「ジョイフルトレイン」という言葉自体が死語になりつつありますが、令和になっても「ジョイフルトレイン」の第一世代にあたる「サロンカーなにわ」は走り続けています。
かつて客車方式のジョイフルトレインはJR旅客6社に継承されたものの、現在は風前の灯火となっています。
今回は11月7日、8日に運行された大阪駅~城崎温泉駅間の団体臨時列車を取り上げます。
「サロンカーなにわ」とは
「サロンカーなにわ」は14系客車を改造し、1983年に登場したジョイフルトレインです。ジョイフルトレインとは簡単に書くと団体専用列車や臨時列車に用いられる豪華列車のことを指します。1980年代~1990年代にかけてのバブル時代に次々とジョイフルトレインがデビューしましたが、経済の低迷や旅行形態の変化により、その多くが引退しました。
「サロンカーなにわ」は現役で活躍するジョイフルトレイン第一世代にあたる貴重な客車です。
なお、同時期に東日本で同時期にデビューしたジョイフルトレインが「サロンエクスプレス東京」で、東西の看板車両となっていました。こちらは1997年に和式客車「ゆとり」に再改造されたのち、こちらは2008年に引退しています。
「サロンカーなにわ」がデビューする前の貸切列車は御座敷が一般的でした。同車は内外装がヨーロッパ風となり、車内は2列+1列のリクライニングシートが並んでいます。両先頭車(1号車・7号車)には展望室があり、1号車にはラウンジが設置されています。「サロンカーなにわ」は1994年と2011年にリニューアル工事を受け、塗装も細かい箇所が変更されています。なお他のジョイフルトレインと同じく、全車グリーン車となっています。
デビュー以降、主に西日本において臨時列車や団体専用列車として活躍してきまし、お召し列車として運用されたこともあります。今回は『城崎温泉開湯1300年記念「サロンカーなにわ」で行く城崎温泉への旅』に伴い、11月7日、8日に大阪駅~城崎温泉駅間を走行しました。
国鉄時代の貫禄たっぷりな「サロンカーなにわ」
11月8日、筆者は大阪駅で「サロンカーなにわ」を撮影することにしました。18時10分頃、城崎温泉駅からやってきた「サロンカーなにわ」が大阪駅10番線に入線。当日の編成はDD51形と「サロンカーなにわ」5両という組み合わせでした。
展望室とラウンジがある1号車です。車外からは重厚なソファが見えました。筆者は展望室に乗車したことがありますが、1号車・7号車と中間車では車内の雰囲気は全く違います! 1号車・7号車はホテルのロビーのような雰囲気の中、車窓が存分に楽しめます。
今回の臨時列車で用いられたオリジナルヘッドマークです。「サロンカーなにわ」のオリジナルヘッドマークに「城崎温泉開湯1300年」がうまくマッチしています。
こちらは1号車の車内です。登場が1983年ということもあり、少々古めかしく見えます。1980年代のインテリアを伝える車両として文化史の観点から見ても貴重な車両といえるでしょう。
中間車は2列+1列のリクライニングシートですが、千鳥配置になっており、自由に回転できます。グリーン車ということもあり、座り心地は抜群ですよ。
「サロンカーなにわ」は国鉄時代に登場したということもあり、「国鉄らしさ」も随所に残っています。近年ではあまり見られなくなった白幕に「サロンカー」という独特の字体がたまりません。
またオリジナルサボも設置されていました。今回の臨時列車は一般団体客向けの臨時列車でしたが、かなり鉄道ファンを意識したことは伝わってきました。
国鉄時代は当たり前のように見られたDD51形けん引の客車列車も近年はめっきり数を減らしました。そのせいか、DD51形付近には多くの鉄道ファンが集まっていました。ところで今回のルートでは大阪駅~城崎温泉駅間は電化区間でしたが、回送列車として非電化区間の香住駅まで乗り入れました。
時代は令和になりましたが、「サロンカーなにわ」は国鉄時代の魅力を今に伝える客車だと思います。
「サロンカーなにわ」の活躍はいつまで続く?
「サロンカーなにわ」の活躍はいつまで続くか? この問いに対する答えはなかなか難しいと思います。少なくとも昨今の社会情勢やJR西日本の経営環境を考慮すると、当面はジョイフルトレインを新しく製造することはないでしょう。
今年9月に運行を開始した長距離列車「WEST EXPRESS銀河」は電車ですから、当然のことながら非電化区間には入線できません。当分は電化・非電化を問わず入線でき、両数も自由に変えられる「サロンカーなにわ」の活躍は続くのではないでしょうか。
また、天皇陛下が御乗車される“お召し列車”の任務を担っていることも背景に挙げられそうです。JR西日本管内では、電化区間のみの走行の場合は281系関空特急「はるか」を使用しますが、非電化区間を走行する場合は「サロンカーなにわ」が“お召し列車”の任務に就きます。
経年を考えると代替車の構想はあっても不思議ではありませんが、線区を問わない波動輸送・お召し列車双方を担うことが出来る代替車ーーJR東日本の「和(なごみ)」のような車両が登場するのでしょうか。
それでは、なぜ多くの後輩ジョイフルトレインよりも長く活躍できているのでしょうか。この問いもなかなか難しいですが、使い勝手の良さと「サロンカーなにわ」の熱烈な人気に支えられているのでしょう。
同じ本州会社では、JR東海が機関車牽引列車を全廃したほか、JR東日本でも工事用臨時列車の削減で機関車の削減が進む計画です。機関車牽引列車の汎用性が低下しているなかでの活躍は奇跡的と言えそうです。
近年は稼働率が下がり、走行している姿を見る機会も少なくなってきました。引退時まで「サロンカーなにわ」を温かく見守りたいと思います。
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