昨日・本日の朝、JR北海道・東日本で活躍していた元寝台特急カシオペア号のE26系客車が大宮総合車両センターに入場回送されました。
検査にあわせてリニューアルも行われるといううわさがあります。
一方で、JR東日本では労働組合発表や、中長期計画【ベスト・プラクティス】にて管内の工事用臨時列車等を牽引している電気機関車やディーゼル機関車の全廃を示唆する発表がなされています。
カシオペア用E26系をリニューアルする一方で、牽引する機関車は廃止する……
なぜこのようなアンバランスなことが行われているのでしょうか?
・E26系の生い立ち
青函トンネル開業とともに運転した寝台特急北斗星は、既存の24系寝台客車・ブルートレインを個室等の豪華な列車に改造して運転を開始しました。
最盛期には3往復体制が築かれていました。
更なるフラッグシップとして、1999年より運転を開始する「カシオペア号」専用客車としてE26系・12両1編成が投入されました。
1編成のみという特殊性から、臨時北斗星の対となる方向に週3往復(1日休み)という形態で運転されてきました。
牽引機には北斗星用の装備をしていたEF81型電気機関車のうち、79号機・89号機・92号機が選ばれ、専用塗装・専用機として使用されました。
これらの機関車は常磐線にあった貨物運用にも入らず、カシオペアとたまに北斗星を牽引というフラッグシップ機とされていました(後述の代替機登場以降に貨物列車充当もされました)。
・牽引機EF510の登場と北海道新幹線
北海道新幹線の開業に伴い、青函トンネルとその前後の82kmが新幹線・在来線の共用走行となり、これにより新幹線の標準電圧である25000Vに昇圧されることとなります。
これにより、寝台特急北斗星・カシオペア・トワイライトエクスプレス、急行はまなすといった対北海道の夜行列車が全滅してしまうのではないかという声も聞かれるようになり、実際に沿線自治体から国土交通省への働きかけなどもありました。
将来的な心配がされている一方で、JR東日本では老朽化していたEF81型電気機関車の代替として、JR貨物開発のEF510型電気機関車を15機導入という明るい話題もありました。
JR旅客会社が民営化後に電気機関車を製造したのは初の事例で大きな話題となりました。
これは2018年現在でも、ディーゼル機関車でななつ星用のDF200型1機が製造された事例のみにとどまっています。
なお、これに伴ってカシオペア専用塗装であった79号機・92号機・調子が悪かった89号機の代替となった99号機は常磐線貨物運用などで余生を過ごしました。
しかし、そんな明るい話題もむなしく、JR貨物では新型のEH800型電気機関車を投入する一方で、旅客会社であるJR北海道・JR東日本では青函トンネルに対応させた機関車が登場することはありませんでした。
先輩格の北斗星が2015年3月に定期運行を終了・8月の臨時列車終了を以って、臨時運行ながら日本で最後の客車寝台特急となりました。
・寝台特急から団体でのクルーズ車両に
先輩の北斗星の臨時運行終了直後、JR両社から2016年3月ダイヤ改正で寝台特急カシオペア号の運転終了が発表されてしましました。
地上設備最終切り替えが2016年3月22日より行われるため、20日札幌発という最後まで現行設備で走り切った格好となります。
途中・時刻変更を行った時期もありましたが、夜間工事の合間をぎりぎりまで走り抜けたということは、関係者の努力の賜物でしょう。
それ以降は、せっかく新造したEF510は北斗星用からJR貨物に売却されて姿を消してしまいましたが、E26系や旧来のEF81型が残されました。
そして、寝台特急の合間に運転されていたカシオペアクルーズの名称も再活用され、カシオペアクルーズ・カシオペア紀行として同年6月から運行を再開しました。
青函トンネル区間はJR貨物のEH800型電気機関車、そこからはJR北海道がJR貨物のDF200型ディーゼル機関車を借り入れて運行がされました。
牽引機こそ変わったものの、同車が再び北海道に姿を現したこと、そして撮り鉄のみなさんからは新しい光景となったこともあり大きく話題になりました。
・四季島の登場でクルーズとしての運行も終了……
久々の北海道乗り入れ復活となったカシオペアですが、JR九州ななつ星に触発された四季島が運転を開始すると、花形であったカシオペアクルーズの運行も終了となってしまいました。
青函トンネルの通過・この車両の最大の活躍使命であった北海道乗り入れも終了となり、それ以降JR東日本管内完結で週末運行のカシオペア紀行として各方面にて運転されています。
そんな暗い話題ばかりのカシオペアですが、2017年12月にはJR30周年を記念したツアーではEH500型に牽引されて運行され、大きな注目を集めました。
EF510、EH800、DF200、そしてEH500とJR貨物開発機とこれだけの共演が見れたのも、カシオペアが1999年生まれの若い客車だったからに他なりません。
また、長野方面への運行ツアーなども開始され、新しい光景が見れるようになりました。
元北斗星の車両が機関車牽引列車の訓練として黒磯往復の乗務員訓練で頻繁に使用されていましたが、これの撤退後はカシオペア客車や、その予備電源車のカヤ27-501が活躍しています。
・そして、4年に1度の定期検査へ、今後の活躍は?
以上のように、一般販売列車→クルーズ列車で準レギュラー→週末のツアーのみ、とどんどん活躍の場を減らしているカシオペア。
寝台特急時代のクルーも退職が続いており、寝台特急時代からの客室乗務員8名乗務体制も難しくなってきているという話もあります。
そして、追い打ちをかけるように、JR東日本では機関車全廃を目指した動きが加速しています。
E26系客車、その検査終了時でもまだ製造から20年ですから、機関車全廃ギリギリまでは使おうという計画の上での今回の定期検査なのではないでしょうか。
リニューアルという言葉が一部では出ていますが、あくまで18年も経てば優等車ならアコモ(内装)のリニューアルは必須な時期になりますので、とりあえずもう4年先の検査まで持たせるということを指しているのではないでしょうか。
ここまで活躍の場が狭まっている客車列車を徹底的なリニューアルしたところで使い道がなく、その前に牽引機がなくなってしまいます。
趣味的には残念ですが、残された活躍の場を頑張ってほしいところです。
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