【移動等円滑化取組2021】琴電が2024年度に新車両・JR東日本の新造は未発表も?

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日本の鉄道事業者については、2019年より「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の規定に基づき、一定規模以上の公共交通事業者に対して「移動等円滑化取組計画書」を利用者に公表することが義務付けられています。

この中にはバリアフリー設備を有する車両の新造・改造での投入について触れられており、各社の今後の動向が垣間見られるものとなっています。

2021年度分が各社から相次いで発表されていますので、各事業者の車両の動きを中心にピックアップしています(車両の動きがない事業者・記事公開時点で未掲載の事業者などは割愛)。情報が不足している事業者については、設備投資計画や決算・安全報告などの資料で一部補足しています。

JR各社

JR北海道

JR北海道では、2024年度までにH100形一般気動車を54両・2022年度までにキハ261系1000番台特急気動車を26両導入する計画のうち、2021年度についてはH100形30両・キハ261系18両の投入を示しています(PDF)。

2022年度以降が先細りの数となっている点が気になる方も多いかと思いますが、これは以後記す鉄道事業者でも散見できる動向です。鉄道車両の新造は発注から納入まで概ね1年半〜2年程度の期間をもって実施されるため、2020年度以降の大幅な減収・減益による計画の見直しの影響は2022年度以降に顕著に現れることが予想できます。

JR東日本

JR東日本では、新幹線12編成142両、在来線38編成161両の投入としています(PDF)。新幹線のついては設備投資計画で示されていたE5系1編成10両・E7系11編成と合致しており、新しい情報はありません。

一方で注目される点としては、在来線の新製車両の投入です。

既に落成済の車両としては、横須賀線・総武線快速電車向けのE235系1000番台が基本11両4編成(F-10〜13)・付属4両3編成(J-11〜13)となっており、7編成56両です。鎌倉車両センターでのイベントにて、既に2021年内の納入は終了とされています。

現時点でリリースされているのは相模線向けE131系(500番台)4両12編成=48両・宇都宮エリア向けE131系(600番台)3両15編成=45両が挙げられます。

両路線とも投入完了時期は示されていませんが、相模線は報道で冬までに代替を終えることが示されているほか、車両運用の見直しが大きく加えられる宇都宮エリアについてもダイヤ改正までにほとんどの車両が投入されるのが自然です(2020年度の房総エリアの事例では、ラストナンバーのR12編成のみ改正後に登場)。

これらの車両を差し引くと、残された投入先不明の新製車両は4編成12両となり、この残りの車両がどの形式・どの路線に投入されるのかは注目が集まります。

まず考えられる車両として、2021年度に1編成2両で投入される計画が示されていた燃料電池試験車=FV-E991系の存在が挙げられます。しかし、この車両は試験車の色合いが非常に強く、バリアフリーについて示す当資料の対象からは外れることと予想できます(2020年度も事業用のE493系・GV-E197系・キヤE195系は除外されています)。

2両・4両各2編成または3両4編成と考えられる数字で、最も考えやすいのは3両編成のE131系でしょうか。

経年車が配置されている路線のうちの大半がE233系の転入と見られる格好で、労働組合資料で唯一投入計画が示されていない路線として、鶴見線・南武支線の205系が挙げられます。

鎌倉車両センター中原支所に配置されている205系は、鶴見線向け3両9編成(T11〜T19)・南武支線向け2両3編成(ワ1,2,4)とされています。

このほか、2両のE127系や3両の211系が運用されている中央本線・篠ノ井線など甲府・松本エリアについても、代替車が全編成E233系の転用とされるのか、一部にE131系が混じるのかは予想が割れるところです。

2022年3月に新潟駅の高架化工事が完了し、運用数削減が見込まれる新潟エリアのE129系追加投入も考えられます。

その後、E129系増備が行われることが記された刊行物の存在がファンによって発見されています。

いずれにせよ、既にリリース済の路線以外にも何らかの新製車が投入されることとなります。向こう数年で置き換えが予想できる路線の記録は早期に進めておいた方が良さそうです。

一方で、E235系1000番台の投入は2023年度までとされているものの、製造ペースの遅さが気になるところです。各支線区向けのE131系をとりあえず優先する狙いなのか、昨今の減収減益を加味して製造期間の延長をしているのかが明らかになっていません。以前よりE217系の動向では、検査期限に余裕がある車両=解体待ちではない車両も疎開させるなど、ギリギリまで運用する狙いが垣間みられます。

JR東海

JR東海では、次期新幹線車両N700Sを2023年度まで40編成・在来線通勤型車両315系を2025年度までに352両・次期特急車両HC85系を2023年度までに64両投入することを示しています(PDF)(いずれも前年度までの投入分を含む)。

JR東海の設備投資計画と、車両製造を行う日本車輌製造の受注数により既に内訳が明らかにされており、目立つ新情報はありません。

参考:JR東海の車両投入計画

年度N700S系315系HC85系
202116両9編成
=144両
8両7編成
=56両
202216両8編成
=128両
8両6編成
4両2編成
=56両
編成構成不明
58両
20238両10編成
4両10編成
=120両
編成構成不明
6両
20244両16編成
=64両
20254両14編成
=56両

JR西日本

記事公開日現在未掲載

JR西日本では中期経営計画で様々な老朽車両の更新を明らかにしており、続報が待たれるところです。

JR四国

記事公開日現在未掲載

ただし、設備投資計画にて新たな「伊予灘ものがたり」の運行について・経年部品についての更新についてのみが触れられており、2021年度は車両については大きな動きのない年となりそうです。

JR九州

JR九州では、821系3編成9両と、YC1系12両の投入を明らかにしています。

YC1系の追加投入・営業路線拡大に期待する声もありますが、過去の同報告書では2020年度に24両の投入としており、先行量産車で2018年度投入となる0番台2両を加えると、既に投入されている38両と車両数が合致します。

これは、2021年3月に2両12編成が輸送されているものの、入籍は4月以降とされたことが背景と見られます。

JR九州では2021年度に電気式ディーゼル機関車のDD200形701号機も投入していますが、こちらも輸送は6月・検査表記は7月とされており、輸送から入籍までの期間が長めに設定されていることが伺えます。

ただし、川崎重工業兵庫工場では既にYC1系と見られる構体が複数目撃されており、2022年度以降に営業エリア拡大を目的とした投入が実施されるかもしれません。

北海道・東北 私鉄と公営

札幌市交通局

地下鉄部門では、車両機器更新計画の見直しにより、東西線8000形の車両表示器更新を2024年度まで延長することが示されています(PDF)。

路面電車のハード面では、2019年度から2028年度において低床車両14両の導入を計画としています(PDF)。予算案の時点で低床車両新造を示しており(外部リンク)、本年度はこのうちの一部が納入されるものと見られます。

2021年度については「親子電車」として特徴的な連結車だったM100形が10月31日をもって退役することが発表されており、“子”で既に退役したTc1形とともに札幌市交通資料館に静態保存となります。Tc1形の退役は製造からわずか9年の1970年となっており、半世紀以上の時を経て“再会”する格好です。

函館市企業局

2022年度にバリアフリー適合車の導入との記述が見受けられます(PDF)。投入車両は従来同様の9600形連接車と考えられます。

関東 私鉄・公営

東武鉄道

記事公開日現在未掲載

既に経営計画で明らかにされているように、本年度は500系「リバティ」6編成18両の投入と、20000系リニューアル・ワンマン転用が3編成を対象に実施される予定です。

西武鉄道

記事公開日現在未掲載

西武鉄道についても、40000系ロングシート仕様を3編成30両増備することを事業計画で明らかにしています。

京成電鉄

投入が進められている3100形について、2021年度2編成、2022年度1編成、2024年度2編成の投入とされています(PDF)。

これまで3100形の50番台が付与された成田スカイアクセス線専用車を投入・3000形のいわゆる3050形が順次本線へ転用される動きが続いています。成田スカイアクセス線向けは7編成の増備とされていることから、2024年度以降は本線向けの3100形が登場することが確実視できるようになりました(3101-編成?)。

外装・内装ともに従来車と異なることは容易に想像ができますので、今後が楽しみな一方で、3400形・3600形の淘汰が更に進行するものと見られます。

京王電鉄

記事公開日現在未掲載

京王電鉄では、設備投資計画として2021年度に5000系1編成(順序通り付与されれば5737編成)の増備を明らかにしています。

同数程度の7000系代替が予想できますが、久しく導入されていない一般仕様の車両の今後が注目されるところです。

小田急電鉄

記事公開日現在未掲載

設備投資計画により、5000形4編成40両の投入が明示されています。1000形・8000形の代替と1000形の継続使用車両のリニューアルが複雑に進行しており、今後の展開に引き続き注目が集まります。

東急電鉄

記事公開日現在未掲載

東急電鉄はそろそろ目黒線8両化用の増結車両製造が予想できる状態で、気になるところです。2022年度上半期からですので、2021年度の入籍車両は無しでしょうか。

設備投資計画では田園都市線の8500系代替用の2020系9編成のみが記されていました。

京急電鉄

2021年度の新造車両導入について、3編成12両とされています(PDF)。事業計画で示されていた数字と相違はありません(前年度と比較して、編成数が明示されていたことにより新情報ではありません)。

2020年度の新形式である1890番台の増備・経年車かつ運用制約の大きい1500形鋼製車の置き換え開始と考えられます。

このほか、車内案内表示器ディスプレイ化を1000形4編成28両を対象に実施するとしています。数字からは4両1編成・8両3編成、または6両2編成・8両2編成のいずれかです。

事業計画としては車体更新は8両1編成のみが示されていました。「歌う電車」1033-編成の走行機器更新など、様々な改造が各編成に施されることとなりそうです。

相模鉄道

記事公開日現在未掲載

こちらも設備投資計画の時点で21000系8両4編成32両の新造を明示しています。決算資料により最終的に21000系は9編成72両の布陣となることも読み取れる状態で、特段の新情報はなさそうです。

東京メトロ

新型車両導入について、丸ノ内線1編成、有楽町・副都心線14編成、半蔵門線4編成としており(PDF)、こちらは事業計画に示されていた2000系1編成、17000系10両2編成・8両12編成、18000系4編成で示されているものと同数です。

このほか、東西線2編成について大規模改修とともにフリースペースの整備をするとしています。

千葉都市モノレール

記事公開日現在未掲載

6月30日に出された未来への取組み(PDF)にて、2028年までに1000形を0形“アーバンフライヤー”への置き換えが完了することが記述されています。

中部 私鉄・公営

しなの鉄道

新型車両を3編成導入するとしています(PDF)。2020年11月に投入数を52両から46両へ変更することが報道されており、報道通りの数となっています。

富山地方鉄道

記事公開日現在未掲載

富山地方鉄道の新車両導入は以前にもこの移動等円滑化計画書が初出となっており、本年度も新情報が出てくるかどうかが注目されます。

名古屋鉄道

2021年度に9500系3編成12両・9100系2編成4両の導入と、3500系4編成16両のバリアフリー化改造が示されています(PDF)。車両新造については設備投資計画と同一の内容ですが、3500系の改造編成数は初出です。

近畿 私鉄・公営

記事公開日現在未掲載

四国・九州 私鉄・公営

高松琴平電気鉄道

琴電では、2024年度より老朽化した車両をバリアフリー化した車両に更新することが記載されています(PDF)。この計画は初出です。

過去の同社の車両導入を考えると、京急1500形のうちアルミ車両の廃車が開始される頃でしょうか。

伊予鉄道

伊予鉄道では、軌道線(路面電車)に低床式車両5000形を2021年度は2両導入する計画です(PDF)。このほかにも、今後も継続して車両更新を検討していくとしています。

鉄道線については車両更新の動きは記載されていません。元京王5000系の700系については本年度は安泰となりそうです。

土佐電気鉄道

とさでんでは、2023年度に超低床車両1両の導入予定が示されています(PDF)。

長崎電気軌道

長崎電気軌道では、2022年度までにバリアフリー対応車両を2編成導入するとしています(外部リンク)。

福岡市交通局

2021年度の移動等円滑化計画書は未掲載ながら、7月1日に七隈線延伸事業用の新車両として3000A系を2021年度・2022年度に各2編成投入することを明らかにしています(PDF)。

また、新造車両に関する市場調査として、2024年度から2027年度にかけて「福岡市地下鉄空港線・箱崎線及び九州旅客鉄道筑肥線を運行する1000N系車両の更新を目的」との記述があり、同路線に新形式車両が投入される見通しです(外部リンク)。

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