン運行をしていたので、復活する可能性はゼロとは言いにくいですが)。

以上の経緯を踏まえると、ファンの間で話題となっている209系譲渡が実現した場合でも、あくまで限定的な導入本数・運用に留まることが考えられます

他により適した車両がありそうですので、この場合は状態の悪い8000系を同数程度廃車とし、残りの車両をしばらく持たせる……かつての200系のような“場つなぎ”としての存在となりそうです。

JR東海の車両事情

都営三田線の新型6500形の脇を走る211系

このほか、近隣ではJR東海では3両トイレ付きで改造メニューも最小限で済みそうな211系・311系などの代替が始まります。

こちらが本命である可能性もありそうですが、315系はまだ落成しておらず、車両構成が従来車から変わることを考えると2022年ダイヤ改正まで車両譲渡は難しい状態と言えそうです。

もし車両代替が急務であった場合は、安定的な供給が見込めるJR東海車両ではなく先述のJR東日本車両の購入となりそうです。

現時点では明確な発表こそありませんが、遠くない将来に置き換えに着手することは容易に想像が出来ますので、今後の動向を見守りたいですね。

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コメント

  1. イシロ より:

    大穴としては…半蔵門線8000とか?そろそろ廃車が始まるようですし。
    アルミ車体ですが、塗装することで多少の塩害対策は出来ると思いますが、果たして??