【安泰?】中部横断自動車道の静岡山梨間が全通!身延線・ワイドビューふじかわ号の影響

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2021年8月29日、「中部横断自動車道」のうち静岡県の清水から山梨県の甲府を結ぶ区間が全通し、自動車での南北移動の利便性が大きく向上しています。

この道路は多くが身延線と並走する関係にあり、自動車移動の活性化により身延線の今後を心配する声が上がっています。

中部横断自動車道の開業

中部横断自動車道は、静岡県静岡市〜山梨県甲府市〜長野県佐久市を繋ぐ、以前より建設が進められていた高速自動車国道です。

この周辺は東名高速・中央自動車道・上信越自動車道と東西軸の道路があるものの、南北の移動が一般道のみという時代が長らく続いており、建設が進められていました。

2021年8月29日には、残されていた南部IC〜身延山IC〜下部温泉早川ICの区間が開通し、中部横断自動車道のうち南側の新清水JCT〜双葉JCTが全通。山梨〜静岡間の新たな南北軸が確立されました。

静岡からの南北移動はこちらも2021年に開通したばかりの御殿場〜大月経由・建設が難航している三遠南信自動車道の3経路の計画が並行していましたが、この中部横断自動車道は静岡と山梨の県庁所在地を最短で結ぶルートとなり、特に期待が寄せられていた経路でした。

並行する国道52号にはこれまでも日夜トラックが多く行き交っており、物流需要も大きい経路です。

また、この静岡〜甲府間は中部横断自動車道経由の高速バスも運行されていました。コロナ渦でしばらく運休とされていたものの、今回の中部横断自動車道の開通で運行を再開しています。これまでほぼ互角だった所要時間ですが、全通により15分短縮を実現したバスが有位となっています。

なお、中部横断自動車道はこのほかにも山梨県長坂JCT〜長野県佐久小諸JCTを結ぶ、小海線に近い経路も計画されていますが、こちらはルート策定途上で全通は相当先となりそうです。

ワイドビューふじかわの今後

静岡側が清水と富士という違いがあるものの、中部横断自動車道はそのほとんどの区間を身延線と並行する格好で建設されています。

身延線では貨物輸送が行われていないため、影響を受けるのは旅客輸送です。特に静岡・山梨の両県庁所在地を結ぶ特急「ワイドビューふじかわ」の長距離需要です。

経路としても合致しており、身延線の歴史から速達性があまり高くないこと・富士駅を経由するため走行距離も長いこともあり、これまで「ワイドビューふじかわ」を乗り通していた旅客が運賃・所要時間ともに有位となる高速バスへシェアを奪われることが予想されています。開業直後はバスの運行本数が非常に少なくなっているものの、利用動向によっては大規模な増発も考えられ、大きな脅威であることは明白です。

高速バス静岡甲府線とワイドビューふじかわの関係

高速バスワイドビューふじかわ
所要時間1時間55分2時間10分程度
運行本数土休日のみ
2往復/日
毎日運転
7往復/日
運賃2,600円4,170円(自由)
4,900円(指定)

JR東海もなす術がないわけではなく、27日には「定期券用自由席回数特急券」を甲府駅発着の設定を追加し、短区間利用を促進する方針です(PDF)。これまでの設定が静岡駅から身延エリア向けでしたので、新たに山梨県内完結の利用促進を行っていることが伺えます。

もともと「ワイドビューふじかわ」は30km以内・50km以内で割安となる料金設定を行っており、今後も短区間需要に応えることで利用者確保を進めることとなりそうです。

運行本数自体の少ない身延線は、ダイヤ上も特急に割安で乗車出来るようにすることで普通列車を補う構成です。指定席車両は乗り通しの観光需要なども多いですが、自由席車両では短区間の乗車が意外と多いことが見て取れます。

一方の高速バス路線も途中は身延のみの停車で、沿線利用者はメインターゲットとしていません。今後も途中の沿線利用者への利用を促すことで、静岡駅発着の利用者が流出しても高速バスとの棲み分けが可能で、身延線のダイヤは当面維持されることとなりそうです。

むしろ、現状としては沿線の普通列車利用者がマイカーへ流出することが懸念材料なのではないでしょうか。

ただし、アクアライン開通から数年後に内房線特急が淘汰されたように、今後の利用動向によっては列車の削減の可能性は否定できません。JR東海としてもしばらくは利用者増加策を打ちつつ様子見でしょうか。

将来的に「ふじかわ」へ期待される点としては、甲府駅での中央線特急「あずさ」「かいじ」への更なる接続強化が挙げられます。

「ふじかわ」と「あずさ」「かいじ」の乗り換え需要は意外とあり、甲府駅でも「ふじかわ」の遅延時に接続待ちをする光景は日常的です。静岡・富士から都心へ向かう利用者は新幹線一択ですので、沿線利用者や長野方面から富士方面への利用が一定数あるものと想像できます。

「木曽あずさ」「諏訪しなの」のような、鉄路でつながっているメリットを生かした臨時列車の運行にも期待したいところです。

一方の静岡側は、富士駅と新富士駅の乗り換えが大きな課題です。富士の市街地は富士川の水資源により製紙パルプ産業が昔から栄えており、今後もこの短区間の延伸などは採算も含めて困難で、引き続き静岡駅などから向かう必要があります。

乗り鉄層にとっては静岡駅で乗り換えをすることで乗り継ぎ割引適用をする経路が知られていますが、一般利用者にとっては大きなタイムロスです。

都心側からのアクセスを狙うのであれば、熱海・三島駅発の「ふじかわ」で下部温泉や身延エリアへの観光需要を開拓するのも選択肢に入りそうです。東京・神奈川エリアでの知名度は距離の割に低く、PR次第では優位に立てそうです。

筆者は伊豆半島在住ですが、山梨・長野〜静岡東部の観光客は意外と多い印象です。肌感覚ですが、この南北軸の需要は鉄道においても開拓の余地はあるのではないかと思います。

2019年10月の中央本線豪雨被害では、山梨から都心方面への唯一の連絡路として身延線の存在が注目されました。3両で速達性も高くない特急列車が終日満席・臨時快速列車も3往復設定と大きな話題となりました。

貴重な南北軸として、今後も何らかのテコ入れが行われることに期待したいところです。

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コメント

  1. しつ より:

    個人的な意見ですが、身延線沿線は場所によって中央本線経由で回る方がアクセスが良い場合もあるので、三島接続のふじかわ号が新設されたとしてもそこまで需要は伸びないかなとも思います。
    富士宮市周辺ならば断然東海道周りの方が早いですけどね。