東北本線・仙山線・磐越西線など、仙台エリアを中心に南東北の主力車両として活躍が続いていた719系0番台。
2017年3月にE721系1000番台の投入が完了してから既に3年、ひっそりと余生を過ごしていた磐越西線・常磐線での運用も終了し、5月14日を以って0番台の一般車全ての淘汰が完遂しました。
211系そっくりだけど……
719系は1989年から1991年に製造された交流電化線区向けの近郊型電車です。
当時は客車列車代替のために投入された急行形電車を使用していたものの、2扉デッキ付き・クロスシートと使い勝手の悪い状態だったほか、急行形の最小単位である3両編成を繋げての運用となっていました。
後継の719系ではこれらの課題を克服すべく、3扉車・2両固定編成として投入されました。
211系そっくりの外観ですが、走行機器類は交流電化の特性を生かしてサイリスタ連続位相制御の採用がされたほか、仙山線の狭小トンネル対応のためパンタグラフ周りは低屋根構造となっています。
内装についてもセミクロスシートではあるものの、日本国内では採用例が非常に少ない集団見合い型の配置が採用されています。この直後の登場した253系成田エクスプレスの座席が物議を醸したように、この頃のJR東日本は車内レイアウトに試行錯誤していました。
後継の701系はオールロングシート、最新のE721系でやっと最適解に近いセミクロスシートに落ち着いています。
東北本線・磐越西線・仙山線といった仙台地区を中心に42編成84両が製造されたほか、山形新幹線開業に備えた標準軌台車採用の5000番台が12編成24両製造されています。
719系は投入後も一貫して南東北エリア特有の形式でしたが、2017年には突如H-10編成・H-13編成が秋田車両センターへ転属・固定運用でひっそりと使用されていましたが、2019年置き換えが実施されています(関連記事)。
最後まで残された使命は、常磐線全通後はE531系による運転が予定されていた常磐線原ノ町駅以南の普通列車でした。送り込み・返却で1往復のみが仙台駅に出入りしていたものの、それ以外は封じ込め状態でした。
常磐線全通までの繋ぎとして使用されていましたが、沿線の悲願であった2020年3月14日にE531系にその使命を託し、前日となる2020年3月13日に定期運用から撤退しました。
標準軌の5000番台は運用継続中
今回の一連の置き換えでは、一般的な狭軌1,067mm線区で使用される0番台が対象となっており、山形新幹線開業にあわせた奥羽本線標準軌1,435mm仕様の5000番台は対象とはなっていません。
そのため、福島駅〜新庄駅間では新庄駅延伸分として投入された701系5000番台とともに、引き続き使用されています。
置き換えについての具体的な計画は明らかにされておらず、E721系に標準軌仕様の5000番台?が製造されるのか、新形式E723系?開発を待つのかは現時点では不明です。
世代としてはいつ置き換えが始まってもおかしくはありませんが、0番台の廃車発生品でしばらく部品確保は出来そうです。
とはいえ、山形新幹線E8系の登場まで生き残ることが出来るのか、それとも先に置き換えが始まるのか。遠くない未来に新幹線ともども世代交代が進みそうです。
ひっそりと余生を過ごす車両たち
今回の置き換え完遂により、車籍を有する0番台は全車引退となりますが、0番台の残党は2編成だけ存在しています。
まずは2015年の福島DC(ディスティネーションキャンペーン)にあわせて磐越西線に登場した観光快速列車=“フルーティアふくしま”号で使用されている700番台2両です。
0番台のH-27編成(サムネイル画像前側2両)をベースに改造されており、デビューから719系の磐越西線撤退までは一般列車併結で運転されており、719系改造の強みを生かした運用がされてきました。700番台への改造とともに、先頭付随車が供食のため“クシ”に形式名を変更。前代未聞の先頭食堂車としても注目を浴びました。
2019年のダイヤ改正より磐越西線の世代交代が完了したため、それ以降はフルーティアふくしま号単独の運行へと変更されています。
719系の置き換え発表の時点でこの編成は対象外と発表されていたほか、JR東日本が推し進める“乗ってたのしい列車”シリーズでは比較的改造から日が浅い車両ですが、本命の代替車両であろう磐越西線快速列車への指定席連結開始と今後の719系保守にかかる手間、更に昨今の社会状勢が加わると、今後が心配になるところです。
同時期に登場した651系・伊豆クレイル号が本命のE261系の登場により4年足らずで置き換えられたことを考えると、今後の社会状勢次第ではラストランもないままひっそりと淘汰……さえ可能性は捨てきれません。
このほか、車籍こそ既になくなっているものの、元H-40編成が利府の仙台総合訓練センターで訓練機械(本線走行が出来ない車籍なしの訓練車)として転用されており、同センターに残存していた417系の訓練機械を置き換えています。
209系転用の訓練機械同様にセンター名のロゴこそ追加されているものの、現役当時のカラーリングをそのまま維持しています。
417系同様に、719系も最後まで形を留めるのは利府となる可能性が高そうですが、こちらも先代同様に701系の淘汰が始まれば代替される動きも考えられます。
仙台地区では車両不足が深刻?
現在、仙台地区では719系の淘汰により、701系2両・4両編成、E721系2両・4両編成が活躍しています。
最近のE721系では、磐越西線への指定席区画設置が話題を集めました。
この改造の際には工事期間中については車両数不足により、磐越西線の快速あいづ号を4両から2両に減車しての運行となり、あまりの混雑で話題を集める格好となりました。
仙台空港アクセス線の輸送力増強も掲げられており、仙台空港アクセス線の輸送力増強用として、東北本線向け0番台だったP-5編成が500番台のP-505編成へ転用改造を終えています。
なお、719系2両42編成の淘汰に対して、投入されたE721系1000番台は4両19編成。フルーティア分を除いても6両の減車となっており、東北本線の減車を含めた2016年12月改正もありました。
かつては東日本大震災による被災車両の廃車(E721系4両)やその後の福島第一原子力発電所事故による常磐線運休、それ以降も黒磯駅構内改良工事に伴う運用範囲減少、仙石東北ライン開業によるHB-E210系間合い運用などで毎年大きく輸送体系が変化してきたため、運用数などの変化もあったため、増備数の少なさが原因とは一概には言えません。
増減を繰り返した結果、現在の2020年3月改正以降は数字上6両程度となっています。
形式である程度固定されている運用の持ち替えなどを行うことで、実際はもう少し余裕はありそうですが、ワンマン対応の有無・指定席車などの運用上の制約もあることを踏まえると、素人目・他路線と比べても予備を削り過ぎという印象が拭えません。
定期検査など、検修部門の苦悩も想像に難くなく、E721系0番台・500番台間の代走や変運用などが注目されるところですが、719系を少し残しておけば……と感じるファンの方も多いのではないでしょうか。
仙台空港アクセス線増強のための車両投入は、発注から落成まで時間が掛かることを背景に在来車の改造で賄うこととされていました。
更に車両数が厳しくなったE721系。今後何らかの形で増備車を投入するのか、701系の淘汰までこのままの体制で凌ぐのか。はたまたE531系・EV-E210系などの他形式を巻き込んだ輸送体系変更となるのか……。
素人目にもこの体制を続けるのは心許ないところ。今後の動向が気になるところです。
コメント
719系は、確か、485系の足回りを流用していますね。