
JR東日本では2021年12月17日、新幹線と在来線の大規模な運転本数見直しを発表しており、在来線特急についても各方面で大規模な変更が行われます。
東海道線特急「踊り子」「湘南」では、1988年から運転されていた山手貨物線池袋・新宿発着の定期「踊り子」1往復が臨時化されるほか、深夜帯の「湘南」が削減されています。
東海道線特急〜「踊り子」・「湘南」微減
「踊り子」は2020年・2021年改正で185系・251系からE257系・E261系への車両置き換えを進めており、車両運用・列車設定が見直されたばかりでした。
行楽需要により利用者数の浮き沈みが大きい伊豆方面は以前から臨時列車の比率が高くなっており、これまでは東京〜伊豆急下田間の「サフィール踊り子」1往復・東京〜伊豆急下田間の「踊り子」4往復・池袋,新宿〜伊豆急下田間の「踊り子」1往復・東京〜修善寺間の「踊り子」が2往復(熱海駅以東は下田発着と併結)の構成です。
番号 | 列車名 | 始発駅 | 時刻 | 終着駅 | 時刻 |
3165M- 3065M | 踊り子5号 | 新宿(平日) 池袋(土休) | 9:25 (9:14) | 伊豆急下田 | 12:15 |
3068M | 踊り子18号 | 伊豆急下田 | 16:01 | 池袋 | 19:05 |
2022年3月のダイヤ改正では、このうち池袋・新宿発着の1往復が削減されることとなりました。
両列車とも2019年3月までの「スーパービュー踊り子3号・10号」をルーツとしており、更に遡ると山手貨物線経由の「踊り子」定期列車は、251系デビュー前年の1988年3月に185系の池袋発着として設定されました。34年の歴史を経て、そして長らく続いていた「スーパービュー」の呼称が外れてから僅か2年で再び臨時化されることとなりました。
「スーパービュー踊り子」晩年の定期列車では閑散期の乗車率が特に低い列車でしたので、妥当な選択にも思えます。車両代替と需要激減が同時だったため現状は正確には把握しにくいものの、現行のE257系「踊り子」としても比較的空いている列車です。
臨時列車として土休日はこの運転体系が維持されるほか、最繁忙期の平日には東京発着として運行されることが示されています。
一方で、伊東線・伊豆急線の定期特急列車の上り最終列車が1時間繰り上がることとなります。週5日は「サフィール踊り子4号」があるものの、これがない日の利便性が観光需要への足枷とならないのかが心配です。
番号 | 列車名 | 始発駅 | 時刻 | 終着駅 | 時刻 |
3087M | 湘南17号 | 東京 | 23:00 | 小田原 | 0:12 |
2021年3月改正で「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」の特急化で誕生したばかりの「湘南」では、最終便だった東京駅23時発の1列車が削減されています。昨今の深夜帯の乗車率低迷を考えると妥当なところでしょうか。
特に「湘南」は先代の「湘南ライナー」時代から下り列車の方が運転本数が多い体系となっており、今回のダイヤ改正で上下の本数が合致することとなります。下りの列車を片道回送で戻した上で深夜便に充てる体系としていましたので、効率化の観点で削減されるのも納得です。
番号 | 列車名 | 始発駅 | 時刻 | 終着駅 | 時刻 |
3076M | 湘南6号 | 小田原 | 6:37 →6:41 | 品川 →東京 | 7:47 7:56 |
朝の東京方面行きでは「湘南ライナー」時代から貨物線・品鶴線経由で運行されていた品川行き「湘南6号」が東京行きに延長されています。
2022年3月改正では常磐線特急・中央線特急でも同様に朝ラッシュ時間帯の終着駅延長が行われているように、朝ラッシュ時間帯の一般列車本数削減により生まれた余裕を活かして特急列車の利便性を高めている背景とみられます。
今回のダイヤ改正では新宿駅発着の「湘南」2.5往復の停車駅に大崎駅が追加されています。2019年に「踊り子」の停車駅に渋谷駅が追加されたことも記憶に新しいですが、全車指定席の特急化による乗車時の停車時間・検札の必要が無くなり、新たな需要を開拓する余裕が生まれたことと推察できます。
2022 | 2022 | 2021 | 2021 | |
湘南21号 | 湘南23号 | 湘南21号 | 湘南23号 | |
新宿 | 18:25 | 19:30 | 19:30 | 21:30 |
渋谷 | 18:32 | 19:36 | 19:36 | 21:36 |
大崎 | 18:38 | 19:42 | レ | レ |
藤沢 | 19:20 | 20:20 | 20:21 | 22:18 |
茅ケ崎 | 19:27 | 20:27 | 20:27 | 22:24 |
平塚 | 19:33 | 20:33 | 20:33 | 22:30 |
二宮 | 19:41 | 20:40 | 20:40 | 22:38 |
国府津 | 19:46 | 20:45 | 20:44 | 22:43 |
小田原 | 19:52 | 20:51 | 20:51 | 22:49 |
新宿駅21:30発の「湘南23号」が廃止され、新宿駅18:25発の「湘南21号」が新設されています。これに伴い、新宿駅19:30発「湘南21号」が「湘南23号」に列車名変更となります。
「湘南23号」は251系の「ホームライナー小田原23号」時代から利用者数が少ない列車でしたが、昨今の深夜帯の利用者数減少もあって更に空席が目立つ状態が続いていました。
先述の「踊り子18号」臨時化との関連は不明ですが、「踊り子18号」〜池袋で引き上げ〜「湘南23号」と運用が構成されていました。車両運用上の制約が1つ無くなったことで、より利用実態にあった時刻に変更された……といった背景もありそうです。
このほか、新幹線や新潟支社では4両編成の「いなほ」が登場・「つばさ」単独列車が設定されるなど、減車により座席数を抑える動きがありましたが、「踊り子」はこの限りとなりませんでした。
昨今は熱海駅発着の利用が多い傾向で、熱海駅以東の利便性を保ちつつコストを抑えるのであれば、“下田編成”と“修善寺編成”をそれぞれ単独で走らせる……といった方法が利用者への利便性としては良かったのではないかとも思いますが、「湘南」との運用絡みを考えると難しいところでしょうか。
「踊り子」は4社を跨いで走る列車のため、今回の変更は最小限に留めた印象です。次年度以降に更なる修正が入る可能性も否定できず、経過を見守りたいところです。
車両運用数は2000番台維持・2500番台1本削減
E257系2000番台・2500番台の運用構成は、基本編成(2000番台9両編成)・付属編成(2500番台5両編成)ともに平日朝晩の特急「湘南」が最大となっています。
平日朝の「湘南」の運用は掛け持ち(東京着後小田原に回送)が不可能なため、基本編成の所用数は改正前と同様の11運用構成と断定して間違いなさそうです。
一方で、「湘南10号」(東京駅総武線ホーム8:13着)「湘南11号」(東京駅20:30発)が14両から9両に変更されており、付属編成の運用数が1運用削減され、4編成配置2運用が可能な状態となります。
2021年3月改正では、基本編成と付属編成は熱海での増解結でペアが変わらない構成となっていたため、月に数回東大宮センターにて車両を差し替える体制が組まれていました。
2021年改正の運用を眺めてみると、総武線ホームに到着した「湘南10号」は保土ケ谷を経由して回送された後に「踊り子13号」(東京12:00発)に充当されています。
2022年も現行運用通りで考えれば「湘南4号」→「踊り子3,8号」→東大宮→「湘南5号」と、「湘南12号」→「踊り子13,16号」→「湘南7号」の2運用構成が想像されますが、東大宮センターに入庫出来る作業時間が非常に短く、実質的には入庫の前後で分けた3運用に近い運用体系となりそうです。
また、従来も土休日は「踊り子9号・12号」の1往復が設定されていましたが、この運行が継続されるのかどうかも注目したいところです。
従来の国府津・茅ケ崎出庫ではなくなるため、踊り子9号〜12号の修善寺発着が維持される場合、この列車は東大宮センターからの入出庫となることが想像できます。基本編成の稼働編成は全て神奈川県内停泊が組まれていますので、朝晩に国府津・茅ケ崎〜東大宮間でロングランの定期回送が設定されていることも想像されます。
配置数の割に走行距離がかなり短い状態となる2500番台。波動用編成に混じって臨時列車での活用などが見られることに期待したいですね。
このほか、従来の基本編成の伊豆急下田駅停泊車両の運用も大きく変わることとなります。
従来は「湘南26号」〜「踊り子5号」〜停泊〜「踊り子4,15,18号」〜「湘南23号」とされていました。
2022年改正では下り最終の踊り子15号の使用車両が停泊することが確実なダイヤですが、踊り子15号は踊り子4号の折り返し列車でしたので、東京駅で車両を入れ替える運用体系とする必要があります。
車両運用数の増加には繋がらないものの、東京駅では踊り子号2列車が毎日並ぶ光景が見られるようになることとなりそうなこと・臨時列車が最大稼働となる際の運用制約となりかねないことなど、今後の詳細ダイヤの発表や季節の臨時列車発表にも注目したいところです。
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