【中央線】E353系パンタグラフ破損→架線点検・予備PT使用で運転再開

スポンサーリンク

2020年6月18日始発より、あずさ号・かいじ号・富士回遊号などで使用されているE353系複数編成のパンタグラフのすり板(架線に接触する箇所)に大きな破損が見つかって運休が発生していました。

E353系以外の中央東線走行形式となるE233系・211系などではこれらの事象は報じられていない状態という珍しい状態もあり、様々な原因推測が飛び交っています。

E353系の基本仕様・経過をおさらいしつつ、現時点で考えられる原因を考えます。

速報を兼ねて自力取材を含めた独自検証をしています。内容の正確性の保証は致しかねるほか、記事内容を予告なく変更する場合もあります。

2017年デビューのE353系

E353系は、「スーパーあずさ号」で活躍していたE351系・「あずさ号」「かいじ号」で活躍していたE257系の代替車両として開発・製造された車両です。

先代のE351系では振り子式車体傾斜装置を採用していましたが、製造・維持コストの観点から後継車両となったE353系ではコンプレッサーから送られる圧縮空気で台車を動かすアクティブサスペンションが採用されており、角度で約1.5°の車体傾斜となっています。

JR東日本では部品共通化が積極的に進められていますが、E353系のパンタグラフは専用形式となるPS39型シングルアーム式パンタグラフを採用しています。

E257系のPS36型をベースに車体傾斜による変位に備えて集電可能範囲を拡げているほか、集電効率向上のためにすり板(メタライズドカーボン)を3列配置・追従性向上のためのオイルダンパーも搭載しています。

摺り板破損発覚とその後

今回のトラブルは、前日となる17日夜に松本車両センターへ入庫した編成のパンタグラフ摺り板が破損していることから発覚しました。

当初は7編成と報じられていたものの、その後の報道では14編成とされています。

7編成という数字は松本車両センターへの入庫本数と合致しており、これが速報として始発列車のタイミングでアナウンスされたものと考えられます。

E353系の稼働編成は平日・臨時なしで17編成となっていますので、前日運用されたほとんどの編成で発覚している状態です。

始発段階では特急列車の運休で済ませられたものの、朝ラッシュを終えた10時以降に高尾駅~相模湖駅間で架線点検を実施。公式アナウンスでは高尾駅~大月駅間で、実際には高尾駅~四方津駅間で運転を見合わせたのち、13時半に運転再開となっています。

特急列車についても14時ごろから順次運転を再開しています。

これに前後する形で甲府方面から都心方面へ9両2編成が試運転・回送で運行されています。

車両側の対応は全編成完了したわけでもなかったようで、拝島停泊編成を使用したとみられるあずさ29号(第29M列車)では10号車のパンタグラフ降・7号車パンタグラフ使用・5号車パンタグラフは予備パンタグラフを使用して運行されています。

その他の列車では所属基地の松本車両センターや停泊先の三鷹車両センターでの交換などが急ピッチで実施されたようで、所定の状態となっています。

三鷹車両センターでは12両3編成が停泊する運用が組まれていますが、パンタグラフの点検台設備が12両対応留置線にはないようで、構内入れ替えをしてなんとか実施している様子です。

車体傾斜装置の存在が気になるものの……

小仏トンネル東京方

架線点検箇所は相模湖駅から高尾駅間の上り線・小仏トンネルのようです。

現場を見に行くも、相模湖側は作業箇所不明・高尾側でき電停止関連作業が見られた程度で、現場の状況は不明です。

該当区間は中央線快速電車用のE233系・中央本線普通列車用の211系・貨物列車ではEH200形電気機関車が通過しますが、現時点では他形式での破損は報告されていません

架線のうちパンタグラフと接触する電線はトロリー線という名称で、イヤーと呼ばれる部品でハンガーと呼ばれる部品と繋げられています。

パンタグラフの破損・架線点検を総合すると、この接続箇所かトロリー線自体のいずれかの損傷を起因とし、ここに車体傾斜が加わるE353系だけが該当箇所に接触した……といった背景が考えられます。つまり、車両側のトラブルではなく架線側のトラブルの可能性が高そうです。

ただ、前日の夜間作業でミスがあった場合と仮定すると、前日の稼動数である17編成で発見されてもおかしくないところです。経年で発生していたとすれば原因究明がここまでスムーズではないので、16日晩の架線関係の作業箇所が高尾~相模湖間だったために発見に至った……といったところでしょうか。

列車の振動・通過列車速度などの微妙な条件の変化でこの差異が発生しているものと考えられますが、こればかりは公式発表を待つしかなさそうです。

E353系と送電設備の事故は過去にもあるが無関係か

E353系と送電設備の事故といえば、八王子駅構内の架線切断事故が思い浮かびます。

しかしながら、これは破断した架線にE353系が接触した事象であり、E353系自体が悪さをした事故とは言えません。

架線交換不具合であればいいものの……

続報が待たれるところですが、筆者の上記推測が正しければ架線周りの点検+破損車両のすり板交換で完結しています。

可能性は低そうですが、万が一、車両設計上の根本的な課題で架線に過度な負担が掛かっているとなれば、車体傾斜取りやめ・深刻な場合は当面の異形式代走(ちょうど余っているE257系?)としばらく引きずる問題となりそうです。

関連記事はこちら

コメント

  1. nyosu より:

    初めてコメントさせていただきます。

    文中で「E353系ではコンプレッサーから送られる圧縮空気で台車を動かすアクティブサスペンションが採用されており、角度で2°の車体傾斜となっています。」となっていますが、1.5°の間違いではないでしょうか?

    • nyosu様

      閲覧・コメントありがとうございます。
      ご指摘の件、誤植ですので加筆・訂正させていただいております。

      今後とも当サイトのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

  2. 幸歩 より:

    今日上りのあずさに乗ったら相模湖過ぎから減速区間あったのですが、これと関係ありますかね?
    最近乗ってなくて、昨年の台風の影響まだ残ってる可能性もあるのかな、とも考えたりしまして。

    • 幸歩さま

      閲覧・コメントありがとうございます。

      私は乗車機会がしばらくないので友人に確認しましたら、やはり同様の区間で減速していたようです。
      台風被災・復旧後の減速区間とは少し場所が異なるようですので、本件の影響と考えられそうです。

      今後とも当サイトのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。