【JR東DE10牽引】トキ鉄413系+クハ455 急行色 検査明け配給輸送

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えちごトキめき鉄道の観光急行で活躍している、413系・クハ455形。前年のクハ455形の重要部検査に続き、2024年は電動車2両の全般検査が実施されました。

4月24日、JR東日本が所有するDE10形の牽引で直江津駅〜糸魚川駅間の往復で配給輸送が実施されています。

大成功のクラウドファンディング

えちごトキめき鉄道は2021年4月にJR西日本七尾線で使用されていた七尾線で活躍していた413系・クハ455形を国鉄急行色の塗装に改めて譲受、同年7月から観光急行列車として使用しています。

導入時点でクハ455形の次回定期検査施工時期となる2年程度の活用を建前に導入したものの、運用開始から着々と利用増・増収に向けた取り組みを続けて、2022年11月から翌2023年1月までのクラウドファンディングでは当初500万円を目標としていたところ1,900万円超の大成功となり話題となりました。

これによりクハ455の重要部検査に加え、より検査に費用が掛かる電動車であるモハ412,クモハ413の検査費用の一部までもを賄うことに成功。2023年1月から検査のための運休が開始され、3月11日の重要部検査後の本線試運転では「祝 試運転」と専用のヘッドマークも用意されました。

続く2024年は2024年1月9日から3月末に検査を終えて4月6日から運行を再開する計画とされていましたが、検査期間を26日まで延長、4月27日から運行再開となる計画が公表されていました。

今回の検査実施発表とともに、観光急行の運転は2027年度までとする予定が示されています。

単純に電動車の定期検査切れ前までとされていますが、ラストイヤーのためにクハ455形を全般検査するものと推測されますので、少しもったいない印象も受けます。

配給輸送の様子を見る

今回の配給輸送は、JR東日本 新潟車両センターに所属するDE10 1700号機の牽引により日本海ひすいライン(旧;北陸本線)直江津駅〜糸魚川駅間の往復で実施されています。

全般検査が交直流電動車を対象としていたことと、糸魚川駅で通電させている姿が確認出来ること、前年は先頭付随車の検査だったため自走での試運転が可能だったことを踏まえると、直江津では試験ができない交流区間での機器類の動作確認を目的としたものと推察されます。

自動連結器を装備する電気機関車・ディーゼル機関車で密着連結器を装備する電車を牽引する場合、被牽引車側の連結器を自動連結器に交換するか、JR東日本の配給列車のような双頭連結器を装備した機関車を仕様するか……といった事例が一般的です。

しかし、今回の配給輸送では「中間連結器」と呼ばれるアダプターを介して実施されています。

私鉄各社で新造車両搬入等で使用される事例が見られますが、使用時の最高時速が70km/hと大きな足枷がかかるため、日中時間帯の本線上で中間連結器を使用する事例は故障時の救援など限定的です。

また、JR東日本所有のDE10形が旧JR西日本区間を走行したという点も極めて異例です。

JR東日本所有の機関車が直江津駅以西の旧北陸本線を自走した事例は2015年1月の天理臨が最後とみられ、9年ぶりの事例となるようです。JR東日本所有DE10形がATS-SW整備後のJR西日本エリアに入線した実績はあったのでしょうか。

糸魚川駅での機回し作業は大糸北線の車両が使用する新幹線側の線路(上1番線)を経由して入換をしています。

糸魚川駅は北陸新幹線が建設された際に山側の線路を削るスリムな構内配線とされましたが、この線路はかつて白馬・小谷への観光客を運ぶため、JR西日本所有のDE10形が各地から訪れたカラフルな客車ジョイフルトレインを従えて行き交っていた歴史のある線路です。

ここに旅客会社のDE10形が入換で走行したという点もかなり興味を惹くポイントです。

デットセクションがある梶屋敷駅〜えちご押上ひすい海岸駅間を通過する配給列車。413系左の赤地に白斜め線の標識がデットセクション区間を示す標識です。

ハンドルを握るのはえちごトキめき鉄道の運転士さんでした。JR東西双方から出向した方々が集って10年目に突入するトキ鉄、機関車を運転出来る職員さんの技量が健在というのも頼もしいところです。

2021年撮影;過去記事

2021年の甲種輸送も撮影した場所で比較。機関車牽引が異なる形で再び実施されるとは思いませんでした。

車両側の変化としては、クラウドファンディング時にも示されていたトイレのリニューアルのほか、クハ455の前面窓のうち、運転席側を除く2つのゴム色が白色に変化しています。

国鉄型各形式ともJR各社にてより劣化しにくい黒色へ変更が進められましたが、近年は車両リバイバルの際に白色に着色する事例が他社でも見られました。

運転席側のみ黒色のままとなっており、運用開始までに着色するのか、それとも実車でも交換過渡期に見られたような混在している姿のまましばらく走らせるのかが気になるところです。

前面は列車番号表示器を律儀に出してくれていたり、側面は今話題の敦賀行きとされたりと、職員の皆様や地元のファンの方々で和気あいあいとした雰囲気でした。

他形式は他社へ委託・なぜ自社で?

2021年の乗車時に撮影

今回の413系・クハ455形を巡る動きとして興味深い点として、えちごトキめき鉄道としては初めて自社で全般検査を施工している点が挙げられます。

えちごトキめき鉄道所有車両の大規模検査は2015年の三セク移管から現在まで、JR西日本の車両ベースのET122形を含めてJR東日本の長野総合車両センターへ委託する体制で実施されてきました。

このような体制は北陸新幹線並行在来線の他社でも同様で、同時開業となったあいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道、そして2024年3月に開業したハピラインふくいはJR西日本に委託する体制が採られています。今後は北陸3県のカラフルになった521系が吹田総合車両所本所へ出入りする光景が見られそうです。

一方で、しなの鉄道は自社車両基地に隣接した、長電テクニカルサービス屋代車両工場で定期検査を実施しています。

しなの鉄道の開業時には現役だった長野電鉄屋代線(2012年廃線)の名残で、現在も自社に隣接した場所で定期検査が可能な体制となっており、2023年には金沢総合車両所松任本所閉鎖を前にあいの風とやま鉄道所有の413系「とやま絵巻」の検査を新たに担うこととなった(過去記事)ことも注目されました。

これらの動向に加え、えちごトキめき鉄道では観光急行として413系・クハ455形を導入するにあたり、3ヶ月に1回実施される交番検査413系を既に所有していたあいの風とやま鉄道に委託するスタイルが採られていました。

これらの自社で大規模検査をしない体制下ながら、特に取り扱いが異なる413系・クハ455形だけは自社で検査をするという選択はなかなか挑戦的な選択にも思えます。

周辺に頼むこと自体は不可能ではなさそうで、長電テクニカルサービス屋代車両工場が交直流電車の413系と急行形の169系双方の定期検査施工実績があるため、えちごトキめき鉄道の413系・クハ455形の定期検査についても請け負う技量は十分にあったことが推測されます。

同様に周辺他社も技量自体は十分に持ち合わせているはずですが、部品共通化などのメンテナンス効率向上を進めている大手事業者は難色を示すのも納得のいくところです。

えちごトキめき鉄道の場合は、観光急行導入でもATSの更新(ATS-SWからATS-Psへ)は自社で施工するなど、従来から周囲の事業者が難色を示す可能性があることを考慮して自力でこの列車維持し続けられる体制を整えておきたい意向が見え隠れしています。

今回の配給輸送では社長の鳥塚氏の姿もみられました。今後も鳥塚社長ならではの手厚いファン向け施策に期待するとともに、運行予定として示された2027年度まで413系・クハ455形が大きなトラブルなく走破できることを願って止みません。

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