【あずさ 碓氷峠越え】E353系S206編成陸送で総合車両へ!踏切事故修理

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2019年7月に踏切事故で損傷をして以来、長野総合車両センターで留置が続けられてきたE353系S206編成。

3月に同センターの解体線(通称)に移動されて動向が注目されていましたが、5月3日晩より陸路で搬出が行われています。

踏切事故発生から現在まで

今回輸送されているE353系 S206編成は、2019年7月13日にあずさ22号(22M)としてS102編成とともに運用されている最中、村井駅〜広丘駅間で踏切内で立ち往生した普通乗用車との接触事故で大きく損傷した車両です。

自動車の運転手は非常通報ボタンを押下して無事だったものの、列車と乗用車の衝撃回避には至らず、大きな事故となりました。

先頭に立っていた1〜3号車=付属編成のS206編成は重度の損傷がみられたほか、4〜12号車=基本編成のS102編成にも若干の接触があったようです。

車両はその日の夕方に塩尻駅南側の“塩尻大門”まで自走にて移動して待機、同日深夜に所属区である松本車両センターに移動しました。

基本編成側は16日には通常運用に復帰しましたが、付属編成は留置されたのち、同年8月5日に定期検査を実施する長野総合車両センターへ回送で入場しています(S104編成が伴走)。

S206編成は同センターに入場以降、目立った動きがありませんでした。

総合車両製作所横浜事業所へ輸送か

今回の輸送はもちろん事前公開されているものではありませんが、総合車両製作所横浜事業所への輸送と見て間違いなさそうな動きです。(5/6加筆:6日深夜2時前に到着しました)

S206編成がしばらく留置されていた長野総合車両センターはJR東日本の拠点工場のうちの1つとして、首都圏を中心とした数多くの車両改造を行ってきた高い技術力のある工場です。

近年は自社車両だけではなく、相模鉄道・富士急行などの改造も担った実績がありました。

床下機器の艤装を交換する程度であれば同センター内で施工可能(J-TREC出張工事を含む)ですので、今回の3両は車体の代替新造などを含めた大規模な修繕が必要になった可能性が考えられます

輸送中の車両は事故当時の損傷がそのままとなっているようで、スカート部が抉れたままとなっている点が印象的です。

自社工場で施工できない工事・車体製造を含めたメーカーということで、総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所に搬入……のようです。

あえて陸路の理由・今回だけの風景

JR東日本ではその強大なネットワークを生かし、車両輸送のほとんどを配給輸送(自社牽引機による輸送)か甲種輸送(貨物列車としての輸送)で行っています。

E353系の新造時は量産先行車のS101+S201編成は甲種輸送・それ以外の量産車では逗子駅から試運転を兼ねた自走回送となっています。

今回、陸路が選択された理由は推測の域を出ないものの、事故時点でエアー漏れ・ブレーキ管の破損を指摘する声があり、これが原因と考えることが出来そうです。

ブレーキが破損して全く動作しない場合、自走はもちろん不可能ですが、機関車牽引でも法令上不可能となります。

E353系がトレーラーで輸送されることは初めてとなるほか、JR東日本の在来線車両全体を通して見ても、海外譲渡で貨物駅から港まで走行する程度です。新潟トランシス製造車両だけが短区間陸送となりますが、採用自体がほとんどありません(最近だとHB-E300系”海里”)。

陸路での鉄道車両輸送全体としても比較的長距離なものとなります。

ファンとしての注目どころとしては、在来線特急”あさま号”が駆け抜けた横川~軽井沢間・碓氷峠越えがまさかの陸路で実現した点に尽きるかと思います。

同じ長野県と首都圏を結ぶ在来線特急車両。

踏切事故が原因と喜べた経緯ではないものの、引退まで語り継がれる大きなエピソードとなりそうです。

ブルーシートで覆われていますが、独特な配色のスカート(排障器)・車体シルエットなどで鉄道が好きな方ならE353系と一目で分かる状態となっています。

陸路での輸送でビニールシートで覆っての輸送は多くはありませんが、過去も事故車などは全面養生となることが多い印象です。

輸送は1ヶ月遅れ?

今回の陸路での搬入ですが、解体線に運び込まれた日程とその後の動きを考えると、3月末〜4月頭に実施予定だったのではないかと噂されています。

今回の輸送は国道18号線(上信越道の下道・鉄道だとしなの鉄道・信越本線に相当)を経由する形で運ばれましたが、ちょうどその頃は雪に見舞われ、上信越道が通行止めとなってしまいました。

鉄道車両陸送は車体だけでも全長20m・重量物で速度も非常に遅いため、深夜帯に一般道を一般車両・他の物流トラックなどに進路を譲りながら実施されます。

状況からの推測ですが、当初予定日に国道18号線が迂回路となったために延期された……といったところでしょうか。

長野総合車両センターに輸送用トラックが停車していたとの目撃情報もあるほか、コメントで頂いたように載せ替え作業自体が困難だった可能性もありそうです。

6日深夜に無事J-TRECに到着

1番列車に抜擢された経歴も

富士回遊号定期1番列車に充当されたS206編成

今回入場が行われたE353系S206編成は、中央線特急“あずさ号”・“かいじ号”の形式統一と、“中央ライナー”・“青梅ライナー”の特急化を完遂すべく、E257系付属編成の代替分として登場していました。

前番号のS205編成まではE351系代替としてセットで製造されましたが、それ以降は2018年7月に向け、E257系9両のライナーが絡まない運用の置き換えを先行すべく基本編成の製造が先行しました。

そのため、このS206編成は2018年11月の落成と少し期間が空いています。

“富士回遊”運行開始に向けた、富士急行線の試運転にも使用されています。

E353系に形式統一され、やっと本領発揮……といった矢先の踏切事故となり、営業運転での活躍はわずか4ヶ月程度と非常に短い車両です。

2019年3月改正が行われた16日には、目玉となった富士回遊号の定期1番列車“富士回遊1号”に抜擢された経歴も有しています。

※ S206編成の車歴の一部に誤りがありましたので修正しました(5/4 15:00)

復路は自走?出場形態にも注目

富士回遊号分?としてS210編成・S211編成は単独で出場しました。

修理が完了すれば、新造時同様の元気な姿で自走回送となることに期待できます。

E353系付属編成単独の自走回送自体も極めて珍しく、都心部ではS210編成・S211編成の落成後の出場回送以来でしょうか。

E353系の増備については形式統一後ありませんでしたので、修繕が完了すれば久々に横須賀線などで走行する風景を見ることが出来そうです。

中央線一筋で定期検査も長野と、イレギュラーな経路をほとんど走行する機会がないE353系。

一部資料でE353系の定期保全を長野から大宮へ移管する計画も示されていますが、少なくとも新宿以南の3両編成での走行は貴重なものとなりそうですね。

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コメント

  1. しらうお より:

    はじめまして、いつも楽しく拝読させていただいてます。さっそくですが今回の記事について気になった点があったのでコメントさせていただきます。
    S206編成にデビュー時期についてですが、記事内では2018年3月改正となってますがおそらく2019年3月改正と思われます。2018年11月22日にJ-TECHを出場して疎開をくりかえしたのち、富士回遊号1番列車に充当されたので実際の営業運転期間は4ヶ月ほどになってます。
    余談ですが2018年3月改正時点ではS201編成の量産化改造のみ先行させてS106編成とペアを組むことでスーパーあずさ用の5編成を確保してました。
    以上僭越ながら指摘させていただきました。

    • しらうお様

      日頃からのご愛読・そしてコメントありがとうございます。
      S206編成の落成からの動きですが、ご指摘の通りとなります。
      仰っているS106編成の運用先行とごっちゃになっておりました。
      在来線特急に力を入れている当サイトとしては情けない限りの誤記でした……
      取り急ぎ加筆・訂正させていただきました。

      今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

      • しらうお より:

        ご返信ありがとうございます。
        編集・執筆お疲れ様です。これからも「鉄道ファンの待合室」の記事を楽しみにしております。

  2. しらうお より:

    度々すみません。先程のコメントに貼ったコメントのソースのURLが間違えていたので訂正させていただきます。
    https://railf.jp/news/2018/11/23/203000.html

  3. きさらぎ より:

    情報筋によると、陸送が遅れた原因は、積雪で陸送準備作業が中止になったことが理由らしいですよ。