【歌う電車】ドレミファ“最終楽章”!1033編成が久里浜工場へ入場〜IGBT車も順次更新

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京急電鉄では、2021年夏を以って“歌う電車”・“ドレミファインバーター”などの愛称で親しまれていたシーメンス社製造のVVVFインバータ制御装置を搭載した最後の編成(1033編成)の運行を終了することを明らかにしており、7月11日には記念切符、18日には貸切列車運行を実施していました。

19日・20日には定期運用で使用されましたが、20日の2113A列車での運用終了後、久里浜工場へ入場しました。翌21日に更新工事のため運用終了することが公式発表されています。

当サイトでも「新1000形」と記述していますが、京急電鉄の正式な形式名は「1000形」です。

京急では初代「1000形」の後期車両を淘汰するために二代目の「1000形」が製造されたため、この名称が一般的に使用されています。

SIEMENS社の遊び心で誕生

“歌う電車”・“ドレミファインバーター”の名称で親しまれている走行音は、ドイツのSIEMENS(シーメンス)社が製造したVVVFインバーター装置「SIBAS32」(シーバス32)によって発せられるものです。

交流電動機(電車であればモーター)を適切な回転数で動かすため、電圧や交流の周波数を制御する装置が主制御装置です。

従来の直流電動機を使用する方式に比べて大きな省エネ効果があることから、ここ20年で製造されたほとんどの国内鉄道車両で採用されています。

制御装置のスイッチングにより特徴的な音が発せられますが、このSIBAS32を含めた初期の車両はGTO素子と呼ばれる初期に多く採用された方式です。

後年には、より省エネ性能・静音性に優れたIGBT素子のVVVFインバーター制御装置が安価になってきたことで採用事例は年々減少し、平成初期の車両特有の走行音となっています。特にこのSIBAS32では、動作時の“ファソラシドレミ”の音階調としたことで、ファン層に人気となりました。

また、日本の鉄道車両はガラパゴスな進化で知られているように、日本と海外では鉄道車両の設計・運用体制が大きく異なり、国内メーカーに比べてアフターケアの観点などで課題がありました。

これらの情勢の結果、国内ではJR東日本がE501系で、京急が2100形と新1000形1,2次車で採用するに留まりました

このほか、E2系新幹線初期車の一部でもシーメンス社製が採用されましたが、東芝と共同開発となって制御設定も異なるため“歌う”ことはありませんでした。都営大江戸線の機関車 E5000形についてもシーメンス社製ながら歌わない車両です。

その後、JR東日本は国産メーカーの装置が採用されたほか、京急でも3次車以降はシーメンス社製のIGBT素子の装置に変更されたのち、いわゆる“銀千”からは国産メーカー品採用に回帰しています。

機器更新によって徐々に減少

かつての鉄道車両では、走行機器類をそのままに車体を載せ替える事例が目立つ印象ですが、近年の鉄道車両では反対に、走行機器を載せ替えて車体を引き続き使用する事例が多く見られます。

これは、車体側の寿命が伸びている一方で、走行機器類の寿命が短くなっていることが挙げられます。

車体側では、腐食の問題が大きく削減されるステンレス・アルミ構体が主流となったほか、車体側が強度を必要とする冷房化改造や、車両の大型化といった用途が変わる動きがなくなったことが挙げられます。

一方で、走行機器類については電子部品の搭載比率が多くなっており、静音性や消費電力などの技術革新も進んでいます。

これらの電子部品は寿命を迎える頃には旧来設計の製造が打ち切られるため、各事業者では大規模修繕時期に丸ごと交換・基板のみ更新・一部車両を載せ替えることで予備部品確保……などの対応が取られています。

今回の京急電鉄の事例でも、2100形は2008年から2015年にかけて・新1000形は2017年より更新工事が実施されています。

最後の1033編成と今後の動き

入場した1033編成(右)とまもなく出場が見込まれる1065編成(左)

年度ごとに数を減らしていましたが、最後の1編成となった1033編成は他の編成の更新が完了してからも長く運用が続き、多くのファン・沿線利用者、そして大手メディアにまで注目される華々しい最後となりました。

2021年7月10日には記念切符「さよならドレミファインバータ♪記念乗車券」が発売され、18日には京急百貨店「COTONOWA」会員・記念切符の購入者抽選を招待した貸切運行。そして、19日と20日の定期運用に充当したのち、京急久里浜駅止まりの列車でそのまま入場する体系となりました。なお、1033編成は新町検車区の所属です。

今回の1033編成の入場を以って、国内では四半世紀もの間ファンを魅了してきた“ドレミファインバーター”の音色を聴くことが出来なくなりました。

京急では既存の更新車両から捻出した機器も活用していたことが想像できますが(それらしい試運転の動きも)、1編成をここまで残していたのは京急ならではといったところでしょうか。

日本国内メーカーが省エネ性・静音性を追求するなかで、今後も従来車両とは異なる面白い音を発する車両・装置が登場することも想像できる一方で、今回の“ドレミファインバーター”のような沿線利用者など一般層にも知られる装置は後にも先にもなさそうです。

既に4両編成の多くが機器更新済となっているほか、23日には5次車の8両編成のうち1065編成についても機器更新工事を終えて姿を見せており、今後は残された3次車〜5次車の8両編成についても同様に機器更新が進行するものと見られます。

3次車〜5次車はSIEMENS社製のIGBT素子の主制御装置を搭載しており、こちらについても同様の経緯から向こう数年で聞き納めとなりそうです。

毎年の設備投資計画で示される数である程度想像がつくものの、こちらは引退記念のイベントなどは実施されないこととなりそうですので、早めに記録しておきたいですね。

画像元ツイート・記事紹介

サムネイル・記事内掲載写真はフォロワーの通勤特快//なんぴょん様(@Nanpyong)より掲載許諾を頂いています。

通勤特快//なんぴょん様のブログ記事では、入場後の久里浜工場の近況などを詳しくレポートされています。

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